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王国
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王国の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.67pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全10件 1~10 1/1ページ
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中村文則さんの『掏摸』の後編ともいえる『王国』読み終えた。 評者は、この二部作を、権力者たちのために働く庶民の知らない闇の組織があり、その組織のなかに殺人なども行う反社会性下部組織があるという物語として読んできました。 『掏摸』では、ストイックな青年の特殊技能「スリのテクニュク」がメインテーマとしてストーリーテリングされていて、その青年が闇の組織と対峙する緊迫感が面白く読ませてくれました。 が、続篇ともいえる本書『王国』では、スパイ小説でいうところの「ハニートラップ」を仕事とする養護施設出身の二十代の美人女性が主人公である。 「スリ」という特殊な才能と比べると、やはり「容姿」を駆使して行動する「ハニートラップ」のほうが見劣りする物語になってしまいます。 木崎という反社会組織のリーダーが度々宗教やギリシャ哲学などを語らせることにもなんだか違和感を覚えてしまいました。 たとえこの木崎という男が大学出のインテだったとしても、教養もないこの養護施設出身の女性に、こんな難しい話を長々と語りかけることが不自然に思えてしまったのです。 “われわれの空想の物語は現実のなかから生み出される”というハンス・アンデルセンの言葉もあるから、評者は、このような闇の世界の存在を否定はしません(事実それに似たような組織があると思います)。 が、デティールにもリアリティを感じさせない物語には「あざとさ」を感じてしまうのです。 たとえそれが文学性豊かな文章で描写(この物語では月にたいして)で彩られとしていてもです。 まぁ、作り物の小説なのだから、読んだひとそれぞれ楽しめればいいのですが・・・。 残念ながら評者にとって本作『王国』は、『掏摸』と比べて見劣りする作品でした。 <追記> 評者が先に読んだフレデリック・フォーサイスの『アウトサイダー』の「はじめに」でフォーサイスが述べていた言葉を地でいくような中村文則さんだから、『自由思考』のようなページ数の多いものでなくてもよいから辛口のエッセイ集の二冊目を出してほしいとお願いします。 フォーサイスは、下の「」内のように述べていました。 「七十六歳になったわたしは、いまでも自分は部分的にはジャーナリストだと思っている。ジャーナリストであるために必要不可欠の二つの資質を持っているからだ。それはあくなき好奇心と、徹底的な懐疑的態度だ。何かの理由など別に知りたくもないというジャーナリストや、人の話をなんでも鵜呑みにするジャーナリストがいるとしたら、それは無能なジャーナリストだ。 ジャーナリストは絶対支配階級(エスタブリッシュメント)の一員になるべきではない。誘惑がどれほど強くてもだ。われわれの仕事は権力を監視することであり、そこに加わることではない。人々がますます権力と金と名誉の神に取り憑かれたように仕えるようになっている世界において、ジャーナリストや作家はそこから距離をとらなければならない。手すりにとまっている鳥のように、世界で起きていることを見つめ、心にとめ、精査し、解説する。けっして当事者の仲間になってはいけない。アウトサイダーでいなければならないのだ。(『アウトサイダー』P11~12)」 | ||||
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Vシネのネタと言えばネタ。 ですが、さらっと読めるし退屈しないですよ。 そこはプロのしょうせつになってると思います。 月がどうしたこうしたもあまり関係ない。 それを意識して書いている。のであろうが、そこに読者を誘導するほどの構造も文章的構造も 残念ながらまだ無いが、そこにたどり着きたいと願い、書く著者に敬意を表する。 | ||||
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う~ん、すっきりしないな~ 一番、すっきりしないのが、最後に見逃す所。前作で木崎は一度、決めた事は覆さないと言っていた。だとするなら、最初から助けると決めていた?なぜ?生に対する執着に目を見張るものがあったから?残念だけど、作中でそれを感じる事はなかった。ただ、機転が利く女。そんな印象。 前作が良すぎたせいかもしれないけど、突出したものがなかった。それはキャラクターを含めて。勿論、木崎は規格外ではあるけど、それにしても、矢田。今回、木崎に対抗しうる人物の登場に秘かに期待した。でも、期待は裏切られた。平凡と見せかけて、最後まで平凡だったし。実は生きている可能性を匂わせているが、今さらだ。 今回の主人公は、なぜだか好きになれない。それによく分からない。作中から冷淡な印象を受ける。幼少時代のエピソードからは、性質は悪を感じる。そんな人間が他人の子供を、あそこまで大事にするだろうか?まったく理解できない。 自分はもう少し、エンタメ性が入ってる方が好きなんだと再認識しました。木崎と矢田、どっちが凄いの的なテーマが全く変わってしまうから、それはないだろうけど。 | ||||
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姉妹作とされる「掏摸」に続いて購入。 「掏摸」同様に木崎が登場する点、前作におけるいわゆる「誤差」 が生じたと思わせる点、運命をテーマにしている点は共通。 無意識に読み進めてしまう構成も個人的に好み。 ただ今作はストーリーがやたら都合良く(好転するわけではない)進み そこに特別な理由もないためフィクション感をやや強く感じた。当然フィクション ではあるのだが、1つの世界の中での整合性がもう少し欲しく感じた。 また前作では主人公の特技が「誤差」を生じるきっかけとなったのに対し、 本作の主人公は結局、生への執着がダイレクトに「誤差」に繋がった点も やや消化不良。姉妹編と銘打つ必要は無かったように思う。 | ||||
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「掏摸」の兄妹本との事で購入。 他のレビューにもあるが、ストーリーの構成はほぼ前作と同じだが、全体的に内容を薄くした印象である。 何となく読んでスッキリしない、前回と比較してなぜ木崎が主人公を2度に渡り「機嫌が良い」という理由だけで逃がしたのか。 物語に嫌というほど出てくる月の描写も、この物語に何の意味をもたらしているのか分からない。 前回の「掏摸」の結末は結局一瞬だけしか登場しないが、それを知りたいのがこの本を読んだ目的の半分を占めているため、 前作を読んでいる人にとっては読む動機にはなると思う。 | ||||
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ドロドロの闇社会を女主人公が渡り歩くというこの手の作品が好きな人なら 文章も読みやすく非常に面白いと思います。 ですが、私が読んでいるのがvineプログラム用の未校正のゲラ本だからでしょうか 何か消化不良のまま終わっている感が拭えないです。 「買ってもう一度最初から読め」という事・・・かな? | ||||
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180ページ弱と薄い本で、文字もそこそこ大きめの為に読み始めれば 数時間で一気に読破が出来ます。 文体も特に癖がなく、読みやすいです。 が、結末が・・・。 はっきりとした結末が好きな私には、なんだか引っかかる終わり方でした。 未校正の物を受け取ったので、実際に刊行された分は少し加筆されたり するのでしょうか。 結末だけでなく、本文中の謎というか、解決されていないままの部分が 多く感じました。 ページ数の少なさといい、定価で購入するには高い本です。 気軽に読める、という点においてはいいですけれど。 | ||||
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なぜ「王国」なんだろう?王様も女王もいない。 矢田と木崎、彼らは一体何者なんだろう? なぜ「月」が綺麗なんだろう?「いつもそこには月があった」?、新月の時にはどうしてたんだろう?(笑) なんて細かいことを気にする暇もなく、ストーリーは素早く展開して行きます。 どちらかというとあまり緩急がないので、そのスピードに慣れてしまうともう少し早い劇的な展開を望んでしまう自分がいます。 基本的に、「いい女が悪いことしてたら、もっと悪い連中に絡まれちゃいました」...って話です。 そんな娘、身近にいませんか? 綺麗なんだけど愛想が悪くて誰も近寄らない、あの娘の相手するのは大変だぞ、って雰囲気の女性。持って生まれたモノなんだろうけど、誰かがいつもそばにいて一緒に笑って暮らさなくちゃ、不幸になってしまう... 主人公のユリカはそんな雰囲気なんだろうな、って思いました。 いや〜、うちの娘も可愛いけど、絶世の美女ってほどじゃなくて良かったなぁ。親としてはマジでそう思う。 | ||||
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これまでの中村文則は、自作の登場人物を通して、さまざまな形態の自己破壊衝動を追い続けてきた。 執拗かつ徹底的なその姿勢が、中村文則の小説世界を作り上げてきたと言っても過言ではない。 前作「掏摸」も、そのような「枠組み」の中で書き上げられた小説だった。 だが、本作「王国」は、連綿と続いてきた旧来の枠組みを打ち破る、これまでには見られなかった新しい力が小説内部から沸き起こって来ているような印象を受けた。 これまで一部の作品に見られたような、自己完結的な自己破壊はここにはない。 悪事を生業とする犯罪組織と関わり合いながらも、この小説の中での語り手「ユリカ」は、しぶとく生き延びようとする強靭な精神性を備えている。 そして彼女の視線は常に外へと向けられ、社会との連帯を求めている。 その「健全な」姿勢は本作品を締めくくる最終盤のセンテンスを見ても明らかだ。 この作品は、中村文則の小説世界の、ひとつの転換点を示したものであるのかもしれない。 | ||||
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主人公は美しく若い女性。 彼女は、ある人たちの弱みを作る仕事を請け負っていた。 たとえば、ある人を誘惑して、薬で眠らせ、 あたかも売春婦と性行為に及んだような写真や動画を録り 弱みをつくる、ということ。 そんな彼女が、自分でも気付かないうちにある罠にはまり、 とてつもない悪に出会う。 そしてそこでは自分の決して幸せではない過去と向き合わなくてはいけなかった… というような内容の話でした。 読み終わっても、物語の全容は明らかにはならず、 謎が残されたままです。そこが魅力的でもあり、消化不良でもあり… 性描写のあたりは、正直気分が悪くなりました。 主人公のキャラクター(若くて美しく、頭がよくて孤独…)や、 正体不明な悪や、月が要所要所に出てくるところなどから 『1Q84』の青豆を思い浮かべたのは私だけでしょうか。 | ||||
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