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キャロル
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キャロルの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.62pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全24件 21~24 2/2ページ
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映画の前に原作を読んでおきたいと思い、購入しました。 元々が英語であること、50年代に執筆されたこともあり、少し読みにくいのではと心配していました。 ところがそれは杞憂に終わりました。 とても美しい文章で、一気に読んでしまいました。 映画のキャストもいいチョイスなのではと思います。 非常に楽しみです。 ぜひ冬の間に読んでください。 おすすめです。 | ||||
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人が人を好きになる。愛したくなる。惚れ込んでしまう。 それは、男女間ではもちろんあろうが、男性同士、女性同士でも成立する純真な感情でも ある。お互い相手を独り占めにしてしまいたい。あなたは「わたしのものよ」という、愛 情のなせるわざか所有欲か、両方が混然とした強い気持ちが生じる関係がある。一時的で 線香花火のように終わってしまうのか、未来があり長続きするものなのか。読者は、胸を ときめかしながらページを繰ることになる。 時代は1952年頃。クリスマスソングが流れ、華やかな街の喧騒や、人々のざわめき がきこえてきそうなニューヨークが舞台である。 作中人物は、チェコ系の名前であり十九歳のテレーズ・ベリヴェット。デパートでおも ちゃの人形売り場に勤めている。舞台芸術家の卵でもある。彼女を愛し結婚したいと思っ ている、画家志望のリチャード、物理学を研究しているダニー。 髪や「眉もまたブロンドで、額のカーブに沿って優雅な弧を描いている」三十歳過ぎで 上流階級の女性が売り場に来る。テレーズがどこかで見たような懐かしい感覚を持ち(そ の秘密が終わり近くに明かされる)、目が合った瞬間にすべてが始まった相手、キャロル (ミセス・H・F・エアド)である。幼い娘がいるが、離婚寸前で娘をどちらが引き取る かで、夫ハージと係争中である。 テレーズは人形を買ってもらったお礼にクリスマスカードを贈る。キャロルから電話が あり二人の関係が進展していく。クリスマスにふさわしい出会いであり、若きカップルが 誕生しそうな場面である。しかし、女性同士の「愛」が育まれていくところが、この作品 のもつ「テーマ」である。 第一部は、テレーズをとりまく人間関係とキャロルとの出会いを。第二部は、テレーズ とキャロルのアメリカ北西部へのドライブ旅行を中心に、二人の人生観、肉親や夫、子供 のこと、愛についてなどを語り合う。車内、ホテル、食事のときにぶつけ合う会話に、怒 り、嫉妬、疑惑など、二人の心理的内面が披露されていく。 「音楽の和音のように、バレーの一幕のように美しい」キャロルのしぐさに「愛」を深 く感じてしまうテレーズ。リチャードから、考え直すようにと手紙を何通も受け取るが、 「あなたはなにも見えてないのよ」と心は離れていく。また、テレーズがキャロル宛に書 いたが(投函しなかった)、後半で大きな問題になっていく手紙もある。 洒落た大人の会話は、ユーモアとウイットが豊富である。例えば、「あなたの帽子から はあと何匹ウサギが出てくるの?」「お酒がいらないほど幸せってことかしら」など、キ ャロルの「元交際相手」だったアビーとの女性三角関係の嫉妬心を『勝ち目がない』とか 『負け犬』と表現していることなど。 読者は、会話の声音を、人物の感情や情景を理解しながら再現するのも面白いだろう。 ニューヨークに詳しい読者は街並みが浮かんでくるだろう。当時のアメリカン・ファッシ ョン、食事、お酒のメニュー、タバコの銘柄や匂い。音楽は、『クリスマスキャロル』や ガーシュインの『エンブレイサブル・ユー』、1937年映画『街は春風』の主題歌 『イージー・リビング』(ビリーホリデイが歌っているのかも、また、歌詞はテレーズの キャロルへの「ラヴ・レター」になっている)などである。バックグラウンドミュージ ックも物語に色彩をそえている。 「人を愛するとは、愛ってなんなの、なぜ愛は終わり、あるいは続くのかしら」。テレ ーズの疑問に正解はあるのだろうか。チャールズ・ディケンズ『クリスマス・キャロル』 もぜひ併読を。「オールド・ファションド」を飲みながら、「ムール貝とスカロッピーニ」 を味わい、デザートには「ベイクトアラスカ」。一度は楽しみたい世界だ。(誰と?) 訳者は柿沼瑛子である。作品の女性心理を余すことなく表現し、女性の胸に熱く響く名 訳である。「あとがき」は著者をしるうえで参考になる。 | ||||
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これほど素晴らしい恋愛小説を読むのは久々だった。 ハイスミスはサスペンス作家というレッテルを貼られているが、そうではなく、この作品はスレート過ぎるほどストレートな恋愛小説だ。 間違いなくハイスミスの最高傑作。 文章に込められた熱量が違う。 そして、柿沼瑛子氏の訳業においても最高傑作。 ヒロインのキャロルは魅力的極まりなく、映画版でケイト・ブランシェットが演じるのを観るのが待ち切れない。 どんなセクシュアリティの人にも、いや、万人に読んで欲しい小説。 | ||||
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パトリシア・ハイスミス唯一の未翻訳小説であった『キャロル』が映画化のタイミングで刊行された。グレアム・グリーンが“不安の詩人”と称したハイスミス作品の中では異色とも思える恋愛小説である。主人公テレーズの19歳から21歳までの青春の書であり、マッカーシズムの吹き荒れる50年代初頭において同性愛という素材に真っ向から挑んだ先進的な書でもある。離婚訴訟中の人妻キャロルと、ステージデザイナー志望の少女テレーズが磁石のように惹かれ合い、結ばれ、やがて抑圧に苦しめられていく。テレーズの主観によって語られるキャロルは美しく寂しげで、どこか儚げな女性。またテレーズは実存の不安を抱えた揺らぎのある少女。ハイスミス独特の不安と緊張は本書でも健在で甘いだけのロマンス小説ではない。実在した女性を一目見て惹きつけられた作者自身の実感と、素直すぎるほどの欲望の吐露と、手に入らないからこそ永遠に冷めない熱にため息が出る。映画版は2016年2月に日本公開であるが、ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラのキャスティングが絶妙。こちらも楽しみである。 | ||||
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