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青鉛筆の女



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【この小説が収録されている参考書籍】
青鉛筆の女 (創元推理文庫)

青鉛筆の女の評価: 3.67/5点 レビュー 9件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.67pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(3pt)

「驚異の超絶技巧ミステリ」とは到底思えず、私にはどう頑張っても合いませんでした。

私には本書がエドガー賞候補作だという事が俄かには信じ難い気がしますが、何はともあれ受賞しなくてよかったなと正直思える作品でした。どうして本作がノミネートされたのか?の理由は私が考えますのにはオーソドックスでなく前衛的な不思議感覚が評価されたのかも知れないなという気がしていますが、とにかくこういう作品が選ばれる今の風潮が私には哀しくて堪りませんね。
どうやら出版が見送られたらしい日系人が主役の不思議な味わいのハードボイルド小説、作家志望の日系人青年に宛てた編集者「青鉛筆の女」からの手紙、1945年刊行のスパイ・スリラーの3つが交互に少しずつ進行して行く。
まず私には帯裏に書かれた「読者からの絶賛の声」に全く共感できないと申し上げます。そもそも再読しても新たな発見があるとは全く思えずとても読み返す気にはなれません。「オーキッドと秘密工作員」については如何にもありがちな内容だとは思いますが、実際にこの作品が出版されていたとしてもとても売れるとは思えませんね。もっとパンチの効いたユーモアがあればとは思いますが。「改訂版」では妻を殺された日系人の男サム・スミダが映画館で「マルタの鷹」を観ている途中でフィルムが切れて、以後とても不可解な状況に陥って行くという強烈な謎が襲い掛かって来て、あまりの不思議さに幻惑されて早く真相が知りたくて堪らなくなり文字通りに夢中で読まされます。でも暫くすると読めども読めども新たな事実が何も浮上して来ない事に気づいてやがて悪い予感が頭を過ぎります。そして・・・・遂に!これは確かに意外な結末かも知れませんが、これではあまりに殺生すぎます。これなら昔見たウルトラセブンの「あなたはだぁれ?」の方がまだましだと思います。それから殺人の真犯人についても容疑者が皆無な中でのこの真相はあまりに安易すぎて全く芸がなさ過ぎます。こんな事実は調べればすぐに出て来そうなものですが、一応どうして出てこなかったかの理由が示されてはいるものの、その答たるや本当にレベルが低くて、どうも著者はミステリをナメておられる様な気さえします。前に戻って著者がこの結末を選んだ理由を私なりに考えた結果、(1)フィクションだから(2)未刊だから(3)米国人にとっては日本人は存在しないも同然だからと自らの境遇に重ね合わせて象徴的に描こうとした、の3点が思い浮かびましたが、ここで巻末の解説文の一節を読んで漸く手掛りを得ました。それは「虚実を織り交ぜるセンス」という部分でしたが、まあ黄金時代の本格推理小説をこよなく愛する私にはどうしても楽しむのが無理な種類の厄介な作風でしたね。でももしかすると高度すぎて私には思い至らない別の解釈がある可能性もありますので、もしお気づきの方がおられましたらばぜひともお教え願いたいと真剣に思いますね。まとめとしまして、日系人青年タクミ・サトーが青鉛筆の女に対して最終的に取った態度には心打たれるものがありましたので、その部分を勘案して本書の評価を★3つにしようと思います。最後にこういう大袈裟すぎる褒め文句が冠された本は話半分くらいに思っておかないと落差が大きくて痛い目に遭うなと痛感致しましたが、どうかみなさん他にも黄金時代の名作ミステリには多少オーソドックスでも確かにフェアな面白い本がたくさんありますので、どうか本書のお口直しの意味でも探して読んで頂きたいと思いますね。
青鉛筆の女 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:青鉛筆の女 (創元推理文庫)より
4488256090
No.1:
(3pt)

"凝りに凝った"というキャッチ・コピーが虚しい凡作

非常に凝りに凝った作品という事で期待して読んだが、残念ながら凡作という感が否めなかった。読者には以下の3つがカットバックで提示される。

(1) 太平洋戦争開戦直前に執筆が開始された日系アメリカ人を主人公とするハードボイルド風の三文パルプマガジン。
(2) (1)の作家の担当編集者で、太平洋戦争開戦を受けて、日系アメリカ人を主人公とした作品の時節柄の拙さを指摘し、以下、作家にアドバイスを送り続ける編集者の書簡(本編集者は青鉛筆で添削するのが題名の由来)。
(3) (2)の編集者のアドバイスを受けて、書き直されたと思われる、日系アメリカ人をスパイとしたスパイ小説。

しかし、読んでいて、意外性がないのである。(1)と(3)の内容がシンクロしている辺りに作者は謎を求めたのかも知れないが、素直に読めば(編集者の書簡が嘘でなければ)、(1)と(3)の作家は同一の筈なので、むしろ順当とも言える。特に、(1)の第三章まで進んだ時点で、太平洋戦争が開戦し、その時点で、編集者は(1)の作品の中止を宣告し、スパイ小説への切り換えが行なわれているのに、本作には(1)の第四章以降も提示されている点を鑑みれば、事態は自ずと明らかであろう。

もしかすると、作者は太平洋戦争開戦当時の日系アメリカ人が味わった悲哀・苦難を描きたかったのかも知れない(実際、日本の風習・ことわざ等、良く調べている)が、ミステリとは無縁である。"凝りに凝った"というキャッチ・コピーが虚しい凡作と言えよう。
青鉛筆の女 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:青鉛筆の女 (創元推理文庫)より
4488256090

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