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われら闇より天を見る



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われら闇より天を見る

われら闇より天を見るの評価: 9.00/10点 レビュー 1件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点9.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

13歳の「無法者」少女と45歳のウブな警察署長の成長物語

2021年の英国推理作家協会賞で最優秀長編賞を受賞した作品。カリフォルニアの海岸の町とモンタナの農場を舞台に、ある出来事をきっかけに崩壊家庭の少女とその家族を見守る警官が惨事の中から希望を見出していく、謎解きミステリーであり、ロードノベルである。
風光明媚でのどかな田舎町の警察署長でたった一人の警官・ウォークは、15歳の時から刑務所に送られていた幼馴染のヴィンが30年ぶりに出所するのを期待と不安のうちに待っていた。二人の友情は変わらないと信じるウォークだったが、ヴィンは5年前から刑務所での面会を拒絶し、出所時の出迎えも拒否しているのだった。同じ町に暮らす同級生でヴィンの恋人だったスターは30年前の妹の事故死の衝撃から立ち直れず、アルコールと薬物に依存し、13歳の娘・ダッチェスと5歳の息子・ロビンの面倒を見ることができないでいた。何の援助も受けられないダッチェスは幼い弟を守ることを最優先に、あらゆるものに立ち向かう「無法者」を自称し、世間に抗って生きていた。そんな対照的な二人だが、実はウォークは常にスターと姉弟に気を配り見守っているのだった。危ういながらも平穏な日々のはずだったのだが、ヴィンの帰還をきっかけに30年前の出来事の余波が再燃し、ウォークもダッチェスも抜き差しならぬ悲劇に巻き込まれていった…。
なんと言っても、13歳の無法者少女・ダッチェスの存在感が圧倒的で、読み進むほど心を揺さぶられていく。一方のウォークも正直者の少年がそのまま育ったような好人物だが、それでも心の闇は抱えており、親近感を抱かせる。さらにヴィン、スター、ロビン、ダッチェスの祖父・ハルなどの周辺人物もキャラクターが鮮明で、物語の展開に血肉を与えている。ストーリーとしては殺人事件の解明がメインだが、同時にウォークとダッチェスが挫折と悲哀から立ち上がって希望を見出していく成長物語でもある。舞台となるカルフォルニア、モンタナの情景も魅力的だ。
これはもう、ミステリーの枠にとどまらない傑作エンターテイメント作であり、多くの人に自信を持ってオススメする。

iisan
927253Y1

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