(アンソロジー)

大下宇陀児 楠田匡介: ミステリー・レガシー



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初公開日(参考)2017年05月
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大下宇陀児 楠田匡介: ミステリー・レガシー (光文社文庫)

2017年05月11日 大下宇陀児 楠田匡介: ミステリー・レガシー (光文社文庫)

ミステリー文学資料館は、日本の探偵・推理小説の書籍や雑誌を収集保存し、研究者や一般読者の利用に供するために一九九九年四月に開館した。“遺産”ともいえるその膨大なコレクションより、戦前から人気作家として活躍した大下宇陀児と、トリックに執着し続けた楠田匡介のレアな長編二作を選りすぐり、さらには二人の共作も加えた傑作アンソロジー!!(「BOOK」データベースより)




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No.3:
(4pt)

趣の異なる作風が一冊で楽しめるばかりかある種の発見も用意された充実のオリジナル文庫

まず、表紙のエゴン・シーレの絵が素晴らしい。この初老の男の不自然な姿勢、瞑目した表情、交差した手のピアニストのような或いは武骨な佇まいが、まさに古き佳き時代の探偵小説を彷彿とさせるではないか!ここには、異なる個性を持った著者の長編が収録されている。まずは、楠田匡介の1949年に発表された「模型マネキン人形殺人事件」から。なかなかに古式豊かな正統派探偵小説である。何をもって正統派というか?まず、物語の発端に殺人事件が起きる。ついで、発見された指紋が人形のものであり!その犯人は当然の如く人形嗜好症者ピグマリオニストであった。現場は密室を構成し、さらには、シリーズ探偵である田名網幸策の登場と相成る。被害者の最期の言葉KANDAが東北地方では「片目」のことであること、「瞳の涼し/蒲郡の降りし女かな」(椰)という句に隠された名前のこと等…事上げしていけば切りがない。そして、最後に登場人物全員が集合しての謎解き、と実に至れり尽くせり、まさに探偵小説のフルコースが楽しめる趣向だ。しかし、本作の最も艶然とさせられる場面は、その人形と瓜二つの女性の登場であろう。しかも、彼女は美貌ばかりか名探偵をも凌駕する才知の所有者でもあった!
次に、大下宇陀児の1958年作「自殺を買った男」。「週刊大衆」に連載された全20章に分れた読みやすい探偵小説だ。単行本刊行とほぼ同時に映画化されているので、あらかじめ映画化を想定したものだったのだろう。しかし、だからと言って、本作が映画向きのセンセーショナルなものだったり、ストーリーがシンプルだったりということはない。むしろ、最初は退屈なくらいだ。第6章に当る「自殺の値段」に至るまでは、もちろん重要な布石があるとはいえ、ヤクザな主人公の厭世観にちっともシンパシーをもてないので、まるで戦後の中間小説を読まされているような感じなのだ。ところが、この奇妙なタイトルの由来がだんだんわかってくる辺りから次々と謎が仕掛けられ、その謎が謎を呼び…という探偵小説の醍醐味が転がりだす。大下宇陀児は「ロマンチック・リアリズム」を提唱した人でもあり、本作でも極日常的な地平から探偵小説的ロマンへと飛翔させる手際は実に周到である。それから、これは著者の意図的な方法であるが、探偵小説といえども、名探偵は登場させない。また警察小説とも違う。だから、素人たちが知恵を絞って犯人を探りあてていくのだ。ご都合主義が皆無とも言えないが、われわれ読者を納得させるだけのリアリズムは発揮されていると思う。物語は主人公の一人称で語られていくが、このヤクザな男が実に甲斐甲斐しい恋人に助けられながら成長していくビルドゥングスロマーンとなっているのも本作にさらなる魅力を与えている。以上のように、趣の異なる作風が一冊で楽しめるという塩梅になっている。
大下宇陀児 楠田匡介: ミステリー・レガシー (光文社文庫)Amazon書評・レビュー:大下宇陀児 楠田匡介: ミステリー・レガシー (光文社文庫)より
4334774733
No.2:
(5pt)

大下宇陀児「自殺を売った男」(1958)と楠田匡介「模型人形殺人事件」(1949)

ミステリー・レガシーの第一巻になるのだろうか、大下宇陀児と楠田匡介の巻である。大下の長編「自殺を売った男」(1958)、楠田の長編「模型人形殺人事件」(1949)、共作短編「執念」、楠田の短いエッセイから成る。
概略
●「自殺を売った男」は一応、サスペンス長編か。素晴らしい美容師の恋人がいるのに、麻薬中毒と賭博から抜けられない主人公が、自殺を試みて、通りがかりの社長令嬢とその婚約者に助けられてしまい、その縁で、社長の会社に雇われることになる。しかし、怪しい男から、自殺偽装のために失踪するという仕事を60万で請け負ってしまい、請負金で恋人のために田舎の美容院を買ってやり、その田舎に隠れる。ところが、一月半経つと、麻薬が尽きてしまい、麻薬の入手のため、こっそり東京に戻ってくる。その結果・・・である。
●「模型人形殺人事件」は一応本格長編か。彫刻家がアトリエで射殺され、そばには美しい衣裳をつけたマネキン人形が、死体を見つめて立っていた。部屋は密室になっていて・・である。
私的感想
●「模型人形殺人事件」は戦争が関連するミステリーだが、「自殺を売った男」には戦争は一切出てこない。9年の差ゆえだろう。
●「自殺を売った男」の検討
一、「発端」・・発端は上述のごとくで、まずまず面白いが、ちょっとおとなしい。
二、「展開」・・展開は、次々と意外な事実が出てきて、サスペンスフルで、とても面白い。(読者にとって)無意味な偽装がなく、事実でぐいぐい押すのもよい。
三、「結末」・・結末、真相、動機には、ちょっと無理に感じられる部分もあるが、面白い。小説的説得力は十分ある。
四、「人物」・・本書では女性がいい。特に主人公の恋人のユキ子は、自立した職業婦人であり、性的魅力もあり、主人公がいなくても生きていける女でありながら、主人公に尽くす女で、主人公のために探偵役までやってくれる。社長令嬢のほうは・・・。
●「模型人形殺人事件」の検討
一「謎の提示」・・上述のように魅力的である。
二.「展開」・・「人形嗜好症者」が登場し、エロチックな色彩もあり、楽しい。
三、「真相・トリック」・・密室トリックはちょっと弱いが、××××場所トリックは面白い。真相は・・・??
四、「人物」・・人形が魅力的である。
私的結論
●「自殺を売った男」も、「模型人形殺人事件」も、十分面白かった。
大下宇陀児 楠田匡介: ミステリー・レガシー (光文社文庫)Amazon書評・レビュー:大下宇陀児 楠田匡介: ミステリー・レガシー (光文社文庫)より
4334774733
No.1:
(3pt)

時代色を気にしない人向け

腰巻には「未来へ残したい」「蔵出し大傑作」「ファン垂涎の逸品」と煽り文句が並んでいるものの、それほどの内容とは思えなかった。
大下宇陀児の『自殺を売った男』は、巻末の解説文中に引用されている著者の言葉の通り、謎解きの本格推理を狙ったものではない。
麻薬中毒から抜け出せず、人生に嫌気が差した主人公は、「自殺しようと思っているなら、その自殺を売ってくれ」と声をかけられ、不可解な事件に巻き込まれる。
事件が解決したときには、主人公は麻薬中毒と自殺念慮から解放され、文字通り「自殺を売った男」になっていた。
そうした、いわゆる「奇妙な味」を狙った作品であり、その意味では成功している。
かたや『模型人形殺人事件』は密室での怪事件を扱っているが、用紙事情の良くなかった戦後混乱期の刊行であったためか、謎解きの本格推理に仕立てるには分量不足で、やや物足りない。
むしろ謎解きよりも、戦後の世相の描き方が面白い。
新憲法では人権が尊重されるようになったので、戦前のように怪しいというだけで逮捕し、厳しく尋問して泥を吐かせることができなくなった、これでは捜査がやりにくい、思想的な背景のある事件の取り締まりが難しい、と警察関係者が嘆いている。
そういう時代設定なのだ。時代色を楽しむべき一冊。
大下宇陀児 楠田匡介: ミステリー・レガシー (光文社文庫)Amazon書評・レビュー:大下宇陀児 楠田匡介: ミステリー・レガシー (光文社文庫)より
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