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キリンヤガ



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【この小説が収録されている参考書籍】
キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)

キリンヤガの評価: 4.26/5点 レビュー 19件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.26pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全15件 1~15 1/1ページ
No.15:
(5pt)

主人公の造形がとてもよい

人造のユートピアを主人公の祈祷師コリバが何とか維持、守ろうと奮闘するのが主筋。
このコリバ、現実世界に例えるなら
インテリジェントデザイン論をゴリ押しする宗教右派
伝統に固執する教条主義者
論戦に勝つために詭弁を弄するを厭わないマキャヴェリスト
といったすさまじいキャラクターだ。
どれも私が(現実では)大嫌いな属性である、にも関わらず私はこのキャラを好きになってしまった。
これぞこの小説の肝であり魅力だ。
彼とサブキャラクターが織り成す一つ一つの短編それ自体もシンプルに面白い。
既に高い評価を得ているが、もっとレビューが付いてよい作品。
SF要素は単なる舞台装置としてにとどまる作品なのでそこは注意。
キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)より
415011272X
No.14:
(5pt)

民主主義や男女平等に疑問を感じた時、自給自足を考えた時に読む本

欧米先進国的な生活に嫌気がさした欧米の教育を受けたインテリが協力者と共に伝統的な暮らしを復活させようとして奮闘するが、伝統的な暮らしが崩壊し、再び欧米先進国的な生活が蔓延して挫折するまでの話。
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415011272X
No.13:
(4pt)

大変面白く、やや残念な作品

ある種の思考実験的な作品です。 舞台背景はSFですが所謂SFではありません。

各エピソードはそれぞれに個別のテーマがあり、どれも面白いです。
最終的には「当然のように」老人(未開文明)は西洋文明に敗れることになります。
無知蒙昧故に成り立っていた未開社会が「彼らの意思で」崩壊していく様こそ
この作品のグランドテーマであり、ハイライトです。

それだけに主人公?である老人が西洋文明にどっぷり漬かって博士号を取得するほどのインテリであるにも
かかわらず何故未開文明の維持に頑なに固執するのか? この背景を描いてないのが非常に残念。
彼を突き動かす原動力、衝動の因がわからないと彼の頑迷さがなおさら謎でモヤモヤします。
この辺が描かれていればパーフェクトと言える出来だったと考え、★4つとしました。

西洋文明に漬かりながら未開社会にこだわる老人と、未開社会故に先進文明に無心に飛びつく部族。
一見すると好対照にも見えますが実はそうではない。 部族人は片方しか知らないため比較対象がありませんが
老人はどちらにも精通しているため比較検討した上?で未開社会をあえて選んでいるワケです。
彼の価値観の大元がわかればもう少しこの壮大なテーマを楽しめたと思います。
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No.12:
(5pt)

ユートピアはディストピア?

未来の事を描きながらも、歴史について、今自分達が生きている世界について、十二分に考えさせられる本でした。

産業革命がヨーロッパで起こり、文明という怪物が世界中に植民地をつくる中で、支配する者と支配される者が生まれる。支配される者は支配する者を憎みつつも、彼らの享受する富や利便性や華やかさに魅了される。そして自分達の夢や希望が、自分達を支配する人達と同じ生活を営むことになった時、民族は自分達のアイデンティティを失い、この物語の主人公が言うところの偽物のヨーロッパ人に堕落してしまう。

何だか日本の歴史を見ているようでもあります(笑)

主人公は絶滅に瀕したアフリカの種族、キクユ族の一員であり、ヨーロッパの教育を受けた知識人です。彼は仲間達とともに地球を離れ、キリンヤガと名づけられた小惑星において、民族の伝統と宗教に守られたユートピアを築こうと奮闘するのですが。。。

ここから先は実際に読んでいただければと思います。

この小説の素晴らしいところは、一つ一つの章が独立した短編となっていて読み進めやすいこと。でも、各々のエピソードが関連し合っていて、全体として一つの物語を構成していることです。

『ユートピアはディストピア』としたのは、僕なりの解釈であり、それは読み返す毎に変わる印象かもしれません。

このレビューを読んで興味を持った方は是非手に取って頂けたらと。。。きっと各人が各人の考えを深めるきっかけになるんじゃないかと思います。

こういう小説を読んで仲間達と語り合えたら、本当にいい酒が飲めるのになあ。

夢かな。
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No.11:
(4pt)

おすすめを聞かれると

人に趣味を聞かれて読書と答えると、相手も本を読む人だとたいていおすすめを聞かれると思うのですが、そんなとき相手がSFを読まない人でもすすめることができる内容です。といってもこのレビューをSFを読まない人が見ているかどうか…。
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No.10:
(5pt)

ユートピアは 「どこにも無い場所」という意味

第2エピソードの「空にふれた少女」を読んで不覚にも涙してしまった。もともと独立した短編だったので、厚くて高いのでまずはお試しにこの章を立ち読みででも読んで買うかどうか決めてもいいと思いますが、本屋で泣いたりしたらかっこ悪いですね。
 全体の半分くらいまで読み進めたところで、暗い気持ちになって、最後の「古き神々の死すとき」はワーグナーの「神々の黄昏」のような荘厳さを感じました。

 ユートピアは「どこにも無い場所」という意味だと 聴いたことがありますが、どこにも無い場所を求める物語は現実の社会の鏡として大変興味深いですね。(逆ユートピア小説も同じだと思います)
 そういう点SFという形式は大変都合が良いのでしょう、(逆)ユートピア小説としては「1984」に並ぶものと思いました。

 なお、この小説を書くに当たっての2つの条件が、オーソンスコットカード編集者から作者に出されたそうです。それは 「小惑星を借り受けた人がユートピアを作れること、いつでも出て行きたいときに宙港に行けば出て行けること」「物語は内部のものによって語られること」だそうです。そこからこれだけの小説ができるのですから本当に大したものです。

 we need perpetual change!
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No.9:
(5pt)

寓話。純文学要素が強い。大傑作。連作短編集です。

現代でもある、昔ながらの伝統を守る森の少数民族の文明化を取り上げた寓話集。
都市化の波にさらされた少数民族の末裔達が、敢えて、現代の快適な生活を捨て、科学のない世界(キリンヤガ)を再構築するという極めて面白い設定となっている。
文明社会で学び、博士号さえ持つ主人公が、科学の力を借りながら、未開な部族を教え諭し、導いて行く。
しかし、そこには様々な葛藤が生まれて来る。
「アイデンティティ(存在証明)を求める若者」、「男女平等を求める少女」、「偶然にキリンヤガにやって来たが、目の前にいる病人を思わず治療してしまった医者が引き起こす騒動」、「未開民族を私利私欲で支配しようとする文明人の訪問」、「自然に生まれる発明」等の難問に主人公は真摯に挑み、敗れて行く。
文明社会以外の社会を呑み込んでしまう文明社会の恐ろしさ、現在の暮らしの尊さは失ってみなければ分からないこと、進歩は自然なことで押し留められないこと等が哀愁に満ちて描かれる。
安易な文明批判ではない、深さを持つ作品。SFであるが、一般の小説として読まれても全く問題のない傑作です。
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No.8:
(5pt)

この素晴らしさには恐ろしささえ感じる。

ユートピア惑星「キリンヤガ」の設立からその後を淡々と書き記した、まるで見てきたかのような記述が恐ろしく、同時に魅力に溢れて面白い。連作短編の形をとり、どれもが秀作で甲乙は付けがたいが、表紙イラストにもなっている「空にふれた少女」がやはり1番素晴らしい。読んで損はなし。必ず得られる何かがあります。
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No.7:
(5pt)

革新か保守か

誰でも人格を形成している価値観を捨て去ることはできない。そして新しい思想、技術に目覚めた後に、それがいまの生活を変えるものだからという理由で捨て去ることはなおできない。
 主人公の老人は宇宙移民も可能なほど先の未来に住んでいる。それなのに、彼は民族としての誇りを取り戻し、数百年前もの生活(彼はそれを“伝統的な生活”と考え、近代的な息子は“原始的生活”と考える)を営むために、志を同じくする者たちと共に、ある惑星に移り住む。
 だが、そんな生活は、当然長続きしない。彼が夢見た“伝統的な”世界で生まれ育った若者たちは結局、彼を見捨て、未来へと旅立っていく。
 この状況だけ見れば、彼は根拠もなく過去にしがみつく頑迷な老人である。未来に生きる若者なら誰でも嫌悪するだろう。
 だが自分でもそれを悟りながら、最後まで自分のアイデンティティの誇り高さを保つその姿には、誰でも感動を覚えずにはいられないだろう。
 革新か保守か、というと殺風景だが、とにかく社会と個人、過去と未来のジレンマという古今東西の普遍的テーマを扱って、娯楽作としてこれほど優れた小説を私は他に知らない。
 また「空に触れた少女」などの詩的な描写もすばらしい。
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No.6:
(4pt)

人の作った神

失われてしまった世界をよみがえらせることができるか?最新のテクノロジーと寓話と魔法を使って...「キリンヤガ」はそんな物語だ。
西欧の害毒により崩壊してしまった部族社会を、小惑星を改造して人工的に作り出した世界によみがえらせる。いくつかの思考実験がこの小説のモチーフになっている。外の世界があることを知っている閉じた社会が成立しうるか? 物質文明により崩れてしまった部族社会の価値観を、物質文明のテクノロジーを使って再生するという矛盾は克服しうるのか?伝統的な価値を守ろうとするリーダーは、社会の安定を思考するゆえに、逆に社会を不安定に陥れてしまうのではないか?これらの問いに、寓意ではあるが、みごとに作者は答えているように私には思える。そう、この物語の中には多く寓話がでてくるが、実はこの物語自体が大きな寓話なのだと思う。
地球全体ですら、情報が発達し一体化がすすんだいま、実はキリンヤガと五十歩百歩の状況に陥りつつあるのではないだろうか?いや、もっと狭くとらえて日本だけを「閉じた社会」を守ろうとする人工的な部族社会だと とらえれば、作者の問題意識とさまざまベクトルで語られるこの連作短編集のいずれも現象として起こっているのではないだろうか?自殺の問題しかり、老年の問題しかり、群を抜いた異才の排除する風潮しかり。。。深読みしすぎだろうか?
それでも、この作品がひさしぶりのSFの佳作であることに間違いない。私は、この作品全般にただようもの悲しさがすきだ。
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No.5:
(5pt)

仕組まれた無知による理想社会

アフリカの一民族が、テラフォームされた小惑星で本来の生き方を取り戻せるかという、思考実験小説である。
 ハエが多くて不快だから、現代人は殺虫剤をまく。危険な動物がいるから、駆除する。寒暖も、コントロールしようとする。その結果、どうなったか。多くの野生動物は絶滅し、地球環境は激変した。
 では、私達は原点に帰ればいいのだろうか。帰れるのだろうか。コリバは部族の原点回帰を断行する。ハエが多い?「我慢することを覚えねばならん。」ねえ、女の子がなぜそうしちゃいけないの?「掟だ。」
 しかし近代合理主義のおごりを喝破したコリバにも、時計の針を戻すことは出来ないのだ。
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No.4:
(5pt)

諸星大二郎の作品群を思い出させる

連作短編の形を借りた「過去から語り継がれ未来にも通じる寓話」である。これをSFと呼ぶのに抵抗のある人も多いだろう。むしろSFよりは歴史なのかもしれない。
「事実と真実は異なる。それをよく考えることだ」
主人公の祈祷師は弟子に言い放つ。それは真理だと思う。しかし、考え始めたときからユートピア「キリンヤガ」の崩壊は始まってしまう。読み進めながら、我々は崩壊に立ち会わなければならない。それは非常に辛い行為だ。
個人のユートピアを見つけることは可能だが、それを他人と共有はできないのだろうか。個人の中にしかユートピアは存在しないのだろうか、それともユートピア自体が存在しないのだろうか。
文明を捨てて伝統に生き、独裁者になることを選ばなかった主人公の姿は非常に寂しい。
なお、この作品からは漫画家・諸星大二郎の作品群を思い出してならなかった。本作品の初出をさかのぼること10年前に、諸星大二郎が描いていた「マッドメン」の世界を。
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No.3:
(5pt)

諸星大二郎の作品群を思い出させる

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No.2:
(4pt)

楽園はどこにあるのか

これをSFというのか、まだ不明です。でも、物語の力を感じさせてくれる一冊ではあります。
スワヒリ語でキリは山、ニャガは光を意味するそうです。ケニア山を指すこの言葉が、物語の舞台となる人工小惑星の名前です。このテラフォーム小惑星は、アフリカのキクユ族が彼らのユートピア建設のために移住した地なのでした。
主人公はコリバという初老の男で、彼はキクユ族の伝統がもう地球上では存続できないことを痛感しています。西暦2123年、すでにサバンナは一世紀以上前に消滅しており、ジャッカルも動物保護地区へ追いやられる時代です。そんななか、ヨーロッパの大学で学び、望めば豪勢な暮らしもできたかもしれないのに、彼は息子にもわかれて新世界キリンヤガへ旅立つのでした。生き残った最後の祈祷師――ムンドゥクとして、そこをキクユ族のユートピアとなすために。
というわけで、この本は主にキリンヤガを舞台とした連作集です。ひとつひとつのお話は読み切りですが、時間軸のとおりに並んでいて、全体で大きなひとつの物語になっています。各編、何年何月と明記されていくので、ブラッドベリの『火星年代記』みたいな風情もあります。
ムンドゥクは祈祷師であり、呪術使いであり、物語の語り部である、ある種のシャーマンでして。その彼が語るのはイソップ物語みたいな寓話なんですが、登場する動物がハイエナやインパラやシマウマで、いつも失われたサバンナを――彼の記憶の中にしかない楽園を髣髴とさせるのです。
ユートピアとは桃源郷のようなものをいう言葉ではなく、もともとは「どこにもない場所」を意味しますが、では新しい楽園はどこにあるのかということをよくよく考えさせられました。
これはSFと呼んでいいのかわからない一冊です。でもユートピアについて考えずにいられなくさせるのは、そうして未来への警鐘として人々の胸にひびくものがあるのは、やっぱりSFなのかなあと思います。
キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)より
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No.1:
(4pt)

文化を大切に。

アフリカシャーマニズムにより治められる一つの宇宙ステーションを舞台に、人間の生き方・アイデンティティのあり方を10の短編を通じて問いかける作品。 
 “自分らしく生きる”ことこそが、もっとも人の生を充たされたものにするとの信念を、コリバは決して捨てようとはしない。
 現在、社会の均一化が進むことにより、本来地域コミュニティや各宗派が担ってきた、洗練されたアイデンティティの基盤が失われ、各人は(特に若い世代にとっては)ゼロからそれを構築することを余儀なくされてきている。  
 最近の一見不可解な犯罪行為の数々にも、そのアイデンティティ確立の過程において、人間が生まれながらにして持つ“混沌”の部分を、自分なりのシャーマニズムで不器用に表現しているに過ぎないように見えるものがある。    
 急激な社会・科学の進展によって生み出されたこの問題を突いた“キリンヤガ”は、かなりの“ハードSF”だと自分は思っている。
キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)より
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