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胸の火は消えず
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胸の火は消えずの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.75pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全4件 1~4 1/1ページ
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著者は19世紀末から戦間期にかけて活躍した女流小説家。怪奇小説の書き手として日本でも知られてきた。 本書は、『不気味な物語』(1923年)と『仲介者その他の物語』(1931年)の2冊から、1篇を除いて翻訳したもの。 収録されているのは、「胸の火は消えず」「形見の品」「水晶の瑕」「証拠の性質」「死者が知っていたら」「被害者」「絶対者の発見」「マハトマの物語」「ジョーンズのカルマ」「仲介者」「希望荘」の11篇。 すごく怖いというのではない。むしろ、心霊主義に影響を受けたような話が多い。怨念だとか、人格の死後存続だとか。そのあたり、ストレートな怪談を求めているひとには物足りないかも。しかし、これもまたイギリスの怪奇小説なのである。 | ||||
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本書の著者メイ・シンクレアは、何篇かのアンソロジーで、収録されている作品を読む機会がありました。 しかしながら、その個性的で異質なテーマと恐怖の語り口に、変わった作品を書く作家だとの印象しかありませんでした。 本書の訳者である南條竹則氏の著書「恐怖の黄金時代」(集英社新書)で、その人物と作品が紹介され、特に代表作として紹介されていた『水晶の瑕』に興味を持ち、本書を手に取りました。 『水晶の瑕』は、他人を癒す能力を持つ女性が、邪悪なものに取り憑かれた知人の夫を救おうと、霊的な治療を試みる話です。 主人公は、能力の源泉である水晶のような心に、ある理由から小さな瑕がつき、そこをつけこまれ恐怖を味わうことになります。 最後の哀しい結末に至る、主人公の能力者としての葛藤と、その孤独なあり様が、読み手の心に迫ります。 『仲介人』は、幼児虐待にまつわる怪異が語られますが、母親が母性よりも女性を優先させた為に起こる悲劇は、とても今日的です。 そして何より語り手の主人公の男の不幸な母子に対する優しさが、特に印象に残りました。 主人公は、物語のはじめに子どもが同泊する宿屋を避け、子供嫌いの様子を見せますが、その後の行動を見ると、その逆であることが窺えます。 その理由や背景は作中で明らかにされませんが、この語られない物語の存在が、作品にさらに深みを与えているように感じられます。 『胸の火は消えず』では、主人公の女性は、死後の世界で、ある男から逃れようとしますが、決して叶えられません。 それは彼女の真の願望であり、心の深層にある情欲に囚われてしまった女の姿が描かれています。 上記の作品以外にも、味わい深く一風変わった趣向の名品の数々が収録されていますので、ご一読をお薦めします。 | ||||
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ブロンテ姉妹と同時代に筆一本で生計を立てていた女流作家の、怪奇小説の全貌を収録したもの。 男がロクでも無い連中ばかりで、今の時代もこう云うの居るんだよな・・・と云いたくなる程リアル。 どれも怪奇小説、或いはホラー小説としては傑作で、幻想文学の古典としてもっと幻想文学界から注目されても良かったのでは無いだろうか。 | ||||
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[収録作品] 胸の火は消えず 形見の品 水晶の瑕 証拠の性質 死者が知っていたら 被害者 絶対者の発見 マハトマの物語 ジョーンズのカルマ 仲介者 希望荘 英国の女流作家メイ・シンクレア(1863年生/1946年没)の日本オリジナル編集短編集。 ユングやフロイトなどの心理学の影響を感じさせる理知的な側面と心霊学や神秘主義への強い関心、さらには先駆的なフェミニズム性が相まった作風は類の無い独自性を持つ。 ドロシー・セイヤーズがアンソロジーに取り上げた表題作は果ての無い愛情の地獄に堕ちた女性を描いて壮絶なゴーストストーリー。 先妻の霊が再婚した夫のもとを訪れる、エロティックな「証拠の性質」、世にも優しい被害者の幽霊と加害者の交情を描いた「被害者」の奇妙な味わい、神秘主義と哲学のカオスの如き「絶対者の発見」、慄然たる恐怖と瀟洒な叙情が織りなす幽霊奇譚「仲介者」など佳品が目白押し。 そして平井呈一が激賞した「希望荘」の生霊の生々しさは一読忘れ難いものだ。 本書に登場する人物は死者も生者も愛への妄執に囚われている。その底知れぬ恐ろしさを描いた鬼気迫る作品集。 原書から採られたジャン・ド・ボッシェールの素朴なタッチの挿画も不安な心理をかき立てる。 | ||||
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