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(短編集)
閉塞回路
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閉塞回路の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点5.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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アリバイ・トリックは意外性が減るのであまりお好きではないと述べられながらも編集者の勧めにより日本推理文壇の実力派、海渡英祐が選りすぐりの自信作に懇切な解説を付して編纂した秀逸なアリバイ・テーマ短編集です。アリバイとひと口に言ってもいろんなパターンと切り口で創作が出来る物なのだなと本書を読んで改めて感じましたし、とにかく小説として読んで面白く読者を決して飽きさせないストーリーテリングの巧みさにいたく感心しましたね。また6つの作品の最後に付けられた自作NOTEのエッセイはどれも興味深く著者のミステリーに対する知識の深さや愛情も感ぜられてとても勉強になりましたね。 『帰らざる彼』過去に海外転勤となり結婚するはずだった恋人を奪った男と久々に再会した私は彼からゴルフ・コンペに誘われるが、そこで何とも凶悪な殺人事件に遭遇してしまう。珍しいゴルフを題材にしたミステリーで競技やルールが本筋に絡んでいないのは残念ですが逆転のシナリオと小トリックが素晴らしく殊更に正義を振りかざさない人生の負け組の主人公の複雑な心情が哀切ですね。『殺人超能力』昔から虐められた相手を殺す夢を見ると翌日にはまさにその通りの現実となっていると言う恐るべき「殺人超能力」の話をしに男が警察署を訪れる。この怪奇小説趣味風の導入部は誠に魅力的な趣向で心を奪われますね。トリックと事件の真相はがっくりとする程に呆気ないですが、でもサービス精神旺盛な著者は最後に真犯人の不気味な末路を描いて再び恐怖を盛り返してくれます。『偽りの再会』芸能人の懐かしい人との再会を演出する仕事に携わる男が今回女優から命の恩人を見つけてくれと逆にリクエストされ何とか手配に成功するが、その後女優のマネージャーが殺される事件が起きる。題名の意味をよく考えれば真相は予想できたかも知れませんが、中々に上手く仕組まれた筋書きと盲点を突く凝った難解なアリバイ・トリックが楽しめる秀作でしたね。『紅の襞』懸賞推理小説の佳作に選ばれた作品「紅の襞」は実は現実の事件をモデルに書かれた物で、小説の中で殺人犯と名指しされた本人が雑誌社を名誉毀損で訴えると連絡して来る。やがて起きる新たな殺人と過去の殺人事件の真相は?中々に入り組んだ複雑なシナリオと山奥にある辺鄙な村にいた容疑者の難攻不落に思えるアリバイ・トリックの鮮やかさ、そして無情な犯行動機の空恐ろしさと三拍子揃った傑作ですね。『「わたくし」は犯人』愛する男を横取りしようとする女を殺す計画をノートに記した女の入念なアリバイ工作が冒頭から挿入され、やがて現実に殺人事件が起きて警察の捜査が開始される。こんなに堂々と犯行の詳細が書かれるとこれは虚構ではないか?と疑わしくなりますが、やはり犯行トリックは別にあって鉄壁のアリバイに警察もお手上げ状態になるのですね。これも種明かしされて見れば単純その物なのですが、著者の構築するトリックはどれもが無理なく実行可能なリアリティーがあるなと感じますね。本作は全部が嘘でなく部分的に騙しを入れたその匙加減が絶妙な逸品だと思いましたね。『閉塞回路』昨晩泥酔した男が目覚めると見知らぬ家で傍らには昔知っていた女がネクタイで絞殺されていた。これは亡き妻の悪夢の影響で錯乱した末の無意識な行為なのだろうか?苦悩する男が現在の恋人を訪ねると何と彼女も無惨にも殺されていたのだ。次々に追い詰められ、がんじがらめの閉塞回路に捕えられた男が必死で活路を見出そうとして辿り着いた真相とは?特異な事情により警察の立場からは一切描かれないある種の悪党小説の趣向で何時もと違って常識に縛られない自由奔放さが新鮮な味わいですね。やや悪党に運命の女神が微笑み過ぎる嫌いはありますし、どうなるのか先が読めない唐突なラストは中途半端ではありますが、まあ偶にはこういう型破りなストーリーも良いかなと思いましたね。 | ||||
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