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キリンヤガ
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キリンヤガの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.26pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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絶賛一途の傑作という評価が多いし、この作品の上手さ、設定、展開、技術、どれも素晴らしいので傑作という評価に対して、技術的に異を唱えるつもりはないのだが、この作品を礼賛すると、どうしても私には反知性主義に加担することになると思えるので、好きになれず、また良い評価をすることができない作品だった。 正しく言えば、これほどSFを読んで反感を掻き立てられた作品もなかった。 なんというか、現実の世界で、経典に記載のない技術に基づく医療を拒否するとか、それと同一の意識構造、宗教にしろ思想にしろ、望むと望まないとにかかわらず、その時に生きている現実の時間・空間の状況を無視して、現実の状況を勘案しながらどのように信条と調和させていくのかという葛藤を避け、動物園のような、ひきこもりのような、現実との干渉を避けた隔離を自ら選んだだけの現実逃避(それも自分ひとりなら全く問題ないが、部族単位を強制しての自主的なアパルトヘイトのようなもの)としか思えなかった。 しかもそうした宇宙空間に自ら好んで人類から自らを隔離した別天地でも発生した独自の知能を抑圧し、その少女は自殺。 たんなる原始社会の持続の強制で、明治時代の日本人がこの社会を見たら、江戸時代に自主的に進歩を拒絶した鎖国のアナロジーを見るのではないか。 著者は、原理主義的な宗教を揶揄するつもりでこれを書いたのかもしれないが、あるいは日本人である私は鎖国時代の強烈なアンチテーゼとして読んだが、それならば著者の意図は十分に(あるいは著者の意図と反対に)達成され、この作品は「技術的には素晴らしいのだけれども、読後感はアンチテーゼの傑作の域を超えて著者への反感が醸成された」レベルの達成度で、以後二度と著者の本は読んでいない。 所詮作り事、絵空事のことで、こうしたマイナスの評価が、歌舞伎の悪役に対して、観客の武士が切りかかっていったという「どれだけ巧みに現実を模倣したか」を褒め称える神話があるし、そうした意味での著者の技術は素晴らしいのだが、…それでもなにかが異なっているし間違っている、という違和感があった。 それは1990年代の日本の仮想戦記に対して思った反感と違和感と似ており「その現実の根幹に触れると、戦後の体制で信条の自由があるから派生した文化状況そのものの基盤を覆すものなのではないか」という、その時は気づかなかったが、それに似た反近代の、それも間違いなく敗北と現実拒否にもとづく想像力の産物に対する反感であったと気づいたのはだいぶ後の事でしたが…。 | ||||
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