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仏果を得ず



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【この小説が収録されている参考書籍】
仏果を得ず
仏果を得ず (双葉文庫)

仏果を得ずの評価: 4.49/5点 レビュー 91件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.49pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全91件 41~60 3/5ページ
No.51:
(5pt)

相変わらず上手いね。

ストーリーを読ませる腕はピカイチだと思いますし、テーマの目の付け所はさすがだね。
大好きな作家のひとりです。
仏果を得ずAmazon書評・レビュー:仏果を得ずより
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No.50:
(4pt)

文楽に貢献しているのは間違いない。

うーん。確かに文楽を扱った小説としては完成度が低いかもしれない。しかし、この小説が文楽に貢献していることは疑いようもない。以前に能について書かれた白洲正子の文章を読んだことがある。この筆者の随筆が流麗で好んで読んでいたのだが、当時は能がすごいものらしいということはわかったが、面白さがさっぱりわからなかった。玄人が玄人に向けて書いているのである。伝統芸能は常に時代の制約を受けている。見るものに、教養を強いるのである。
 この物語の中で演者である主人公が物語に感情移入できずに苦しむ場面がある。あることをきっかけにして突然天啓のように閃く。誰しも体験があることなのではないだろうか。物語の筋だけでなく、こうしたことも文楽の面白さなのではないだろうか。一度劇場に足を運んでみようかなと、思わせる小説でした。
仏果を得ず (双葉文庫)Amazon書評・レビュー:仏果を得ず (双葉文庫)より
4575514446
No.49:
(4pt)

金色に輝く仏果などいるものか。成仏なんか絶対にしない。生きて生きて生きて生き抜く。

著者は、76年東京生まれ、『格闘する者に○』でデビューした三浦しをん。
(2011.7.17  2013.4.17 第7刷発行)

高校の修学旅行で人形浄瑠璃を見て以来、健は義太夫の虜になった。
周りから見てもバカに見えるほどの情熱を傾ける中、ある女性に恋をする。
芸か、恋か──人を愛することで義太夫の肝をつかんでゆく青春小説。

登場人物が多いので、最初は世界観に入るのに難儀したが、入ってしまえばとてもユーモアと人情に溢れた三浦ワールドに惹き込まれていった。

人形浄瑠璃の題目を与えられるごとに、その登場人物の気持ちが理解できずに苦悩する健は、色々なエピソードや経験を基に登場人物の背景や感情が理解できるようになり、技術を磨くとともに人としても成長を重ねる。
振り回されながらも素直に対応し、心の中で小さく愚痴る健が好きだった。

読み終わって驚いたのが、三浦氏が東京出身だったこと(本書が初・三浦)。
人形浄瑠璃の知識もさることながら、卓越した関西言葉には郷愁の念を抱いてしまうほどで、次に読む三浦しをんも非常に楽しみになってきた。

───「幸せにしたろとか、助けてあげんととか、そんなんは傲慢や。結局、お互いにもたれかかってぐずぐずになるで。地球上に存在してくれとったら御の字、ぐらいに思うておくことや」(誠二、p.215)

───そうだ、このひとたちは生きている。ずるさと、それでもとどめようのない情愛を胸に、俺と同じく生きている。文字で書かれ音で表し人形が演じる芸能のなかに、まちがいなく人間の真実が光っている。この不思議。この深み。(p.240)

───金色に輝く仏果などいるものか。成仏なんか絶対にしない。生きて生きて生きて生き抜く。俺が求めるものはあの世にはない。俺の欲するものを仏が与えてくれるはずがない。(p.310)

2014/07 (05/92)
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No.48:
(1pt)

期待はずれを通り越して

文楽の世界をテーマにした小説には有吉佐和子氏や梁雅子氏、瀬戸内寂聴氏の作品がありますが、いずれも人形遣いや三味線のお方を主人公としたもので、大夫を主人公とした作品は初めてですので随分期待して、拝読しました。
 著者は文楽をこよなく愛しておられることはよくよく承知しておりますが、当該作品はまったくの期待はずれでした。
 
 まず筋立てに一貫性が無く、どの人物像も曖昧で,生きていない。主人公の心情はくどくど書かれていますが、「すべてをささげても惜しくない」と思うまでにいたる過程が、すなわち成長の過程が つかめない。
 
次に、主人公が文楽の世界との出遭いもあまりにわざとらしく、陳腐な状況設定で説得力を持ちません。(「鑑賞教室」に「仮名手本忠臣蔵」の九段目を出すか?人間国宝が出るか? という疑問はさて措いてです。) 

 また具体的地名や施設名を示して現実感を出そうとしておられますが、そこだけ水に落とした油のように浮き上がっており、情景描写も瑣末な描写を入れ現在形を多用すれば臨場感が与えられると考える、素人小説の悪弊を未だに引きずっている感が否めません。

 さらに上演されている舞台の描写や演目解説には、著者の思い入れが過多で、押しつけがましくさえあります。

 そのうえ、享受者である観客の反応の描写が紋切り型に過ぎ、劇場・舞台・観客のそれこそ「三位一体」で形成される場の気配が微塵も伝わらず、その結果、文楽の世界全体が醸し出す雰囲気という作品の根底が無いままに、「若手大夫の成長」を描こうとしたところに、この作品の最大の難点があるといえます。「じわがくる」ということばを著者はご存じかどうか知りませんが、その雰囲気を感じさせないで、舞台を描いたとは言えますまい。

 まだお若い著者ですから、触れた資料に限りがあるのは無理もないと言えますが、巻末に掲げられた主要参考文献の少なさ、基本文献である三浦周太郎氏の「文楽の研究」「続 文楽の研究」、雑誌「演劇界」や「上方芸能」、山川静雄さんの「綱大夫の四季」などが掲げられていないのは、資料提示が読者の興味を深めるうえで必要と思えるだけに残念です。

 著者の文楽への思いは、充分に理解いたしております。一層のご精進のうえ、同テーマで素晴らしい作品を著されることを希望します。

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No.47:
(5pt)

少し励まされたような気になりました。

文楽(人形浄瑠璃)のお話でした。文楽を見たことがありません。ちょうど竹本住大夫さんの引退で話題になっていたので気になって読み始めました。三浦しをんさんの本は、登場人物が活き活きしていて面白い。引き込まれるように読んでしまいました。最初手にした時に、なぜこのタイトルなんだろうと?疑問に思いましたが、読み終わりまして納得しました。人間の根本のどろどろしたところを、さらりと肯定しているように感じ、少し励まされたような気になりました。
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No.46:
(5pt)

三浦さんの文楽への愛

三浦さんがどれほど文楽を愛しているか、伝わります。
伝統文化の世界の実態はともかく、(他のレビューに指摘があるように、主人公の立居振舞いや言葉遣いなどに違和感がある部分もあります)、文楽についてまったく知らない人が読んでも、文楽が奥深く、ある意味凄まじく、そして楽しいものなんだということが伝わってくるところが凄いです。あれこれ薀蓄たれるような部分がなくて、作品としての読み応えがあることが素晴らしい。
『ブラックジャック』を読んで外科医を目指す人が出たように、『ヒカルの碁』読んで碁を打つようになった人が出たように、この作品がきっかけで文楽を観る人が増えてほしいものです。どこぞのおバカな知事のように、ろくに見ることもなく「つまらない」と言うのは、本当に悲しいことですから。
とにかく、三浦さんの傑作のひとつだと思います。同じく三浦さんの『あやつられ文楽鑑賞』もあわせて読んでみるとなお楽しいと思います。
また、余談ですが、カミ(人間以上の存在)への崇敬の念が作品の要所要所で感じられたことにも感動しました。
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No.45:
(3pt)

文楽を見てみたくなりました

しをんさんのエッセイが好きで、一度小説も読んでみたいと思って手にしました。
文楽愛があふれる小説だと思いました。個々の人物も個性的ですが、特に健が恋に陥ってしまう相手の子供(ミラちゃん)の存在が物語りに個性をあたえている気がしました。
ただしをんさんの文楽愛ゆえか、こういう筆運びなのでしょうが、文楽という300年余の時を越えてうねるように伝わってきた文芸の怖さやすごさが、人物たちとなじみきっていないというか、硬い印象を持ちました。現代的な語りといってしまえばそれまでなのでしょうが。
表紙の勝田文さんの絵で漫画化してくれないかなあ。あと、この物語は太夫と相三味線の物語だけど、人形遣いの物語も読んでみたい気がしました。自分的には星3.5ぐらい。
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No.44:
(5pt)

憧れます!愚直の一念……

最初の1ページってすごく大切。
 冒頭部分で、著者の世界に入れるか、入れないか、1ページで、結構勝負は決まる!
 これまで読んだ三浦しをんさんの本は、いずれも一気読み。
 どんな世界を描いても面白いっ。
 主人公は、不器用だけれども、自分の信ずる道を突き進んでいく「〇〇バカ」って感じの人が多い。
 「舟を編む」の馬締さんたち辞書編纂者、「神去なあなあ日常」の勇気君やヨキたち林業従事者も、「風が強く吹いている」のハイジや走、アオタケの面々も……みんな、もちろん、肯定的な意味での「〇〇バカ」です。
 「愚直の一念」という言葉があるけれども、愚かに思えるほどの真っ直ぐさに魅かれ、いつも感動してしまいます。
 やはり三浦しをんさん、大好きです。
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No.43:
(5pt)

文楽を身近にしてくれそうな小説 主人公の文楽解釈の追求、だがある女性を好きになり。。。

三浦しおんさんの作品は1冊目です。
江坂図書館の返却された本のコーナーでみかけ借りて読みました。

文楽の養成所をでた若手文楽太夫が主人公で、彼の成長して行くなか、ある女性を好きになり語りの練習にも支障をきたすことがあり、という感じの小説です。
三浦しおんさんの作品は初めて読みましたが、一気に読み進めることができました。
ストーリーのテンポがよく、先え先へと読ませてくれます。
大阪には市が支援する文楽の劇場があり、いまの大阪市長である橋下氏が、文楽への支援を打ち切ると話題になったのが昨年です。

正直、文楽には興味はなかったのですが、主人公の文楽に対する情熱と小説の中で書かれている文楽の一片を読み文楽への興味を持たせてくれました。
一度、見に行こうかなと思わせる作品です。

ストーリーは読みやすいので、あまり本を読まない方でも数日で読み通すことができると思われます。
性的、暴力的な話もなく、中高校生にもお勧めします。

いま江坂図書館で三浦しおんさんの2冊目を借りて読んでいるのですが、この本とはまったく異なるタイプの小説ですが、読ませる文章であることは本書と変わりません。
他の本も読んでみたいと思っています。
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No.42:
(5pt)

文楽の世界に、少し近づける?名作!!!

文楽の世界のお話。
主人公は、健。
高校の修学旅行で文楽に出会い、魅入られて、入門した研修生あがりの若き義太夫。

芸の道は厳しいけれど、文楽をこよなく愛す、健は、常に前向き、もしくは時に落ち込むけれど全てを芸の精進につなげていくけなげな若者なので、読んでいてすごく楽しい。

周りを取り巻く師匠銀太夫、兄弟子の幸太夫、相方の三味線の兎一郎兄さん、大家?の誠二他と、登場人物もいい。
文楽の作品についてもおおよその筋がわかるように書き込んでくれていて、それだけでも文楽に近づけたような気がしてくる。

三浦しをんさんの勉強ぶり、博識で、研究熱心さがよくわかるとても素晴らしい作品だと思う。

ぜひとも、文楽を見てみたくなった。
名作だと思う。
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No.41:
(5pt)

青春小説的文楽物語

主人公の健が、文楽の修業に、恋愛にと奔走する毎日。
文楽修業へのひたむきさ、恋愛への不器用さが生き生きと描かれている中で、
文楽に隠された、今のわたしたちの人生ともつながる普遍的な物語の息遣いが
時を超えてオーバーラップしていく。

わたしは文楽を観たことがありませんが、この本を読んでみて、是非観に行きたい
と思いました。

それから、解説を最初に読んで読もうかどうか決める人が結構いると思いますが、
解説は絶対に最初に読まないでください。かなりネタばれです。読んでしまうと
話の筋がだいたい分かってしまい、もったいないです。
仏果を得ずAmazon書評・レビュー:仏果を得ずより
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No.40:
(4pt)

文楽が見たくなる、もっと知りたくなる青春小説

伝統芸って何だろう。本当に自分には縁もゆかりもない世界なのだろうか。
変わった題名だなあと思って手にとって、すっかりこの世界にはまってしまった。

文楽の世界をこんな風に描く作家がいるのか。
文化そのものを嫌悪しているのかと思うくらい、理解を示さない市長のいる大阪。
苦戦している国立文楽劇場に、強い味方となる若手を育ててくれる本なのかと
伝統文化応援に書かれた本かと思ったくらい感心、感激。

青春物とは一概に言えない年齢の主人公だが、
芸の道は若くして極められるわけではないから、設定としてはこれでよし。
それにしても兎一郎の相方が月太夫って、月に兎じゃ、主人公勝てない。
健康の健のネーミング、意味深。
帝塚山と寝屋川、緑地公園や豊中の辺り、
土地勘のある人間には楽しい背景。

土地柄も人間関係も自分の身に引き寄せて考えさせられる、
仕事に打ち込む人間の横顔を、伝統芸と青春を交えて打ち上げた、
心温まるストーリー。本当に久しぶりに文楽劇場に足を運びたくなる!
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No.39:
(4pt)

ジョースター

まるで漫画を読んでいるみたいに楽しく読ませていただきました。
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No.38:
(5pt)

無間地獄の沈まば沈め

初三浦しをんだったが,浄瑠璃と青春小説を上手く融合させて,その筆力に瞠目。読みながら文楽の台詞と共に三味線の音が聞こえてくるようで贅沢な仕上がりになっていて,何倍も楽しめる。今後の活躍にさらに注目。
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No.37:
(5pt)

文楽愛をものすごーく感じます!

歌舞伎は何度も見に行ってますが、文楽なんてしょせん人形劇。
ハイ、私はそう思っていました。
これを読んだら、文楽を見に行きたくてしょうがない。
読み終わった翌日、文楽協会のHPを開いて公演スケジュールとにらめっこしてました。そんな人がいっぱいいるに違いない(笑)
橋下知事もこれを読んでから、見に行ってほしかった。(今はもう興味ないだろうけど〜)
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No.36:
(4pt)

健太夫がんばれ!

学校行事で義務的に参加する講演会とか観劇会とか、寝るなといってもかなり無理なシチュエーションだけど、高校の修学旅行で強制的につれて行かれた文楽観賞会で、健(この物語の主人公)は「がーん」石をぶっつけられたみたいな衝撃を受けます。そして『グレている』『要注意の生徒』で、卒業後のことなんて真剣に考えたこともなかった健が、なんと、そのときの「がーん」が忘れられなくて文楽の研究所に入所してしまいます。そして無事卒業、「がーん」の発生元、義太夫の銀太夫の弟子入りし、大夫への道を歩み始めるんです。

お話はこのあとしばらく時間がたってから、健がそこそこ一人前に舞台を務められるようになったあたりから始まります。

ちゃらんぽらんな高校生男子を「がーん」とさせ、将来の進路を決めさせてしまう文楽ってなんでしょう。詳しい人って少ないと思うんです。難しそうって敬遠したくなる感じもありますよね。

でもね、文楽の太夫として芸を極めたい! 健が情熱と努力を傾ける先が、たまたまなじみの薄い伝統芸能だっただけで、イチローやダルビッシュにあこがれて、将来大リーガーになる、決意を固めるのとちっとも変わらない、要はきっかけの問題なんだなと、健の懸命さに実感します。

こういうふうに書くと、芸道一直線のお堅い物語みたいな印象ですが、三浦しおんさんのそこはかとないユーモアが、しっかりとまぶされているし、どことなく田中啓文さんの『笑酔亭梅寿謎解噺』に似た師弟関係にも笑えます(あそこまでかっとんでませんけどね)

たとえば恋愛は自主規制したはずなのに、ひとめぼれをしちゃって悶々としたり、師匠の夫婦喧嘩の板挟みで冷や汗をかいたり、健、がんばれ!!! ついつい応援したくなってしまうし、もちろん芸に対する真摯な苦悩もありで、読み進めるうちに、すっかりストーリーに取り込まれてしまいます。

それと最後にもうひとつ、文楽に関して、さりげなくも丁寧な説明解説が織り込まれているので、文楽なんて知らないし興味ないでもだいじょうぶ。読み終わる頃には一回ぐらい文楽ってものを見てみようかなという気持ちになる(と思います)
なんだか興味あるけど敷居が高いかな、そういう方には、ぜひぜひおすすめ。ご一読を。
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No.35:
(5pt)

何かに夢中でいられる、そんな青春が見える作品

文楽の世界を中心にした作品です。が、文楽入門というよりは
文楽に青春を賭ける人々のお話といった方がいいのかと思います。

主人公・健が文楽の世界に、研究生いわばしろうとから踏み込んでいきます。
この作品では文楽の世界がわからなくても
十分に感情移入できるように、
あくまでも健のプロになろうとすることへの苦しみやもがきを土台に描かれています。
健が乗り越えていこうとする課題と文楽の演目がうまく絡めてあって
人間関係も織り込みながら、健の心の成長や葛藤が暗くなりすぎません。
また、まわりの重鎮たちや健とコンビを組む兎一郎も個性的なキャラで読んでいて楽しく
声を出して笑えるようなところも有りました。

文楽に詳しい方にとっては、また違う見方があるのかもしれませんが
知らなくても知らないなりに楽しめて、
何かに夢中になることは、苦しいけど幸せも感じられるという
そんな青春を感じられる読み物です。
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No.34:
(4pt)

初対面の真智は恋に落ちるほど魅力的?師匠を手招きしてもいいの??

とっても面白く読みました。文楽について、あ、こういう見方があるのか、と感嘆したところも多かったです。例えば「女殺油地獄」の与兵衛の解釈、下級士族を母に持ち、油屋の次男として生まれた与兵衛が魂の自由に憧れれば憧れるほど抱くやり場のない閉塞感、から、成り行きで親切な近所の主婦を殺してしまった悲劇を描くことによって、「あらかじめ定められた生への疑問」を近松が与兵衛に托したという解釈には、なるほど!と納得しました。私は「油地獄」が好きになれなかったのですが、是非もう一度鑑賞したい、と今は思います。この作品のすごいところは、この本を読んだ多くの人に「一度文楽が見てみたい」とか「あの作品がもう一度見たい」とかと思わせるところだと思います。
 しかし、文楽に関してではなく、登場人物に関して不満に思う点が二点あります。
 一つは、「油地獄」で初めて出会い、健が一目惚れする真智が、この時点ではそれほど魅力的には描かれていないために、私は健の恋心に寄り沿うことができなかったということです。文楽の主人公もそうだったように健が一目で真智に惚れたことに理屈はない、と言われても納得しがたかったです。なぜなら、文楽では人形の美しさや、義太夫と三味線の切なさが、主人公の一目惚れを観客の心に訴えますが、小説であるからには筆で真智の魅力を描写していただかないと、読者は恋に落ちた健に共感できないからです。真智は後にはそれなりに魅力のある人としても描かれるわけですが、初対面の場面では健に一目で惚れさせてしまった具体的な魅力には乏しいです。むしろ「疎開物の映画に教師役として出てきそう」な藤根先生の方が、『瀬戸内少年野球団』の夏目雅子を連想させることから、その魅力が彷彿とします。
 不満の他の一つは、健の師匠に対する態度です。p.143の「ちょうどよかった。師匠、師匠」健は手招きし、窓辺に座るようにうながした、という箇所ですが、師匠を手招きしたりしてもいいのでしょうか??私には長上を手招きするなんてできないなあ、と強い違和感を抱きました。加えて、弟子が師匠と話すとき、自分を「俺」なんて言ってもいいのでしょうか。私自身は、実は教師なのですが、学生が私に向かって自分を「俺」と言ったら、注意しますね。「私はあなたと話す時『私』と言っているのですから、あなたも『俺』と言わないで下さい」と、言います。私は学生が「僕」というのは許容しますが、私の先生は学生が「僕」と言うと、「相対的に『君』と言われているような不快感を相手に与えるから、『僕』と言わないほうがいい」と注意なさっていました。銀師匠は自身を「俺」と言っていますが、たとい銀師匠が「俺」と言っても、弟子の健が「俺」というのはいかがなものでしょうか?…それとも文楽のお弟子さん方は「俺」と言っているのでしょうか?些細なことですが、p.129の「しばらく修業に打ちこんでいるうちに、中学生みたいな恋しかできなくなったみたいだ」という文は雑駁です。
 文楽への造詣の深さで☆4にするか、小説としての荒さで☆3にするか、迷うところですが、全体として楽しめましたし、「お迎え」も近づいた今、意地悪するのも後生が気遣われますので☆4です。
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No.33:
(5pt)

文楽というもの

この本を読んでの感想は皆様がお書きになっているので、ちょっと違う視点から書き込んでみたいと思います。
「仏果を得ず」を読んで、文楽というものについての認識がガラリと変わりました。
文楽が全盛期であったころを現代として生きた人々にとって、文楽とは我々の世代におけるラップのようなものだったのかなと思いました。
歌うのではなく語りであること。三味線との掛け合いであること。人形浄瑠璃はラップと同時に上映されるPVかな?(笑)
文楽の描く世界観は、現在に生きる私たちとって理解しがたいし共感しがたい。しかし人生はいつの世にも不条理で、理不尽なことばかり。
だからこそ健は、八重垣姫の狂気を、身勝手な治平の最後の誠意を、堪平の無念を、我が身に引き寄せて謳い上げる。それが多くの人々の感動を呼ぶ。
畳み掛けるような語り、弾けるような三味線の音、盛り上げて盛り上げて、山場の後にやってくる虚しいほどの静寂。おそらく三百年後の人々にも同じ感動が共有されるであろうと、それが可能であると、信じられる。文楽ってスゴイなあ。
最終章を読みながら、ずっとラップが頭の中で鳴り響いていました。普段ラップなんて聞いたこともないのに(笑)
このような解釈が成り立つと教えてくださった作者に、心から感謝して、これからじっくり文楽を学んでみたいと思います。
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4575514446
No.32:
(4pt)

ミラちゃんカワイイ

まずは人形浄瑠璃についてふれておきます。
なんやかんやで人形劇です。人形は三人で操ります。これを人形遣い。
効果音を担当するのは三味線。
台詞を言う者を大夫(たゆう)と言います。

この話は、大夫の道を極めようとする健(たける)の物語。
一話一話は短編で、浄瑠璃の題目と健の葛藤がリンクするオシャレな作り。
笑いもふんだんに盛り込まれています。
阿呆な比喩もちょこちょこ。
終章(八章)仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)では、人形が演じる主人公と健が一体化する。
「うわ〜」と鳥肌ものでした。惜しむらくは、健と周りの人との関係のその後が蛇足でした。親切な説明も善し悪しですね。
大阪に土地勘があれば、別の楽しみ方もできます。
谷町筋、千日前、寺町、黒門市場などなど、私には懐かしい響きでした。
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4575514446

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