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夢果つる街



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【この小説が収録されている参考書籍】
夢果つる街 (角川文庫)

夢果つる街の評価: 3.83/5点 レビュー 18件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.83pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全18件 1~18 1/1ページ
No.18:
(1pt)

ダウナー系が嫌いなので低評価

芸術なら悲劇を描くのはありだと思うが、後味が悪い話に金ださせるのは「罪悪」だと思っているので低評価。
道中もずーっと愚痴っぽく、後味だけでなく最初から最後まで砂を噛んでるような感じ。
とってつけたような主人公の恋愛は、まるで失敗料理に砂糖をかけるかのような逃げにしか思えず。
夢果つる街 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:夢果つる街 (角川文庫)より
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No.17:
(4pt)

バディ物としての面白さ

どういう経緯で本書に興味を持ったかは忘れてしまったけれど、長らく本棚の肥やしになっていたのをやっと読了した。僕はあまり熱心なハードボイルド小説の読者とは言えない。しかし本書は間違いなく王道のハードボイルド小説だろう。渋い主人公、その悲しい過去、薄幸の女、希望なき街、鉄拳の嵐、エスタブリッシュメントとの対立…。

これらの古色蒼然とした要素は、いくら何でもイカニモ過ぎるんじゃない? というようなことも思ったが、比較対照する作例をほかに知らないせいか、けっこう面白く読んだ。ちなみに本書の発表年は1976年、フリーランスの探偵というのはさすがに非現実的になっていたと思うので、警察組織のはみだし者が主人公になっているのだろう。

甘っちょろいところもある。脚の悪い若い娼婦とのロマンスなんて、どうにも照れくさい。また、それまでのスローな展開は一体何だったの? と思ってしまうほど大切な証拠が終盤唐突に出てくることや、重要なキーパーソンに至るプロセスがすごく適当なことにも、鼻白んだ。犯人像にもいささか無理があると思った(犯人は途中で想像がつく)。

しかし、それらを補って余りある魅力だと僕が感じたのは、物語を通して、若い刑事との関係性の深化がじっくりと描かれていることである。本来的には住む世界の違う両者が、捜査を経るにつれだんだん惹かれ合う、というバディ物の面白さもよくあると言えばよくあるパターンなのだけれど…。でも、最後の若い刑事の行動には、正直ちょっと驚いた。
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No.16:
(5pt)

素晴らしい

これはミステリーなのでしょうか?読んでいるうちに、疑問が湧いてきました。
自分がこれまでに読んだことのあるミステリーを基準に考えると、最初はちょっと冗長な気がしていましたが、ミステリーと考えずに読み進めていると、凄く良い小説だと思うようになりました。殺人事件は単にストーリーを進めるための方便に過ぎないのではないかと。
世の中は、0と1、良いか悪いかだけでは測れないものだということを、改めて教わった気がします。
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4042450024
No.15:
(5pt)

苦いくせにセンチメンタル

カナダが舞台とは知らずに読みはじめました。ニューヨークを小さくしたような、ザ・メインという移民の街が舞台。
苦いくせにセンチメンタル。ブラックコーヒーに砂糖だけ入れるという主人公の刑事のコーヒーの好みとおんなじ。
主人公とフーテン娘(年がばれるボキャブラリーだけど)との関係もいいです。
個人的には、後半の「クオ・グァディス・パードレ」というセリフに泣かされてしまった。
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4042450024
No.14:
(5pt)

このような本を文庫で読める嬉しさ。

「夢果つる街」は私のベスト1作品であるが、内容もさることながら、重く、深い文章が、ヒタヒタと胸に沁みるのである。例えば、以下の独白などは、その最たるものである。

「犯罪というものについて、罪悪というもについて、おれはずいぶん考えたことがある。強制収容所にいたときだ。おれは恐ろしい犯罪をいくつも目撃した。あれを見てしまったら、バーの外でぶん殴られている奴がいようが、だれかが殺されようが、気にもならない。心とか想像力にも、てのひらとおんなじように、たこができるものなんだ。奴らはおれたちにひどい仕打ちをした。獣みたいな奴らに殴られたり拷問されたりしたって意味じゃない。違うんだ。殴られているうちにこっちが獣になってしまったという意味だ。最後には本当に殴られるに値する動物になりさがってしまうんだよ」
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No.13:
(2pt)

商品自体は綺麗でした

商品自体は古い物ではありますが、綺麗に保管されていました。 が、裏に大きなシールが。 最近はどこも綺麗に剥がせるシールを使用していると思っていましたが、こちらのは違っていて、裏表紙が汚くなってしまいました。 こういうのは嫌だなあ。
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4042450024
No.12:
(1pt)

つまらない

冗漫・散漫・起承転結もなく…

他のレビュアーの方も書いておられますが、
この小説はミステリーではありません。

なんせ、主人公は謎解きに熱心でもなく、だらだらとつづく
まるでジュンブンガク(偏見入っています)のように、
主人公の「内面描写」とやらをくだくだと書き連ねているだけです。

妻を亡くした独り者,ザ・メインでは強面の警官・心臓の病
年若い春をひさぐ女性との淡い恋物語り・新米警官との交流…
これらが渾然となって本作品を構成していますが、それらの要素が
てんでバラバラの方向を向いていて、何を書いているのやら…

ハードボイルドでもありません。
外から乾いた眼差しで主人公を描くことや
主人公の心の襞を描写することも全くできていません。

まるで著者の自己満足に付き合ったような嫌な読後感
(そもそも「小説を読んだ」という感すらありませんが)が
残るだけです。

つい新刊本を取り寄せてみましたが、最初から最後まで
面白くない本書を読んだのは失敗でした。

ミステリーの体裁をなしていない・ハードボイルドとしても
3流4流。
星は一つしかあげられません。
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4042450024
No.11:
(4pt)

寂びか、あはれか・・・

あれを「シブミ」と名付けたなら、この一編は、「寂び」か、「あはれ」と呼んでみたい気がする。悲しみに砕かれ、諦めにもがく人々の姿が、淡々と語られるのに、それが如何にも赤裸々で、皮膚の裏まで浸み込むような、寒々とした寂寥感と、喪失の思いを押し付けて来る。時として、美しい情景や、ささやかな温かみに、ふと心を動かされる姿は、あはれでもあるが、余計に、哀れを催させる。場面は、どこまでも灰色で、緩慢な死のようにゆっくりなのに、その底でわだかまる、何かをまた失うのではないかという緊張感が、読む手を止まらせてくれない。
 事件の始末は、安直とも思うが、この、ゾラのような話には、こうあるべきなのだろうと感じる。
 エピローグでは、明るい暗闇とも謂えそうな虚しさに、思わず落涙。
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4042450024
No.10:
(4pt)

ミステリーに、こだわらずに

ジャンルで言うとミステリーでしょうが、それにこだわらずに読んだ方がより楽しめます。読み始めると、まず、ひたすら街(ザ・メイン)の情景描写が続くことに面くらいます。とはいえ、気配りの行きとどいた優れた文章のために、負担にはなりません。むしろ、じわじわと世界に引き込まれていく心地よさがあります。そしておもむろに主人公ラポワント警部補の行動が描写されていきます。街の人々とラポワントの関係。ラポワントの人となり。悩みや過去のこと。心寂しくも簡潔な生活態度。その描写がとてもいいのです。ジャンル小説としてではなく、一般小説として読むべきだと思うほどです。ミステリーならいきなり殺人事件でも発生させるのが常套なのに、この小説では、なかなか事件は起きません。ですが、やがてザ・メインの暗がりで、ひとりの男が殺されます。ラポワントは捜査にかかります。経験と勘と少しの運に支えられて。展開は地味です。しかし地に足が着いています。ラポワントの人生観があちこちに滲みだしてきます。若い見習い刑事や、若い宿なし売春婦とのやりとり。考えるのも面倒なジェネレーションギャップに閉口しつつも、ラポワントは少しずつ彼らとも心を通じ合わせます。辛い過去を背負った人々の街、ザ・メイン。あるささいなエピソードが数十年後に引き起こした殺人事件。ついにラポワントは真相に辿り着き、事件は解決します。爽快感はありません。リアルな街と人の感情が重く残ります。でも不思議と愛着がわいてきます。読後しばらくたった今でも、「いい小説だったなあ」と感慨が消えません。すぐにではありませんが、いつか読み返す時が来るような気がします。あのチャンドラーの名作のように。
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No.9:
(4pt)

心にしみる物語

凍てつく冬空をひたすら歩いて家路を辿り、暖かい暖炉の前で食べる、凍える体に沁みるポトフのような物語。  派手なアクションや展開はない。淡々と物語は進んでいく・・著者の言葉遊びを伴いながら。 私は読後、著者の「シブミ」を早速購入してしまった。 なんか酔っているのでかなり断片的な書評で申し訳ありません。
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4042450024
No.8:
(5pt)

モントリオールの一地区 “ザ・メイン”を情感豊かにフィーチャーした傑作

’88年、「このミステリーがすごい!」の記念すべき創刊号の海外編で第1位になった(ちなみに第2位がスコット・トゥローの『推定無罪』)、寡作で異色の覆面作家トレヴェニアンの第3作にあたる警察小説。再読である。キャスリーン・レイクスの『既死感』を読んで本書の舞台となっているカナダはモントリオールの“ザ・メイン”地区の描写があって懐かしくなったのと、同じトレヴェニアンの第5作『バスク、真夏の死』を読んで感動を呼び起こされたのとで、ほぼ10年ぶりに本棚から引っ張り出したのだ。本書の原題でもある“ザ・メイン”はモントリオールで各国からの移民たちが暮らす、猥雑な、いろんな国の言葉が飛び交う喧騒に満ちた無秩序な、一歩間違えたらスラム街とも言えそうな一地区である。クロード・ラポワント警部補53才は、32年間この地区のパトロールを受け持って、裏も表も知りつくした警察官である。メインのストーリーは、この地区で身元不明の刺殺死体が発見され、彼が地道な捜査を行い、犯人にたどりつくという警察小説である。このラポワント。若くして妻を失い、動脈瘤をかかえ、月・木曜日の晩に仲間とカード・ゲームをし、それ以外はひとりアパートでエミール・ゾラを読書する、時代遅れの頑固者で、レネ市警本部長からは早期退職勧告を受ける始末。殺人事件でペアを組まされる新人刑事ガットマンとのやりとりや、私生活で若い娼婦を自宅アパートに泊めてやるといったエピソードも見逃せない。この小説の本筋はこれらラポワントのアイデンティティーであり、捜査の過程で出会う“ザ・メイン”の底辺の人たちの生き様であり、“ザ・メイン”そのものなのだ。トレヴェニアンは全編を通して、きわめて抑えた筆致で地味に全体を描ききっている。その結果、本書からは独特の芳醇な情感が醸し出されて、読むものの心を打つのである。本書は、ラポワントを通して、彼と一体化していると言ってもいい“ザ・メイン”をフィーチャーした、何度読み返しても味読に値する傑作である。
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4042450024
No.7:
(4pt)

哀愁と寂寥の街

本作品は、原題のTHE MAINが示すとおり、カナダ・モントリオールの架空の都市ザ・メインが舞台。そこは移民が流入し、老人と負け犬と身を持ち崩した者たちが暮らす猥雑な地区――夢果つる街なのです。クロード・ラポワント警部補はザ・メインを担当して30年あまりの53歳。街の「法律」であり、巡回を欠かすことはありません。週2回、仕事帰りにマルタン神父、モイシェ・ラパポート、デイヴィッド・モゴレフスキーの3人の街の住人と議論を交わしながら、カード・ゲーム「ピノクル」に興ずる彼は、若い頃に妻を亡くし、心臓には動脈瘤の爆弾を抱えています。家ではエミール・ゾラ全集を熟読するという一面も。ある日、路地で若い男性の刺殺死体が発見されるのですが、物語は捜査過程で関わり合う街の人々を抑えた筆致で描写していきます。また、助手の新人刑事・ガットマンや、ひょんなことから同居が始まった若い娘・マリー‐ルイズとのやりとりも物語に花を添えます。本作品は謎解きは主たる要素ではなく、ジャンルとしては、警察小説、あるいはハードボイルドと呼べるものでしょう。ラポワント警部補の行動を通して、人間が誰でも持つ哀愁感や寂寥感を叙情性豊かに描ききることに成功した、秀作だと思います。1976年に発表された本作品は、我が国では1988年に刊行、同年に始まった「このミステリーがすごい!」で海外部門第1位に輝いています。その後、在庫が途切れることもあったようですが、2009年の角川文庫60周年企画で増刷されるようになった模様。ランクインした当時からでも20年以上経っていますが、全く古びた感じはなく、むしろ、ザ・メインという街が現実感を持って迫ってくるのは、見事と言わねばならないでしょう。
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No.6:
(3pt)

ミステリーではなくハードボイルドかな

トレヴェニアン「夢果つる街」です。ザ・メインというカナダ、モントリオールでの日常を1つの事件を中心に見る物語。そこザ・メインには警察のラポワント警部補が知り尽くしている。ミステリーの要素は低いです。謎解きを楽しむのではなく、ラポワント警部補の人物をいわば「楽しむ」物語となっております。つまりハードボイルド小説になっているのです。持病を抱え、妻をなくし、若い娼婦を家に招きいれ、大学出の新米刑事に現実を教える。警察自体の近代化にも乗り遅れ、いわば「厄介者」になっているラポワント。ここで起こる殺人事件はひとつの触媒に過ぎません。その触媒をとおして、ザ・メインが明らかにされていきます。ミステリーを期待されている方には、難点ありですが、ハードボイルド小説をご要望なら本作はカチッと収まります。
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4042450024
No.5:
(3pt)

舞台が異色だが中身は普通

『シブミ』 はまあまあ良かったが、これは並以下のハードボイルド。舞台がカナダのモントリオールのスラム街で、フランス系カナダ人のタフガイ警官に興味がある人しか楽しめないだろう。カナダのモントリオールの異色さが描写されているのなら、それなりに勉強になるが、1920年代のニューヨークに似ているそうで、ほとんどサプライズはありません。本格推理としては、殺人事件が起こるのは80P過ぎてからで、作者も推理ものを売りにしてないとは思うが、展開が遅くていやんなった。カバーには意外な真犯人と書かれているが、モロバレである。ノックスの十戒は破ってないので誉めるべきか。あっ、中国人出てくるので破っているかw国際色豊かな移民街の描写を楽しむべき作品だろうが、切れ味が悪い。合う人には、最初の街の描写で嵌るだろうが、合わないと思ったら読むのは時間の無駄である。
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4042450024
No.4:
(4pt)

街を主人公にした情感溢れる傑作

邦題も良い題で作品の情感を出しているが、原題は「ザ・メイン」。メイン・ストリートのメインで作品中ではある特定地区を指している。ラポワント警部補はそこを何十年と見回ってきた、いわばメインの主。メインでは浮浪者から豊裕層まで様々な階層の人々が懸命に生きている。主人公が刑事となれば犯罪はつきもので、1つの殺人事件が一応軸になってはいるのだが、その解決が話の骨子ではない。街に生きる様々な人々の生き様をラポワントの目を通して描くことが主眼であり、それは成功していると思う。ラポワントは全ての人々を平等に温かい目で見守り、そんな彼をメインの人々は尊敬している。そんなラポワントの個人的生活として、彼のところに飛び込む若い女性が作品に彩りとアクセントを与えている。また、後半登場してある役回りを果たす、今は成功した魅力的女性実業家が実は幼い頃からのラポワントの崇拝者だったという設定は深い印象を残す。このように人物造詣が非常に巧みである。先の事件は静かな解決を迎える。犯人とラポワントの関係を考えれば淡々とし過ぎる程に。そして、メインにはいつもと変わらぬ明日がやって来るのだ。街を主人公にした情感溢れる傑作である。
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No.3:
(5pt)

静かな悲哀の街

読者を引き込む力のある、よくできた小説です。ジャンル分けすると警察捜査小説に当たりますが、この作品では良くも悪くも事件はほとんど重要ではなく、全体の底流にある静かな悲哀がこの小説の形を作っています。
 この小説の舞台となるザ・メインは確かに“夢果つる街”ではあるのですが、それは「赤い収穫」のポイズンヴィルのような街では決してなく、汚いながらも人々の喜びと哀しみが溢れる愛すべき街、愛すべきながらも夢は果て、やがては崩れゆく街として描かれています。この小説を取り巻いているのはあくまで諦めのこもった静かな悲哀なのです。 また、この小説で重要であり見事でもあるのは登場人物の造形です。主人公のラポワント警部補はザ・メインを独自のやり方で治め、街の法の象徴ですらある警官であるものの、過去の喪失と悲しみを乗り越える勇気を出せなかった人物。それと対比させるように描かれているのが、大学卒の新人刑事でラポワントの考えや行動に共感できないガットマンです。
 この新しい世代と古い世代を対比させる関係は、物語では珍しくもなんともないのですが、読んでみるとこれがただの世代の違いだけによるものでないことがわかるでしょう。この登場人物たちのドラマにもやはり象徴的な諦観と悲哀、そしてある種の希望が存在します。 読んでいる途中は面白くて気づきませんでしたが、これはミステリとして読んだらお粗末な出来です。真相につながる伏線はほとんどないし、それどころか事件に存在感と魅力すらありません。しかしもちろん、それでいいのです。この小説の魅力は先に述べた雰囲気であり、それを生み出す美しい文章や随所に織り込まれた本筋でない魅力的なサブ・ストーリーなどで、求められるものは見事に満たしていました。ラストの事件解決後の感慨をもらすラポワントとザ・メインの姿が心に残ります。
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No.2:
(5pt)

Well-Written Detective Story

モントリオール市で最も多民族的な地区である<ザ・メイン>でアメリカ人の会社員、地元の大学教授、イタリア人のチンピラといった一見何の関係もないように思える男たちが相次いで殺される事件が発生し、それを市警のベテラン刑事LaPointe(フランス系)が若手の部下Guttman(イギリス系)と共に捜査する様を描いた作品です。書く物全てが反キリスト教的なTrevanianにしては珍しく、本作は<生きること><死ぬこと>(そして<殺すこと>)のキリスト教的意味を追求した異色作品ですが、老年に差し掛かった上に心臓の調子まで悪いLaPointeと若いが脚の悪い売春婦とのほろ苦い関係を始めとするTrevanian独自の<高級会話志向人間関係>は健在でファンの期待を裏切ることはありません。
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No.1:
(5pt)

いぶし銀の警察小説

この小説の主人公は二人(一人と一つ)いる。一人はモントリオール市警の刑事ラポワント警部補。50歳代で、妻を若くして亡くしてその後は独身、動脈瘤という爆弾をかかえながらも、相棒のガットマン刑事と捜査に歩く。このガットマンは新人で進歩的な考えを持った若者、ラポワントは何かにつけて反発を覚えるが、一方では自分の年齢を思いため息をつく。このため息がとても印象的で、男の誇り・哀しみ・あきらめがこもっていて読者の胸を打つ。
もう一つの主人公は、ラポワントが担当するモントリオールの一地区「ザ・メイン」。この夢の破れた者たちが集まる吹き溜りの街の様子・自然・暮らす人々を細かなところまで丁寧に描いていて、これまた印象的。この灰色の街・夢果つる街ザ・メインでおこした殺人事件を、おさえられた筆致で淡々と描いていく、一見地味だがいぶし銀といった感じの警察小説の傑作です。
夢果つる街 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:夢果つる街 (角川文庫)より
4042450024

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