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鏡の背面
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鏡の背面の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.09pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全34件 21~34 2/2ページ
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場面は千葉、東京、長野、フィリピンと移って話に奥行きを与えている。そして、リアリティ。こういう女の人って増えつつあるんだろうなと妙な臨場感も感じる。 構成も描写もいい。「なぜ?どうして?」を読者にも突き付けて、徐々に核心に迫っていく。途中までは明らかにミステリーだ。「頼む。救われない結末で終わらせないでくれ」と思いながら読んでしまう。 がミステリーとして評価するのであれば、この結末はちょっと厳しいかな?「そうだったのか!」と思う読者は少数派だろう。ただ、「そんなことありえんだろ」と思いながらも、ノンフィクションを読んでいるような感覚にさせるから不思議だ。 | ||||
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作者がインタビューで、本作品に人間の「自己同一性」に対する疑義を込めた、と答えています。 カタチから入っていって、中身まで変わっちゃった、 あるいは 一人の人物の中で善が悪を駆逐した、 というお話なんですが… くらなんでも設定に無理がありすぎます。 集団の長にしてカリスマ性を有する女性に、まったく育ちの違う別人が成り代わるのは、はやり無理です。 何とかリアリティをもたせようと、いろいろな条件を作者は考えているのですが、 でも、やはり無理です、これは。 それに途上国から帰国した人が、 出国した時とはまるで別人のように衰弱して帰国したら、 入国審査をすんなり通りません。 本人が具体的な病名を主張しても、おそらく日本での再検査は免れないでしょう。 いくら光に敏感になっていても、入国審査ではマスクとサングラスをとって顔を見せなくてはなりません。 こんなことを言ったら元も子もないのですが、 作者が言ったようなテーマで書くなら、もっと違ったストーリーを考えた方がよかったような気がします。 最後まで読み通せたのは、作者の筆力だと思います。 | ||||
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現代の作家の作品を文庫本にならないうちに購入することは、滅多にない。しかし、篠田節子さんの作品だけは別だ。一番最近の篠田さんがどんなことを考えてテーマにしているかにとても関心があるからだ。私とは同年代だが、彼女のテーマは、常に私の随分先を行っているが、非常に共感できることが多い。この作品の舞台は、女性のための施設「新アグネス寮」。薬物、アルコール依存症、DV、自傷行為、カルト宗教などで傷ついて、もう生きることができないところまで追い詰められた女性達が集まっている。そこで火事が起こり、皆に慕われ、精神的な支柱だった施設の創立者「小野尚子先生」が非業の死を遂げる。施設の人々が悲しみの底にある時、「小野尚子先生」として亡くなった人が、実は「小野尚子」ではなかったことが警察から知らされる。聖母のように慕われていた女性は、一体誰だったのか。少しずつわかってくる真相は、想像を遥かに超えたものだった。 | ||||
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様々な事情を抱えた女性たちが共同生活を送っていた家屋が燃え、焼け跡から「先生」として慕われていた女性の遺体が発見される。しかし、その女性は「先生」ではなく全くの別人で、衝撃的な過去をもった人物だった。 内容紹介と巻末の参考文献を読めば、何となくストーリーが推測できるミステリーながら、500頁を超える分量でも緊張感が殆ど途切れることなく一気読み出来ます。物語の展開は予想の範囲内ですが、調査で明らかになっていく事実に薄気味悪さを感じ、微に入り細を穿つ心理描写には納得しました。欲を言えば、もう一方の人物も、もう少し掘り下げて書いて欲しかったです。 | ||||
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手にした時は、思わずその厚さにたじろいでしまいましたが、ページ数なんてなんのその、読むほどに引き込まれてぐいぐい読み進むことができました。 新人作家さんの作品(100ページちょっと)を読み終えた直後だったので、圧倒的な文字量でもその読みやすさは「さすが篠田先生」と格を見せ付けられたような感じで作品だけでなく、篠田先生の凄さを改めて認識させられました。 先の展開が読めたかとおもいきや、その先の展開で思いもしない事態となり、後半は一気に読まされてしまいました。 秋の夜長にオススメです。 秋晴れのような読後感も好きです。 | ||||
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このようなことは現実にはきっと起こらないだろうと思います。 でも何か独特のリアリティがあるのです。 途中、あまりの邪悪さに気分が悪くなりましたが、邪悪であればあるほど、むしろ邪悪に徹していたからこそ、本人になりきり、背面にまで達し、さらには超えてしまうことすらもできたのでしょうか。 すべては神の御心のまま。 本物を「軌道修正」し、それを超える役割を果たすべく遣わされた存在だったとも解釈できます。 「自分」を生きていたのでは成し得ないのかもしれません。演技だったからこそ達することができた高みなのではないでしょうか。自分を無にする、とはこういうことなのでしょうかね。 盲目の老女は、最後まで「羊」の皮を脱げなくさせるように監視して、全うさせる役割を、はからずも果たしてしまったのですね。 間違いなく第一級のエンターテイメントです。 (追記) 「そうはさせませんよ」の解釈。 先に、老女が「はからずも」役割を果たしたと書きましたが… むしろ、死を賭して、さらなる「なりかわり」を阻止しようとしたのですね。 例えば、さっと着替えて、顔をわざと火傷して、飛び降りれば可能だったかも。 でもそうならなかったことは、警察が証明していますね。 それは、阻止されたから? それとも…? 計算され尽くされた、緻密で奥深い世界に、すっかりはまりこんでしまいました。脱帽です。 | ||||
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新アグネス寮は、依存症から立ち直るべく、 共同生活をしている女性たちの施設。 それを立ち上げ、入居者に寄り添った人物が、 亡くなって初めて、実は別人だった。 という、物語の紹介と、 この作者の、ストーリーを展開させていくうまさに 引き付けられている読者として、 迷わず、手に取った作品である。 あらすじについては、出版社の紹介に詳しい。 最後まで、謎解きに似て興味を途切れさせない。 他の方は、あまり触れていないが、 舞台であるしんアグネス寮の存在と入居者達の苦悩が まず、かなしい。 主人公である小野尚子にしても、 アルコール依存症の過去を持つ。 そのことが、やはり、最後まで意味を持つ。 いっとき、ひどい状態の時は、 病院だったり、施設だったり、専門の機関で治療にあたるが、 そこを出されてしまった人達は、すぐに社会に復帰できるわけではない。 彼女たちに深く寄り添いながら、援助するその人物がいたからこその施設。 そこを舞台にした作者の意図は、と考えてしまう。 読みながら、 その後の不自由 という本を思い浮かべていた。 読み終わって、参考文献を見ると、やはりその記載があった。 人は、生まれ変わることはできないが、 生き直せる。 そのことを信じたい。 件の小野尚子になり代わった人物も、 新アグネス寮の入居者たちも。 ただ、ホラーも書くこの作者だけに、 交霊のあたりの描写は、怖くて怖くて、 そこは飛ばして読み、物語が落ち着いたときに読み直した。 そのへんは、苦手だ。 | ||||
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544ページと読み応えたっぷり。 厚く慈愛に満ちた活動。 その背面に隠された真実を追いかけていく。 信じる気持ちと信じたいと願う気持ちが交錯する。 今まで見てきた慈愛に満ちた姿は何か。 実像と鏡に映る像。 初めから終りまで、鳴り止まない不協和音のなかを潜り抜けていく。 薄暗くて、地を這いずり回るような感覚が続く。 ”アグネス”はラテン語で”子羊”という意味。 迷い込んだ子羊の過去の姿がおぞましく解明していく。 欲のかたまり。 慈愛を演じ続けた挙句はミイラとりがミイラになる。 | ||||
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火災によって発見された遺体は全くの別人だった。 誰が何故何の為に? 昨今、取りざたされる稀代の悪女を脳内に描きながら推理して行くものの 真相に近づいたと思いきや振り出しに戻る様は、ゴールの見えないすごろくをしているような感覚だった。 成りすまし?輪廻転生? 怪物だった彼女は本当に聖女に生まれ変わる事が出来たのか? 真相解明の為のフィリピンへの旅、そこでのダークでリアルな風景描写 更にサスペンス、ホラー、オカルト、様々な要素が加わりラストまでのめり込んで読んだ。 しかし死人に口なし。真実は闇の中だ。 圧巻の534ページ。 | ||||
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「他人の霊が乗り移ったわけではない」「心霊現象とは関わりなく、人は自分ではない他人になってしまうことがある」「自我など普通に思っている以上に脆いものかもしれない」「極限まで行けば、思考と感情だけでなく、おそらく記憶さえ書き換えてしまうだろう」エンディングで作者はそう綴る。深い話だが、同じエンディングでやさぐれルポライター長島は「策士策に溺れて、自分で自分を洗脳しちまった」とつぶやく。この科白は怖い。「あちこちの国の工作員がやってることなんだ。所作から頭の中身まで、設定した人物になりきる。やりすぎると自分の人格までもってかれる」。それを受けての、優紀の反論に救われる。「私は人は生き直すことができる、と信じたいです」。作者のテーマもここに凝縮されているのではないか。 | ||||
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結局、彼女は聖女だったのか、毒婦だったのか。聖女になりたいと思いつつ、毒婦として生きざるを得なかったのか。毒婦でありながら、聖女の役に憧れていたのか、もしくはその逆なのか。 一人の女のもつ二面性を追いかけていくのがミステリアスで少し怖くて面白かったです。フィリピンや軽井沢と舞台も広く、フィリピンの影の部分や、日本社会でも適合できなかった人々など、登場人物も皆興味ぶかかったです。 | ||||
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「そうはさせませんよ」は、どっち向きの言葉だったんだろう…? が、読後の気になりどころだった。 「夏休みの小学生ならいざしらず、いい大人が本ばかり読んでいると日常や現実から心が離れてしまうようだ」 と、 「車椅子に乗って、ぶるぶる震えて腕なんか枯れ木みたいで、サングラスとマスクに白手袋」(←その当時本人的には余り意識してなかったが、結構な絵面だったなあ…) に身に覚えありの自分としては うあ。痛いトコ突かれてみた。と変に共感した 面白く読みました | ||||
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面白かった。 前作の「インドクリスタル」は、あまりにも登場人物が多く、覚えるのも面倒で途中で投げ出してしまったが、本作は頭をコンガラせることもなく、解りやすかった。物凄く分厚い長編で「読めるかなあ…」と、気が重くなったが、ページを急ぎたくなる展開で、結局、二日で読破してしまった。ただ、ラストは「えっ…!」というビックリではなく、予想できるラストでした。でも「これで良かった」と思える安堵感がありました。 文句なしに面白いです。オススメします。 | ||||
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資産家の家に生まれながらも、相続した資産を投じて、暴力や依存症に苦しむ女性を保護するシェルターを運営する小野尚子。落雷による火災で不慮の死を遂げますが、警察の検死の結果、遺体は「半田明美」という人物のものだと判明します。約30年前、男をたぶらかしては金を貢がせ、用済みになったら「捨てる」の繰り返しで、警察沙汰にもなったことのある女。 2年前、「小野尚子」をインタビューしたフリーライターの知佳には、その時の彼女に偽善や欺瞞をまったく感じず、死の直前まで寝食を共にした施設のスタッフや居住者も、「小野尚子」に絶対的な信頼を寄せていました。質素に献身的に生きる「聖母」と、男を手玉に取る「悪女」とが結びつかず、協力し合って調査することになりますが、半田明美の過去の所業が明らかになればなるほど、「小野尚子」との乖離が激しく、当惑することばかりです。 2人の入れ替わりについては、徐々に判明しますが、なかなか動機がわからない。自分は贅沢のひとつもせず、他人に尽くし助ける毎日を送って、一体何の得があるのか? 約530ページ、厚さにして3cm。一気は無理としても、最後までぐいぐい読ませます。作品の評価は、最後に判明する動機に共感できるかどうかによるかもしれません。(もちろん、過去を反省して心を入れ替えた、なんて陳腐なものではありません。念のため) | ||||
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