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(短編集)
家族八景
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家族八景の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.31pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全14件 1~14 1/1ページ
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なぜか、日本の敗戦が思い浮かぶ。母親に徹底的に教育され、母親にのめり込むように異常なマザコンに全身もろとも頭から突っ込んでいた息子。母親の葬儀に幼児のようになりふりかまわぬ泣き喚く醜態――もう、周りの列席者からは笑いがこみ上げるしかない醜態――を演じる息子。 精神感応力(テレパシー)を身につけた主人公(家政婦として働いている年若い娘)は、今まさに炎に焼かれんとする、そして、断末魔の叫びを上げ、死なんとする棺に閉じ込められた母親の心の内をただ一人知る羽目になっている。そんなとき、主人公の心に過る思いは、棺には生者が閉じ込められていることを叫べば、周りの人に自らの精神感応力がばれ、それが自らを抹殺しかねない、そんな保身から見殺しにすることへの罪責感に責められ、それから逃れるように、塗炭の苦しみのなかにある、その死につつある母親に、息子を愛していたのだから、息子のために死んでくれ、早く死んでくれという叫びであり(息子の自立のために)、そして、「南無帰命無量寿仏、南無帰命無量光仏······」と唱えることであった。 つまり、そんなことはなかったかのような、戦後社会をも見てしまったのである。 とすれば、ひとり、純情ぶった、真面目ぶった七瀬(主人公)の心の裏を暴かぬはずもないだろう。この「······」のうしろに、作者の精神感応力が沈黙によって暴露しているのかも知れない。(戦後は終わったのよ)(どうして私だけお下げの地味な格好をしないといけないのよ)(見てよ、私のこの体、はちきれんばかりに成熟して、男たちを誘惑してるわ)(敗戦を見てしまったからって、それを見なかった者たちと同じように、私がふるまうのを誰も邪魔できないはずよ)(私だけ、性欲や金銭欲や物欲や支配欲やがないとでも思っているのかしら、ない訳ないじゃないの)(私のこの美しい体がそれを証しているわ)とでも言うように······。もちろん、こんなことはどこにも書かれていない。 筒井康隆がどういう人か知らない。わたしは、歳をくってるので、名前ぐらいはもちろん知っている。しかし、本を読んだことはなかった。しかし、わたしのこの勘は、当たっているのではないか。つまり、彼は日本の敗戦を見たのだ、見てしまったのだ。そして、その後の戦後というものも。これが、彼の心をもうくちゃくちゃにとらえてしまったのだと。(ウィキペディアによると、所謂終戦時、筒井氏は十一歳である。具に見たに違いない、もちろん、彼自身も含めて)そうであるなら、上のようなわたしの空想も、あながち外れているとは言えないのではなかろうか。彼は冷徹な人なのだ。 | ||||
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主人公を除く登場人物が下衆だらけで主人公の超能力だとか実験的な文章?だとかよりそっちの方が印象に残った | ||||
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作家名とタイトルで買ってみたが、面白いとまでは言えず読み切りましたが、普段の読破には至らず居眠りを誘い時間がかかってしまた。 | ||||
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幸か不幸か生まれながらのテレパシーをもって、目の前の人の心をすべて読みとってしまう可愛いお手伝いさんの七瀬――彼女は転々として移り住む八軒の住人の心にふと忍び寄ってマイホームの虚偽を抉り出す。人間心理の深層に容赦なく光を当て、平凡な日常生活を営む小市民の猥雑な心の裏面を、コミカルな筆致で、ペーソスにまで昇華させた、恐ろしくも哀しい本である。 | ||||
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筒井康隆先生の、有名なテレパス七瀬の第1話。 筒井さんは、家族というものが嫌いだったのかな…エネルギッシュに憎み合う家族たちのいろんな姿が、人の心を読む七瀬の意識を通して描かれます。 最終話の「亡母渇仰」のラストは、七瀬の自己保身で終わるとも読めます…主人公でさえ突き放す作者。 しかし2016年の今、家族の姿って、ここで描かれている八景より、ずっとアッサリしているように思う。 筒井さんによる昭和の家族の剥き出しのエゴが、醜悪なんだけど、どこかノスタルジックで懐かしく感じました。 | ||||
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面白いと思いますが、やはり古臭さを感じます。実際古い作品ですし。 超能力物(およびSF全般)は既存の物語からいかに意表を付くかが大事ですが、この作品は原点ですからね。 家族をテーマとした物語として読むば、古さをそれ程感じずに面白いのですが、そうすると今度は超能力者の主人公の存在が蛇足に思えてくる・・・・という。 | ||||
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登場人物は、読心能力を持つ火田七瀬と各家庭の人々。 七瀬は、手伝い(家政婦)として、様々な家庭を渡り歩く。 七瀬の読心能力を通して、家族のエゴや駆け引きなどが描かれる。 かなり、読むに堪えない内容もある。 だが、実際の家庭でも少なからず起こり得ることだと思う。 ここで、主人公はあくまで各家庭の人物たちであり、七瀬の読心能力は小説を成り立たせるための道具に過ぎない。 そう考えると、小説として興味深くもある。 しかしながら、七瀬が自分を守るために、ある男性の精神を破壊したり、夫が不倫していることを子育てしている妻にばらしたりするのは、やりすぎだと思う。 また、テーマが古すぎて、現代には即していない。 | ||||
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他人の心が読める19歳の「テレパス」七瀬が、家事手伝いとして働く8つの家庭・住民同士の物語。 七瀬が覗いてしまう家族・住民関係は、大抵ドロドロとこじれている。七瀬は住民それぞれの心理を明らかにすることで、こじれやねじれを加速させる。 なぜこじれを加速させるのか。その理由は、自分の超能力や人間の心理について知りたいという探究心と、女としても能力者としても狙われ得る自分自身を守るため・・・ではないかと。面白さについては、期待を上回らず下回らずということで☆は3つ。 初の筒井康隆作品。故・今敏監督の作品から興味を持って手に取りました。 | ||||
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人間の心理や闇について鋭く指摘している緊張感あふれる作品でした。 しかし、批判している方が言っているように感情や考えが極端すぎる面もありますが ドロドロの昼ドラをリアルで見ている気分になりちょっとスリリングな気分を 味わえるのでこれはこれでいいと思います。 家族、夫婦、親子、兄弟、親戚、…複雑な人間模様の風刺にはただただ圧巻されました。 人間にとって一番大切なものと言われている家族という物も 「所詮はこんな物か」と思わせる鬱作品でした。 しかし何故か読んではまってしまう。 これが昼ドラやサスペンス好きな人の心境という物なんでしょうね。 | ||||
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他人が心の中で思っていることが聞こえる美少女のお話の短編集です。 主人公の七瀬は、家政婦として色々な家族の元へもぐりこみ、そこに渦巻く醜い感情を知ることになります。 七瀬と一緒に、聴こえてくる男たちの妄想に「こんな思考回路・・・のぞきたくもない。」と、 うんざりしつつも、ついつい好奇心そそられてページをめくり、それが醜ければ醜いほど「いやだ〜」と思いながら、 読み進めてしまうお話でした。 結果的には、彼らの狂気染みた思考をエスカレートさせて、崩壊させてしまう感じの書き方に、妙にスッキリしました。 | ||||
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人が何を考えているのかすべて分かってしまう不思議な能力を持つ七瀬。 彼女はこのことを他人に知られないように生きてきた。お手伝いさんとして いろいろな家庭を転々とする日々の中で、彼女が経験したことは・・・? 8つの短編を収録。 仲がよい夫婦に見えるのに実際は・・・。真面目そうな人なのに心の中で 考えていることは・・・。他人の心の中がすべて分かってしまったら、 普通の人なら人間不信に陥るのではないだろうか。19歳の七瀬にとっても 過酷なことだと思う。だから、内容はもっとミステリアスで深刻な展開かと 思ったが、読んでみるとたてまえと本音が交錯する不思議な感じのする話 だった。七瀬は自分の能力を使い、人の本音を引き出そうとする。そのことが その人の運命を左右し、時には不幸な結末を引き起こしてしまう。彼女の 行動がはたして正しいのか、疑問に感じる部分もあった。人は知らなければ ならないこともたくさんあるが、知らなくていいこともそれと同じくらいあるのでは ないだろうか。七瀬には希望が持てる未来があるのか?人としての幸せを 望むことができるのか?否定的な答えしか浮かばないのが悲しい。 | ||||
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かなりの年代モノの作品。そういった「時の流れ」を随所に感じる。 それは「お手伝いさん」の存在自体にも感じるし、彼女が転々とする 家庭の調度品だったり、家族の言葉遣いだったりからも感じさせられる。 しかし、「時代の流れ」を如実に感じられるからこそ、 「人間」の本質や人間たちの抱えている問題の変わらなさを実感できるのだと思う。 そして、この時代の人たちが作り上げた「時代」が「今」に大きく影響していること、 同じときの流れに乗って「現代」があることを強く感じることができる。 「テレパシー」という切り口やコミカルで軽い文調のおかげで、 とても読みやすい。けれど、読み進めていくと、連続して見せられる「人間」の闇に、 心が少し悲鳴をあげてしまう。疲れてしまう。 だからこそ、七瀬が自分の能力を疎ましく思っている様子にも この力を悪用しようとしない様子にも共感できるのだと思う。 | ||||
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この「七瀬シリーズ」三部作は、現在、累計450万部を突破しており、さらに、NHKで「七瀬ふたたび」の放映もスタートしているところを見ると、多くの人に支持されているのは間違いないのだろう。しかし、私は、これらの作品が、それほど魅力のあるものとはどうしても思えないのだ。 その理由の一つが、筒井康隆独特の文体に馴染めないということだ。これらの作品は、内的モノローグが括弧書きで表わされているのだが、モノローグ自体の文体が独特で取っ付きにくいというだけでなく、台詞の間のモノローグや心理描写が長過ぎて台詞の繋がりがわかりにくかったり、台詞とモノローグが混在してその違いがわかりにくかったり、誰のモノローグであるのかはっきりしなかったりと、とにかく読みにくいのだ。 一番大きい理由が、七瀬の人物設定と、その行動のギャップだ。七瀬は、「日曜画家」までに、「まだ男を知らず」、「清潔、潔癖で」、「男たちの眼をひきつけるに充分な美貌を備えている」と、その人物設定がはっきりしてくるのだが、通常、男というものは、こうした女性には、天使か女神のような存在を重ね合わせるのではないだろうか。ところが、七瀬は、冒頭の「無風地帯」から、見せかけの平和を破壊するためと称し、家族同士が互いを傷つけあうように仕向ける行動を取っており、こうした行動は、「水密桃」、「紅蓮菩薩」、次作「七瀬ふたたび」の「邪悪の視線」と、どんどんエスカレートしていき、悲惨な結果を生むのだ。もちろん、七瀬が聖人君子ではドラマにならないことはわかるのだが、私は、この「こわい」七瀬に、ずっと、共感できなかった。 「七瀬ふたたび」の救いのない暗いストーリーも、後味が悪い。最終作「エディプスの恋人」は、荒唐無稽とも思える物語ではあるものの、むしろ、私には、これが一番面白く読めた。強引ながらも、「七瀬ふたたび」との整合性も、最後にしっかり取っている。 | ||||
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初めて読んだ筒井康隆作品がこれだったので、“重い”というのが正直な感想です。決して面白くない訳じゃないし、事前にどんな作品かを調べてから読めば星5つをつけたかもしれないけど、『富豪刑事』のドラマのイメージが強かったので、そのイメージで読んでしまった私的にはあまり好きとは言えない作品でした。 | ||||
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