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忍びの卍
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【この小説が収録されている参考書籍】
忍びの卍の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全12件 1~12 1/1ページ
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冒頭、椎ノ葉刀馬は、主君・土井大炊頭(おおいのかみ)より密命を受ける。伊賀・甲賀・根来の代表選手の中から最も優れている一派を吟味しろ、と。そして、その3選手と1人ずつ対面していくのだが…。根来は虫籠右陣(むしかごうじん)、伊賀は筏織(いかだおり)右衛門、そして甲賀は百々銭十郎(どどせんじゅうろう)。名前だけでも対面が憚られるが、彼らの有する忍法はとてもこの世のものとも思えないものばかりだ。 銭十郎は、お国と化した右衛門を<あれは女ではない>と見抜く。そのお国は、右陣の<唾液にぬれひかる真っ赤な大きな舌>で全身を舐めあげられて、<「あら、切なや」と吐息をもらした女の実体が男であると知ったら、これは異次元の怪奇と形容するしかない。>まして、銭十郎は全身に栗の花の匂いのする液体を充満させて女を狂わせる。とまあ、そんな風な妙ちくりんな忍法合戦ではある。 彼らの監査役である刀馬も戸惑うほどだが、それでも、ここに刀馬の許嫁である「お京」が参入してくるまでは、まだ何とかなると思っていた。しかし、彼女は、<ぱっとはなやかな日の光がさしこむよう>な目をした健気な娘である。それだけではない。刀馬のお役に立つならどんなことも厭わない。律儀を通り越して、そう、まるで「らんまん」の寿恵子(万太郎の妻)のような伝法な面をもあわせもった一本気な娘でもあった。面妖な忍者合戦とその調停役、さらに「お京」が登場して一切合切が狂いだしカタストロフィへと歯車が回り出すのだが、実は、彼女はトリガーではあっても、真因ではなかった。真の深謀遠慮は、すべてあらかじめ設定済みであったのだ。 この事実は、冒頭と同じく最期に、椎ノ葉刀馬が主君・土井大炊頭より打ち明けられるまで読者にも伏せられている。これを知ったときの刀馬の狂気めいた苦悶をわれわれも波濤のごとく全身に浴びることになる。あの凄惨にして滑稽、血みどろにして実験的、大胆にして繊細極まりない絶体絶命の忍法合戦がすべて深謀遠大なるプランニング上の人形浄瑠璃であったとは! 刀馬が最後に主君に対して(かどうかもわからない。冥府に向ってか?)つぶやく<卍組>の結成には涙がちょちょ切れてたまらない。 | ||||
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駿河大納言徳川忠長をめぐる忍び達の暗闘。 駿河大納言といえば南條 範夫の『』(漫画『シグルイ』他の原作)の残酷狂気の暗君ぶりが記憶に残っているけれど、本作では歴史のなりゆきから家光治世の幕府に虐げられる哀れを催す人物に描かれている。 風太郎の忍法帖では忍者たちがバッタバッタとエログロ満載の中、爽やかにあとくされなく、ときにニヒルに死んでいくものだけれど、本作、エログロこそ満載だけれど、読後感はなかなか重く、山本周五郎の『』のような不条理なまでに厳しい世界を見せられた感じ。 鴻巣、高崎などが死闘の舞台になるので、高崎線沿線の読者には親近感の湧く忍法帖と言えるでしょう。 | ||||
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上記を題材にして、例の如く忍者達が暗躍する。三派で構成される公儀忍び組(甲賀、伊賀、根来)がそれぞれどの様に協力し合い、はた又、潰し合うのか? | ||||
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「忍者と隠密は、悲壮であり滑稽であることを以って本領とする。心の自然を絶対排除しなければならんからじゃ」 伊賀、甲賀、根来。 それぞれ主君より命ぜられた任務の為に命を賭して遂行する。 公儀隠密もまた、自分の思いを殺して主君の命を遂行すべくただ邁進する。 想いを寄せあった二人も、ただ夢幻の楼閣として担がれた駿河大納言も、それぞれの使命と、心と、諦観でもってすれ違っていく。 腹の内を探り合い、あるいはその内を察しながらも心の自然を排除したが故の悲壮な最期。 まさに、忍の一字。 | ||||
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「こいつはとんでもねぇエログロバイオレンスな本だぜぇ!」と嬉々としながら、 幕府、伊賀、甲賀、根来と様々な思惑が複雑に交錯しつつ2転3転していくストーリーを思う存分に堪能できる。 そのまま終わっても、「エキサイティングな本だったぜぇ!」と満足して本を閉じることもできたのだけど、 全貌が明らかになるラストでは意外な驚きとともに、封建制度の中における人の儚さと悲哀が胸を打ち、複雑な余韻を残す。 うーん、ファンタスティック。 | ||||
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山田風太郎の小説は漫画アニメのルパン3世そっくりで奇想天外で娯楽性がたかく、しかも歴史事実をよく読みこんでいる。特に明治の文明開化を舞台とした作品に優れたものがある。彼の得意のジャンルに忍者物があり、その豊かな才能が花咲いている。この忍びの卍は徳川幕府始まりのころ、甲賀、伊賀等忍者の三家からどの系列を忍びの者として幕府に選定お抱えするかを舞台にしたものである。選ばれた系統は良いが、選に落ちた家系は面目失墜、一族の存亡にかかわるので一大反撃ににでる。女性に変身し家光将軍をたらしこんで蹴落とし、家光より聡明な弟を将軍に担ぎ上げ失地挽回しようとゆう魂胆である。かなり頑張って三分の二ぐらいまで読んできたが、余りの荒唐無稽にあきれ、頓挫したので評価は星三つにした。 | ||||
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この本は割とエログロ指数は高めの本です。 なぜならば、3つの流派の忍術にはいずれも 女体を用いる忍術が使われているため。 最後の甲賀の忍術は一番強烈でしょう。 そんな男がいたら世界は終わります(笑) そんな忍術を定めてくるように言われたのは 自身も凄腕の剣の使い手である椎ノ葉刀馬。 はじめは彼らの術に半信半疑でしたが それを目の前で見るとだんだんと驚きを 隠しえなくなります。 ですが… これらの出来事にはどうやら 裏がある模様です。 そのすべてが終わり、 物語が終わる前… きっとしみじみと来るに違いありません。 彼はそれだけ純粋な人間だったのです。 時代というのは時に残酷にさえなります。 とっつくまでが少し苦労することでしょう。 | ||||
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この作品は私の読んだかぎりでは数ある忍法帖の中でも5本の指に入る傑作だと思います。しかし解説ではなかなか文庫化されていなかったということで今回の角川シリーズで手に入れることができてうれしく思います。 今回は忍法の数を減らして変わりにそれぞれの忍法を詳細に描写しています。その結果忍法の改良という面白い技術的な試みがなされています。単に奇想天外な技を見るよりそれを工夫していく過程は舞台裏を見るようでわくわくします。 もちろんストーリーも素晴らしいです。さみしさの中にすがすがしさも感じさせるラストには人間としての誇りを感じます。 | ||||
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忍法帖シリーズにはどの作品にもある程度テーマ性があり、そのテーマに基づいて書かれている作品が多いと思います。 例えば「忍法忠臣蔵」は忠臣蔵のストーリーを基に忠義と反骨を。「風来忍法帖」では山田風太郎らしく「七人の侍」的に忠義と愛を描いているように思います。忍法帖シリーズが一括して貫かれているテーマは、大切なものを、または自分を亡くしてでも国あるいは人に尽くすという忠義、自己犠牲の精神で、その結末には誰もが哀愁を感じえずにはいられれません。 本作はその自己犠牲という忍法帖シリーズの根幹的なテーマに真正面から挑んだ作品だと思います。本文中に出てくる、「大儀親を滅す」という言葉は忍法帖シリーズの根幹をなしているのではないかと。本作は傑作というよりも、「重要作」といってもよいと思います。 とりあえず、忍法帖好きは必読です。 | ||||
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忍とはただ「忍」一字。このセリフがかっこよかったなぁ。 圧倒的な力をもった忍法も、ただ公儀の力の下でのみ発揮される、 哀しい強さなんだなぁ、と。 主人公、刀馬の最後の行動にはハッとさせられるものがありました。 | ||||
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2人の忍者VS1人の忍者と1人の剣士。 その3人の忍者の能力がそれぞれ、「あらゆる攻撃を回避する」「女に乗り移って遠く離れた場所から安全に攻撃できる」「遠くの敵を切り裂く」など、どう考えても最強じゃないか!と思えるものばかり。 はじめ、単純な話に見えるけど、実はその裏にとんでもないスケールの謀略が張り巡らされていた事が最後に明らかにされる。 派手さはあまりないけど、話も戦いもおもしろいし、登場人物が少ないので一人一人のキャラが立っているのも良い。 | ||||
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山田風太郎忍法帖の大傑作!! すべての予備知識なしで、早く入手して読むべきです。 予備知識があっても面白いけどまっさらで読んだほうがもっと面白い。 講談社ノベルズの裏表紙も読まないほうがいいです。 卍の如く絡み合った展開の果てにくる圧倒的なカタルシスは超一級品です。 これ以上は書けません。 早く書店へ行きましょう。 | ||||
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