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ヨルガオ殺人事件
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ヨルガオ殺人事件の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.19pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全24件 21~24 2/2ページ
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以下、できるだけネタバレないように努力してレビューを書きます。私はキンドルで読んでいます。 レビューのメインテーマは、『カササギ殺人事件』(以下『カササギ』)との比較です。 概要 〇「小説編」と「現実編」から成る点は『カササギ』と同じ。『カササギ』では「小説編」が終わってから「現実編」が始まるが、本書では「小説編」は「現実編」の間に挟み込まれている。分量的には、『カササギ』は「小説編」のほうがちょっと多く、本書は「現実編」のほうがちょっと多い。 〇共通の登場人物は、「現実編」が主人公スーザン、恋人アンドレアス、妹ケイティ、作家アラン・コンウェイ、アランの妻メリッサ、アランの同性恋人ジェイムズ、警視(正)ロック、弁護士カーンである。「小説編」は名探偵アティカス・ピュント。 〇スーザンの追う事件は、『カササギ』では自身が編集を担当したベストセラー確実の人気推理作家アランの原稿の結末の消失であり、原稿が見つからないとスーザンの編集者人生も会社の存続も危うくなってくる点で、スーザン自身に関わる事件である。一方、本書のスーザンは、アランの本を読んで失踪してしまったセシリーの行方を捜すことを、家族から高額の報酬で依頼され、クレタ島からイングランドに戻ってきた素人私立探偵である。つまり、本書は「小説編」も「現実編」も、私立探偵ものになる。 〇起きる事件は、「カササギ」の「小説編」は死亡事件1件と殺人事件1件、「現実編」は原稿消失事件1件と死亡事件1件、本書の「小説編」は殺人事件1件と死亡事件1件、「現実編」は殺人事件1件とその8年後の失踪事件1件である。つまり、各2件ずつ事件が起きる。 私的感想 〇『カササギ』では、「現実編」での大トリック、「小説編」での大動機が輝いていた。本書の「小説編」は大トリック、大動機はないものの、中技小技を組み合わせて、面白いミステリーになっている。 〇本書の「現代編」の趣向は、8年前の高級ホテル宿泊客殺人事件の真犯人を見抜いていた作家アランがモデル小説風に書いた「小説編」と、関連人物の8年後の事情聴取(なかなかしつこい)から、スーザンが真相を突き止め、最後は関連人物を集め、真相を披露する。定石通りといえば定石通りだが、そこに至るまでは、あまり定石通りではない。 〇個人的には、『カササギ』には及ばないが、全編楽しく読め、十分傑作であると思う。ただ、『カササギ』に比べると、癖が強い(マニアック?)感があり、「カササギ」ほどの広い愛読者は期待できないかもしれない。年末のベストテン類がどうなるか、大変興味深い。 〇個人的感想としては、本書には、フェミニズム的家族批判が取り入れられているように思う。スーザンとアンドレアスはロンドンの別居時代は、何でも話せる恋人同士であったのに、スーザンがクレタ島のアンドレアスのホテルの共同経営者になってからは、仕事のしてあまりの忙しさに、まともな会話のできない事実婚状態になってしまう。スーザンは私立探偵の依頼を受け、脱出のようにクレタ島からイングランドに出るが、動き回って目にしたのは、いくつかの家族の実質的崩壊であった。そして・・。 〇ロマンティックラブ解析、ロマンティックでないラブ解析も大変興味深い。 | ||||
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黄金期本格ミステリの香りを甦らせた秀作。 手札を晒した後で作中作に移行し、謎解きの興趣を二層で引っ張る構成は「カササギ殺人事件」よりも良く出来ていると思いました。伏線の張り方、レッドへリングの泳がせ方も手練れの上手さ。特に作中作における犯人の隠し方は秀逸。散らばったピースを在るべき場所に嵌め込んでゆく終盤の展開も胸のすく鮮やかさです。 英語の言葉遊びが重要な鍵になっている小説ですが、それをこなれた日本語で表現した訳者の腕前にも感心しました。 アガサ・クリスティへのオマージュが強く出た作品でもあり、クリスティファンなら思わず頬が緩むこと請け合い。 遊び心溢れる細かい目配せも実に楽しく、至福の時間を過ごすことができました。 ホロヴィッツ、やはり凄いです。 | ||||
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カササギ殺人事件の読みにくい(翻訳上の原文を生かすテクニックらしい)、しかし、惹きつける力の強い作品が、高度に洗練された、またしてもピュントものを入れ子作品にして、鋭い推理ものになっている。アンソニー作品には、推理の信義を重んじるような評価が多いが、この作品はまるでバッハの音楽のように、美しく緻密で、整った構築物である。 | ||||
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2020/9月に読んだ「その裁きは死」以来のホロヴィッツ。そして、今回は〈カササギ殺人事件〉シリーズと銘打たれた最新作、「ヨルガオ殺人事件 (上・下) "Moonflower Murders"」(アンソニー・ホロヴィッツ 創元推理文庫)を一気読みしました。「カササギ」以降、「メインテーマ」、「その裁き」と傑作パズラーを上梓し続けているホロヴィッツの新作もまた、読者の期待を決して裏切らない傑作パズラーと言っていいでしょう。 2016年。主人公はまたしても、スーザン・ライランド。編集者を辞め、ロンドンからパートナー・アンドレアスと共にクレタ島に移りホテルを経営する彼女の下へ、リッチなトレハーン夫妻が訪ねて来ます。夫妻が経営するイングランド、サフォーク州にある高級ホテル<ブランロウ・ホール>で8年前に起きた殺人事件。既に犯人は収監されていますが、夫妻の娘・セシリーがアラン・コンウェイによる<アティカス・ピント>シリーズ「愚行の代償」を読んだことで、或る事に気が付いてしまいます。そして、そのまま彼女は失踪してしまいます。"The Lady Vanished"(笑)。夫妻は、高額の報酬をチラつかせながら、「愚行の代償」の編集者だったスーザンにセシリーが何に気が付いてしまったのかを調査してほしいと依頼します。クレタ島からイングランドへ。スーザンは、コンウェイの跡を辿るように8年前の殺人事件を調べ歩くことになります。そのあたりは、<一人称私立探偵小説>のようですが、ある程度手ががりが揃った後、いよいよ彼女は自分が編集に加わった「愚行の代償」の再読に取り掛かることになります。ここから以降、そのストーリーの詳細を明かすことは控えたいと思います。メタミステリ。物語の中にダイナミックに埋め込まれた物語。そして、その埋め込まれた物語に仕掛けられた曰く言い難いもう一つの小さな物語。またしても、パズラーの持つ<森羅万象>に出会うことになりました。 サー・ケネス・ブラナー。 「まさに衝撃の一冊。――xx・チャイルド」(大いに笑った)。 「ダイヤルMを廻せ!」。 もはや、私はアティカス・ピントの姿にポアロの亡霊を見ているようで胸が詰まりました(笑)。「そうは思いませんか?わが友よ」。 ホロヴィッツは、パズラーの"よきもの"を"Re-Use"して、"Scrap-And-Build"して、常に新しい世界を"Re-build"していますね。今回もまた、それは優れた成果として結実しています。 「文学にさまざまな種類はあるけれど、謎解きミステリほど再読の喜びが少ない形式もないだろう。」(上巻 Kindle の位置No.4009-4010)とスーザンは言ってのけますが、そんなことはありません。傑作は、再読の価値がある。二度であれ、三度であれ、読みたいだけ。(私は、そんなには読まないと思いますが(笑)。) | ||||
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