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1793



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【この小説が収録されている参考書籍】
1793 (小学館文庫 ナ 1-1)

1793の評価: 3.67/5点 レビュー 12件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.67pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(3pt)

猟奇的でサディスティックな殺人と暴力に必然性はあるか?

スティーグ・ラーソンの『ミレニアム』三部作やヘニング・マンケルの『刑事ヴァランダー』シリーズなど、北欧ミステリーは愛読しているが、この歴史ミステリーは今ひとつだった。
確かに、フランス革命当時のストックホルムの様子はよく調べて再現されているし、革命の波及を恐れる政府の対応もさもありなんと思わせる。
しかし、ミステリーの中心である殺人があまりに猟奇的で嫌悪感を免れないし、それが物語のプロットに必要だったとも思えない。
同様に、売春婦や浮浪者を引っ立てて奴隷労働させるサディスティックな描写もやりすぎ感が強い。
第2部のブリックスの物語と第3部のアンナの物語は最終的には本筋と交錯するのだが、途中までは全く別の主題を扱う物語として展開されていて、本筋の推進力と緊張感を削いでいる。
フランス革命の扱い方も、民衆煽動と恐怖の伝播という側面のみが強調され、それが大団円のオチにつながるのだが、疑問の残る終わり方である。
1793 (小学館文庫 ナ 1-1)Amazon書評・レビュー:1793 (小学館文庫 ナ 1-1)より
4094071628
No.2:
(3pt)

猟奇殺人をダシにした腐敗・瘴気・汚濁・権謀術策に満ちた当時のストックホルムの歴史研究書という印象

題名通り、1793年に起こった四肢切断という猟奇殺人で幕を開けるが、北欧ミステリとしては珍しく警察小説ではなく、警察に協力するヴィンゲという労咳持ちで余命幾ばくもない法律家が探偵役を務める。文体は「死」を意識したかの様な鬱々としたものであると同時に高踏的(作者はスウェーデンの名門貴族の末裔の由)で、物語の進行も謎解きを目指して直線的に進む訳ではなく、正直、とっつきづらい。死体の発見者でもある相棒のカルデルが戦争で左腕の肘から先を失って幻肢痛で苦しんでいるという設定にも含意を感じる。本作は四部構成で、各部を「秋→夏→春→冬」として時系列を転置して綴られる。

北欧ミステリの特徴として、事件を通して当時の社会(問題)を映し出すという点があり、本作もその趣きが濃い。18世紀終盤の上流階級から下流階級まで腐敗した社会、カルデルが従軍した戦争で無為に亡くなった何千人という兵士、処刑場での残虐な死刑、上流階級の支援を受けて蔓延る売春宿。ヴィンゲの容体(の描写が多い)と合わせ、こうした社会で生きる事の意味に疑念を抱かざるを得ない内容である。第二部は医師志望の享楽的な若者がある男の四肢切断に至る経緯が書簡体で一転して躁的に綴られる。ただし、若者に命じた真犯人と被害者の正体は不明。第三部はある無垢な少女が女工として紡績所(収容所)に入れられ、強姦されながらも脱出するが、妊娠した事に気付いた時に上述の若者と出会う経緯が語られる。第四部は第一部の続き。第二部の書簡が被害者のヒントになっているのだが、貴族でもなければ気付く筈がない。即ち、被害者も真犯人も読者には分らない創りになっており、初めからミステリではなく、ある意味で"愛と保身の物語"なのだ。

評価は難しいが、フランス革命を背景に、猟奇殺人をダシにした腐敗・瘴気・汚濁・権謀術策に満ちた当時のストックホルムの歴史研究書という印象を受けた。
1793 (小学館文庫 ナ 1-1)Amazon書評・レビュー:1793 (小学館文庫 ナ 1-1)より
4094071628
No.1:
(3pt)

偶然という名のミステリー(ネタバレあり)

北欧系ミステリーが人気なので何冊か読んだのですが、本書がというよりは北欧系そのものが合いませんでした。
全ての、とはいいませんが残酷な殺害方法で読者の興味や正義感に訴えるが中身(推理要素)がない。
北欧系にはそういった作品が多いと思います。

本書もご多分に漏れず、推理が(探偵と読者も)全くと言っていい程ありませんでした。
ヒントが散りばめられ、探偵と読者が同じ情報を共有し最後に犯人を名指しする。
そういった作品ではありません。かなり偶然が左右しています。
それぞれの章の主人公がどうなってしまうのか?という展開は確かにドキドキしますが
(話が進むごとに過去に戻っていくという構成も面白かったです)
それはミステリーと言うよりサスペンスかスリラーではないでしょうか?
期待していたものとは違いましたがそれでも小説としては面白かったと思います。
以下ネタバレ




ではどこが偶然かというと
犯人にたどり着いたのは被害者の腹中から指輪を見つけたからですが
これはブリックスの日記を読んだからで、この日記も彼がアンナと出会わなければヴィンゲの元には届きません。
ではなぜ2人が出会ったかというと、アンナが無実の罪で紡績所に送られ、しかも脱走しなければ出会えません。
その脱走もヨハンナがいなければ(いろいろな意味で)無理です。

これは探偵たちの行動とは全く関係がありません。ただの偶然(作者の都合)です。
指輪についても、その紋章が決め手となるのですが、ヴィンゲがなかなか思い出せないのも不自然です。
この紋章の元になったものは42ページで一度見ていますし、彼の職場?なのでそれ以前にも見ているはずです。
いくら弱っていてもなかなか思い出せないのはおかしくはないでしょうか。

また犯行の動機についても
被害者が手紙が燃えているのを確認せず、それを犯人に読まれたからです。
野心家のスパイがその程度の確認もしないのは不自然です。
これも偶然ではないでしょうか?

瀕死の探偵というのは過去にもいたかと思いますが、その設定には惹かれるものがありました。
それだけに惜しいなと思います。
1793 (小学館文庫 ナ 1-1)Amazon書評・レビュー:1793 (小学館文庫 ナ 1-1)より
4094071628

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