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魔女の暦



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魔女の暦の評価: 3.67/5点 レビュー 9件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.67pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全9件 1~9 1/1ページ
No.9:
(5pt)

浅草の踊り子たちにとって金田一耕助の名は印象深かったようだ

本作は「魔女の暦」と「火の十字架」を収録した横溝正史の推理小説。どちらもレビュー小屋を舞台にした猟奇殺人事件を取り扱っており、名探偵・金田一耕助が登場する。双方の作品で「堕ちたる天女」事件のことが言及されており、浅草の踊り子たちにとって金田一耕助の名は印象深かったようだ。

●魔女の暦

「魔女の暦」は昭和31年5月「小説倶楽部」に発表され、2年後に長編化され単行本として出版された作品。奇怪な手紙を受け取った金田一耕助が、浅草六区のいんちきレビュー劇場「紅薔薇座」を訪れるところから物語は始まる。最近足繁く通っていたのは、三人の踊り子が一つの目を共有する魔女を演じる「メジューサの首」という芝居で、何かが起きると手紙で予告されていたからだった。

通い始めてから3日目、とうとう恐れていたことが現実となる。「メジューサの首」で魔女のひとりを演じていた飛鳥京子が、毒の塗られた吹き矢で殺害されたのだ。関係者の複雑な人間関係から動機はいくらでも見つかるものの、犯人を特定する決定的な証拠が見つからぬまま捜査は難航。黒い手袋をはめた謎の人物が記す不吉な魔女の暦どおり、次々と犠牲者が増えていく。

最後に金田一耕助が語る事件の真相は、パトロン・内縁関係・愛人関係・ペットと人間関係が乱れきった劇団ならではのもので、被害者にも殺されるだけの理由があったと言える。また、一千万円の生命保険をストーリーにうまく盛り込んでいる点は感心した。

<登場人物>
山城岩蔵 … 浅草にあるレビュー劇場「紅薔薇座」の支配人。
柳井良平 … 紅薔薇座の戯作者。小心で臆病。
甲野梧郎 … 紅薔薇座の音楽担当。駒形に自宅を構える。
入沢松雄 … 紅薔薇座のドラム担当。
山本孝雄 … 紅薔薇座の振付師。
工藤順蔵 … 紅薔薇座の大道具。
金井啓介 … 紅薔薇座の作者見習い。
結城朋子 … 紅薔薇座のスター。マネー・ビルに血道をあげる。
飛鳥京子 … 紅薔薇座の踊り子。山城岩蔵の愛人。
霧島ハルミ … 紅薔薇座の踊り子。甲野梧郎の内縁の妻。
紀藤美沙緒 … 紅薔薇座の踊り子。柳井良平の内縁の妻。
牧ユミ子 … 紅薔薇座の踊り子。まだ若く芸も未熟。
岡野冬樹 … 紅薔薇座の座頭格。
碧川克彦 … 紅薔薇座に最近入った若く美しい男優。
井本鈴子 … 柳井良平が連れ込まれた宿を経営する女あるじ。
緒方医師 … 検死を担当。
関森警部補 … 浅草署の捜査主任。
三宅刑事 … 浅草署の刑事。
井上刑事 … 浅草署の刑事。
望月刑事 … 浅草署の刑事。
新田刑事 … 浅草署の刑事。
等々力警部 … 警視庁捜査一課所属の警部。金田一耕助の相棒。
金田一耕助 … 奇怪な手紙で紅薔薇座に呼び出された私立探偵。

●火の十字架

「火の十字架」は昭和33年4月「小説倶楽部」に発表された作品で、こちらも金田一が奇妙な手紙を手にするところから始まる。アパートを訪ねてきた等々力警部を相手に、自分のことをメイ探偵になってきたなどと茶化しつつ、連続殺人が起こることをほのめかす手紙が届いたと話す耕助。今回もタダ働きになりそうで思わず苦笑してしまう。

新宿、浅草、深川に劇場を持つヌードダンサーの女王・星影冴子。3軒の劇場をそれぞれ情夫に経営させ、自分は興行を兼ねて1週間ごとに各劇場を回って情夫との交歓を楽しんでいた。そんなある日、全裸でトランク詰めにされた星影冴子が新宿パラダイスに届けられ、浅草パラダイスでは塩酸で焼け爛れた男性の凄惨な遺体が見つかる。

金田一が受け取った手紙には、ある復讐鬼によって世にも恐ろしい連続殺人が起ころうとしており、狙われている男女は体のどこかに「火の十字架」の刺青が入っていると書かれていた。殺された男性は塩酸によって顔も刺青も隠されていたが、金の腕輪で隠した星影冴子の腕には「火の十字架」の刺青が彫られていたのだった。

運送屋によれば、義足を引きずって歩く気味の悪い男が小栗啓三と名乗り、新宿に運ぶ荷物を指示したという。満州に出征したまま音信不通となっていた劇団「南十字星」の仲間が引き揚げてきたらしいことが分かると、劇場関係者に大きな動揺が広がっていく。戦争中の忌まわしい罪が、復讐鬼によって白日の元にさらされる日が近づいていた……。

この事件における金田一耕助の捜査や推理はめずらしくあざやかで、きちんと連続殺人を食い止めることができている点が素晴らしい。トリック自体はご都合主義と言わざるをえない部分もあるが、それでも横溝正史が大好きな「顔のない死体」ものだけに工夫が凝らされており、解決編はなかなか面白かった。

<登場人物>
星影冴子 … 浅草、新宿、深川でヌード劇場を経営するダンサー。
立花良介 … 浅草パラダイス劇場のマネジャー。冴子の情夫。
滝本貞雄 … 新宿パラダイス劇場のマネジャー。冴子の情夫。
三村信吉 … 深川パラダイス劇場のマネジャー。冴子の情夫。
富士愛子 … 星影冴子ショウのメンバー。4人と同じ劇団にいた。
権田平蔵 … 浅草馬道にあるゴンダ運送店の主人。
権田やす子 … 平蔵の妻。
福田公吉 … ゴンダ運送店に住込みで働いている店員。
小栗啓三 … 浅草パラダイスにいた謎の復員服の男。片脚は義足。
山本五郎 … 浅草パラダイスの幕内主任。
水島 … 浅草パラダイスの表主任。
原田 … 新宿パラダイスの表主任。
緒方竹蔵 … 富士愛子が住んでいる若竹荘の管理人。
花園千枝子 … 劇団南十字星のヒロイン。
野上周蔵 … 元陸軍大尉。深川にあった秘密兵器工場の監督官。
金子謙三 … ヌード写真を得意としているカメラ芸術家。
熊谷医師 … 新宿パラダイスで昏睡状態の星影冴子を診察した。
橋本先生 … 浅草パラダイスでの検死を担当した警察医。
高橋警部補 … 淀橋署の捜査主任。
関森警部補 … 浅草署の捜査主任。金田一とは馴染み。
神保警部補 … 下谷署の捜査主任。
等々力警部 … 警視庁捜査一課所属の警部。金田一耕助の相棒。
金田一耕助 … 雀の巣の頭にくたびれた着物袴。ご存知名探偵。
魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)Amazon書評・レビュー:魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)より
4041304253
No.8:
(4pt)

昭和二十年代の事件としながら、緑ヶ丘荘に居を構えているのは矛盾している。

<『魔女の暦』のみの感想、ネタバレ注意>

 本作の原型は昭和31年に雑誌掲載され、その後昭和33年に中篇化されたものが本書に収録されているが、事件は昭和20年代に発生したと記されており、時系列では『幽霊男』と「堕ちたる天女」の後だと明言されている。
 だというのに、「緑ヶ丘町緑ヶ丘荘のじぶんの寝室で」(No.1926)とあるのはおかしい。彼が緑ヶ丘に居を構えたのは昭和32年1月の可能性が高く、仮にそれ以前だったにしても20年代はない……。
 おそらく昭和33年に加筆した際に、うっかり加えてしまったのだと思われる。

 紅薔薇座の踊り子たちは、演劇『メジューサの首』でストリップ・ダンスをしている。
 かといって、わたしのイメージにある白黒ショーやまな板ショーといった演し物をするわけではなく、「大衆演劇」の中にエロティックなダンスを加えているような感じ。戦後の大衆演劇には、そういったストリップショーの要素があったのかもしれないなと想像するが、寡聞にしてまったく知見がない……。

 ほぼ『本陣殺人事件』サイズの分量がある準長篇で、メジューサの首をモチーフにした残忍な殺人が三度も発生するから、横溝正史作品に猟奇殺人を求める読者にも読み応えはばっちりだw
 著者の作風はガチパズルからは遠いので、端から金田一耕助と推理を競うつもりなどなくロマン目線でまったりと読んでいるが、今回は第二の事件の状況と関係者の証言から、犯人当てには成功したので満足w
 だが、そのうえで事件を振り返るとやはりツッコミ処は多い。

 第一の事件と第二の事件にはそれぞれ女の“共犯者”がいる。いずれの場合も、各々のトリックを構成するためには、主犯よりも彼女たちの高度な技巧が必須。彼女たちのリスクがめちゃ高だ。好意的に見積もっても成功率は一割以下の気がするw
 しかも堅い信頼関係や強固な主従関係に基いた共犯関係でもないのに……。
 また――これは本作の疵ではなく、時代の変遷で仕方のないことだが――、被害者の体内から精液が検出されるも、偽装の目的人物と真犯人の血液型は同じだったと軽く流している。現代ならDNA鑑定で個人を特定されてしまうだろうw

 余談だが本作には、死体を乗せて隅田川に流した貸しボート十三号ならぬ貸しボート七号が登場しているw
魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)Amazon書評・レビュー:魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)より
4041304253
No.7:
(5pt)

「金田一耕助」シリーズの正統派作品だと思った

「金田一耕助」シリーズ第6弾。本書には表題の「魔女の暦」と、もう一編の「火の十字架」が収載されている。両作ともに当時の性風俗を題材にしている。
そのため年少者がこの二作品を理解するのは少々難しいかもしれない。また年長者であっても、当時の世相を全く知らないと面白さが半減するかもしれない。
以下の書評は、ある程度の年長者であり、かつ当時の世相もある程度は理解できていると思っている読者の読後感想である。

 「火の十字架」については、殺人動機に納得がゆくものがあった。もちろん私自身、殺人を肯定する者ではない。だが、「これだけの理由があったら、殺そうと思う心理は理解できる」という肯定感があった。
 一方の「魔女の暦」については、現在で言うところの猟奇殺人に近いと感じた。真の殺人動機は個人の性癖に由来しており、殺人理由はその言い訳に近いものを感じた。本作は現在の殺人者の心理を説明しているかもしれない。私自身は殺人者に対する肯定感は皆無であった。

 両作とも正に横溝正史先生の真骨頂であると感じた。広く人口に膾炙しなかったのは、おそらく初段に挙げたように、ある程度、読者層を選ぶ作品であることが理由だろうと思う。正統派の「金田一耕助」シリーズ作品だと思う。
魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)Amazon書評・レビュー:魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)より
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No.6:
(3pt)

角川文庫と春陽文庫

角川文庫版「魔女の暦」に同時収録されているのは、「火の十字架」であり、春陽文庫版に同時収録されているのが、「廃園の鬼」である。
Amazonのレビューは、同タイトルの映画と同タイトルのドラマなどが、混在していることもあり、2009年6月6日の志村真幸氏のレビューは、春陽文庫版「魔女の暦」へのものだと考えられる。
購入を考えられている方は、収録作品を作品解説等を確認していただきたい。
魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)Amazon書評・レビュー:魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)より
4041304253
No.5:
(3pt)

文庫復刻

『魔女の暦』と『火の十字架』の二編収録。両作とも退廃臭のただようストリップ劇場を舞台に、愛欲の渦におぼれる複雑な男女の関係性のなから生まれた、エログロ色の強い猟奇殺人事件を描いている。どちらもミステリとしては、ありきたりの安易な解決に堕してしまわないよう、流石にヒネリを凝らした謎解きが提示されている。ただ、淀んだ世界観のなかで人格の崩れたような人間ばかり登場するので、人物や物語に感情移入しづらく、そのため「まさかあの人が」とか「こんな展開は辛らすぎ」とかいった物語への感興のノリが生じにくく、せっかく凝らされたツイストも、効果があがりきらない憾みがあるように思えた。

ただ、『火の十字架』の方の醜悪とも思える男女関係の形成には、戦時中の恐怖に押しひしがれた体験がその根っこに存在し、戦争の罪深さや人間の悲哀を感じさせるところもあったため、どちらかというと筆者はこちらの作品にやや高得点を与えたいと思った。いずれにしても、横溝ワールド独特の空気感にひたり、金田一耕助や等々力警部の活躍に接することができる、杉本一文カバー画の文庫本復刻は、ありがたく楽しいかぎりである。
魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)Amazon書評・レビュー:魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)より
4041304253
No.4:
(4pt)

金田一耕助の名推理

トリックの使い方や題目に見立てられる殺人のおどろおどろしさが伝わってきてどのような展開になるのか犯人はだれなのか楽しみながら読めました。
魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)Amazon書評・レビュー:魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)より
4041304253
No.3:
(3pt)

金田一の大好きなストリップ劇場物

金田一の活躍する都会物は、決まっていかがわしい風俗が描かれます。 ストリップ劇場に生首が出現、地下室での乱交パーティーと猟奇趣味も満載です。 でも、それが金田一物の魅力なんですよね。 ちょっと乱歩風味が入っていますし、独身の金田一はストリップが好きなんでしょうかね。 でもKindle版には「廃園の鬼」は収録されてませんよ。 「魔女の暦」と「火の十字架」の二本立てです。
魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)Amazon書評・レビュー:魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)より
4041304253
No.2:
(3pt)

予定調和?

中篇「魔女の暦」に、「廃園の鬼」が併録されている。
 「魔女の暦」は、予定調和的なプロットかと思わせておきながら、途中でアレッという展開になっていくところが面白い。しかも、それがトリックであり、事件の解決へとつながっていくのだから、感心させられる。しかし、あのトリックは、本当に気付かないものなのか。著者の別の作品でも使われているのだが・・・
 「廃園の鬼」は、金田一耕助の優しさが感じられる短篇。
魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)Amazon書評・レビュー:魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)より
4041304253
No.1:
(3pt)

気付かないものか

「魔女の暦」と「火の十字架」の2本の中篇が収められている。
 「魔女の暦」は、予定調和的なプロットかと思わせておきながら、途中でアレッという展開になっていくところが面白い。しかも、それがトリックであり、事件の解決へとつながっていくのだから、感心させられる。
 しかし、欠点も。あのトリックは、本当に気付かないものなのか。
 「火の十字架」も、巧みなプロットにうならされる。こちらも、意表を突く展開で楽しませてくれた。予想外のところにトリックが仕掛けられており、良く出来ている。
 ただ、テーマゆえ、どちらもマイナーなままに終わることを運命づけられている、哀しい作品だ。
魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)Amazon書評・レビュー:魔女の暦 (角川文庫 緑 304-25)より
4041304253

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