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森下雨村 小酒井不木: ミステリー・レガシー
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ミステリー文学資料館編纂による〝ミステリー・レガシー〟シリーズも三冊目。 河出文庫の探偵・怪奇・幻想シリーズが最初の4冊あたりまでは読み難いものをしっかり拾って優秀だったのに、 甲賀三郎『蟇屋敷の殺人』から初出誌or作者生前著書を底本にせず(旧テキストが必ずしもベストではない例外もあるが)、 しかも古書で簡単に読める作品ばかりを連発するので期待する気持がすっかり失せてしまった。 〝ミステリー・レガシー〟シリーズも楠田匡介「模型人形殺人事件」を復刻した時は(作品の出来うんぬんは置いといて)、 エキサイティングだったけれど、徐々に河出同様レアものをセレクトするテンションが落ちてきているようで心許ない。 と従し事はさておき本書の収録作家は江戸川乱歩の先輩にあたるこの二人、森下雨村と小酒井不木。 小酒井不木は幸いにして古書でも読むのが困難な作品はなく、新発見された小説といった噂も聞かないから、 今回収録された珠玉の不健全派変格中短篇5作セレクトについては無難の線。まあこんなものだろう。 擦れた探偵小説読者がわざわざ本書を買うとしたらテキストの底本はどこから採っているかという点が鍵になる。 「按摩」「虚実の証拠」「恋愛曲線」は大正15年刊/春陽堂創作探偵小説集第五巻『恋愛曲線』から、 短めの長篇「恋魔怪曲」は昭和4年刊/改造社『小酒井不木全集第四巻』から、 「闘争」はなぜか単行本からではなく初出誌「新青年」から。 あとエッセイ2編「科学的研究と探偵小説」が「新青年」、「江戸川氏と私」が「大衆文芸」といずれも初出誌が底本。 底本が初刊本・初出誌、統一してないのはちゃんと意味が?本職よりも毎日Twitterをするのに忙しい編者と違い、 本書担当の山前譲氏が根拠があって底本を選んだのだと良い解釈をしたいところだが。 もし〝ベスト・オブ・小酒井不木〟な一冊を薦めるなら戦前の古書で旧仮名遣いだし分厚いものになってしまうが、 竹中英太郎が単行本用に挿絵を描いた『現代大衆文学全集 第七巻 小酒井不木集』は所有する魅力がある。 探せば見つかる本なので、函入りのなるべく状態のいいものを1,500円以下の出費で贖ってほしい。 さて、本書メインの森下雨村。「新青年」での不木追悼エッセイ「小酒井氏の思い出」も併録。 「丹那殺人事件」は11年前に発売され今でも流通している『森下雨村探偵小説選Ⅰ』に既に収録済みの長篇。 雨村なりに謎解きものとして頑張ったのだろうけど、クロフツ程の完成度は望んじゃいけません。 通販サイトにオーダーした後で本書での収録がこれだと知って「ああ、買わなきゃよかった・・・」と嘆いたものの、 実際現物に目を通してみると、この文庫の「丹那殺人事件」は昭和10年の柳香書院/初刊本が底本らしい。 論創ミステリ叢書は基本的に特記無い限り、初出誌をテキストに使用していた筈だ。 (最近方針が変わっていなければいいが) であれば『森下雨村探偵小説選Ⅰ』の「丹那殺人事件」テキストは初出誌「週刊朝日」からの筈。 本書光文社文庫と論創ミステリ叢書、2つのテキストをわかりやすい例でどう違うか比較してみるとこうなる。 ○本書183頁 「大阪へ」の章は、「莫迦に早いじゃありませんか」の会話から始まっている。 ●『森下雨村探偵小説選Ⅰ』368頁 「莫迦に早いじゃありませんか」の前に編集者から「最後の五分 いよいよ犯人の正体が判りかけて来ました。犯人捜しは本号から読まれても判ります」という煽り文が挿入されている。 初出連載時には犯人捜し懸賞募集が行われたので、文中にこういう箇所が存在する訳だ。 ○本書220頁 「後は読者諸君の御想像に委しておくがいいだろう___。」 ●『森下雨村探偵小説選Ⅰ』399頁 「後は読者諸君の御想像に委しておくとしよう。」 ということで今回の文庫版「丹那殺人事件」は『森下雨村探偵小説選Ⅰ』とは別テキストだと見てよさそうなので、 「柳香書院の初刊本を持っているからいいや」というひねくれ者でなければ買って損はなし。ひとまず一見落着。 もし「丹那殺人事件」が論創ミステリ叢書と同テキストだったら本書収録作は目新しさがないから★1つとしたが、 そうではなく一応買う価値はあるので★5つにした。新規読者が増えるといいね。 | ||||
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