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光圀伝



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【この小説が収録されている参考書籍】
光圀伝

光圀伝の評価: 4.29/5点 レビュー 68件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.29pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全68件 41~60 3/4ページ
No.28:
(5pt)

最高!

緻密な時代背景の分析と、その時代の社会情勢をくまなく調べた上で、生き生きとした人物像が描き上げられている。
光圀伝Amazon書評・レビュー:光圀伝より
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No.27:
(5pt)

よかった

感動した。
最後は泣いた。
遠い昔に大義に生きた人生を見た。
みなさんも読んでみてください。
光圀伝Amazon書評・レビュー:光圀伝より
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No.26:
(3pt)

黄門様はいつ漫遊したの?

思ったより長編で、別に読みかけの本もあって、まだ全部読み終えていません。年末でもあるし、お正月休みまでに読み終える予定です。
今まで読んだところではちょっと思っていた人物とは違いそうです。物語の中に渋川春海が登場するというので読んでみる気になりました。
光圀伝Amazon書評・レビュー:光圀伝より
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No.25:
(5pt)

才能というものは、あるところにはある、もののようです

びっくりしました。「天地明察」も良かったが、この「光圀伝」もすごい。
私自身が水戸近辺で生まれ育ち、黄門様の隠居所と、瑞龍山の墓地は、幼い頃の風景の記憶にあるため、何やら、自分のご先祖様の伝記を読む気分も味わいました。
(子ども心に「変な形のお墓であるな」と感じていたことが「儒式の墓地」という文章により、約何十年を経て納得)
 
これだけ分厚く難しい漢字の多い本ですが、手に汗を握り、その汗の乾く間もなく、一気に完読しました。
 後日、上記の故郷に暮らす95歳の我が母親にこの本を紹介したところ、半月ほどで完読とのこと。面白かった、と絶賛しつつ、思い出話に花が咲きました。年齢を考えれば、「一気読み」の気分であったようです。

 物語世界の時間と空間の広がりは見事なものです。江戸時代から現在まで、同じ時間が途切れずに続いている気分にもなりました。こういう歴史の続きの中に黄門様の隠居所があり、我が幼少時代はその近辺で遊んでいたのか、と、何となくしんみりした気分にも。

 物語も終わりに近づいてきた頃、何故か司馬遼太郎さんの著作と比べている自分がおりました。そして、この物語一冊の「現実感の質量」は、司馬遼太郎さんの著作の一冊の「現実感の質量」と比較しても、遜色がない、という印象で読了。(もちろん質感は異なりますが)
今後、冲方さんの描く歴史上の人物が10名を超える頃には、独自の「冲方史観」が、と期待大です。
 そして、冲方さんには、何年か前に亡くなられた漢字学者「白川静伝」を期待します。この天才学者の伝記を書くことのできる才能を感じます。
「白川静伝」もかなりの厚さになるでしょうから、私自身の視力と体力で読書可能であるうちに読みたい。そのために早く取材を始めていただかなければ、という思いがあっての提案です。特に、台湾の学者先生方が白川学説を受け入れていった経緯を、と切に願います。
光圀伝を出版された角川書店の方々、或いは、辞書を出版された平凡社の方々、よろしくご支援願います。
光圀伝Amazon書評・レビュー:光圀伝より
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No.24:
(4pt)

前作の天地明察よりも格段に面白い!と思いました。

徳川幕府の御三家といわれる水戸藩。この水戸藩は江戸に近いということもあり、御三家の中で唯一、江戸常勤を定められた藩であり、万が一の変事に備えて将軍の代役として働くことを宿命づけられていたといわれています。初代徳川頼房、二代目光圀により藩風が形づけられた。その二代目の光圀は学問に秀で、また大日本史の編纂という藩の財政が傾くほどの大事業を推進した。このことは後に幕末の尊王攘夷運動に強い影響を与えるまでになった水戸学として水戸藩に尊王の気風をあたえることになった。その光圀の一生を描いた作品。冲方丁はこの時代(江戸時代初期)が結構好きで得意としている。

 水戸藩のこの様な特殊性は、この光圀が運命づけたものであり、なぜ、尊王を旨とする大日本史の編纂事業にとりかかったのか?水戸黄門伝説(テレビの水戸黄門ではない)につながる逸話。なぜ庶民の間で人気が高かったのか?光圀の人生を通じて描いた新解釈満載の歴史小説です。徳川最後の将軍が、水戸家から出て大政奉還を成し遂げたことは偶然ではないことがよく分かります。光圀から息づく藩の運命。歴史に刻まれた意思であろうと思います。非常に読みごたえのある力作の800ページ。前作の天地明察よりも格段に面白い!と思いました。
光圀伝Amazon書評・レビュー:光圀伝より
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No.23:
(5pt)

正統なビルドゥングスロマン+沖方版「水戸黄門」

「日本有数の誰でも名前は知っているのに、その人生は殆ど知られていない人」といった光圀評を著者がしていたのが、面白くて、遅まきながら読んでみた。

700頁超を1冊におさめた重量感も気にならずに、時間があれば、手が伸びて、頁をめくっていた。一気に読ませる力のある本だ。

そして、その内容は、実に正統なビルドゥングスロマンにして貴種流離譚のテイストもある。一方で、歴史エンタテイメントの要素もあって、実は歴史小説の舞台となることが少ない、家光〜家綱時代のイベントや有名人を巧みに織り込んでいる。
徳川家康の孫となる水戸徳川の世子という優越的な地位にして文武両道のみならず容姿端麗という、これ以上は望みようもない生まれにある光圀を主役にしながら、ビルドゥングスロマンとして成り立つのは、長男をさしおいて世子となったという出生の秘密からヤンチャし放題の青春の日々という貴種流離譚のテイストに仕立てているところが大きいと思う。
生まれついての恵まれた境遇というのは、現代を生きる日本人には羨ましいところだが、そうではなく高みに生まれたからこそ、更なる頂まで登らなくてはならないノブレス・オブリージュを背負っているのであり、そこを理解することで、この作品が単なる歴史小説ではなく、現代を生きる者への問いかけに気付くだろう。

わかりやすいヒントもあって、これは雑誌連載中に起きた3.11を踏まえる形での明暦の大火のくだりは、ストレートに生き方が問われるところだ。
また、ガキっぽいと見る向きもあろうが、「ありがとう」「ごめんなさい」「頑張れ」という言葉が繰り返し用いられている。陳腐に過ぎる言葉が、全くそう感じずに、心に響いてくる。それこそが、著者が描き上げた徳川光圀という若者の魅力なのだろう。
そして、本書では、「死」が実に無造作に読者に突きつけられる。天災を前に積み上げられる群集の死体の山、故も咎もなく切り捨てられる無辜の民、その逆に富貴を極めし者にも現代から見れば正に為す術もなく死を待つしかない。そうした、多くの死に直面することで、頂に立つ者として深い意味での「生」を考え続ける光圀もまた、自ら「死」と向き合う。「生」と「死」、このビルドゥングスロマンが長くテーマとしてきたことを現代に投げ掛けることは、ともすればリアリティの乏しさから読者に伝わり辛い内容であるが、本書は、その大部の多くをここに割くことにより、読者の多くの心に伝わるものと思う。スタイルとしてのみならず、その内容も実に正統なビルドゥングスロマンと評する由縁である。

そうした積み重ねを通じ成長した光圀を描いた地の章以降、内容は様変わりしていき、気付けば、沖方風の解釈で「水戸黄門」になっていく。定番の助さん・格さんだけでなく、「うっかり」忘れることなく あの人も、さらには、今映像化された彼も登場する 広いファンサービスもある。そして、テレビドラマ「水戸黄門」好きなら、定番のエピソードの数々の盛り込みにも感謝感謝。ちなみに、紋太夫は、ドラマでは3回登場していて、面白いことに、最終の第43部に登場したときは、刺殺されないのです。第1部での扱いを知る者には、時代は変わったと思ったものでした。
光圀伝Amazon書評・レビュー:光圀伝より
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No.22:
(5pt)

黄門さまの生涯をエンタメ度満点に描いた傑作

水戸光圀とはいったいどんな人だったのか。
 
 幼い頃から何気なく見ていた「水戸黄門」は、大人になってから本当の光圀とはかけ離れたイメージだと知り、「ああ、あの印籠を出して悪人を成敗なんてしてなかったんだ」と少なからず寂しい思いをしていました。
 
 しかし、この本の光圀はドラマの光圀よりも一際輝いていました。
 長子ではないにもかかわらず、家を継ぐことになったことへの葛藤、愛妻との別れ、人生を賭けた事業への熱意……。

 要所要所で心を揺さぶられ、そして終盤にはもう光圀にのめりこみ共感し、ともに人生を歩んできたかのような不思議な感覚にとらわれます。私自身、読み終えた後多くのポジティブな感情が溢れ出しさわやかな涙が流れました。

 本はびっくりするくらい分厚いです。しかし、この非常に濃い人生を表現するには必要不可欠な量だと読み終えて気付きます。文体も時代小説に普段親しんでなくてもまったく問題はない読みやすいもので、リズミカルに読み進められます。

 どなたにもオススメできる傑作だと思います。
光圀伝Amazon書評・レビュー:光圀伝より
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No.21:
(5pt)

歴史冲方第2弾

冲方先生の挑む歴史小説第2弾
以前から挑戦したいと仰っていた徳川光圀の物語です。

暦の改革という、ある種マイナーなジャンルだった前作「天地明察」から、俗に言う水戸黄門の生涯記という有名な人物を使った小説ですが、前作に負けず劣らず挑戦的な出来。
TVドラマの水戸黄門は「助さん格さん、やっておしまいなさい」な人ですがこの本の光國は「どけ!俺がやる!」とでも言いだしそうなほどパワフル。いや、助さんも格さんも出てきませんがね。
兄を差し置いて世子となったことに苦悩する少年時代、師や好敵手と出会い成長していく青年時代を経て表紙の虎のように力強い人物に成長していく光圀がどう生き何を成し遂げるか。それを見届ける物語になっています。

物語の中で何度も人が生まれ、生き、そして死ぬ。出会いと別れの繰り返しは、しかし未来への希望すら感じさせる。そうして世界はどこまでも続いていくのです。

750ページ余りの物語も終わってしまえばあっという間。
今後もこの作者に付いていきたいと感じさせる作品でした。

これで仕事を受けすぎる癖さえ無くなってくれれば……
シュピーゲルとマルドゥックの新作、待ってます。ずっと待ってます。
光圀伝Amazon書評・レビュー:光圀伝より
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No.20:
(3pt)

『天地明察』のスピンオフ

力作と評することに異存はない。しかし、名作、傑作の域には達することができなかった。前作『天地明察』には及ばず、ということで☆三つ。
なんとなれば、長大な枚数を費やしながら、光圀の江戸国学の端緒を形成する史実を踏まえた場面の物足りなさは如何ともし難し、それ故である。すなわち和歌への傾倒を重要な柱としながら、下河辺長流、僧契沖との関係について言及できていないことが大きな欠損となってしまった。
現代に連綿とつづく万葉集研究の基礎を形成するに、光圀がどれほど重要な役割を果たしていたか。それへの言及なくして、光圀の史伝はありえない。貞享暦発布にあっての光圀の果たした役割に比す時、その後の国学発展に繋がる万葉研究の端緒を開いた光圀の功績の大きさは計り知れず。機会が許されるなら、作者に何故の判断、かかる結構かと問いただしたいくらいである。
加えて、不世出の文雅の士であった水戸光圀を描き出すには、作者の筆致、いささか俗臭、大なり。品位と格式を意識した筆遣いをなして欲しかった。牽強付会に過ぎるやも知れぬが、『嵯峨野名月記』等でしめされた亡き辻邦生の典雅な語り口、五味康祐、山岡荘八等々の時代小説の先達の威厳に満ちた文体などを見よ。出来ることならば、それらに学んで雅味溢れる文章により、光圀の生涯は描かれるべきであった。
しかるに『天地明察』のスピンオフにとどまったことが何とも惜しまれる。もし、「保科正之伝」が構想されているのであれば、是非とも上記のこと勘案されたし。そう望まずにはいられない。
光圀伝Amazon書評・レビュー:光圀伝より
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No.19:
(5pt)

文句なくおもしろく、泣ける一冊

使い古された説明ですが、「水戸黄門」こと水戸光圀の生涯を扱った小説です。歴史の教科書にでてきた光圀のぼくの記憶は、「大日本史」を編纂したことくらいです。もちろん、「水戸黄門」は、フィクションで、実際には、日本全国に旅に行ったこともないことも知っています。ただ、その程度の知識しかないために、初めて知った人物のように新鮮に読めた一冊です。

僕は、いわゆる「ハードボイルド」のような小説や映画が苦手です。そのためか、家を継ぐときの大義が兄にあるから、家を継げないと認識したあとの彼が考えた行動は、あまり共感はしません。それを横に置いたとしても、この小説の骨格をなす幹は太く、まさに大作といってふさわしい一冊に仕上がっています。『天地明察』とは違った、人の義とは何かを問いかける書となっています。(天地明察と同時期を扱った小説ですから、当然、あの人も登場します。)

途中、なんどか「ぐっ」とくる描写があります。このあたりは、本当にうまいです。基本的に、実在の人物をキャラクターとして、登場させていますが、たぶん、「左近」は、実在ではないですよね? 彼女の存在が、小説の後半には重要なバランスとなっています。

沖方さんと言えば、第24回(2003年) 日本SF大賞受賞「マルドゥック・スクランブル」をとったSF小説の人という認識は、この2冊で変わって、今後は、歴史小説の沖方さんになるのか?
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No.18:
(5pt)

生きること・死ぬこと・義に生きるということ。

すさまじい水戸光圀の生涯である。

人生における「義」とはなにか?

生きるとは、死ぬとはどういうことであるのか?

時代の制約の中で、人がそこにあり、生きたことこそ永遠不滅の真実であることを

後世に残そうと全力を尽くして生きた男の物語である。

大切な、伴侶・友人・親・兄弟と死別し、打ちのめされながらも

自分の生きる道を見失わずに、大義に生きたその生き様には圧倒され、涙することしばしであった。

読みやすくは無い。

読者を選ぶ傑作であろう。
光圀伝Amazon書評・レビュー:光圀伝より
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No.17:
(5pt)

水戸光圀公にあらせられるぞ!

これはテレビドラマ「水戸黄門」が大好きな中高年のレビューです。
水戸黄門モノであれば、その書物は著者が誰であれ手に取って、確認して買っています。
テレビドラマの終了前に連載が始まり、終了告知の頃からクライマックスに向かい、
連載完結、そして単行本化。
これも運命的なものなのでしょうか。

テレビドラマと真逆の静なる水戸光圀(真の姿に近い)が描き切られている、と評します。

特に幼年期から青年期までの描写に力がこもっていて、頭にはテレビドラマの歴代黄門役
俳優の若かりし頃と重ね合わせようと(無理です、笑)しても顔がぼやけている感じ。
最終盤では漸く石坂浩二の演じた隠居前の光圀と重なり始めました。

書評としては、明窓浄机なるモノローグは不要な感じがします。
これほど日本中に名の知れた人物の回想・独白は読者個々の持っている光圀像を要らない
方向に誘導する恐れもあります。

とはいえ、NHKあたりが大英断して大河ドラマ化するかテレビ東京が正月の大長編ドラマ
化してくれると高視聴率間違いないのではと思いますけれど・・・
光圀伝Amazon書評・レビュー:光圀伝より
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No.16:
(5pt)

文句なしにおもしろい

『天地明察』も非常におもしろかったですが、この『光圀伝』はそれ以上だと思いました。
750ページをあっという間に読み終えてしまったほど、物語に引き込まれました。
水戸光圀の生涯において、様々な人との出会いと別れがあり、その経験が彼を強き人間としていく。
読み終えて、聡明で強いこの光圀をとても好き
になりました。
途中何度も感動して涙が出そうになりました。
文句なしにおもしろい、オススメの一冊です。
光圀伝Amazon書評・レビュー:光圀伝より
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No.15:
(4pt)

あしにひまなきわが思ひかな…。

黄門様でおなじみの、水戸光圀の実像を描く大作。
「大日本史」編纂を企て、漢詩、和歌を良くし、武術は
もとより、学問にも秀でた光圀の義を奉じた一生が、感動と
ともに心地よい読後感として心に残る。

 傾奇者であった少年時代、気軽に市井に繰り出し居酒屋で
気ままに酒を飲む光圀。
 学問にのめり込み、必死に書を漁る。
 長男を措いて世子となることを羞じ、伯夷叔斉の故事を引き、
自らの為すべきことを探し求める。
 そう思うと、「ただ見れば何の苦もなき水鳥のあしにひまなき
わが想いかな」という歌も光圀の思いをよく表しているのだろう。
 決して、ざれ歌ではない。

 林羅山の息子読耕斎、明の学者朱舜水、伯父の尾張徳川家義直、
そして妻の泰姫など、周囲の豪華な登場人物が、眩しい。
光圀伝Amazon書評・レビュー:光圀伝より
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No.14:
(4pt)

優れたミステリー小説です

「伝」と言っても伝記じゃない、勘違いするととんちんかんなレビューになりますね。

冒頭に殺人事件があり、犯人は明示されていて、謎は被害者と動機です。
意外な被害者が明らかになるのは後半に入ってからで、ちゃんと読んできた読者はきっと驚きます。
それまでは苦痛ではないにしろ、すごくわくわくするような展開でもないので、微妙に我慢です。

その人をなぜ殺さなければいけないのか、多少でも幕末史の知識があると、その理由は意外ではありません。
が、やられた、と思うでしょう、光圀のいた時代から見れば幕末は遠い未来の話です。
光圀が死んだのが1701年、黒船来航が1853年、大政奉還が1867年です。
光圀の時代から幕末より、幕末から今のほうが近いくらいです。
だから、うわっ、それか!そこに結びつくか、あーでもそうね、そうなるね、そうだよね!
と、驚きつつも納得するためには高校の日本史程度の知識は必要です。

勉強嫌いだったり理系だったり世界史選択だったりするとぴんとこない人もいるんじゃないかと思います。
「天地明察」はそういう人でも楽しく読めただろうし、全編わくわくしたよね、ということを考えると、満点はつけられないかな。
それから、最近綱吉が評価され始めていることを考えると、あそこまでひどく書いたらかわいそうにも思われる。
でも、キャラのたった登場人物たちの、表情や声音までくっきり浮かんでくるような描写は、当代随一の娯楽小説家の技と言っていいでしょう。
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No.13:
(5pt)

義とは何か

幼少時代、父は、絶対君主のような存在で、当然テレビのチャンネル権も父が握っており、至極当然に時代劇を見るようになりました。尤も、水戸黄門より、私は大川橋蔵の銭形平次の方が好きでしたが……。
 でも、諸国を漫遊し御政道を正すテレビドラマの黄門様とは全く異なる本作の水戸光圀は、すごく魅力的でした。泰平の世にあって詩で天下をとることを目指し、大日本史の編纂に着手、水戸藩藩主として様々な事業を成し遂げたばかりか、生涯を通して多くの人の信頼を得た「人たらし」。
 「天地明察」もそうでしたが、主人公はもとより、冲方丁の描く登場人物は皆、個性豊かです。
 父、徳川頼房、ライバル林読耕斎、会津藩主、保科正之、師、朱舜水、宮本武蔵、沢庵等々。なかでも、私は、兄、頼重、妻、泰姫と藤井紋太夫、冷泉為影が好きでした。
 この本のテーマは、「義とは何か?」でしょうか。
 751ページと長編作品ですが、ページを捲る手が止まらなくなります。秋の夜長、是非紐解いてください。

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No.12:
(3pt)

感情移入ができない

天地明察ほど感情移入が出来ませんでした
光圀伝の中の水戸光圀を好きにはなれなかった
著者の力作って言うのは確かにそうなのでしょうが・・・
徹夜してでも読み込むっていう感情がどうしても湧きませんでした。

しか〜〜〜〜し
地の章あたりから、俄然光圀伝が面白くなってきました
前言を翻して ★5つ付けます
前章とは真逆ですが生涯義に生きた光圀さんを好きになってしまいました・・・・・
泰姫とは生涯共に歩ましてあげたかったですね、それにしても左近さんって
生涯を独身とはもったいないなぁ(笑)
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No.11:
(4pt)

逆境の中に虎一匹

天地明察でこの作者さんを知った一人です。
読み応えがあるけど退屈になりがちな歴史モノというジャンルと、キャラクターで引っ張り、次々に起こるイベントで読者を飽きさせないライトノベルの手法が組み合わさった傑作だったので、今作にも非常に期待していました。

期待通り、前半の光圀少年が成長していく段階は面白すぎてページをめくる手が止まりませんでした。
体力でも詩歌の腕前でも人並み外れた光圀が街へ出て、悪友たちとつるんだり、生臭坊主を論破して、「詩で天下を取るか」と調子に乗ったところで本物の実力者と出会い、打ちのめされて、成長していく。
冗談抜きで、これまで読んだ時代小説の中で一番面白かった。
粗削りな部分も含めて「時代小説に新風を吹き込んだ」と言われた天地明察よりもずっと完成度が高い。
新しく、面白く、深い、冲方流歴史小説がついに完成しました!

と興奮していたら…途中から光圀様が出世なさるんですよ。
町を好き勝手に歩き回っていた前半と、役職についた後半とで別の作品のようになっていきます。
決して後半からつまらないわけではないけど、家を継ぐのは誰かといった問題、思い通りにいかない事業と、だんだん話が重い雰囲気になります。

さらに、光圀は当時としてはかなり高齢になるまで生きています。
長生きするということは、当然周囲の人物が死んでいくということで、かなり多く死別のシーンが出てきます。
ドラマの「黄門様」とは違うものを期待して手に取ったはずなのに、いつのまにかドラマみたいなエピソードは出てこないかな、と期待している自分がいました。

「命をかけて挑めばどんな難事業でも成し遂げられるんだ」というメッセージのこもった天地明察、
「命をかけても、人生思うようにならないことだらけだ。だからといって絶望することはない」という光圀伝。

どちらが心に残るかは人によります。
ただ、個人的には光圀伝は終盤で疲れてしまい、もう少し娯楽作品よりだったら良かったな、という感想です。
光圀伝Amazon書評・レビュー:光圀伝より
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No.10:
(4pt)

あの解釈、本当に執筆開始時には決まっていなかったのか?

ラノベ、SF、伝奇にアニメの脚本とノベライズ、そして本書のような歴史小説まで。幅広く活躍する著者の歴史ものとしては『天地明察』に次ぐ第二作。大部、750頁で少年期から最晩年までの水戸徳川光圀の一代にせまった大作です。
 なぜ、最晩年に光圀は自らが登用し、重用した藤井紋太夫を手討ちにしなけらばならなかったのか。物語は未だ解明されぬこの謎を鍵に展開します。
 豪放磊落かつ儒学をはじめとする学問を究め、詩歌で天下を取らんと欲し、武を忘れない人物として光圀はあらわれ、多くの友人や少数の女性との細やかな交流、そして長命の故、多くの人の死に立ち会った彼の心情がえがかれます。光圀の抱いた「義」と「歴史」への思い。理想への熱情と、それを後世へ委ねる無念。まるで人の一生のように、物語中の時間は壮年期から加速し、やがて光圀は多くの人を見送ることになります。
 インタビューによると(『SFマガジン』11月号収)著者は驚くことに、本書冒頭から少しずつ語られる藤井紋太夫を刺殺したその理由について、執筆開始時には決まっていなかった、と述べています。その理由たるや、「尊皇敬幕」を謳っていた水戸藩が幕末に混迷を極める所以となったまさにその思想的矛盾とします。
 なぜ、著者がそこに至ったか。そして水戸藩は正しかったのか。
 やがて「冲方歴史観」とでも称されそうな著者の歴史への傾倒を堪能しました。
光圀伝Amazon書評・レビュー:光圀伝より
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No.9:
(4pt)

多くの人と思いに囲まれた生涯

『小説 野生時代』2011年02月-2012年08月号に掲載,この書籍化にあたり改稿が行われています.

タイトルの通り,光圀の生涯が綴られた一冊.カバー絵にはその象徴として虎が描かれていますが,
正に虎のように吠え,振る舞う人でもあり,かと思えば,周りへの気配りや愛情に満ちた人でもあり,
テレビ時代劇とは全く異なる雰囲気が新鮮で,その魅力あふれる姿にどんどんと引き込まれていきます.

そんな魅力や才能に長けた人には,同じく素敵な人が数多く集まってくるということなのでしょう.
何かを成し遂げた側には,必ずそれを支え,叱咤してくれた家族や友人,仲間の存在が描かれており,
彼らとのやり取りはもちろん,嫌っている相手の懐にも飛び込む『大きさ』には心地のよさがあります.
また,妻と側近,この二人の女性がとても素敵で,対照的な存在ながら物語に美しい彩りを与えています.

他にも,ある意味定番とも言える手法ではありますが,人の死が多く,それが効果的に用いられており,
別れのたびにそれを糧,転換点とし,悩み続ける己の存在,信じるものへと邁進する様子が心を打ちます.

反面,終盤は少しばかり駆け足にも感じられ,いささかあっさりしている部分があるのは気になるところ.
あとは,冒頭から語られる『謎』についても,物語の長さのせいで,その存在が薄れがちになることがあり,
それを補足するかのような合間での『独白』も,特に序盤のうちは,本編から引き戻される感覚になりました.

とはいえ,その『真相』が見え始める中盤以降,読み手をザワつかせながら流れは静かに勢いを増し,
幼い頃から信じ,育ててきた思いが,最後の最後に大きな災いとなる結末には何とも言えぬ心苦しさが.
それでいてなお,慈悲で相手を包み,『決断』を下す光圀に,改めてその強さを思い知ることになります.

750ページを超える物語は,時にしんどくなることもありましたが,読み終えてみればどれも大事で,
妻や家族への愛,友への思い,生への執念,死への畏怖,そして何より己という存在への激しい感情,
光圀自身はもちろん,多くの人たちとの出会いや思い,その積み重ねの末にあったものだと気づきます.
光圀伝Amazon書評・レビュー:光圀伝より
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