忍びの卍
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冒頭、椎ノ葉刀馬は、主君・土井大炊頭(おおいのかみ)より密命を受ける。伊賀・甲賀・根来の代表選手の中から最も優れている一派を吟味しろ、と。そして、その3選手と1人ずつ対面していくのだが…。根来は虫籠右陣(むしかごうじん)、伊賀は筏織(いかだおり)右衛門、そして甲賀は百々銭十郎(どどせんじゅうろう)。名前だけでも対面が憚られるが、彼らの有する忍法はとてもこの世のものとも思えないものばかりだ。 銭十郎は、お国と化した右衛門を<あれは女ではない>と見抜く。そのお国は、右陣の<唾液にぬれひかる真っ赤な大きな舌>で全身を舐めあげられて、<「あら、切なや」と吐息をもらした女の実体が男であると知ったら、これは異次元の怪奇と形容するしかない。>まして、銭十郎は全身に栗の花の匂いのする液体を充満させて女を狂わせる。とまあ、そんな風な妙ちくりんな忍法合戦ではある。 彼らの監査役である刀馬も戸惑うほどだが、それでも、ここに刀馬の許嫁である「お京」が参入してくるまでは、まだ何とかなると思っていた。しかし、彼女は、<ぱっとはなやかな日の光がさしこむよう>な目をした健気な娘である。それだけではない。刀馬のお役に立つならどんなことも厭わない。律儀を通り越して、そう、まるで「らんまん」の寿恵子(万太郎の妻)のような伝法な面をもあわせもった一本気な娘でもあった。面妖な忍者合戦とその調停役、さらに「お京」が登場して一切合切が狂いだしカタストロフィへと歯車が回り出すのだが、実は、彼女はトリガーではあっても、真因ではなかった。真の深謀遠慮は、すべてあらかじめ設定済みであったのだ。 この事実は、冒頭と同じく最期に、椎ノ葉刀馬が主君・土井大炊頭より打ち明けられるまで読者にも伏せられている。これを知ったときの刀馬の狂気めいた苦悶をわれわれも波濤のごとく全身に浴びることになる。あの凄惨にして滑稽、血みどろにして実験的、大胆にして繊細極まりない絶体絶命の忍法合戦がすべて深謀遠大なるプランニング上の人形浄瑠璃であったとは! 刀馬が最後に主君に対して(かどうかもわからない。冥府に向ってか?)つぶやく<卍組>の結成には涙がちょちょ切れてたまらない。 | ||||
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駿河大納言徳川忠長をめぐる忍び達の暗闘。 駿河大納言といえば南條 範夫の『』(漫画『シグルイ』他の原作)の残酷狂気の暗君ぶりが記憶に残っているけれど、本作では歴史のなりゆきから家光治世の幕府に虐げられる哀れを催す人物に描かれている。 風太郎の忍法帖では忍者たちがバッタバッタとエログロ満載の中、爽やかにあとくされなく、ときにニヒルに死んでいくものだけれど、本作、エログロこそ満載だけれど、読後感はなかなか重く、山本周五郎の『』のような不条理なまでに厳しい世界を見せられた感じ。 鴻巣、高崎などが死闘の舞台になるので、高崎線沿線の読者には親近感の湧く忍法帖と言えるでしょう。 | ||||
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上記を題材にして、例の如く忍者達が暗躍する。三派で構成される公儀忍び組(甲賀、伊賀、根来)がそれぞれどの様に協力し合い、はた又、潰し合うのか? | ||||
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「忍者と隠密は、悲壮であり滑稽であることを以って本領とする。心の自然を絶対排除しなければならんからじゃ」 伊賀、甲賀、根来。 それぞれ主君より命ぜられた任務の為に命を賭して遂行する。 公儀隠密もまた、自分の思いを殺して主君の命を遂行すべくただ邁進する。 想いを寄せあった二人も、ただ夢幻の楼閣として担がれた駿河大納言も、それぞれの使命と、心と、諦観でもってすれ違っていく。 腹の内を探り合い、あるいはその内を察しながらも心の自然を排除したが故の悲壮な最期。 まさに、忍の一字。 | ||||
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「こいつはとんでもねぇエログロバイオレンスな本だぜぇ!」と嬉々としながら、 幕府、伊賀、甲賀、根来と様々な思惑が複雑に交錯しつつ2転3転していくストーリーを思う存分に堪能できる。 そのまま終わっても、「エキサイティングな本だったぜぇ!」と満足して本を閉じることもできたのだけど、 全貌が明らかになるラストでは意外な驚きとともに、封建制度の中における人の儚さと悲哀が胸を打ち、複雑な余韻を残す。 うーん、ファンタスティック。 | ||||
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