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海鳴り忍法帖
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【この小説が収録されている参考書籍】
海鳴り忍法帖の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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全8件 1~8 1/1ページ
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「海鳴り忍法帖」。よくわからないタイトルだ。「週刊現代」連載時には「市民兵ただ一人」だったというが、これは、『全仕事』(角川文庫)での見出し“ひとりVS3万”でおおかた察しはつく。これに続く見出し“近代兵器VS根来忍法”をみれば、一人の市民兵が3万人の根来忍者を相手どって近代兵器を駆使して闘ったということが分かる。彼が相手にした根来忍者の首領が松永弾正(こと久秀)。彼らが決戦の時を迎えるのが(弾正も信長もが狙い定めていた)堺だ。つまり、これは史実を下敷きにした上の荒唐無稽なお噺という結構になる。巷間言われていることの繰り返しだが、山田風太郎の奇想天外な空想力は、全部が偽史などでは当然なく、むしろ全部が正史に則ったものの上にこそ花ひらく。これが彼の小説の醍醐味の一つ。まるで、タイム・スリップものの掟―歴史は改変してはならぬ―を厳守するのが山風の掟でもある。 それから、これは忍法帖のほとんど最期に描かれたものであってみれば、忍法帖を締めくくる仕掛けがほどこされているということだ。それは、冒頭の室町将軍義輝の庭における武術試合の圧倒的な吸引力にはじまる。最近、評論やエッセイの類ばかりを渉猟していた当方が、なにげなく手にとった本書の魔法にまたたくまに巻き込まれていくに充分なものだった。それは、まるで忍法帖の第一弾『甲賀忍法帖』の出だしを彷彿とさせる目くるめく幻惑な魔術そのものであった。目が吸いついて離せなくなるのだ。本を置くこと能わずとはまさにこのことだ。しかし、本書はこのまっこと奇怪千万な忍法がことごとく通用しない、さらに驚くべき武器を次から次に発明していく市民兵・逗子丸の存在が忍法帖シリーズの中でも異彩を放つことになる。彼は武器製造の天才でありなおかつ絶世の美童(成人してはいるが)でもあった。逗子丸の美貌こそは、まるで彼の反対側に棲息する妖女昼顔をさえ惑わせるものであった。それだけではない。鶯、鵯という美少女をも虜にするも、哀れ逗子丸の想い人は別にあった。さらには、彼の想い人の想いは他にあったのだ!この2つの要素が渾然一体となって物語のエンジンと化す。歴史の表にあらわれた決戦の波乱万丈と、その裏で蠢き騒ぐ闇の事情がヌルヌルドバドバとくんづほぐれつしながら展開していく様は、ただ呆然と指をくわえてみているしかない。 おお!つい忘れるところであった。この作が忍法帖の最末期に書かれたことの意味だった。それは、すでに書いたことでもあるが、ここで忍法が通用しない時代の到来を告げているのだ。それが近代兵器の先駆けとなる連発銃であり火焔瓶であり照明弾でありロケット砲であり地雷であり手榴弾であり、そしてついには大砲の製造にまでこぎつける。風太郎も書いている。<これは古代のシャーマニズム、呪術、陰陽道などに源流を持つ中世の亡霊のごとき魔術師陣と、ともかくも近代兵器との決戦であった>と。そして、ここから敷衍して、作者は太平洋戦争との比較に及んでいく。これこそ主眼であったのだろう。そう思えるほど凄惨な描写が続く。 もちろん、シリアスで塗り潰すような無粋は彼の小説には無縁だ。弾正と昼顔の初接吻シーンはこうだもの。<そして、蟇みたいな首と、地獄の美貌とは、物理的に接吻した>。さらに、昼顔は次々と並みいる男どもを篭絡していくが、彼女は何と醜男好みであってみれば…<十輪坊は蜘蛛の顔を拡大したような容貌の持主であった。それが膝でにじりあがって来て、昼顔の前にその醜怪な顔をつき出した>。どことなく京マチ子を連想してしまうこの絶世の悪女こそ兵器作りに陶酔したロボットのような主人公よりも魅力をはなってやまないという趣向もまたそそられてしまうのだが、如何。 | ||||
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フォーマットとしては、「姫君を報じた騎士の物語」で、『風来忍法帖』や『忍法八犬伝』の系譜と言えるのですが、いかんせん、主人公たる明治の忍者が、目的(最初は立身、その後は献身)のためならば自分を慕う女性も平然と手にかけるシリアル・キラーであり、それ以上に、崇拝の対象たる女性の魅力がゼロ、というよりも、『伊賀忍法帖』の右京大夫の劣化版というか、読み進めるうちに次第にいらいらさせられる始末。さらに、敵役はそれなりに非道なのだけれど、幕末ではそこそこ有為の人物ということで、肝心の仇討ちがぼやけてしまっています。 というわけで、風太郎忍法帖として出色とはいいがたいのですが、その後の明治物とリンクしている点と、主人公の駆使する飛騨幻法が、『忍法封印いま破る』に比肩されるほど強いということで、☆をおまけにひとつ献上。 | ||||
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『』と同じく、悪の大ボスは、強欲松永弾正久秀。 前作で主君の御台に懸想して主家を滅した久秀は、今作でも将軍の御台に懸想して義輝を弑するのだった-あんたも好きねぇ。 恋人を、久秀配下の根来衆たちに無残になぶり殺しにされた若き天才技師ミカエル厨子丸は、戦国の自由都市堺を舞台に、ルソン助左衛門の助けを得ながらさまざまな銃や兵器を発明し、復讐を遂げていくのであった。 3万人(!)の超人的根来衆が堺を取り囲んでからの闘いが、他の忍法帖と違っていて見もの。根来衆の代表それぞれの忍法が詳しく説明されたすぐ後に、近代兵器によってあっけなく瞬殺されてしまう様には呆気に取られてしまう。 『伊賀忍法帖』の漁火に輪をかけた地獄大夫夕顔の悪女、妖女ぶりもすごい。でもこうなっちゃったのは厨子丸への報われぬ愛のせい。また、厨子丸の死んだ恋人鶯の友人鵯の、厨子丸に届かぬ思いを寄せる姿もあわれ。 日本のヴェネツィアともいうべき堺が、その自由を奪われていく中、壮絶にそして悲壮に幕。 | ||||
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戦国の世の奇跡の自由都市、堺へのオマージュともいうべき一篇。 町衆自治による繁栄を誇った堺が、戦国の梟雄・松永弾正の包囲に3年にわたって耐えながらも、弾正が信長と結ぶことでついに崩壊への道をたどる過程が描かれる。物語の展開には切れがあり、堺の町の様子が詳述されて興味深い。 主人公は室町13代将軍義輝の雑仕・ミカエル厨子丸。弾正が二条の御所に義輝を襲って殺害し(1565年)、逃れた厨子丸は弾正への復讐を誓う。 厨子丸は近江国友村の刀鍛冶の息子で、実はエンジニアリングの天才。堺へ移ってからは様々な兵器、重火器の発明・改良を成し遂げて、対松永防衛戦に貢献する。その兵器製造の才は同時代の西欧に先行し、ついにはロケット弾や大砲まで作ってしまう。(史実として、堺は鉄砲を製造販売する町だった) 物語の敵役としては弾正のほか、13代将軍の愛妾・昼顔の方が登場。その悪女・妖女ぶりが凄まじく、むしろ主演ではないかと思われるほど。忍法帖では何人か凄まじい妖姫が登場するが、すべての登場人物を翻弄しつくす昼顔が、たぶん悪女ナンバー1ではないだろうか。忍法や妖術を使わない普通の女性であるだけに、その悪の化身ぶりがかえって恐ろしい。 本作は忍法帖ではあるが、忍法を繰り出すのが弾正の私兵、根来僧のみなので、忍剣勝負はいっさいない。むしろ、厨子丸の作り出す近代的な火器と戦法が非合理的な忍法を粉砕するものとして描かれ、それはダイレクトに第二次世界大戦の日本軍への批判につながっていく。 | ||||
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ちなみに、軍艦忍法帖イコール飛騨忍法帖です。(もともとはどっちだったか知りませんが改題されてます。) 時代設定が江戸幕府の末期から明治維新になっており、勝海舟や薩長の思惑などはこの時代さながらのもので、とても興味深い。 徳川将軍家の権威が地に落ちつつある時代に、主人公の身体能力や飛騨幻法は他の忍法帖に負けず劣らず怪しくて強力なのだが、それに対峙するのがイギリスやフランスから取り入れた近代兵器になっており、そういった面で江戸初期や中期を舞台にした他の忍法帖と対照的で面白い。 ただ、ラストのクライマックスに至る流れがやや強引な気もするので星4とさせていただく。 | ||||
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例によって、玄妙(珍妙?)な忍法を会得した根来忍者が多数登場しますが、主人公の創案による新兵器の前に”瞬殺”されます。 「山風忍法帖」では、根来は凶悪な忍者集団として描かれていますが、戦国史が好きな方はご存じのとうり、根来は当時の鉄砲の供給原でもありました。 終盤近く、根来衆の”忍法”から”鉄砲”への転換の萌芽を感じさせるくだりには、”ニヤリ”とさせられました。 また、「昼顔御前」の悪女振りは、「山風忍法帖」の中でも突出しています。 地鳴りと海鳴りの交錯するようなラストは荒涼として、「山風忍法帖」のファンにはご一読をおすすめします。 | ||||
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堂本剛を天才少年科学者の役で、 忍法対科学の大虐殺シーンを映画にしてくれ! 主人公の発明する新兵器で何百人もの特異体質忍者が 戦場で肉体を変形させたまま 無惨な死体となって散らばるシーンは ぜひ劇場の大画面で見たい。 監督はデビッド・クローネンバーグで、 グログログチャグチャネチャネチャ場面を映像化して欲しい。 超常能力を持つ特異体質忍者といえども、 長射程の科学兵器の前には無能であるという、 忍法を否定する話を、 忍法帖の創設者自身が書いてしまうのだから、 本当に山田風太郎は凄い。 | ||||
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忍者と近代兵器対決は忍法帖では三作品ある。 そのうち『軍艦忍法帖(飛騨忍法帖』、『銀河忍法帖』は 敵がハイテク兵器使いである。 が、本作は味方がハイテク兵器を使いこなす。 近代兵器の前に散りゆく敵忍者の様は爆笑せざるを得ない。 美少年の連発拳銃を前に、畳状に広がった忍者が蜂の巣になって死ぬ! なんとも、シュールではないか。実はこれ、山風流旧帝国陸軍批判? | ||||
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