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老虎残夢
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老虎残夢の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.69pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全26件 21~26 2/2ページ
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江戸川乱歩賞発刊(単行本)の季節がやってきた。夏になると、「そろそろ乱歩賞の季節だな」と日本推理作家協会のHPをいつもチェックする。どんな作品が発表されるのか楽しみである。今年は2作品が受賞。 最初に発刊されたのが桃野雑派氏の「老虎残夢(ろうこざんむ)」。「年老いた虎(ここでは武侠の達人の意味?)が残した夢」という意味だろうか。この漢文を英語に訳せば、An old tiger left its dreamだろうか。 タイトルからして、興味が湧く。 舞台は中国、しかも、古い時代、宋と金が覇権を争った12世紀である。場所は、とある田舎、年老いた武侠の達人・秦隆は弟子・紫苑、娘・恋華とともに暮らしている。そこへ3人の招待者(それぞれ武侠の達人)がやってくるところから話が展開する。そして、歓迎の宴の後、秦隆は自身の居室のある孤島の楼閣で遺体となって発見される。服毒し、匕首が刺さっていた。時期は厳冬、船のない状態では、完全なる「密室」状態。しかし、容疑者と思われる5人は島外に滞在・・・ 乱歩賞も含め、「おもしろい」作品には、個性、意外性、論理性、そして物語を読者に伝える筆力が要求される。もちろん、この小説も最初の導入部からページをめくる楽しみがあった。そして、5人の生い立ち(被害者を含めれば6人)、得られた数少ない証拠、そして互いの会話から徐々に背景、事件の真相が明らかになってくる。もちろん、「密室」の謎解きも・・ 最後、欠点のないうまくまとまっている作品という印象を持ったが、最初の導入部で抱いた期待感からすると「なんだ」こんな感じで終わるのか、という感想を持った。多分、推理小説において私の要求する最後の謎解きの意外性、犯人の意外性、他の作品にないような個性が欠けているためと思う。何百冊という推理小説を読んできたファンの1人としては、最後何か物足りない印象を持った。 しかし、筆力は相当のもので、今後の活躍が楽しみな作家の登場であることは間違いない。 | ||||
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ミステリーとして読むとトリックは微妙だが、中盤からのストーリー展開が面白かったのですぐに読み終わった。 また、なにかとイチャつく主人公とヒロインが尊く、早く結婚しろという思いしかない。 残念な点を挙げるとすれば、二人は探偵ではないので、同じような形での続編は望めそうにないところである。 | ||||
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気を操る武術の達人達が活躍する武侠小説、そして密室殺人というミステリーの題材を組み合わせた非常に珍しい作品です。 ・内功を練る武侠に毒は効かない ・軽功に優れた武侠は雪の上を歩いても足跡を残さない ・武侠ならば橋や船が無くとも水の上を走れば向こう岸に渡れる…etc このようなミステリーのトリックや謎解きを力技で破壊しかねない武侠達の設定、下手をすれば意図せずともミステリーのパロディになりかねない設定が実に絶妙なバランスで密室殺人の謎に組み込まれています。 またこの作品では密室殺人だけでなく、殺された武侠・泰隆が他の武侠達に伝授しようとしていた「奥義」そのものの謎が重要なテーマとなります。 泰隆に匹敵する強さに成長した弟子の紫苑にだけ奥義が伝えられないのは何故か? 並外れた膂力ではあるものの、内功はあまり強くなく武侠の世界にも疎い武僧・為問が奥義に執着するのは何故か? この奥義の謎が明かされていく描写も上手く読者を飽きさせません。 私はあまり武侠小説には詳しくないのですが、中国や香港の武侠小説でもこの奥義や秘伝書といったものは作中で極めて重要なものになる事が多いそうですね。 最後に作品自体とは違う部分で気になった点を一つ。 この作品が江戸川乱歩賞を受賞した時の審査員による選評コメントが巻末に収録されているのですが「紫苑と泰隆の娘・恋華が女同士の恋人関係(レズビアン)である事に必然性が無い」とあったのは個人的に引っかかりました。 男女の恋愛関係に必要性や意味などは求められないのに、女同士の恋愛関係だと未だに何らかの特別な理由を求められるのかとガッカリしました。 | ||||
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本作の特徴の一つは、主人公とヒロインが女性カップルであること。「近世中国が舞台で女性カップル?」と突飛な設定に見えるかもしれないが、同性愛はいつの時代のどんな場所にもあった。そもそも異性カップルは登場の必然性を問われないのに、同性カップルになると途端に必然性を問われること自体が問題である。 物語のスタートアップはおそらく誰がどう見ても武侠小説。「えっ、この状況から始まるミステリがあるんですか!?」と思わず問いたくなるぐらい。やがて3人の訪問者が訪れ、島の中の島という二重の密室の中で死体が発見される・・・。 時代情勢も絡めた重厚な物語のなかで、主人公・紫苑とヒロイン・恋華の百合がひときわ光る。恋愛要素がミステリの流れを遮ることは多々あるが本作はそういうことはない。本作のような本格ミステリで女性カップルを、それも恋愛関係と明記した二人を主人公として登場させてくれたことはミステリ界において有意義なことと思う。本作において二人の関係性は「禁忌」とされるが、それは同性同士だからというよりも相手が師匠の娘なので、舞台となる地方では近親相姦と同じ扱いになるから、という設定も巧い。同性愛=タブーという手垢のついた差別的な価値観を避けることに作者のこだわりを感じた。 本作のようなミステリ×百合をこれからも読んでみたい、そして読み応えのある一冊への感謝を込めて星5を進呈する。 | ||||
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乱歩賞としては、初めての中国近世ミステリーであり、初めての武俠ミステリーであり、伝統を受け継ぐ密室ミステリーであり、久々の女同性恋(百合)ミステリーである。 以下、なるべく、ネタバレないように注意してレビューを書く。私はキンドルで読んでいる。 一、あらすじ(事件まで) 〇主に2日間のできごとである。主人公は蒼紫苑で、紫苑の一人称的三人称で進行する。 〇南宋時代の武術家の梁泰隆は、昔家族を殺され、蒼紫苑を一番弟子とし、恋華を養女として育ててきた。屋敷は八仙島にあったが、泰隆は5年前から、湖の中心に立つ八仙楼の道場に泊まり込んでいた。23歳の紫苑は17歳の恋華と女同性恋の関係にあり、泰隆には内緒で愛し合っていた。 〇泰隆は突然、3人の武俠を呼び寄せて、そのうちの一人に奥義を授ける、と紫苑に告げる。18年間修行してきた紫苑はたいへん不満だったが、師には逆らえない。僧侶の為問、海幇(海賊退治結社)の文和、女性事業家の祥纏という三人の武俠が島に来て、屋敷での雪の夜の小宴会の後、武俠3人と紫苑と恋華は屋敷に泊まり、泰隆は術で湖面を蹴って八仙楼に帰っていく。 〇翌朝、紫苑と武俠3人が八仙楼を訪ねていくと、泰隆は毒を飲まされ。腹に匕首を刺されて死んでいた。 二、私的感想 〇簡潔で、リズミカルな文章で、たいへん読みやすい。武俠小説用語の解説も必要にして十分で、わかりやすく、文章に溶け込んでいる。 〇展開はダイナミックで、スピーディーで、全く退屈しない。心理描写を交えた武闘心理闘シーンもちょっと怖く、ワクワクする。 〇内功についての特殊設定がいろいろある。毒を飲んでも自力で解毒できる。水の上を蹴って渡れる。雪に足跡を残さないなど。当然にように書かれているので、あまり違和感はない。 〇ラブの部分を、女同性恋(百合)にしたのは、情感深く、多様性重視で、よいと思う。 〇容疑者の少ない中で、推理が二転三転していくのは面白い。謎としては、「奥義」は何か、が秀逸。 〇最後に、陰謀のスケールが大きくなりすぎるのはちょっと白ける感があるが、これは最近の乱歩賞のトレンドに沿ったものだろう。 三、もろこしシリーズとの比較 〇綾辻氏の選評にあるように、武俠本格ミステリーには秋梨惟喬氏の「もろこし」シリーズ(短編集2冊計8編、長編1冊)という先行作があるので、ちょっと比較してみよう。 〇「もろこし」シリーズの年代設定は、第1短編集(もろこし銀俠伝)が南宋、元、明、北宋であり、第2短編集(もろこし紅游録)が戦国、明、清、中華民国であり、長編(もろこし桃花幻)が元である。 〇第1短編集では凶器トリック等分類しやすいトリックが多い。第2短編集では分類困難なものが増え、システム(勢)がらみのものも出て来て、大がかりになってくる。長編は大がかりな陰謀。 〇「もろこし」シリーズと本書の間に、本格ミステリーとして特段似ている所はないように思う。 追記 〇久々の女同性恋ミステリーというのは、大好きな『濡れた心』(1958年)をイメージして書いたのだが、正確に書くと、乱歩賞作主人公の女同性恋志向は二年ぶりである。(2019年の『ノワールをまとう女』)。失礼した。 | ||||
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中国だかのお話も、武術がどうとか読み難い漢字羅列の名前にもアレルギーを起こしてしまい先には進めませんでした。 戦国のお話にも元来興味が無いので仕方ないのかな。 題材は百合ですか?やっぱり軸は現代で、日本の中で起こるミステリーを読みたいです。 | ||||
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