(短編集)
ドラゴン・ヴォランの部屋
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「ロバート・アーダ卿の運命」「ティローン州のある名家の物語」「ウルトー・ド・レイシー」「ローラ・シルヴァー・ベル」の4短篇と、中篇「ドラゴン・ヴォランの部屋」の5話が収められている。 「ロバート・アーダ卿の運命」の1838年から、「ドラゴン・ヴォランの部屋」の1872年と、執筆年代はまちまち。 怪談っぽいものから、犯罪小説までさまざまで、レ・ファニュの物語作家としての幅の広さを味わうことができる。 「ドラゴン・ヴォランの部屋」は伏線の張り巡らせ方が周到。最後まで飽きさせずに引っ張っていくストーリー性がある。 訳文は堅実で読みやすい。 | ||||
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アイルランドの幻想小説の始祖、レファニュの短篇集。 最後の作品だけ中篇ですが、それぞれ趣向が凝らされていて楽しめました。必ずしも超自然現象だけに特化した作家ではなかった先駆者の業績が判る恰好のショーケース的な作品集だと思います。 それと、文章の巧さが記憶に残りました。今、二世紀くらい経っても全然古びていない流麗な文章は当時活躍した様々な通俗作家とは違う、やはり異能作家だったのが判ります。今でも残っている理由はこの文章の巧さもあると思います。 ただ、書かれた当時はセンセーション・ノヴェルと言われて煽情的だったとは思いますが、今読むとさすがに淡泊に思えるのでインパクトに欠ける憾みを感じたのも真実でした。 長篇で翻訳されているけど手に入りにくくなっている「ワイルダーの手」や「アンクル・サイラス」の新訳復刊と「ゴールデンフライアーズ奇談」の完訳、その他の重要な短篇の新訳復刊も期待したい所です。この作品集がその起爆剤になる事を願って止みません。 異能作家の実力が垣間見える作品集。機会があったら是非。 | ||||
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確かに訳者さんのあとがきにあるように、怪奇作家のイメ-ジを覆すような中編の表題作は、なかなか嬉しい発見だった。 今でいうゴシックサスペンス。当時はセンセ-ション・ノベルと呼ばれる一大ジャンルだったらしいが、ミステリの先駆けとしての意匠に富み、原初のスープのエネルギーで煮えくり返っている。私のオールタイムフェバリット映画の『パリのスキャンダル』に通じる楽しさに思わず膝を打った。恋あり、冒険あり、陰謀あり、復讐ありの小気味よい展開で、超自然の要素はなくとも、古城や仮面舞踏会や曰くありげな旅籠や墓地や隠し部屋など舞台道具は健在だし、カリスマ的な妖婦や占い師も登場して、ゴシックの雰囲気もばっちり。文章もそんじょそこらの通俗作家よりははるかに読ませる力があるので(著者の教養を考えると当然だが)、今日でも十分鑑賞に耐える。 残りの短編四つも、ホラ-小説の先駆者の名に恥じないものばかりで、語り口は巧妙、どれも素晴らしかった。 いやあ、やはり19世紀の小説にはいろんな意味で今のモノにはない魅力がありますねえ。 この作家はこれ以上の長尺だと持久力がもたなそうなので、未訳の中短編を中心に今後もぜひ日本の読者に紹介してほしい。 | ||||
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「カーミラ」でお馴染みのレ・ファニュ作品集。 幽霊譚からミステリーまでバラエティに富んだ選集です。 怪奇物らしく起承転結のはっきりしたものがなく、 「恐らくそうではなかったか」を匂わせるに留めています。 そのかわり得体の知れない恐怖がヒタヒタと忍び寄るさまが 秀逸で、期待を裏切らない出来。 特に「ティローン州のある名家の物語」のように 因襲と運命に支配された地方が舞台だけに 古風な味わいが濃厚。 表題作はレ・ファニュの茶目っ気というか、 途中からハハアと分かってもクスリとする冒険譚。 いずれも古き良き時代を彷彿とさせる小品です。 | ||||
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名翻訳者であり、名アンソロジストであった故・平井呈一氏に敬意を表されている方、ラヴクラフト、ブラックウッドなど怪奇小説の傑作と呼ばれているものは一通り読みこなしている方には、満足のいく作品集ではないかもしれない。私個人としては、「怪奇」だけにとどまらないバラエティな内容と、人や風景が目に浮かぶような訳でとても楽しませてもらった。レ・ファニュの魅力、再発見・再確認の1冊だと思う。内容は次の通り。 ●ロバート・アーダ卿の運命・・・アイルランド南部地方、原初の森林に囲まれた峡谷の断崖絶壁にそそり立つ古城。教区司祭の手記に記された城主アーダ卿の二通り(土地の言い伝えと司祭の聞き取り調査)の悲劇的な死の模様。卿の傍らに影のように寄り添う不気味な男の正体とは? ●ティローン州のある名家の物語・・・内向的な少女ファニーは、遠方に嫁いだ姉の死の直前、不思議な予兆を体験する。数年後、貴族の男と結婚したファニーは夫と共に暮らす屋敷へ到着したその日、家族に不幸が起こる前兆だという黒い布を目にしてしまう。不可解な約束事をさせる夫と、寝室に現れる盲目の狂女の秘密とは何なのか。S・ブロンテが『ジェイン・エア』執筆の際に影響を受けたのではないかとされる作品。確かに似ている。 ●ウルト—・ド・レイシー・・・アイルランドの一地方の領主一族であったウルトー・ド・レイシーは、幼いころ、死の床にあった父親から恐ろしい遺産を受け継ぐ。大人になった彼は家名再興のために奔走し、あとには彼の美しい娘2人が留守を守っていた。ある日、姉妹が暮らす古城の向かい、無人のはずの鐘楼に赤い光がともり、その時から妹・ウナの様子がおかしくなってゆく。 ●ローラ・シルヴァー・ベル・・・産婆でありながら占術・呪術にも長けた老婆のもとに、ある夜、黒い外套を羽織った汚らしい大男が訪ねてくる。男は自らを「若殿」と称し、村の農夫の娘ローラ・シルヴァー・ベルと結婚するので、明日の夜、彼女をここに連れて来いと命ずるのだが─────。 ●ドラゴン・ヴォランの部屋・・・ナポレオン戦争直後、英国からパリへ旅行中の青年は美貌の伯爵夫人と出会い、一目で恋してしまう。夫人の後を追い、知り合った侯爵の勧めもあって、ベルサイユ郊外の宿「ドラゴン・ヴォラン」に滞在することになった青年。伯爵夫人を巡り、思わぬ犯罪事件に巻き込まれてゆく。 レ・ファニュは怪奇物以外はいまひとつと言われるが、表題作『ドラゴン・ヴォラン~』は平井氏が(怪奇作家とは違うレ・ファニュを知るのに)「恰好な作品」、「達者なストーリー・テラーの話術で、息もつかせぬサスペンスの連続うちに語られ」ていると絶賛するだけあって(カギカッコ内引用は創元推理文庫『吸血鬼カーミラ』解説より)、人物造形もストーリー展開もよくまとまっている。ただ、早い段階で話のオチの見当はついてしまうので、そこはまあ・・・現代と違いのんびりした時代に書かれたという点を考慮して、こちらも好きな飲み物片手にのんびり読んでいただければ・・・。 以上、5編の短編・中編。超自然現象が起こるもの、起こらないもの、「えーと、これは起こったってこと?」という判然としないもの、いろいろ取り混ぜられている。 デ・ラ・メア作品のごとくすべての謎は謎のまま、とまではいかないが、本書収録作もすべての謎が明らかにされるわけではない。いや、ほとんど「これしかないだろう」というくらい読み手には真相が見えているのだが、作者は最後まで決定的なものを与えてくれない。そのもどかしさが、またたまらない。 訳者の方は平井氏の後塵を拝することになり、さぞプレッシャーがあったことと察するが、レ・ファニュ作品の多くが絶版の現在、ぜひ『傑作集Ⅱ』として新訳を期待したい。 | ||||
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