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砕け散るところを見せてあげる
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砕け散るところを見せてあげるの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.66pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全38件 21~38 2/2ページ
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オビを見て、ラノベの作家だって知らずに買った。普通のミステリー小説かなと思って買った。 主人公の心情の描写、情景描写、会話がダラダラとあるせいで、話がサクサク展開していかず、戸惑った。 特に終盤にかけて、怒涛のように比喩表現が出てきて、読みづらい印象を受けた。 たぶん、そういうのが好きな読者もいるのだと思う。 | ||||
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竹宮ゆゆこ作品を全て読んでます。 正直、最初は読みづらいなと思ったのですが、だんだん面白くなり最後には謎が解けます。竹宮ゆゆこ作品の集大成の一つといっても過言ではないと思います。 | ||||
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このレビューを読んでいる人は ①気になるけれど買うか迷っている ②読み終わって、他の人の感想が気になる のどちらかだと思いますが、①の人は買ってみたら良いと思いますよ( ^ω^ )損しません 当方33歳男性で、それなりに読書経験ありますが、わりと楽しめました。 | ||||
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著者は『とらドラ』がヒットした竹宮ゆゆこさん。 ラノベはめったに読みませんが、こちらは新潮文庫nexという、ラノベ以上文芸未満を売りにしたレーベル。 表紙の女の子のかわいらしさと帯の「あなたは絶対に涙する!」に惹かれて読んでみました。 舞台は主に、公立高校。明るいとは言えないラブストーリーです。 ですが、さすがラノベ作家さんだけあって、文体は読みやすいし、脇役のセリフなどがポップ。 細部に、かわいらしさ、愛おしさを感じます。 展開が早く疾走感がある反面、そこは書き込みが浅くない?と思う部分はありましたが、 悲劇だけに終わるかに見えた物語は、見事に希望の見える形で終息し、とても巧いなと思いました。 1度目は、構成を読み解くことに気をとられてしまい、涙までは出なかったですが、再読するとほろりときました。 少しエグいシーンはあるものの、全体的には好感が持てて、他の人にも勧めやすい作品です。 タイトルの『砕け散るところを見せてあげる』の持つ意味は、作中からもいろいろと読み解けますが、 わたしは、作者や編集者からの、よくあるラノベ軽視的な風潮に対する、意欲的なメッセージと受け取りました。 この新潮文庫nexシリーズ、ほかの作品も読んでみたいと思います! | ||||
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【ネタバレあり!?】 (1件の連絡あり)[?] ネタバレを表示する | ||||
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「UFO」は撃ち落とさなくてはならないのに、彼女が撃ち落としたはずなのに、それはずっと少年の心に生き続けてしまう―――幸せになっても、満たされても、過去に引きずり降ろされ、「君を救わずにはいられない」。 「ヒーロー」になりたかった人間が、ありもしなかった「ヒーロー」に憧れて本物の「ヒーロー」になった…かもしれない。そんな作品です 先に皆さまが指摘されているように、私も本作を読み進める中でとある物語を脳裏に浮かべました。 「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 」(桜庭一樹著) ヒロインは、父親から暴力を受けてもなお、抗力を持たない「嘘」すなわち砂糖菓子をポンポン打つことしかできない無力な少女。そんなクラスメートを救おうと主人公の少女は奮闘するのですが、子供の力は悲しいほど脆弱で、SOSの声は大人の元に届けられなかった――― 救いのない話だっただけに、当時読者だった中学生の私は言葉通り胸をえぐられるような思いで読了しました。 こちらの作品は今でも深く心に刻まれた印象強い一冊ですが、誤解のないように言っておくとそのことを思い出したのはほんの一瞬のことです。 本作は、「砕け散るところを見せてあげる」とは全くの別物です。 ですから、「砂糖菓子~」の二の舞ね…じゃあ読まなくていいや、だとか、あれ合わなかったからこれも読みたくない、だとかいう方、是非一度ページを繰って確かめてみてください。一日で読めます。一日でいいので、じっくり拝読頂きたい。もったいないと思うからです。 「砕け散るところを見せてあげる」 作品のポイントは、固有名詞を持っていた二人の男女が、物語後半にその名前の輪郭を失っていくところにあります。 少年と少女には名前がありました。 まるで、白い光に照らされてキラキラと輝く透明なガラス玉のような名前です。 しかし、二人が出会う前、それから出会った過程にて―――陽だまりの中で愉快に語られた「幸せ」や「ヒーロー」、また、少し影をまとっと「UFO」というキーワードは、突然目まぐるしく様相を変えてゆきます。そして、それに従い、彼らは誰が誰だか不明瞭になってしまうのです。 事件が起きて、「終わったかもしれない…砂糖菓子はまた負けたのか」そう思い立った次の瞬間、私は白い時空の光に飲み込まれました。そして、彼らの名前のようにキラキラした映像を見ることとなりました。絶望の涙が、圧倒的に大きな存在――「生」の一つ上の領域にいる巨大な力によって拭われました。あっぱれです。それは作品の時間軸大きく歪め、悠々と今も過去も未来も全て超えました。 | ||||
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表紙に惹かれて久しぶりに竹宮さんの本を購入。 清澄と玻璃コミカルなやりとりがほほえましい。 青春物かと勘違いしていたら、 終盤の展開によく練られた構成だと驚いた。 重いテーマの割に、 読後感は意外にもすっきりとして爽快。 次作も楽しみだ。 | ||||
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読み終わった後、読み返して納得した後の余韻が素晴らしいですね。 お人好しな主人公がヒロインを助け、共にUFOを打ち落とすお話です。 私にとっては懐かしい高校時代をテンポよく彩り鮮やかに映し出す著者のセンスには脱帽です。 ここらへんはライトノベルだなーと感じました。 最後はかなり駆け足になりますが、家族の愛、主人公の思い、ヒロインの愛に満ち満ちていて本当に出会えてよかった小説だと思います。 読者をだます仕掛けもあり、何度も読み返したくなる小説です。 | ||||
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ストーリーも面白かったが、特筆すべきは類稀な文章力。表現の仕方がすばらしい! | ||||
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楽しみ方はそれぞれと思います. この本は店頭で購入し,そのまま読了. 後から書評などをみてトリックありの本だと知りました. 色々読み慣れている読者は,トリックをトリックと感じずに読めてしまっても不思議ではありません. その辺りに関しては読み手次第ということになると思います. 帯をみて購入した場合にはある程度それを期待して購入すると思いますが,物足りなさを感じる場合があるかもしれません. ライトノベルということもあり学園生活を描いた部分は力が入っていて救われた気がします. ちょうどこの本の前に「スクールカースト」に関する本を読んだのでそう感じたのかも知れません. 読んで損はない本だと思います. | ||||
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家族の愛の形。円環。 読み終えて、じんわりと胸が温かくなりました。 | ||||
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ネタバレも含んでいます 他の人も書いてあるように「砂糖菓子~」と類似が多いです。影響を受けたのか、たまたまなのかは分かりませんが。 そして運が悪く私は「砂糖菓子~」のすぐ後に本作を呼んでしまったので、どうしても二つを比べてしまう。そして正直なところ心に刻まれるのは「砂糖菓子」の方だ。中高生の、弱さ、悔しさ、愚かさ。そしてヒーローになりたくてもなれない大人の現実。色々なものが含まれている。 で、本作は希望の話。ヒーローの話。そして一時流行った「もう一度読むと違って読める」ではなく、その先を行く、「何度でも読んでも同じ話で違う話」の小説である。だからこその記念碑的な小説。 似ていて全然違う2作。何度でも読める本作と、2度目は読む必要のない(読みたくないではない)「砂糖菓子~」どちらも良い。 | ||||
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UFOが見事に砕け散るところを見せてもらいました。UFOとは何か。「運命かと思える呪縛」かな。 筋を追うだけでなく、「読む」ことを楽しむ方には絶対お薦めです。私にとっては2016年上半期に読んだ本の中でのbest。 典型的ないじめにあっている高校1年生蔵本玻璃を、偶然それを知った3年生濱田清澄が助けようとするところから始まり、玻璃の抱える秘密を清澄が解明し、解決していく様子を素直に読んでいけるのは、作者の筆力だと思います。そして、家族の愛情に昇華していきます。 「ヒーローは、決して悪を見逃さない」に始まる清澄のヒーロー3原則は、子どもらしい正義感の現れですが、それが無ければ真っ直ぐ生きることの意義は語れません。そして、もう一つ大事なこと、「ヒーローは常に自分自身であること」を加えるのがこの小説と思いました。 主人公を囲む友人たち、田丸、尾崎、尾崎の妹が、テンプレートでなく、根っこの良い奴であるところが、暗くなりそうな展開をしっかり持ちこたえるのに役立っています。 最後の30頁ほどは急展開ですが、それまで丹念に書き込まれてきているので、ついていけるでしょう。さらに、残りも15頁ほどという295頁のあたりで、実は叙述上で時間軸が捻られており語り手にトリックがあったことを知ります。「えー、そうだったんだ」と、また最初から読み直すことになるのがすごく快感でした。もう一度振り返ってこそ、すべてが腑に落ちることになり、帯にある「最後の一文、その意味を理解したとき、あなたは絶対、涙する。」に納得しました。 前作「知らない映画のサントラを聴く」以上に「小説って面白いなあ」と思わせてくれる作品でした。 | ||||
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最後の一文、その意味を理解したとき、あなたは絶対、涙する。と小説の帯をみて 涙は、でないだろうと思って読みました。文字と文字の行間の意味がちらっとわかりだすと涙でました。 ひさびさに小説っていいなと悦びの本です。 | ||||
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【ネタバレあり!?】 (1件の連絡あり)[?] ネタバレを表示する | ||||
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男の子として産まれてきたら誰だって「ヒーロー」になりたいと一度は願う。「ヒーロー」と一口に言っても色々いるんだろうけど、こと王道を行くと言うのなら 閉じ込められ、酷い目に合わされて泣いている女の子を助けてあげられる様な活躍を、という事になるだろうか?人気女流作家・竹宮ゆゆこの新作は そんな男の子なら誰もが憧れる「ヒーロー」に成りたかった少年の物語 物語は大学受験を目前に控えた高校三年生、濱田清澄が毎月第一月曜日と定められた全校集会の日に遅刻し、開かれている体育館にこっそりと 忍び込む場面から始まる。三年生の自クラスの列に割って入る事も叶わず、仕方無しに一年生の列の最後方に紛れ込んだ清澄が目にしたのは一人の 小柄な女子に後ろからゴミを投げつけている場面を目にしてしまう。朝から気分の悪い物を見せられた、と思う清澄の目の前で嫌がらせは更にヒートアップ 件の女生徒の頭を上履きが直撃する事に。更に上履きを投げつけようとする後輩の腕を掴み止めさせた清澄だったが、集会が終了して体育館の外へと 出て行く生徒たちの群れの中に見えたのはしゃがみこんで投げつけられたゴミを拾い集める女子生徒の姿だった。その脇を退出していく他の女子に 「キモい」「うざい」と悪意の礫を投げつけられる姿を見ていられなくなった清澄は「いつもあんな事をされているのか?」と話しかけるが、女生徒は反応を 見せない。不審に思った清澄が女生徒の背中に触れた途端、女生徒は「ああああああああああああ!」と絶叫。ボロボロの服装と顔の半分を覆う様な 長い黒髪の隙間からぎょろりと大きな目で睨み付ける外見的なヤバさに怯む清澄に紙くずを投げつけて女生徒は立ち去るが、何でこんな目にと思いながら 開いた紙くずに書いてあったのは「しね」という文字。女生徒が浴びせられていた悪意の強烈さに恐怖を感じた清澄だったが、同じクラスのギャル・尾崎から 少女が学年一の嫌われ者・蔵本玻璃である事を知る。高校デビューの失敗から孤独を味わった経験を持ち、自分を大切にしてくれる人間の有難味を知る 清澄は、孤独といじめは違う、いじめを知りながら「自分には関係ない」と通り過ぎるのは自分以外の全ての世界をクソにする事だ、と一年生の教室へ 向かうが、そこで目にしたのは聞いた以上に激しい虐めを受ける孤独な玻璃の姿だった。義憤を感じながらも親友の田丸に「だからって何が出来る?」と 問われれば何も出来ず俯くしかない清澄は悪戯で毎日投げ捨てられている玻璃の上靴を拾ってやるしか出来ないまま一年生から「ヒマセン」と呼ばれる 日々を送る事に。一年の間に広がる虐めの酷さに憤慨するクラスの女子から市営運動場のトイレで何かが起きていると気付いた清澄は掃除用具入れに 閉じ込められた上で真冬に水をぶっ掛けられ凍えそうになっていた玻璃を見付けるが… たぶん、本書を手に取り、読み始めた方は「つまり、UFOが撃ち落とされたせいで死んだのは二人」という台詞から始まる2ページのプロローグで 頭が「???」となろうかと。それで良いので構わず、最後まで一気に読んでしまうべし。長く、陰鬱で、救いが無い話を締め括る最後の約20ページを 読み終え、この意味不明なやりとりの意味を理解した時、声を無くすほど驚かれる事は間違いない。誰が死んで、誰が救われて、誰が「ヒーロー」と なったのか?この物語の主人公・清澄が何を成し遂げたのか、最後の最後で明かされる、そういう構造になっているのである 予め断っておくが、「陰鬱な話」と書いた通り、本作のヒロイン・玻璃が置かれた状況はまことに救いが無い。ライトノベルでも一際尖った作風で知られる ガガガ文庫辺りならスクールカーストであったり、一方的に振るわれる暴力など「救いの無い状況」が描かれる作品も珍しくないので、本書に手を出される 際には、本作で描かれるのはその辺りを描いた作品を読むのだ、という覚悟が必要かと。冒頭から描かれる「おかしな女」、「キモい奴」である玻璃に対する 凄惨な虐めも気の優しい読者であれば目を覆いたくなる物があるが、これは玻璃が沈んでいる底なし沼の様な状況の「入口」に過ぎない。他人の、世界の 「ありがたさ」を知る清澄が玻璃に近付けば近付くほど、その底の見えない状況が次から次へと明らかにされて行くので読み進めて行くと実に気が滅入る 大袈裟だと思われる方もおられるかも知れないので、その凄惨さをちょっと書き出してみる 玻璃の指は何本か曲げられなくなって震えていて、顔の半分は、目蓋から頬まで大きく盛り上がる様に腫れてしまった。片目は開いていない。目の下は 黒い隈取りのように内出血を起こし、唇も裂けていびつに腫れて、息をするのもつらそうだった。顔の形状も肌の色も、元の玻璃から随分変わってしまった。 長かった髪も、耳よりも上でざんばらに断ち切られて、切り損ねたわずかな部分だけ筋のように長く残って胸の下で揺れている。鼻にも口にも耳たぶにも 擦って、乾いた血がまだついている。 よくこんな体で、あの道のりをここまで来られたと思う。見ればパジャマみたいな薄手のズボンで、裸足にスリッパを履き、その上にフード付きのコートを 着ただけだった。コートの前はちゃんとしまっていなくて、中にはキャミソールしか着ていない。見えた肌の部分は全部、切り傷やひっかき傷、内出血で 覆われていた。その色彩はまるで花を束ねたみたいだった。青や赤、紫、黄色、ピンク、オレンジ、本当に色とりどりのたくさんの花で、玻璃は全身を 覆われているようだった。 玻璃の姿その物も惨たらしいが、こんな凄惨な暴力を誰が振るったのか?なぜ玻璃は抵抗する事も、逃げる事も出来ずにいるのか、を知った時には 吐き気を催すほどの世界の残酷さに読者自身が晒されている様な気分にさせられるかと。学校で耐えていた虐めすらもが霞む様な暴力と悪意が 玻璃という少女を蝕む様は、よくぞこれほどの物を女性作家が描けた物だと変な感心の仕方をしてしまった。途中の展開で玻璃が問題を抱えているのは 決して学校内だけでは無い、という点に気付く方も多いだろうけど、事実はその上を行くとだけ申し上げておく。言っておくが単なるDVなんかではない これだけ凄まじい世界を描いた物語であるのに、割合にホイホイとラストシーンまで読めてしまったのは竹宮ゆゆこの極上のユーモアのなせる業かと 清澄がトイレの真冬の掃除道具置き場に閉じ込められて水をぶっかけられた玻璃を助け出すシーンでは助け出す清澄も助けられる玻璃もテンパリまくって ジャージの股の部分が顔に当たる様な巻き方をするわ、「便所のし尿的なものじゃなく、水道水でまだ助かった」と変な仏心に感謝するわと、読者も 苦笑しながら「いや、今それを気にする場面か?」とツッコミを入れたくなるドタバタ劇を繰り広げるのは従来の竹宮作品を読んで来られた方には お馴染みの展開ではないだろうか?しかもこのドタバタ劇が単なる瞬間芸で終わらず延々と続くので一時ではあれど、読者の頭からは玻璃の置かれた 凄惨な状況も、玻璃を助けたくても無力さが付きまとう清澄の苦悩もどこかに行ってしまうし、だからこそ、これほど惨い話であっても最後まで読めてしまう のだとも言える 凄惨ではあるけれど、本作のベースはあくまでもボーイ・ミーツ・ガールであり、清澄と玻璃の関係も基本的には「助けた・助けてもらった」の関係から 始まって、互いに一目惚れしてしまった初々しい少年少女のそれである。先輩は凄い、ヒーローみたいだ、と素直に憧れ、少しも自分に対して優しくない 世界の中で諦めきっていた自分に「戦っても良いんだ」と気付かせてくれた、と心を開いた玻璃の見せる人懐っこさは後輩キャラとして実に可愛らしく 「UFOを撃ち落とします」という言葉に始まる謎めいた部分も、それはそれで魅力的ではある。四年前にいなくなってしまい、今でもどうしているのか 分からない母親を案じた玻璃に父親が「見えないUFOが攫って行ってしまったんだ」と言ってきかせた事で、自分の思い通りにならない事は全部UFOの せいだ、と思い込む事で耐えきろうとしていた悲しい姿から脱して、「ヒーローである先輩みたいに強くなってUFOを撃ち落とす」と少しずつ能動的な 姿勢を見せ始める玻璃には良い意味でライトノベル的な成長物語としての要素が確かに感じられるのである 学校で虐める側に対し、立ち向かう姿勢を見せ始めた玻璃の姿に安堵をおぼえながら、清澄が気が付くのは直接的な暴力が振るわれていない学校での 虐めと常に厚手のタイツを履いて、夏場でも長袖の制服を脱がず、手袋をはずそうともしない玻璃の格好との矛盾である。ずぶ濡れなった玻璃を着替え させたクリーニング屋のおばちゃんの話あたりから少しずつ玻璃の体に隠された秘密が明かされて行くのだけど、玻璃の父親との直接的な遭遇で 決定的な不審を抱いた清澄と、そんな清澄の不安を裏付けるように学校に姿を現さなくなった玻璃の行動から「本物のUFO」が誰なのか、と気付いて しまい、物語は少女の成長物語から一気にサスペンス調へと舵を切る。そして上に書いた様なボロボロの姿を晒した上で迫る危機を伝えに来た玻璃に 「玻璃は、綺麗だ」と思いを打ち明け「俺たちのUFOを撃ち落としに行くぞ」と正面切って残酷な世界と戦う決意を固めて真相と対決する事に 「UFO」の真相を知った清澄は最後の戦いに臨むけれども、勝利は簡単に与えられないし、ヒーローにもなれない。そして大切な物を失う事にもなるの だけれども、圧倒的に力不足な清澄がどうやって最終的な勝者となったのか?UFOに攫われた女の子をどんな形で助け出して見せたのか?それが 一番最初に描いた本作全体を包み込む様な大きな構造に隠されているのである。恋した少女をボロボロにする残酷すぎる世界を、それでもヒーローとして クソにはさせまいと抗った少年の想いが世界中に広がり、やがては囚われていた少女の解放に至るまでの時間的なスケールの大きさはちょっと規格外 色々と異論は出るかもしれないし、見ようによっては非常に迂遠とも言えるのでお好みに合うかどうかも保証はできないが、この発想は女性作家ならでは、 という他なかった 何もかも諦めきって空の上に浮かぶ見えないUFOに囚われていた少女を、何の力も無いまま少女が憧れたヒーローの仮面を見に付け、世界をクソに するまいと戦いを挑んだ少年の物語。凄惨なまでの暴力描写と竹宮ゆゆこならではの極上のユーモアにボーイ・ミーツ・ガールや成長物語といった ライトノベル的要素をふんだんに取り入れながら、男性には思い付かないスケールの時間の流れを用いて「ヒーロー」の姿を描いてみせた一冊 エグみも甘さも爽快さも見事に調和させた作者の確かな技量が伝わってくる見事な出来栄え。丁寧で繊細で、本当に完成度の高い「ライトノベル」を 望まれる方には是非お勧めさせて頂きたい | ||||
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前作『知らない映画のサントラを聴く』で一般文芸デビューを果たした竹宮ゆゆこの最新作。 凄い。めちゃくちゃ面白い。 キャラクター小説らしい会話劇で物語は進むが、最後はマジッリアリズム的な「文学」の領域にまで作品が到達する。特に、ラスト30ページ。エンタメの面白さと驚きはそのままに、ほんとに素晴らしい「小説」が顔を出す。 ただただ、圧倒された。 | ||||
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