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美しき愚かものたちのタブロー
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美しき愚かものたちのタブローの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.48pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全5件 1~5 1/1ページ
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日本に美術館を作るという崇高な目的を持ち、コレクターとしてたくさんの芸術作品を収集した松方幸次郎。 たまたま美術留学に行く途中の田代雄一が、松方のアドバイザーとして同行し、美術作品の購入に立ち会ったというのが物語の真ん中にはめられているのだが、その短い期間に焦点が当てられすぎに感じた。 というか、その後があまりに長く、没落していく松方や、第二次世界大戦を乗り切るコレクションのありよう、特に松方と連絡が途絶えがちになりながら、コレクションを守ろうと努力した日置釭三郎の物語は、簡単なものではなかったろう事は、想像できる。 想像出来るだけに、後半に落ちぶれた感のある形で日置が語るという形は、なんかとても切なかった。 コレクションを、困窮の為にそれも、コレクションを守るために数点を選び売却したことを日置はとても罪の意識で過ごしていた。 とするなら、それは、松方の命を守ろうとする士のようで、松方が本当に、日置に連絡をほとんどとらずにいたとするなら、私は許せない。 日置の人生を松方はなんと考えていたのだろう。 松方は日置に対して責任を果たさずに本当にいたのか。 ☆は、三つ。 美術品購入という前半部分に力が入り過ぎたで、後半の苦節の時代が描き切れていないように思えたから。 国立西洋美術館創立の後ろには、松方や、日置の切なく悲しい話が詰まっているのだなあとあらためて思った。 時代に翻弄されてしまった男達。 まさに美しき愚かものたちという愛情あふれる呼び方がふさわしいのかもしれない。 | ||||
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美術史が好きで、本作田代雄一のモデルとなった矢代幸雄さんに関心を持っており、主な参考文献(442p)のトップにあげられている矢代幸雄著『藝術のパトロン』を読んだばかりなので、期待したのですが、ストーリーの展開が遅く実に退屈な作品になってしまいました。 原田マハさんのこれまでの小説と比較して圧倒的に展開が遅く、間延びしています。分量も半分くらいに切り詰めるとすっきりするのではと思いました。連載した小説というのもあるのでしょうが、読めども読めども同じことを語っている感じを受けました。 後半、様々な登場人物がそれぞれのエピソードを語るようになって小説は動き出しましたので、最後まで読み通せましたが、これで良かったのでしょうか。 国立西洋美術館の松方コレクションは大好きで、東京を訪れるたびに常設展の核となる作品を鑑賞して帰っています。松方幸次郎の功績の素晴らしさは言うまでもなく、それを支えた矢代幸雄さんの若き日の奮闘ぶりも『藝術のパトロン』を参考にしながら原田さんのストーリーになっていたのは良い点だと思いました。 美術愛好家の間では有名な話ですが、ゴッホの「アルルの寝室」の素晴らしさを見出したのは矢代さん(小説では田代)で、松方さんは小説でも書かれているようにその魅力をよく理解していなかったわけです。316pあたりの描写はとても臨場感のあるものでした。矢代さんの熱意にほだされて購入したわけで、それがもし今国立西洋美術館にあったとしたら、素晴らしいコレクションになっていたことでしょう。 同様に、留め置かれた作品の質の高さは、それを見出した人々の眼力によるものです。 とはいえ、美術関係をテーマにして小説を書き続けている原田マハさんの作品にはずっと関心を寄せています。我々が知らないテーマでまた新たな小説を書いてほしいと願っているわけですが。 | ||||
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吉田茂すげえ 田代の造形が幼すぎの感じだった 「かつての友情」をあてにして「私」で付き合ってた相手の「公」の部分に触れて、いちいち「違う」とか言ってるレベルの話してるのかなあ。と序盤で思ってしまった 率直な話、この人交渉チームに入れて、良くも返ってきたもんだ。の方向に アトリエを飛び出せたのは単純に絵の具がチューブや瓶になったからだと思うし、新進の近代物しか売ってない、買えないから、自然と「近代美術」になったんだろうし、武器商人やりながら「戦争でなく、平和を」と言われても、マッチポンプの様だなあ。と。 しかしながら、手当たり次第だろうが、数が集まれば、確かに「力」は発生する どうなんだろう「全部買います」って。場合によってはかなり失礼かつ無礼な気がするが、そこいら辺が松方の人徳だったんだろうか。↑で喜ぶのは、知名度無の赤貧状態の場合かと。名が通ってる相手じゃむしろ無礼に触れる気がするんだが なんつーか、日本的な好みとして「絵」そのものより、その背後の「物語」が重視されるルーツはこの辺か。という気がした 「それがなくても生きていける」ものを「存在価値」に置いてしまった日置の苦悩と困窮が気の毒だった やっぱね。↑は「余裕」がないと 買うんだったら、ダ・ヴィンチ、ラファエロ、ルーベンス買ってくれた方が良かったなあ…売りに出る訳ないが 自分は近代画家にはほぼ興味なしの嗜好なんで、読み方偏ってます | ||||
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松方コレクションの松方幸次郎を描いた作品である。 国立西洋美術館で開催中の「松方コレクション展」に合わせて出版されたように思える。 初出は昨年6月から今年4月までの週刊文春での連載という。 それからすぐに、コレクション展開始と軌を一にするように単行本化されたようだ。 6月に行ったコレクション展での解説などを読んで、松方の活動には関心があったから、一も二も無く購入して読んでみた。 松方の川崎造船所の経営、日本の芸術志望の若者に本物の西洋美術を見せてやりたいという、コレクションをはじめることになった考え方のきっかけ、そしてコレクションの進め方が膨大な史料と著者の該博な絵画への知識によって描かれていく。 松方コレクションへの知識を得るものとしては、申し分ない。 しかし、一方で、読みながら、この人の作品はいつもきれいにまとまり過ぎて行く、という奇妙に滑らかすぎる肌触りへの違和感も感じ続けていた。 もっと、松方もその他の登場人物も、ドロドロとした思いや割り切れないものを抱え込んでいたのではないのかと。 それでも、最後まで読んで、このせめぎ合いは、原田マハにわずかに軍配が上がったと思う。 読んでよかった、と思えたのであった。 | ||||
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「いまの日本では、(松方幸次郎のような)型破りで、強気で、小さいことにくよくよせず、大局を見据えて、社会のためにと、大きな仕事を率先してやっていく蛮勇が、すっかり鳴りを潜めてしまった。」という大人物、漢(おとこ)の伝記的フィクション。 美術小説の第一人者としての慧眼は健在で埋め込まれたフレーズには相変わらずうならされる。「印象派の絵はまぶしいんだよ。」「日本人としての誇り。」「美術とは、表現する者と、それを享受する者、この両者がそろって初めて『作品』になるのです。」「あのタブローは、どんな一撃を君にくらわせたんだ?」「美術館っていうのは、たまらなくわくわくするものじゃないか。」「(レオナルド・ダ・ヴィンチという)天才が生まれたという必然」などなどキレキレです。 個人的には前々候補作「ジヴェルニーの食卓」、前候補作「暗幕のゲルニカ」のほうが完成度が高い気もしますし、いやおうなしに巻きこまれた戦時下での極秘指令は蛇足感もありますが、すべてが収束していくラストの一文がとても素敵です。 | ||||
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