エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件



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初公開日(参考)1991年11月
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長編小説

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エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件 (創元推理文庫)

2007年02月28日 エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件 (創元推理文庫)

十七世紀、王政復古の英国。国王暗殺の噂が流れるなか、治安判事エドマンド・ゴドフリー卿が不可解な失踪を遂げ、五日後に無惨な遺体となって発見された。旧教徒の陰謀か、私怨による復讐なのか。虚実綯い交ぜの密告、反国王派の策動も相俟って、一判事の死は社稷を揺るがす大事件へと発展…。不可能犯罪の巨匠J・D・Cが英国史上最大の謎に挑んだ、歴史ミステリの古典的名作。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件の総合評価:8.20/10点レビュー 5件。Cランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

昔のイギリス裁判は無茶苦茶

英国の犯罪史上のミステリといえば、やはり切り裂きジャックが一番に思い浮かび、本作で取り上げられているエドマンド・ゴドフリー卿殺害事件については日本の読者には馴染みの薄いものであろう。私自身、この本に当たるまで全く知らなかった。
しかし英国ではこの一介の治安判事の殺人事件が当時の国王チャールズ二世と反対勢力であるグリーンリボン・クラブの主導者シャフツベリー卿との大規模な政治闘争の幕開けであり、またプロテスタント主体の英国の中でカトリックを振興する国王チャールズ二世とその弟ヨーク公の失墜を目論んだ宗教弾劾の側面を持つスキャンダラスな背景も手伝って、いくつもの研究本が出ているミステリであるとのことで正直驚いた。

まず本作の登場人物表に記載された人物について触れておこう。なんと全部で75人である!今まで『銀英伝』が最高だったがそれをはるかに上回った。しかしそれにも関わらず、登場人物の混乱は起きなかった。それぞれに個性があり、またカーの書き分けが素晴らしかったのだろう。
カーが本作で取った手法は、まず事件が起こるまでのチャールズ二世とシャフツベリー卿の確執、そしてカトリック教徒のジェズイット派による国王暗殺計画が進行しているという密告があったことなどから始まり、ゴドフリー卿殺害事件の発生、それを引鉄としたカトリック教徒たちへの迫害、そしてチャールズ二世政権の終焉までの、一連の事実を詳細に述べ、その後で、それら事実を検証し、カーが至った真相を自らの推理と共に披露するといったものである。つまり、通常こういった作品で取られる事件そのものの検証に直接当たるのではなく、当時英国で起こった事を膨大な資料の山から取捨選択し、1つの物語として仕上げているので、最初はなかなか核心に触れず、様々な登場人物が織成す政治的策謀を延々と読まされ、しかもその登場人物が非常に多い事から読書が非常に難航した。

しかし、これが後々にこの事件を語る上で非常に重要な部分であることが判明してくる。前にも述べたがこの事件が国王政治とその反対勢力との政治闘争とそれに加え、当時のプロテスタントとカトリックとの一大宗教闘争までに発展するのだから、事件そのものの謎よりも、この事件を誰の仕業にするのかで当時の政治バランスが変わってしまうといった代物だったのだ。

17世紀のイギリスでの容疑者への尋問、刑事裁判の内容についてカーは微細に書いているのだが、これが現代では考えられないほど恣意的であるのに非常に驚いた。
まずチャールズ二世を何とか引きずり落とそうと企むシャフツベリー卿が犯罪調査委員会の委員長に任命され、色々な容疑者を尋問するのだが、これが非常に非人道的なのだ。
なんせこの男、今回の事件を利用して国王一族の凋落を企んでいるのだから、容疑者に自分の役に立つ証言をさせるために平気で脅迫を行う。それに従わなかったらニューゲイト監獄へぶち込むという極悪非道振りである。とにかく事件に関わったもの全て、そして当時事件はカトリック教徒の手によるものだと噂されていたものだから、カトリック教徒であるだけで取り調べられ、監獄に入れられるといった傍若無人ぶりなのである。
そして当時の事件で冤罪者を数多く出す事になったきっかけを作ったタイタス・オーツなる人物。
彼は証言に際して、自分で創作した真相を語り、矛盾点が発覚すると、あの時は事件を思い出すのに連日徹夜で調査していた疲れが溜まっており、正確な判断が下せなかった、云った覚えが無い、などなど愚にもつかない言い訳を行ういい加減なぶり。しかもそれらが当時のカトリック教徒撲滅(=国王失墜)のムードに同調しているがために、裁判官もその曖昧な証言を採用し、被告人に刑を課すのだ!
つまり裁判も公平なものでは勿論なく、証人、被告人が事実を告白しても、その者がプロテスタントではなくカトリックならば、嘘をついている、証言は出まかせだといって取り上げないのだ。
いやはや、ものすごい時代である。そしてまた、それに甘んじて無実の罪を着せられ、死刑に甘んじる英国庶民もまたすごい。当時の階級社会ではお上に逆らう事自体出来なかったという時世なのだろうが、やってもいない罪で死刑を命じられ、刑に服すとは、なんともまあ、滅私奉公の極みともいうべきか。

本作は正確には未解決事件の真相を探るノンフィクション物だとして読むよりも、17世紀のチャールズ二世政権時代を語った歴史書として読む方が正しいだろう。この事件の真相は?というよりもこの事件が当時イギリスに何を起こしたのか?国王は、その政敵は、プロテスタント達は、カトリック達は、そして影で暗躍するフランスは何を行ったのか?を知るには格好の書物である。
カーの、未解決事件の推理力は元より歴史物作家としての技量の高さを知る上でも貴重な作品だろう。


Tetchy
WHOKS60S
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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No.4:
(5pt)

カポーティ「冷血」の先駆をなす歴史ノンフィクションノヴェルの名作

17世紀のイギリスで判事のエドマンド・ゴドフリーという人が殺され・・・というお話。
以前、この小説を読んだ識者当時の歴史状況が判っていないと通読するのが困難と聞いておりましたが、読んでみたら割とスラスラ読め、とても面白く読めました。さすがカー先生だけあるなと思いました。
注目すべきはノンフィクションなのにフィクションの体裁で書かれていることで、カポーティがこれを読んだかは定かではないですが、あの名著「冷血」の先駆をなしている点だと思います。
その他にも当時のプロテスタントとカトリックの関係など、今からでは想像もつかないような事態だったのも判り、大変興味深かったです。よく調べてあって感心させられます。それもただ調べて列記するだけではなく小説として面白いところにこの作品の真価を見た思いです。
カー先生の歴史好きとミステリ好きが合致した傑作。ノーフォーク「ジョン・ランプリエールの辞書」やバース「酔いどれ草の仲買い人」等を好きな人にはお勧めしておきます。
エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件 (クライム・ブックス)Amazon書評・レビュー:エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件 (クライム・ブックス)より
4336032912
No.3:
(4pt)

歴史ミステリでありながら、きちんとした本格ミステリ

1936年発表の本作品は、17世紀の英国、王政復古の時代を舞台に描いた歴史ミステリ。

この作品の一番の特徴は、実際に起こった殺人事件を扱っていることです。
ただ、エドマンド・ゴドフリー卿と言っても、日本ではあまり知られていないことと思います。
私も、もし著者の作品の愛好家でなければ、本書を気にとめることもなく、生涯知らぬままであったことでしょう。

著者の作品は、密室などの不可能犯罪ミステリの巨匠として、多々作品を読んできましたが、「歴史もの」を読むのは、「ビロードの悪魔」に続いて2冊目です。

正直なところ、本書は、何となく研究論文のような印象があり、二の足を踏んでいたのですが、読んでみると、立派な「本格ミステリ」になっていることに、驚きました。

冒頭に「殺人愛好倶楽部会員のための序章」が掲げられており、本書は、フェル博士のような探偵は登場せず、著者が「会員」である読者に直接語りかけるという体裁をとっています。
そして、そこには、本書は、歴史を記録したものと呼ぶつもりはなく、「事実に基づく推理小説」であると説明されています。
さらに、本格ミステリの原則に従い、「すべての証拠」を事前提示し、ラストで著者が考える真相を推理するというのです。

ミステリ小説としての工夫として、全八章の中間、第四章と第五章の間に、「幕間」があり、12の仮説が提示され、そこまでのストーリーからの推理が記述されています。
12番目の仮説には、犯人の名前がなく、最終章の「結び」で再び12の仮説が検証され、12番目の仮説から導き出される真犯人が提示されます。

まさに、本格ミステリの王道を行く、小説。
英国史に興味があり、本格ミステリも好き、という方には、大いにオススメします。

難しそうな印象や、エドマンド・ゴドフリー卿の知名度の低さから、日本では多くの読者を獲得することは困難でしょうが、個人的には、高評価できるミステリと感じました。
エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件 (クライム・ブックス)Amazon書評・レビュー:エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件 (クライム・ブックス)より
4336032912
No.2:
(5pt)

メインは歴史考証

これをミステリーに含めるのはちょっときついものがあるかもしれませんが確かに謎解き要素はあります。でもそれより面白いのはこのエドマンド・ゴドフリー卿が生きてきた時代。とにかく賄賂は当たり前、そして証言さえ歪曲され…なんというか言葉が出なくなりました。こんな恐ろしい歴史が数百年前にあったとは。そして登場人物も多いこと。そのため展開を追うのは少し苦労します。そこの点は要注意。ただし、その歴史描写はおもしろく普通の歴史物語としては文句なしの出来だと思います。
エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件 (クライム・ブックス)Amazon書評・レビュー:エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件 (クライム・ブックス)より
4336032912
No.1:
(3pt)

歴史推理

後にロマンスとミステリを融合させた歴史推理物でも一時代を築いたディクスン・カーによる歴史上の事実エドマンド・ゴドフリー卿殺人事件の再構築。被害者が馴染みが薄いのが難点ですが歴史上の事実を見つめなおすカーの手腕が見られます
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