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飢餓同盟



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【この小説が収録されている参考書籍】
飢餓同盟 (1954年)
飢餓同盟 (1970年)
飢餓同盟 (新潮文庫)

飢餓同盟の評価: 4.53/5点 レビュー 19件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.53pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全17件 1~17 1/1ページ
No.17:
(5pt)

ボロボロな敗北者たちの反逆の物語

戦後の混乱期。
潜水艦でドイツに渡っていた工学士の織木がしけた町に帰ってきた。
彼が持ち帰った強化人間を生み出すナチスの秘薬を巡る騒動。

古い家柄だが温泉が枯れてから没落し、キャラメル工場の主任をやっていた花井には野望があった。
狭山(駅員)や矢根(人形師)や森(医者)など不遇のよそ者たちを組織して町の革命を成し遂げようとする。
織木の生還で計画は急速に具体化。彼を戦中のような強化人間にして地下空間を探査させ、枯れた温泉の復活と地熱発電所を作ろうとする。だが強化のしすぎで織木は死亡する。
秘薬を研究してた秩父博士が最後に乗り込んできて多良根(町長)・藤野(開業医)ら地元有力者たちとともに地下資源をすべて横取りしてしまう。
キャラメル工場をクビになって食い詰めた上、革命運動の過労に耐えてきた花井もヒロポンの打ちすぎで廃人化していた。
飢餓同盟 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:飢餓同盟 (新潮文庫)より
4101121044
No.16:
(5pt)

面白い。

阿部作品が大好きでいくつも読んでいますが、此方は登場人物も多くて少し難解ですが、やはり何と言っても阿部公房。がぜん面白いです。
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4101121044
No.15:
(5pt)

安部公房作品のなかでは異色

1954年刊の書き下ろし。北日本の山あいの町で繰り広げられるドタバタ劇。山師と地熱発電、革命を目論む秘密結社、政治家どうしの利権争い……戦後数年経ったばかりの頃の地方の町なら、ありえたかもしれない。
登場人物はみな個性的、総勢25名のキャスト。紆余曲折の展開があるので、日曜劇場のような連ドラに仕立てたら、けっこういけるかも。
通俗小説のように書いてみるという作者の「実験」のようにも感じられる。哲学・文学・思想のニオイがさほどないのもいい。もちろん、筋書きは緻密に計算されていて、細部ではいつもの安部公房らしさが顔を出す。たとえばギニョール人形劇が登場し(いわば劇中劇)、そこではシュールな展開があったりする。
冒頭は、降りしきる雪のなか、下りの最終列車から大きなトランクをもった男が降り立つシーン。ここで読者の心をつかまえ、最後まで一気に読ませる。後半が駆け足なのが少し残念。
(なお、新潮文庫版は改稿版。オリジナルとはエンディングが少し異なる。)
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No.14:
(5pt)

戯画化された現実

不条理や珍獣は出てこない。プロットがよじれることもない。でも、きわめて安部公房らしい作品である。
山間の寂れた町で、食品会社従業員の花井は、仲間外れにされた弱者たちを集めた「飢餓同盟」を結成している。
一人の男が自殺するためにやってくる。男は旧軍とナチスの科学で聴覚を高められていて、
地下の様子を読み取ることができるのだ。花井は、男を利用して地熱発電所を作ろうと企む。
今こそ飢餓同盟が町のボスたちを倒す時だーー。

飢餓同盟の面々は、堂に行ったクズっぷりというか、極めつけにユニークだ。
ボスとその仲間も負けず劣らずアクが強い。
戦後雨後の筍のように発生して、ほぼすべてが失敗した社会運動を戯画化したストーリーだ。
単なる薄っぺらい風刺ではない。この時代の地方都市の激動をフィクションに昇華した快作である。
ある意味救いのない話なのだが、まったく暗さを感じない。
次元を飛び越えたような物語化に成功しているせいだろう。
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No.13:
(5pt)

安部公房の世界

初期の長編ですが、序盤から引き込まれ、ラストまで一気に読んでしまいました。安部公房が好きな方にはお勧めです。
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4101121044
No.12:
(5pt)

生への渇望

『飢餓同盟』

欲望が排除を生み、排除が革命を生む。
欲望が排除を正当化し、排除が革命を正当化する。

どちらが正気でどちらが狂気か。
正気は狂気であり、狂気は正気である。

生を渇望する時、人はとことん残酷になることを、
まざまざと見せつけられた。
非現実的な現実を徹底的に描こうとした、
強い作品を目の当たりにした印象だった。
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4101121044
No.11:
(5pt)

必読の物語

私の感性にはぴったりとはまる作品。
安部公房自身は失敗作と評したようだが何が失敗なのか全く分からない。
登場人物全てが実世界の各典型であり生き生きとしており無駄がない。
特に人形使いの矢根の描写は秀逸。
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No.10:
(4pt)

アナーキスト花井の革命

主人公花井太助の住む町花園。この町はかつて温泉で栄えた町であったが震災により温泉街が無くなってしまったところが舞台だ。
町の様子も日本の現存している場所で言うと西成ぽいイメージが出て来た。
この町は町長多良根と医者藤野健康、幸福兄弟の2大勢力が牛耳っている。
ある日花園出身の織木という者が故郷に戻り自殺を図りますがかろうじて命は取り留めたものの
彼が残した遺書を花井は読んでしまいます。
そこから彼が花井の姉里子に織木が惚れていてろくな医師免許も無い藤野幸福に誤診、強姦され狂って死んでしまった事、
花園から無くなった温泉減を掘りあて地熱発電をこころみるべく研究していた事、戦争中ドイツ製のヘクザンなる薬により人間兵器の様にされていた告白が書かれており
これを知った花井は織木を利用し温泉減を掘り当てて花園に地熱発電を設置し、
兼ねてから怨恨を持っていた町の2大勢力をぶっつぶす革命を起こすと 飢餓同盟を発足する。
同盟の参加者には 騙されて花園へ来た紙芝居屋の矢根、駅員の狭山、町の用心棒的存在の源さん、イボ蛙というあだ名の男、医者の森、そして織木
で発電所を目的に行動をし始めるのです。

最初は花園の置かれている町の環境があまりにもわびしく暗い背景がたんたんと書かれています。
そして織木の遺書から始まり花井が躍起になって計画を進めていくのですが
後半数十ページに掛けてだんだん仲間とのいざこざや行動がおかしくなり初めて行きます。
そしてめくるめくして抱いた憎悪と計画の結果が全て集結された終わり方だと思います。

こういうテーマのお話には一発大逆転勝利の終わりを願う人も少なくないと思いますが
ところがどっこいそうとは、、な終わりです。
花井の生い立ちが不幸なだけにとても、、、に感じます。

星は個人的に5でも良かったのですが文庫本の裏表紙のあらすじに一言書きたいです。
どうして肝心要のネタバレをあらすじに書きますかねぇ、、。
よって★は1つ減らさせていただきました。
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4101121044
No.9:
(5pt)

「革命家」の無邪気さ

ある小さなセクトの社会革命の夢が、資本家・地主たちに奪われる様をコミカルにシニカルに描いた秀作。
 それにしても、花井の無邪気さは現代から見ると、哀れにすら感じる。「革命さえ起これば、全てがよくなる」と妄信的に考えているのだから。でも、これは彼が愚かだったのではないと、私は思う。当時の革命勢力の思考の限界を、反映していると思うのだ。ある左翼の活動家は、「革命が起これば、公害などなくなる」と言っていたのだから。革命勢力が政権を取れなかったのは、このあたりの思考の単純さに原因がある。勿論花井の失敗の原因も…
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4101121044
No.8:
(4pt)

底辺で打ちひしがれる群像

底辺で打ちひしがれる群像。うらぶれたかつての温泉街花園町の強固なシガラミに拘束されるのを嫌い、自由と豊かさを求める人々。

 生活ギリギリのところで生きる人々は、豊かになるべく活路を求めて奔走するが結局は町の有力者の乗ずるところとなってしまう。

 日本の田舎の閉鎖性をそのまま享受する人々(花井、源さん)、都会からはじかれて田舎町のハイアラーキーを嫌々ながらも甘んじて受けねばならぬ人々(森、矢根)、既存の体制から抜け出すことが却って、功利的な旧体制から利益を吸いあげられることになる土地の人々(織木、狭山)。

 日本の構造の縮図としてその不条理を描きだした作品。
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No.7:
(4pt)

人間社会の理想と限界を鋭く映し出した秀作

「壁」、「箱男」等のように寓話性を前面に出さず、物語中に風刺・寓意を散りばめるタイプの作品。舞台は寂れたかつての温泉街の花園町。キャラメル工場主任の花井は新聞社社長重宗、開業医藤野の娘"うるわし"等と共に"ひもじい"同盟を結成している。同盟の目的は伏せられたまま物語は進行する。

その代わり、安倍氏の作品としては登場人物とその関係が多彩。町に招かれた医師の森は診療所も与えられないまま一ヶ月間患者がおらず、患者に"飢えている"。"分離電極法"と言う温泉復活法を携えて故郷に錦を飾ろうと20年振りに戻って来た地下探査技師の織木は、その軍事目的への転用を迫られ、恐怖と絶望のため魂の"飢餓状態"に陥り、自殺未遂をする。その遺書は花井にも衝撃を与えた。"ひもじい"様とは、飢餓除けの神様らしい。花井の姉里子は織木のかつての恋人であり、"うるわし"の叔父の幸福に陵辱され死んだ。花井にシッポがある事も明かされている。精神に欠乏感を持った人々を象徴的に描こうとしているように見えるが(「壁」にも通じるテーマ)、ストーリーが何処に向かっているかは不明のまま。

"ひもじい"同盟(改名して「飢餓同盟」)はどうやら労働者革命組織なのだが、花井は織木の"分離電極法"を用いて温泉を復活させ発電会社を興し、社長の座に座ろうと企てる。手厳しい皮肉である。更に花井は、現在行なわれている町会議員の補欠選挙を通じて、資本家どうしの争いを批判するが、返す刀で共産党も批判する。「全ての思想を否定するが、自らの主観は尊重する」花井の姿は滑稽であり風刺が効いている。

歯車が狂い出した花井のユートピア革命の行方は...。寒村でのプチ革命の顛末を通して、人間社会の理想と限界を鋭く映し出した秀作。
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4101121044
No.6:
(5pt)

ニュー飢餓同盟?

「旧版新潮文庫」や「新潮社の安部公房全作品3」とはところどころ表現方法や内容が違う。著者が加筆したのかしら?何処が違うか探しながら読むのもまた一興。
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4101121044
No.5:
(4pt)

最初に読むなら『箱男』

面白いけどちょっと難しいので、初めての安部公房なら、私は断然『箱男』をプッシュします。
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No.4:
(5pt)

冗談のような

飢餓同盟の人々は、何かに飢えている。
それは名誉だったり、命だったり、お金だったり、あまりにも人間的な代物ばかり。
自分の欲望のはけ口を、他者への憎悪に向ける。
これもまたあまりに人間らしい。

「革命」という、こっけいな夢物語を、さらに食らう形で乗っ取る村の人間たち。
いつの時代も、飢える人々はますます飢えて、食らうものはさらに肥え太る。
冗談のような展開は、まさに悲劇を超越してしまった喜劇である。

この文庫は、表紙がなんとも小説の中のあるシーンにはまっていて、格好いい。
雪にうもれた鳥の死骸は、かつて彼らが夢見たものの兆候でありながら、彼ら自身の姿でもあるように見える。
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No.3:
(5pt)

「革命」を試みた反抗者

安部公房の最高傑作。

ありえない「革命」を目指した「男」と、

「彼」に巻き込まれた人々の悲哀。

ほとんど自殺行為に等しい、

「体制」への反抗を企てた「彼」は、

しかし最後まであきらめなかった。

予定された「破滅」は悲喜劇的とは云え、

やはり思いに残る皮肉な哀しみを描き出す。

或いは実現した筈の「夢」の幻である。
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4101121044
No.2:
(5pt)

ノスタルジーとペーソスにほっとする作品

安部公房の作品は、骨太のパラドックスとメタファーで形作られた物語構造が気前よく露出しているものと、もう少し普通の物語──人物の背景・心情が丁寧に肉付けされていて寓意を滑らかにしているものとに二分できると思います。「飢餓同盟」は後者に当たります。観念性の高い作品群に疲れてしまった人も楽しく読めるのではないでしょうか。

 この作品には、胸の中の荒野、壁、世界の果てといった直接的なメタファーは登場しませんが、作者の問題意識は依然初期の作品群と繋がっていることがわかるでしょう。小川未明の童話を連想させる製菓工場のある田舎町で展開する正負にわたるユーモア溢れるリアルな寓話になっています。
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4101121044
No.1:
(4pt)

ブラックユーモア溢れる作品でした

『飢餓同盟』に登場してくる人物はみな何か満らされない思いを持った孤独な人間である。
計画は横取りされ、挙句の果てには狂人として病院に収容されるハメとなるところなどはブラックユーモアに溢れあたしはとても好きですっ!
このブラックユーモアに対して現実を寓話化したつまらないものだと思える方もいらっしゃるかもしれませんが、それはこの作品、もしくは安部公房の作品全てにおいてとても無縁な読者であると言えるのではないでしょうか…
滑稽なまでの生の狂気…
とてもぴったりな言葉だと思います!!
飢餓同盟 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:飢餓同盟 (新潮文庫)より
4101121044

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