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四つの凶器
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【この小説が収録されている参考書籍】
四つの凶器の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.45pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全4件 1~4 1/1ページ
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名探偵アンリ・バンコランが魅せる、最後の輝き。 この作品を一言で表現するならば、この言葉に尽きるだろうと思う。 本書『四つの凶器』は、アメリカの小説家、ジョン・ディクスン・カーによって書かれた“バンコランシリーズ”の最後を飾る推理小説だ。金持ちの道楽息子、ラルフ・ダグラスが自身の結婚を機に、高級娼婦ローズとの関係を清算しようとする。彼女が待つ別荘に足を運んだダグラスだが、そこにいたのは変わり果てた姿のローズだった。遺体のそばにはカミソリ、ピストル、短剣、睡眠薬という『四つの凶器』が残されていた。いったい誰がどのようにしてローズの命を奪ったのか。そしてその動機は。この難問に向き合うのが、アンリ・バンコランなのである。 本書には「繊細な人間模様」が描かれている。本書の魅力は、単純なトリックあばきではなく、人間の心理をていねいに描き上げているところだ。ダグラスを取り巻く怪しげな人間関係。それぞれの思惑と、犯行の動機。事件の関係者がそれぞれ「合理的」に行動することで、結果的に事件が複雑になっていくという「不合理」を招く。そしてその不合理を見事に解き明かしていくバンコラン。複雑に絡み合った人間模様が解きほぐされていく瞬間は、読者にとって至福のカタルシスとなる。「なるほど!そういうことだったのか!」と。 特に、物語の終盤で繰り広げられるトランプのシーンは圧巻で、読了後には脱力してしまうほどだ。わたしたち読者の思考でさえもバンコランは手のひらで転がしているのではないかと錯覚させられてしまう。バンコランは老いてもなお、その眼光の鋭さには変わりがない。その姿には畏敬の念すら感じる。バンコランファンのみならず、初めてこのシリーズに触れた読者も彼の虜になるだろう。 この作品には、推理小説では敬遠される「偶然」という要素が組み込まれている。推理小説が好きな読者はアレルギー反応を示しそうなものだが、この作品は「偶然」という要素を抜きには語れない。偶然を逆手にとって物語に深みを与えるプロットには舌を巻くしかない。「密室殺人の王者」の異名を持つ、ジョン・ディクソン・カーの手腕をまざまざと見せつけられる。 『四つの凶器』は長編小説ではあるが、コメディ要素も強く、とても読みやすい作品になっている。推理小説に慣れていない人にもおすすめの一冊だ。空想の世界に没頭し、忙しい毎日から頭を開放させるには格好の作品である。ぜひ本書を手に取って、最後の事件に向き合う、名探偵アンリ・バンコランの勇姿を心に刻んでほしい。 | ||||
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この「四つの凶器」だけがなかなかなくて、あってもやけに値段が高く、手に入れそこなっていたが、やっと新訳が出て手に入った。読み始めて思ったのは、この先、バンコランではなく、フェル博士かHMが出てくるんじゃないか、という雰囲気で、初期のバンコラン物のおどろおどろしさは薄い。いいか悪いかは好みの問題。カーマニアならぜひどうぞ。カーを初めて読む人には、他のものをお勧めします。 | ||||
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平成以降に生まれた方、「おさんどん」という言葉わかりますか? 新しく訳し直されたこの文庫の中で何度か出てくるのですが、 同じ80年前の小説でも日本のならともかくカーの世界では違和感を覚えます。 この言葉、昔の本ではどう訳されていたか確かめようと思ったのに、 わが家のライブラリーを探してもポケミスが見つからない・・・。 ▼ ▼ 『夜歩く』『髑髏城』・・・悪魔的ムードの長篇で活躍してきたアンリ・バンコランも予審判事の現場を退き、 すっかりアクが抜けたオジサマとなっての最後の出番。相棒だったジェフ・マールはもういない。 ピチピチのマグダ・トラー嬢と早く結婚したくて元愛人の高級娼婦ローズ・クロネツとの関係を完全精算すべく、 裕福な青年ラルフ・ダグラスは弁護士リチャード・カーティスを伴って彼の別宅を訪れたところ、 問題の元カノ/ローズは殺害され、残されていたのは拳銃・短剣・剃刀・睡眠薬・・・。 前半は本格風オーソドックスな事情聴取で、筆名「オーギュスト・デュパン」を名乗る新聞記者の横槍もありつつ、 バンコランの見立てが語られ始める13章あたりから容疑者紛糾、目が離せなくなってくる。 本作の原題を直訳すると「四つの偽の兇器」。その意味を考えつつ読んでみたい。 幾つものの兇器が残っていた真相もさながら大詰めではバンコランがある罠をしかけ、 アリバイ問題が急浮上してくるところなど一筋縄ではいかないのだけど、 それまでバンコランが手掛けた事件と比べると物語のスケールがこじんまりしているし、 結末の衝撃度はA級とまではいかないかも。 しかし本作は昔のポケミス以来の新訳かつ初文庫化で誰でも入手しやすくなった。 全作を現行文庫で読めるようにしない事には、カーの評論やガイドブックはいつまで経っても刊行されんぞ。 ポケミス時代の訳が私の嫌いな村崎敏郎で、今回は和邇桃子。新訳にこういう問題はつきまとうものだが、 戦前の小説に例えば「バレバレ」なんて言葉遣いは・・・読み易さも大事だが全体的に品格が欲しい。 ▽ ▽ 本書しかり、今やっている「名作ミステリ新訳プロジェクト」の帯は前のゴチャゴチャ文章が踊っていた赤帯の時より、 スッキリした見栄えになった。(どうして日本人は帯にまで煩く宣伝文句を詰込みたがるんだ?) でも同プロジェクトで解説のページ数が減らされてしまったのは困る。解説も愉しみのひとつ。 これらの変化って東京創元社の社長が変わったことと関係ある? | ||||
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弁護士・カーティス青年の依頼人別宅から、依頼人の元愛人の遺体が発見される。現場に残された凶器は彼女を切りつけたと思われるナイフ以外に三つ(四つの凶器)。そして事件当夜には謎の来訪者が『二人』と、事件は意味不明の様相を呈す。読者が注目すべきは凶器か来訪者か、はたまた?本作の探偵バランコランは作者の思い入れ強きキャラであるが、HM卿、フェル博士ものと比べると一枚落ちるか。しかしながら彼が諧謔的にこの二転三転する事件を解き明かす様は見事で、意外性のある犯人、解決に至る推理の組み立ては読んで損とはならない。 提示された条件で読者も真相に到達しうるか問われるといささか難がある為、星4が妥当ではなかろうか。 | ||||
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