銀河忍法帖
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読了し、すべてを知ってしまった当方からすれば、今からこの物語の迷宮へ誘いこまれる者こそ幸いなれ、と言うしかない。『全仕事』(角川文庫)で、“無頼の徒、佐渡に立ち金銀の帝王に不敵に笑う”とキャッチ・コピーされた作品とはとても思えないことだけは約束する。念のため、“金銀の帝王”とは、大久保長安という実在の人物であることは申し述べておこう。そして、“無頼の徒”とは、六文銭の鉄と自称する者だ。つまり、正体は別にある。しかし、そんなことはどうでもいい。尤も、六文銭が依頼された「お朱鷺」だけは別だ。彼女と六文銭がどこから何をしにやってきたかということがどうでもいいだけだ。 何しろ、最後から六行目にはこうある。<地上の知覚を以てしては測ることの出来ない時間が流れた。>最終的にここに逢着する物語とはいったい何か?読む前には誰も想像すら及ばないだろう。いや、読んだ後でさえ、しばらく呆然としてしまうほどの境地と言ってしまいたい。その前に、ようやく巡り会えた2人の様子が次のように活写されている。<彼女は六文銭を見て、にいっと笑った。><いや、凱歌と哀しみがまじり、燃えあがり、名状しがたい凄愴な炎にふちどられている女の姿であった。><それを見つめたまま、六文銭は阿呆の銅像のように、いつまでもそこに立ちすくんでいるだけであった。> いったいこの2人の関係は如何?確かに六文銭の正体は、この物語を底辺から覆すような意外性と衝撃性をそなえたものではある。それまでの彼は白痴に近い性欲の権化であり、それでも油断ならない使い手であるというだけの得体の知れない怪人であったのだから。ただただ「お朱鷺」(さま)の「ご褒美」をもらいたいためだけに命がけの修羅場をくぐってやまないだけの下僕のような男でしかないように見えていたのだから。それでも、彼の正体なぞより圧倒的に深い懸崖のような思いがけない想いに打たれてしまったのだ。 それは、いわば風太郎忍法帖でさんざん描かれてきた忍びの者の冷酷な掟といえないこともない。しかし、それをこれだけのポエジーにまで高めたことがかつてあっただろうか?そこに打たれたのだ。 従来であれば、服部半蔵(長安の婿!)の部下である安馬谷刀印、牛牧僧五郎、孤坂銀阿弥、象潟丈兵衛、魚ノ目一針と、長安の愛妾であるお船、お汐、真砂、お凪、お珊の、それぞれ忍法と近代兵器を駆使した腕比べだけでも腹いっぱい堪能してしまうのだが、本作では、それらは前菜でしかないと言い切ってもいい。彼らが本領を発揮しよう(としてし損なう)のは六文銭と絡むことで本望となるのだ。山風の作風の一つに、主人公はとんでもない危機の中でも決してうろたえたりしない。そして読者も決してハラハラすることなしに、今度はどんな手を使ってこの難事難関を乗り切ってくれるのかにワクワクしてしまう、というのがある。今回もその望みは次々にかなえられるが、最終的にはそれ以上の地獄の門が待っているという結構。そして、その地獄においてこそ咲き誇る花もあるという………あゝ、よけいなお饒舌はもはや不要だ。いつもよりさらに何重にも張りめぐらされた山田風太郎の幻妖なる迷宮の底の底に降りて行ける歓喜に浸り尽くさんことを! | ||||
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山田風太郎は最高です。 文句なしに面白い! もっと色々出して欲しい。 | ||||
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忍法帖長編の中で屈指の面白さ、文句のない傑作だ。主役は創作キャラ「六文銭の鉄」だが、本当の主人公は敵役として出ずっぱりの大久保長安であり、もっと言えば長安の合理的精神。 風太郎好みのマッドサイエンティスト的妖人として、しばしば忍法帖に登場する大久保長安だが、ここではその魅力が炸裂している。実に面白い。長安の口から語られる気宇壮大な日本の科学的発展プログラムは、時に家康の国政への根本的批判となり、さらには歴史に通底する日本人の非合理性への批判となって現代にまで及ぶ。 大久保石見守長安(ながやす)は武州八王子三万石領主。徳川幕府草創期において蔵相、通産相、運輸相、建設相、軍需相をかねる存在だった。 武田家の猿楽師の家に生まれ、信玄の下で税務財政に才能を発揮、特に鉱山開発に天才を示し「甲金」を生み出す。 武田滅亡のあと家康に見出され、佐渡では精錬に水銀を利用したアマルガム法を初めて採用。世界的にも最先端の精錬法だったが、どのようにして習得したかは不明・・・。 風太郎の小説はいつも結末部が素晴らしいが、本作のラストの凄まじさはちょっと形容のしようがないほど。オチとしては「忍びの卍」、短篇「変化城」と同系列だが、日本人の根幹に触れるところがあって味わいはさらに複雑であり、いろいろと考えさせられてしまう。エンタテイメント時代小説でここまでの読後感を残すストーリーはほかにないだろう。 それにしても徳川家康というのは不思議な運の持ち主だ。幕府開設とほぼ同時に佐渡金山が発見され、そこに長安という天才的なエンジニア/プロデューサーが居合わせるのだから。そして徳川専制270年の基盤は佐渡(と、大阪城から奪ったという秀吉の財宝)なしには築けなかったろうから。 | ||||
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山田風太郎らしいエログロ世界をこころゆくまで 堪能できる作品です。 ただし、そのエログロ度は有名な作品の「くノ一忍法帖」よりは 控えめになっています。 それでもやはりところどころに思わず赤面してしまいそうな 性描写があります。 ただし、ダイレクトではないところは救いでしょうか。 一人の男と女、 彼らは同じものを倒すものたち。 彼らの仇というのもまた強烈な人物です。 たしなむものが気分が悪くなるであろうこと請合いなのです。 それは…とてつもなくグロい、とだけ言っておきましょう。 爽快感あふれる作品ですが 最後の終わり方は特殊となっています。 それが著者らしく、淫靡なのです。 でもファンにとってはそれが面白いところ。 面白いですが万人にはうけない作品です。 | ||||
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これまで読んだ忍法帖の中でも異様な雰囲気を持った作品。舞台が全盛期の佐渡の金山で、悪の親玉大久保長安とその取り巻きが西洋科学に通じそれを実践している。いつもながら当時の状況に関する綿密な調査に基づいて(本当に勉強になる!)、予断を許さないストーリーが展開する。多彩なキャラクター、炭坑・赤玉城などの特異な場面設定、主人公六文銭とくの一朱鷺の次第に高まる連帯感など魅力は多いが、なんと言っても主人公の正体と暗躍の動機が最後まで明かされないのがいい。 物語は美しくもショッキングな結末を迎えるが、この国が経験した260年にも及ぶ閉鎖的で自己充足的な時代の意味について考えさせられる。 | ||||
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