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息子と狩猟に
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息子と狩猟にの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.93pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全10件 1~10 1/1ページ
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狩猟と山岳、ふたつの異なる極限状態で人間が何を選択するかを問い、哲学的な思考実験の様相をも呈する、表題と「K2」の二篇。作品内で扱われる詐欺犯罪、狩猟、山岳のそれぞれに対する情報が詳細で、リアリティによって作品の世界に引き込まれる。厳しいテーマとともに現実的かつドライな作風で、感傷的な要素は希薄。二作を通じて、女性が一度も登場しないことも特徴。サバイバル登山家が書いたという事実に関係なく、小説作品として楽しめた。 「息子と狩猟に」136ページ テレアポ詐欺チームのリーダー加藤。普段は新聞社に勤務し、休日に初めて息子を連れて狩猟に出掛けた倉内。物語は二人の視点を交互に細かく切り替えながら進行する。長くない紙数のなかで犯罪小説と狩猟文学のふたつを混在させた作品。オレオレ詐欺と息子との休日の狩猟という、いかにもミスマッチな二つの物語が、奥秩父山中に向かって徐々に接近する。息を呑んで、二つの線が交錯する瞬間を見守る。 「K2」63ページ 世界で最も難易度の高い山のひとつで、死亡率三割前後とされるK2の頂上を目指す、日本人五人の登攀チームの様子を描いた山岳小説。登頂のさなかには二週間ほど前に帰ってこなかった情報のあるイタリア人男性らしき遺体も目撃される。主人公はチーム最年少のタカシ。天候不順による厳しい状況で登攀は困難を極め、五人はそれぞれ生死を賭けた決断を迫られる。 ---- 「秘密は自分の口からバレる。しゃべらなければ絶対にわからない」 「ケモノは人間が思うほどバカじゃない。人間は自分で思っているほど利口じゃない」 | ||||
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文学的な難しい表現はほとんどないが読みやすく場面が想像しやすい。 「息子と狩猟に」は冒頭から未知の世界の話で引き込まれる。 但しあらすじに沿わせてそこへ持っていく流れに少々ムリを感じた。 現実はそうなり難いのでは??というのがチラホラ。 但し未知の詐欺と狩猟の話と、緊迫感のある場面は刺激的で良かった。 結局最もキケンな動物はクマじゃなく人間、という描写も面白く強く共感。 「K2」はこれから。 | ||||
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ダレ場無し、冗長な部分無し。 もっと長くていい。もっと長く書いて欲しい。 特に狩猟に関する表現は、書かれたら書かれた分だけ読んでしまうであろう程、面白い。 対峙するシーンでは緊迫感で息が苦しくなった。 面白かった。 氏は今後、更に面白い作品を書いてくれるに違い無いから、今回は敢えて4。 | ||||
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まず「息子と狩猟に」の方だと、私なら主人公と同じ行動は絶対に取らない。足を狙えば十分だし、今後狩猟が出来なくなること・逆恨みされることとの比較においても子供の前での殺人・死体遺棄は選びません。万一選んだ場合は2人とも殺さないと意味がないし。したがって、シンパシーを覚えることができませんでした。 「K2」の方ならどうだろう。すでに死亡している赤の他人の人肉を、極限状態で食べるかどうかというお話しです。こちらの方はアリかもしれません。ただ、悪天候の中ベースキャンプを出発するのにほとんど行動食を持たないという設定に無理が・・・。そもそも自分だったらキャンプから出ず無線で安全を呼びかけるだけの役回りかもしれません。 著者の本はずっと読み続けていますが、さすがに実体験の積み重ねがあるだけに狩猟や登山の描写は見事です。同調は出来なくてもいろいろ考えさせられる作品でした。 追記:新聞でこの本の紹介記事につけられていた著者近影にびっくりしました。色白のふっくら顔でオールバック、別人かと思いました。あの野性味あふれたブンショウさんはいずこへ? | ||||
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おそらく作者が想定していない問題、すなわち、人間は「言葉」に規定されるケモノであるということを、図らずも描き出している作品。 若いケモノほど強烈に「言葉」の影響を受ける。なぜなら彼は今まさに人間になりつつあるから。貪欲な成長過程のさなかにあるから。 おそらく作者は次作でまったく別の方向へ歩みだすのではないか。そんな期待を込めて。 | ||||
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ヒト(ホモサピエンス)を、生々しく描いた本。 後天的に作り上げられる“人間”ではなくて。 フィクション(小説)である必然が、この本にはある。 だから、“ただの作り話”ではなく、緊張感を持って読ませる。 しかし小難しい文章はなく、冬山の朝のように精錬されていて、 半日足らずで一気に読んでしまった。小学生でも読めると思う。 むしろ、“人間”に染め上げられたオトナより楽しめるのではないか。 (とはいえ著者は、確信犯的に“人間”が眉をしかめることを狙っているハズだ) | ||||
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山をやらないので、登山家たちの生死観はおよそ推測するしかできませんが、新潮に掲載された「K2」には衝撃を受けました。飛行機に乗ればかんたんに見下ろすことのできる地球の突起上で起こりうる出来事として、がつんと来ます。それを収録した本だということで手に取りましたが、最初に入っている「息子と狩猟に」は服部さんの新境地かもしれません(これも新潮に掲載……知らなかった)。きっちりとしたロマン・ノワールと狩猟フィクションが噛み合う構成になっていて、生と死がリンクという設計。これまたがつんと来ます。エンディングも、仏文をやった人だなあと思いました。 | ||||
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幾ら取材を重ね、当事者の言葉を多用し、変化に富んだ人を惹き付ける表現が出来る作家でも書けない文章だと思う。 それは、きっと、服部さんがリアルに体験「し続け」て、感じ、考え蓄積したものの中から紡いだものだから。 違った概念を持った人の言葉は、この世界はまだまだ知らない景色だらけなんだろうナと認識させてくれ、ワクワクする。 小説という形が最も合っている表現方法の様な気がしています。 | ||||
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なかなか良く書けた狩猟小説と山岳小説でした。ヤクザものが登場しますが、詐欺の手口もよく書かれていて感心しました。これだけの創作ができるとはやっぱり頭がいい人です。狩猟小説も山岳小説はカルバニズムの話で、全体的に生き物を殺して食べるということを突き詰めていくとなんで人間を殺して食べるのはだめなのかというような問題設定があり、これは大型狩猟獣を狩っていると自然に感じてきていたもののようです。全てのものは生きてほかのものを食べ、また食べられてぐるぐる回るということが根底にあるようです。狩猟や山の話は確かに面白いのですが、生き物の命をとるという意味では日本では毎日牛3500頭、豚45000頭、鶏161万羽だそうですがこれらも命をとられており屠殺場の作業員が殺人鬼になったという話はないので、むしろ毎日パックの肉をスーパーで買って生き物の命に感謝しないほとんどの人は問題ありと思われますが、著者は狩猟を行い過度に命をとることに深く考えを展開しているようです。狩猟民族も供養をしたりするそうですが、まあ確かに人食いもある場合があるのか…それにしても著者のほうが罪悪感を感じているのかもしれない。体を使ってへろへろになるような肉体のある小説であることはよいと思います。芥川賞とれるかも。 | ||||
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サバイバル登山家として著名なノンフィクション作家、服部文祥初の小説。 もともと愛読していた作家なのだが、ノンフィクションでありながら、どこか私小説の香りがただようような、内面を色濃く表現する作風であった。 そんな服部文祥が小説を書いたと聞いたので、きっと私小説方面に踏み込んだ作品に違いない、と期待していた。 その期待は良い意味で裏切られた。 表題作と「K2」の2作品が収められているのだが、両作ともサスペンス作品といってもよい緊迫感あふれた小説だ。扱われている事件についての詳細は述べるのを控えよう。純粋娯楽小説としても十分に楽しめることを保証する。 狩猟家、またK2サミッターである登山家の経験に裏打ちされた、詳細なディテール描写はノンフィクション作家、また特異な経験者ならではのものだろう。良い小説である上に、こうした描写にフィクションを越えて楽しめた。 現代社会の生活者として我々が無意識にすりこまれている、倫理感、特に生命に対しての感覚に対し、「おれはそんなものに縛られない」とはねのける力強さは、これまでのノンフィクション作品と通じている。 彼の従来からのファンにも、もちろんおすすめの一冊だ。 | ||||
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