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(短編集)

スペイドという男: ハメット傑作集2



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スペイドという男: ハメット傑作集2の評価: 3.40/5点 レビュー 5件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.40pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全5件 1~5 1/1ページ
No.5:
(5pt)

新刷版同様のコンディション!

商品紹介どおりの版・装丁で期日2日前に届いた。新刷同様のコンディション。数十年前の文庫本を新しく読める、感慨深い。
スペイドという男―ハメット短編全集 (2) (創元推理文庫 (130‐5))Amazon書評・レビュー:スペイドという男―ハメット短編全集 (2) (創元推理文庫 (130‐5))より
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No.4:
(4pt)

乾いた「孤独」と「残酷さ」

「この男はVictoryのVそのままの顔立ちで、金髪の悪魔のようだ。事務所の
共同経営者を心底からきらっているくせに、殺されたとなると、その犯人を追求
(ママ)してやむところがない。そして、誰かが傷つこうが…殺人犯をそのまま
見逃すことを悪と心得るような男である」。
 これが、エラリー・クィーンによるサミュエル・スペイドの描写だ。

 また「マルタの鷹」の登場人物=ガットマンが評するに、
 「この私立探偵は、無鉄砲で、人の意表をつき、どんな出かたをするか予想も
つかない…少々のトラブルなどびくともしない…機略縦横で、判断に富み…歯に
きぬ着せぬしゃばりかたと明皙な判断力では右にでる者がいない」。
 とまあ、スペイドの魅力に参っているかのようだ。

 これがハメットの作り出した探偵。
 一方の雄がコンチネンタル・オプで、もう一人がこのサミュエル・スペイド。
 ハメットの作った虚構の人物ではあるが、その物語の中でハメットは「現代の
無稽な寓話を現実のことばを使ってものがたる」。「極端にロマンティクな筋立て
と、極端に現実的な人物描写とを混ぜあわせ、からみあわせる」。そして「リア
リズムの皮膚が内なるロマンティックな肉体を隠している」。
 スペイドものは長編=「マルタの鷹」と本書収載の短編3作品のみ。これしか
ないのかと驚くほど少ない。収載作品をネタバレしないようにレビューする。

 「スペイドという男」
 推理ものとしてはどうだろうか。最後にスペイドが謎解きをするのだが、その
謎自体にリアリティが薄いとも思える。スペイドという主人公の魅力も、まだ不
十分にしか描くことができていない。多くを語らずにただ人の話やアリバイには
鋭い嗅覚を持つスペイド。
 全編会話とその回りの状況の簡単な説明のみで小説を構成している。
 「ハードボイルド的文体」がここにある。

 「二度は死刑にできない」
 小粋なプロット。ここでもスペイドは人にあまり打ち明けずに状況を一人で分
析する。そして一番近道な方法で謎を追う。最後のスペイドの解決により犯人は
とどめを刺される。これまた会話主体の最小限の描写のみ。スペイドの体力と同
じく知力を感じさせる作品。

 「赤い灯」
 サーカスなどで使われる「隠語」がキーワードとなる。スペイドはまたもや少
しずつ犯人を追い詰める。「木のように無表情で、夢でも見ているかのような目
つきで」、最後は「粋」なエンディング。

 「休日」
 短い作品だが実に味わい深い。たった一日の体験を、まるで乾いた砂漠での出
出来事であるかのように綴る。脈略のないようなストーリーだが、そこに虚無的
と言えるような、底知れない孤独がある。ギャンブルをして酒を飲んで、女性を
ひやかし、そして病院に帰る。ただそれだけなのだが、奇妙なくらい面白い。
 ヘミングウェイの珠玉の短編=「心が(あるいは 心臓が)二つある大きな川」
とよく似ている。文章そのものに味がある。

 最後の三行で何もかも変わってしまうのが、「夜陰」。公民権法の成立するはる
か前のこと。
 「ダン・アダムズを殺した男」も前2作品と同じ。ハードボイルドの香りが高
く、そして最後の数行で全てが明らかになる。秀逸な作品。
 「殺人助手」は一番長い作品。70ページほどの「中編」と言えるだろう。
 スペイドと異なり、決してご面相のいいとは言えぬ、アレック・ラッシュが登
場。ハメットはその容貌をあげつらう。謎解きが込みいっていて容易には事件の
全貌が分からない。

 アメリカのボクシング界の内情を知ることができるのが「ああ、兄貴」。
 闘犬のように、ただリングで闘うことしかできない主人公。その兄との絆。最
後は切ない結末となる。
 たった一時間で偽札作りとそれにまつわる事件を解決する「一時間」。そんな
探偵はもちろんコンチネンタル・オプ。スピード感のある作品。
 オプは最後の「やとわれ探偵」にも登場。プロットが少々複雑。

 全体を通して。
 スペイドものの比較的に長い作品が3作品。オプものが2作品。
 どれをとってもハメットらしさが伝わってくる。最後に説明的な会話が入って
謎解きとなるスタイル。読み応えがある。
 私には、「ああ、兄貴」、「休日」の2作品が秀逸なハードボイルド的作品と思
った。心理描写よりも回りの状況の描写や他の登場人物が実にリアリティがある。
「夜陰」も優れた作品。これらの作品は歴史を超えて読み継がれるだろう。

 ハメットの短編集はあと2冊出版されるように、「訳者あとがき」にはあるが、
結局はこの2冊で出版は終わっている。実に残念としか言いようがない。
 ハメットの作品は別々の出版社から上梓されていて、いまだに「全集」はない。
ハメットの短編集には「ハメット傑作選」がある(1、2とあるようだが、2は
入手が困難らしい)が、主催作品は確認できていない。取り寄せ次第にレビュー
する予定。

 「アメリカが生んだハードボイルドという残酷な形式」というレビューがあっ
たが、実に適切な表現だろう。残酷ではあるがグロテスクではない。
 ハメットの作品は「スタイリッシュ」ですらある、そう再確認できた。
スペイドという男―ハメット短編全集 (2) (創元推理文庫 (130‐5))Amazon書評・レビュー:スペイドという男―ハメット短編全集 (2) (創元推理文庫 (130‐5))より
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No.3:
(1pt)

出品者の神経を疑う

発送されてきた商品を見て呆れた。
非常に良好と記載されていたのに端はシミだらけ、致命的には外装のカバーが右に2m以上もズレていた。
これは明らかに不良だ。子供達にも笑われそうな品である。
せっかく甥に進呈するか、と考えていたのに。一体、出品者の顔が見たい。
包装も乱暴、これは問題外。
値段も400円前後という高さ。ふざけている。
古本屋でも断られそうな品だ。
呆れはてる。アマゾンさん、これは詐欺とも取れる。何度も書くが出品者をしっかり管理してください。
スペイドという男―ハメット短編全集 (2) (創元推理文庫 (130‐5))Amazon書評・レビュー:スペイドという男―ハメット短編全集 (2) (創元推理文庫 (130‐5))より
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No.2:
(4pt)

「スペイドものを中心に」とあるけど、「マルタの鷹」を除くと三作しかないからなぁ・・・

収録作は以下の通り。
・スペイドという男/A Man Called Spade 1932年
・赤い灯/Too Many Have Lived 1932年
・二度は死刑にできない/They Can Only Hang You Once 1932年
 →以上の3つがサム・スペイドもの。「マルタの鷹」を除くとここに収録された3篇がスペイドものの全て。
  出来としては普通というか、スペイドものという以外の特徴はあんまり感じず。
傑出した出来じゃないのは、もしかしてスペイドというキャラクターを通して語ることがもうなくなっていたからなのかも。ある意味この三作品でのスペイドは出がらしなのかもしれない。

・休日/Holiday 1923年
・夜陰/Nightshade 1933年
 →この二つは素晴らしい!チャンドラーがハメットの文章、文体について語った言葉を裏書きする出来だとさえ思った。

・ダン・オダムズを殺した男/The Man Who Killed Dan Odams 1924年
・殺人助手/The Assistant Murderer 1926年
・ああ、兄貴/His Brother's Keeper 1934年
 →これら三作もオモロイ。水準以上の出来かと。短編全集ほんとに出してほしいと思った。チャンドラーに関してはハヤカワ文庫から出てるのに、なぜハメットは出してくれないんだろう。

・一時間/One Hour 1924年
・やとわれ探偵/Bodies Piled Up 1923年
 →以上二つはコンチネンタル・オプもの。

出版以来(この巻は初版が1976年だが)この第二巻も装丁が何度か変わり、傑作集だったタイトルが短編全集に変わっている(しかし、訳者あとがきでも予告されていた第三巻は全く出る気配がない)。あとがきに書かれている「アンソロジー」という文言も変えられてないまま。タイトルを全集に変えたにしては、それにふさわしい扱いをしてくれてないのが残念。
あと、この短編でも何度か出てくるけど、スペイドを表す表現として「木彫りのような顔と夢見るような眼をしたスペイド」「木のように無表情で夢でも見ているような目つき」というのがある。この「夢見るような~」というのはどういう感じなんだろうなぁと思っていた。最近読んだ『生身の暴力論』(P.30)で、人としての一線を越えた人間の眼が「眠たそうな眼」「トロンとした目の光」をしているという風に書かれていた。もしかしたらスペイドもそういう一線を越えた人間だという事を意味している表現なのだろうか。
スペイドという男―ハメット短編全集 (2) (創元推理文庫 (130‐5))Amazon書評・レビュー:スペイドという男―ハメット短編全集 (2) (創元推理文庫 (130‐5))より
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No.1:
(3pt)

表題作について。

レーゼシナリオについての関心から、ハードボイルド文体への関心が派生して、ヘミングウェイとハメット、彼の影響下にあるという片岡義男や大藪春彦を読みかじっていた時期がある。

ハメットにとっての探偵サム・スペードは、チャンドラーにとってのマーロウのごとく、代名詞のような存在かと思ったらそうでもなくて、名作『マルタの鷹』以外では、本書収録の短編三作だけだという。表題作以外の二作は以前読んだことがあったので、表題作を目当てで本書を入手した。

アリバイ工作の話で、策士策に溺れるという感じだったが、ミステリーとしての筋立てより、その他の人物の素性が割れるプロセスを描いた箇所のほうが読みどころであろう。そしてやはり文体がイイ。
スペイドという男―ハメット短編全集 (2) (創元推理文庫 (130‐5))Amazon書評・レビュー:スペイドという男―ハメット短編全集 (2) (創元推理文庫 (130‐5))より
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