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われら闇より天を見る
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われら闇より天を見るの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.70pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全37件 21~37 2/2ページ
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「ミステリー文学の本棚」というチャンネルを主催しているYoutuber氏が、この小説を手に取って、銘品でも崇めるようにしげしげと眺めている動画を見て、そんなにいい小説なのかと思い、読んでみた。 面白いことは面白い。しかし★5つには出来ない。 この小説にのめり込めるポイントは、主人公ダッチェスのキャラに感情移入できるかどうかだと思う。自らをアウトローと自認する、誇り高きヤンキー娘。まだ幼い弟を、心から愛している心優しき姉。 ただし、日本人にはちょっとキャラが強すぎる主人公かもしれない。読んでいる私にとってもそうだった。 もう一つ。 この小説、エンディングの真相はこうなんだろうなと想像していたら、やっぱりその通りだったので、逆に驚いた。ミステリーの面白さは、えっと驚く予想外の真相を見せてもらえる事のはず。予想できるエンディングでは、やはり高評価はできない。 読む価値はあると思うが、今年No1の翻訳ミステリーとはホメ過ぎだろう。したがつて★4つ。 | ||||
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舞台は2005年のカリフォルニア洲、海沿いの町ケープ・ヘイヴン。13歳の少女ダッチェスは未婚の母スターと5歳の弟ロビンと3人で暮らしている。スターは30年前に妹シシーを交通事故で無くして以来、克己心を失ったかのように生きてきた。二人の子どもの父親も誰だかわかっていない。ダッチェスも自ら「無法者」を名乗り、斜に構えた、いきがった少女に成長していた。 そしてシシーをはねた男ヴィンセントが出所してくるとの知らせが届く。そしてこの日を境に新たな悲劇が町を襲う……。 ------------- 英国ロンドン出身の作家クリス・ウィタカーが広大なアメリカを舞台に描くミステリー小説です。2023年『このミステリーがすごい!』海外編の第1位に選ばれた作品で、それもむべなるかな、巻を措く能わずとの形容がふさわしい一大巨編でした。 まずなんといっても「無法者」ダッチェスの人物造形が魅力的です。齢(よわい)一三にして世間に対する信頼を捨て、周囲の人々や自らの人生に対して滾(たぎ)るような怒りを心の内に抱えている少女です。その一方で、幼い弟のためであればすべてを投げ打つ覚悟を決めている侠気(おとこぎ)も持ち合わせています。社会一般に向けて咆哮を続ける野獣のような性格と、母性を想起させるような弟に対する無償の愛情。そうした相反する感情を抱え、なおかつ自分自身を持て余す様子に、この上ない人間臭さを覚えます。 「あなたがたが弟を愛してくれて、大事にしてくれるかぎり、あたしはあなたがたの暮らしのなかでおとなしく暮らします。問題も起こさず、迷惑もかけません」(378頁) この台詞に思わず目頭が熱くなる自分がいました。 またダッチェスにかぎらず、どの登場人物も<徹底した悪>や<裏表のない善>を体現することはありません。ヴィンセントが伏せた過去、悪徳不動産業者然としたダークが隠してきた来歴、自堕落な母にしか見えなかったスターが秘めた愛――登場人物たちが覆い隠していた事の次第の数々が、物語の後半で驚く形で次々と明らかになっていくさまに呆然としました。 予定調和を一切許さない展開に、読者として良い意味で裏切られ、騙されていくのは、ミステリーの醍醐味といっていいでしょう。 人間は踏ん張りどころを見失うと、とてつもない勢いで人生を転がり落ちていくことになります。ダッチェスもスターもヴィンセントもダークも、一時の勢いに身を任せてまさに踏ん張りどころを見誤ってしまいます。そして大勢の人間の見誤りが折り重なることによって大きな悲劇が生まれていくストーリーが実に見事です。 そのことを思うからこそ、ウォーク署長と弁護士マーサの次のやり取りが胸に沁みます。 「人ってのは耐えるものなんだよ。愛する人たちのためなら耐えるものなんだ」 「あなたみたいな人がもっとたくさんいたら、世界はもっといい場所になる」(383頁) 原題は『We Begin at the End』(われら終わりより始める)です。 事件のすべての終わりを見届けた後、私たち読者に「自分たちは何かを始めるべきだ」と思わせる小説。それがこの『われら闇より天を見る』なのです。 ------------------ *304頁:ダッチェスがビリーを脅すために「あんたは二十五センチのマラの持ち主だ」と言い、それを聞いたトマスが「それじゃ四分の一だよ」と茶化す場面があります。ですが、「25センチもあるマラ」が「四分の一」だという意味を測りかねました。実際はその4倍もある=1メートルということでしょうか? 英語の原文を探したところ、トマスが言った言葉は“That’s a quarter-truth.”でした。英語には"half-truth,"(「一部だけが真実の言葉[話]、半端な真実」)というイディオムがあり、それをもじってa quarter-truthと言っているところが面白いのです。つまり、半分のさらにその半分しか事実を反映していないとトマスは言っているのです。換言すると、「25センチなんてキミは言ったけど、実際はせいぜいその4分の1の大きさってところだ」という意味。 ということで、訳すのであれば「それじゃ四分の一だよ」ではなく、「実際はその四分の一だよ」としたほうがよいのでは? *308頁:「ふたりが光を追って去っていくのを見送った」とありますが、ここで言及されている二人の人物が乗った車が追いかける対象となるような「光」についての描写はこの直前に見当たりません。 英語の原文を探したところ、“(she) watched them trail light into the distance.”でした。これは"(she) watched the fading light of their presence as they moved away into the distance."ということ。つまり「二人が光を追う様子を見送った」のではなく、「車のテールランプが遠ざかっていくのを見つめた」という意味です。光は二人が車で追う目標ではなく、二人が乗る車そのものが放っているのです。 英語の動詞trailには複数の異なる意味がありますが、ここは「(光)を追いかける」ではなく、「(光)を引きずりながら進む」の意味です。 *351頁:壁に飾られた鹿の首を見たウォークの感想を記した訳文に誤字があります。 ✘「こんなのものに見つめられていたがる人間がいるのか」 ○「こんなものに見つめられていたがる人間がいるのか」 あるいは ○「こんなのに見つめられていたがる人間がいるのか」 とすべきです。 ------------------------ この書を気に入ったという読者の皆さんのために以下の小説をご紹介しておきます。 ◆ウィリアム・ケント・クルーガー『 ありふれた祈り 』(ハヤカワ・ミステリ文庫) :13歳だった「わたし」フランクは、牧師の父、母、18歳の姉と11歳の弟と暮らしていた。平凡な夏がまた過ぎようとしていたはずだったが、ボビーという名の近所の少年が列車にはねられてなくなったのを皮切りに、多くの命が失われていくことになる……。 物語の要諦は事件の謎解きにはありません。むしろ13歳の少年が、つまり初めてteenとつく年齢に達した男の子が、人の生き死にを目のあたりにして、少し大人になっていくひと夏の成長を描いていることにあります。まさしく上質な教養小説(ビルディングス・ロマーン)を読んだという思いを強くしました。 ◆ジョン・ハート『 川は静かに流れ 』(ハヤカワ・ミステリ文庫) :無罪になったとはいえ、5年前に殺人の嫌疑をかけられたアダムは事件の後に故郷を逃げるように離れた。親友のダニーからの突然の電話に懇請されて帰郷した彼を待ち受けていたのは、自分を勘当した父や昔の恋人である女性警官、そして新たな殺人事件であった……。 巻頭で著者が遠慮がちに注意を促すかのように記していますが、これは正攻法のミステリー小説というより、まさに「家族をめぐる物語」以外のなにものでもありません。だからこそ、この物語はひょっとしたらあなたの、そして私の物語であるかもしれない、という思いを心の底に生む展開を見せるのです。 『われら闇より天を見る』の作者クリス・ウィタカーはこのジョン・ハートの『 ラスト・チャイルド 』によって作家になる決断をしたとのことです。『ラスト・チャイルド』も悪くありませんが、私はこちらの『川は静かに流れ』のほうが好きです。 ◆ジョン・ハート『 ラスト・チャイルド 』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ) :1年前に妹アリッサが行方知れずとなって以来、双子の兄である13歳のジョニーの家族は崩壊していた。父親は家を出、母は薬物に溺れている。ジョニーは犯罪歴のある近隣住民を監視しながら、妹を誘拐した犯人をひとり密かに見つけ出そうとしていた。そんなある日、ある男が車に追われる現場に居合わせる。そして男はジョニーに「少女をみつけた」と言いながら絶命する……。 『川は静かに流れ』同様、紡がれるのは家族の物語です。それも傷ついた家族の再生への祈りともいうべきものです。複雑な謎解きを楽しむミステリーを求める読者向けではありませんが、家族と人生の物語であることを承知した上で読むのであれば、ジョン・ハートはお薦めの作家だといえるでしょう。 . | ||||
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誤解がもたらした悲劇。読み応えがあり、これはミステリーなんだろうか、、と読み進めるのがもったいなかったが、最後の種明かしは、それでは周りの人間がかわいそうなだけの、迷惑はやとちりバカ少女の物語にすぎないわなと。気持ちがついてけません。がっかりな結末に。睡眠を削った価値はなかった。著者には、もう少し考えろやといいたいわ。 | ||||
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いろんなところで絶賛されているので期待して読みましたが、ミステリーと言うよりはロードムービーという感じ。 先も何となく予想できてしまった。 面白くないことはないが、やや長く感じた。 ちょっと期待しすぎたかな。 | ||||
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ミステリーといえば、凄腕の刑事や探偵が出て来て難事件を解決なんていうものが多いと思いますが、いい意味で期待を裏切ります。 昨年度No.1ミステリーだけある内容。 ミステリーに興味がない人でも楽しめる。 読み終えた後には涙が出て止まらなかった。 | ||||
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文句なしに五つ星です。読み終えた後、なんとも言えない満足感でいっぱいになりました。13歳のダッチェスと6歳のロビンのきょうだいの暮らしは大変で、気持の不安定な母スターを支えひ、カリフォルニアの海辺の町で暮らしている。いつも見守っている警察署長のウォークはスターの同級生でストーリーを引っ張り、ダッチェスとロビンに降りかかる事件、試練から守ろうとします。あまりに痛ましくて、本を閉じた日もありました。このところ、10代半ばの少年、少女が主人公のミステリを読みましたが、これは良い本に出会えました。ストーリーは省きますが、宿題の家系図が完成した時、悲劇を乗り越えたダッチェスに心の安らぎがおとずれて、最高の着地点でした。 | ||||
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単純な話が、登場人物たちの思い込みと勘違いと判断ミスで、不幸で複雑な物語になった、というだけで、それ以上でもそれ以下でもない。 なぜそれほど高評価なの? そもそもミステリー?なの? (追記) 読後1日経って追記。 これ、「悪いやつ」が1人だけいる。そいつさえ居なければ無駄に人が死なずに済んだ。 そういう意味でも「なんだかなー。」だ。 読み始めは「このサイテーな世界の終わり」をイメージしていたけど、結局似たようなもんだったな。 イギリス人はこういうの好きなのか(^_^;)。 | ||||
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普段小説は読まない私ですので、こんなに分厚い本は読み切れる自信はありませんでしたが あっという間にラストまで読み切り号泣。ぜひオススメしたい小説です。 | ||||
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2022年の海外ミステリーの賞を数々手にした作品。でも残念なことにナレーションがアニメっぽいと言うか幼稚に感じられて聴きづらかった。13歳の男子が幼稚園児の様な話し方、大人の弁護士の女性も大人っぽさや知性が感じられず女子高校生の声のようだ。試しに英語版を聞いてみたらずっと自然に少年は少年らしく、女性弁護士は知的職業を持つ大人らしく演じられていた。改善を求めたい。 | ||||
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この本を読んでいる間、ずっと感じていたこと。素晴らしいの一言。 | ||||
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前半の主人公格の少女が、これでもかというくらいに不幸のスパイラルに落ちていく描写で評価が高いのだろう。しかし評者はそこに不満を感じる。主人公の警察官も不幸を抱えているし、カリフォルニアの小さな町は敗残者ばかりが住んでいる。これが作為的で気がめいる原因だし、彼らの境遇にあまり共感できないのは文章力不足によると思った。謎解きとしても、謎が解けた快感を感じないのは、そもそも謎解きが作者の関心にあまりないせいだと思う。宮部みゆきを少々退屈にした感じ。 | ||||
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13歳の少女を少しでも楽にしてあげたくて、途中から事件の真相より姉弟が何とか幸せになれないものかと、そればかり気になっていた。 そこにラストの真相。 深い深い贖罪の物語。 | ||||
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舞台はカリフォルニアの岬の町と、モンタナの大地にある農場。 ノスタルジックな情景は青春のあのころを思い出させる。 原書名は、”We Begin at the End”(人は終わりから始める)。 その少女の矜持は無法者(アウトロー)。 方や、旧き良き時代の町を愛する警察署長。 悲劇は悲嘆を呼ぶ。 家族思い、厚い友情、永遠の愛、贖罪が押し寄せてくるミステリー。 日本人には決して書けない構成だ。 ラストの切ない情景に目が潤む。 | ||||
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これは凄い。おそらく今年、一押しの作品である。 ミステリーではあるけれど、それ以上に重厚な人間ドラマだ。二人の主人公が凄い。どちらも個性がしっかりとしている。少女ダッチェス13歳。ウォーク警察署長、難病との闘病中&勤務中。どちらも惑星のように独立し、人を惹きつける個性と魅力を持っている。 物語は、30年前のショッキングなシーンで幕を開ける。若きウォークがシシーを発見する。陰惨な姿で路傍に転がるシシーの死体を。このプロローグのシーンでは未だ後のヒロイン少女ダッチェは生まれてもいないが、発見された少女シシーは、ダッチェの母スターの妹である。 そして30年後。現在。波に侵食され、崖上の家が崩れ落ちてゆく海岸に見物客が群れるシーンで物語は再スタートを切る。悲鳴の中で家の土台が海に呑まれてゆく。土地の名はケープ・ヘイヴン。ここに物語は展開する。飽きれるほど骨太かつ複雑な物語が。 ダッチェの母スター。捨てばちで、薬中で、売春婦のように自堕落でありながら、美貌に恵まれたダッチェの母親。そして彼女の娘ダッチェ13歳。その弟ロビン5歳。スターが子供たちを顧みないゆえ、ダッチェは、まるでロビンの母親のように家族としての優しさを引き受ける。同時に外敵への厳しさも引き受ける。 ダッチェは自分を<無法者>と呼ぶ。あたしは危険な無法者なんだよ、と。その通り、彼女のタフさには目を見張るものがある。言動のすべてが無法者みたいだ。そのようでしか生きるすべはない、とでも言うように。<無法者>という鎧しか彼女を守す術はない、とでも言うように。 一方、臨時職員二人しかいない田舎警察の署長ウォーク。体を蝕まれつつ、過去と現在の村のすべてを把握すべく務め、あらゆる人に誠実に全力で対処する。善なる魂の持ち主ウォーク。彼は平凡な存在であれ、あまりに魅力的だ。弱く、力のない人間であるからこそ、魂の方は一筋縄でいかないくらい一途でタフだ。 ダッチェとウォーク。つまり二人の境遇も年齢も異なる主人公が、どちらも精神的にとてもタフだという魅力と、逆境とも言うべき苦しみを備える主人公を本書で貫いてゆく。 物語を通して、嫌と言うほどの紆余曲折・社会の矛盾・許せない悪業・罪深い魂などが連綿と登場するのだが、それらはダッチェとウォークの眼を通して読者は感じ、知らされる。堆積する矛盾や、悲しみを掻き抱きながら彼らの物語は疾走する。 一方、この物語の背景としての自然の美しさは、かけがえのないものである。ケープ・ヘイヴンの海。モンタナの大空。美しくも厳しい自然描写は、本書がミステリーであることや、人間の悪い側面も抉り出そうとしてゆく作品であることを、ともすれば忘れさせてしまう。 第一部のケープ・ヘイヴンで殺人が勃発する。30年ぶりに出所したヴィンセントの沈黙。彼を取り巻く疑惑と懸念の嵐。 無法者少女ダッチェの物語は、第二部で、舞台を大空と大地の世界モンタナへと移す。祖父ハルの登場。ハルと孫娘(無法者)の縮められない距離感が、何とも心に痛いが、ロビンの幼い純真さが温度をもたらす。美しいモンタナの自然も。牧場の牛馬たちも。人々も。 雄大なスケールの物語は、終盤になりミステリー作品としての集中度を高め、人間関係図は徐々に明らかとなってゆく。犯人は炙り出され、罪には罰が与えられてゆく。疾走感。複雑な、いくつもの動機が絡み合ったカラクリの中で、無法者ダッチェも、警察署長ウォークも、互いに重要な役割を果たす。 本書は、全体を読後に俯瞰すると、ミステリーというよりもむしろ壮大な人間ドラマとして集約される肉厚な大作である。何よりも人間と人間との葛藤を様々な立場から描き切り、そして文化や文明、貧富と時代、土地とそこに生きる人間模様と相互軋轢。そうした事象を、悉く浮き彫りにさせてゆくドラマチックな力作なのである。 二人の光る個性が、スケールの大きな物語と、その世界を、小気味よいほどに切り裂いてゆく終盤は圧巻だ。苦しみあがきつつも彼らのたくましさと優しさとが、ただひたすらに愛おしい。泣ける傑作である。 | ||||
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まだ、読んでいません。 読んでないから当然内容は知らないが、敢えて言いたい。 以下、ネタバレそのものは当然知りたくない、さらに、その周辺にも近寄りたくない方は読まないで下さい。 そして、そんな方はこのレビューだけでなく、本の帯も絶対に見てはいけません。 帯の惹句に「ラストの一行の衝撃は一生忘れられないだろう」というのは、ある意味ネタバレではないのか? つまり、この宣伝文句を読んでしまった私は「衝撃的なラストの一行」を読んでも衝撃を受けない。なぜなら、ラストの一行が衝撃である事をすでに知ってしまっているから。 実際に「衝撃的なラストの一行」ならば、そして、それを純粋に感動して欲しいならば、絶対に帯などに書くべきではない。 私はこの惹句のせいで「一生忘れられない衝撃」を経験する瞬間を永遠に奪われてしまったわけだ。 こういう惹句はクソだ。 お化け屋敷の入口で「最後、出口直前でめっちゃ驚きますよ!」と呼び込みしているようなものだ。 映画の宣伝文句によくある「ラスト5分! 衝撃のどんでん返し!」とかの無神経なコピーと同じである。 どんでん返しがある、と予め知らされたら、それはもはやどんでん返しではない、という事がなぜわからないのか。 心の底から「それってネタバレですからあああ!」と世界の中心で叫びたい。 | ||||
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ふたりの主人公。 一人目は小さな町のたったひとりの警察官ウォーカー(ウォーク)。優しくて良心的な人物である。 二人目は13歳の少女ダッチェス。アルコールと薬物に溺れる母親と5歳の弟の世話を懸命に行う(最近日本でも社会問題になっている)ヤングケアラーだ。 あることがきっかけとなって負の連鎖が始まり、それに巻き込まれていくダッチェス、次第に進行していく病に苦しみながらも真相を解明しようと奔走するウォーク。 物語の進行はスローペースで、もどかしさを感じながらも惹きつけられる。 しっかり者で苦労している反面、型破りで妥協せず反抗的な性格ゆえに社会から評価されないダッチェスがいかに成長していくのか。 何とももの悲しくやりきれない出来事。 物語の大きなテーマは『無私の愛』。 「よかった」と単純に思える内容ではなく、個人的好みでもないのだが、情緒あふれる非常に感慨深い物語であった。 | ||||
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この世に存在する「自助」グループのテーマの中、善きものは終わりの中にあり、終わりは新しい始まりなのだと継承されています。"A New Beginning"。いつもと異なる書き出しをお許しください。それほど、「われら闇より天を見る "We begin at the end"」(クリス・ウィタカー 早川書房)に心を動かされたことを告げておきたいと思います。 舞台は、米国西海岸、ケープ・ヘイブン。30年前に起きた少女の死。成人刑務所で懲役10年の刑を受ける、少年・ヴィンセント。30年が経過し、刑務所内で別の囚人を殺めて20年の刑を加算されたヴィンセントが刑期を全うして故郷へと舞い戻ってきます。そして、そのことに引きずられるようにして浮上する過去の悲劇が、数多の別の悲劇を引き起こし、時に読み続けることが嫌になるほどに(現に私は、何度か意図的に読書を中断しました)、まるで物語の中、海蝕によって深刻化する崖の崩落のように、家族が、多くの善人たちが善人であるが故に崩壊の闇へとひきつけられるようにハイスピートで滑り落ちていきます。 勿論、「ザリガニの鳴くところ」(2020/3月)を想起しながらの<Who-Done-It>とウェルメイドなリーガル・スリラーの巧さを併せ持つ上質のスリラーであることを認めた上で尚、ここには幻のようにこの世に存在するはずのない(あるのかもしれませんが、私は知らない)無私の力、「自分以外の誰かが必ず幸せになってほしい」と切望する幾人かの絶望的な愛が描かれていることにひたすら心を打たれたと言っておきたいと思います。 ミステリですからそのストーリーテリングに触れずに話すことの困難さを感じながら、カリフォルニアからモンタナの風に癒されようとするダッチェスとロビンの姉弟、その母親・スター、スターの父・ハル、大病を隠して地道に真実を積み上げようとすケープ・ヘイブンの署長・ウォーカー、そして二人の重要人物たちの無私の力に度々心を動かされながら、丁度、物語が90%に至るあたりで、逆にモンタナからケープ・ヘイブンに何も持たずに舞い戻ろうとする主人公・ダッチェスがポール・サイモンの或る楽曲を歌い始めた時、不覚にも耐えに耐えた涙腺がもろくも崩壊したことを告白しておきたいと思います。 "I'll take your part When darkness comes And pain is all around" そして、もう一度、ダッチェス。そう、世の中は不公平だよね。でも、美しいステットソンを被り、弟・ロビンを見つめる無法者の<系譜>に私が与えられる限りの(絶対的にたよりない(笑))愛を捧げます。 | ||||
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