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扉の影の女



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扉の影の女の評価: 4.45/5点 レビュー 11件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.45pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(3pt)

人生にまま起こるかなしい運命の十字路

<表題作の感想のみ。ややネタバレの個所あり>

 冒頭の頁に、耕助の住処が緑ヶ丘荘であることに加えて、「昭和三十年も残り少なくなっており」(P.5)とこれ以上ないくらいに明記されているのだが、これは困った……。
 「鞄の中の女」他の記述から、彼が緑ヶ丘荘に転居したのは昭和32年の1月であることはほぼ確実。前年の12月と主張できなくもないが、その一年前はさすがに無理である。
 いや、「鞄の中の女」の本文に昭和32年の事件だと書かれていたのではなく、雑誌掲載されたのが昭和32年4月というだけだから、同年の事件だと決めつけることもないのか……。
 本作は元々「鞄の中の女」と同じく『週刊東京』誌の昭和32年12月に「扉の中の女」として掲載された。
 他の「〇〇の中の女」も共通して、事件時期を特定できる記載は「月日」だけで、おそらく意識して「年」は明記されていなかったのだが、「扉の中の女」の時点で「昭和三十年」の記載はあったのか。それとも昭和36年1月に東京文芸社刊で出版されたタイミングで追記されたのだろうか。
 いずれにせよ、そこには著者の意思が入っているだろうから、尊重すべきなのかもしれない。
 となると、金田一耕助が転居してくるまでに緑ヶ丘で発生した三つの事件【注1】は、いずれも昭和29年以前ということになるのだが、それはそれで、他の事件との矛盾がいろいろ湧いてきそうだ……w【注2】

 金田一耕助の緑ヶ丘荘での生活や金回り【注3】が描写された異色作だと注目される印象の作品だが、フー/ハウ/ホワイダニットに関わるトリックで引っ張る作風ではなく、捜査を進めることで、依頼人を含めた事件の関係者の嘘や隠し事が少しずつ明るみに出て事件の全容が見えてくるといった、警察小説やハードボイルド探偵小説に近いプロットで読ませる物語構造である。
 内容は覚えていないが、日常生活の描写を含めて『悪魔の百唇譜』もこんな感じの展開だったような。

 犯人がほぼ最後になるまで登場しないというのは、ノックスやヴァン・ダインが聞いたら怒りそうな感じではあるが、不思議と悪く感じなかった。
 耕助に次々齎される情報に対して、彼が行う次の一手や判断がかなり描写されるので、彼の心情や忖度が細かく伝わってくるあたりが、シリーズ作品の異色作として面白かった。
 基本的に目をしょぼしょぼさせて腰の低い印象の金田一耕助だが、大物実業家の金門剛と応対したシーンでは終始彼をリードしていて、おまけに彼の信頼を得て財源にしてしまうのはさすが。
 本作に限って云えば、ネロ・ウルフものにも繋がる活躍であるw

 「多門修の一メートル七十という堂々たる上背に対して、金田一耕助は六十あるかなしという小男」(P.150)という描写は、時代だなぁと感じたw

 【注1】『毒の矢』、「黒い翼」、「女の決闘」

 【注2】このあたりの矛盾に対して、Wikipediaの「金田一耕助#経歴」の項では、なんと昭和34年説(注釈No.39)を取っている。金田一耕助の登場する作品の多くは、一応著者が耕助から聞き取った事件を発表しているという態だから、出版時より後の時系列は取れない筈だが、加筆出版された昭和36年1月以前ならセーフという見解なのだろう。未読だが、『壺中美人』、『スペードの女王』にも同じ問題があるらしい。

 【注3】手元不如意な耕助を見かねた等々力警部が、そっと金を工面するシーンなんて感涙ものである。なにげに等々力警部が妻帯者であることを初めて知ったようなw
扉の影の女 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:扉の影の女 (角川文庫)より
4041120683
No.1:
(3pt)

素材は悪くないがやや不満の残る作品

「扉の影の女」
奇妙な手紙の切れ端に書かれていた文章の謎、死体を移動させた謎、複数見つかったハット・ピンの謎、現場にカシワが持ち込まれた謎、マダムXの正体、金門剛のもとに届いた手紙の謎、ひき逃げされた少女と事件とのつながり等、様々な謎が示され、それが合理的に説明される真相はなかなかの出来と感じるが、後出しで登場する人物がふたりもいて、読者が犯人を推理できる内容になっていないし、登場人物がうまく活かせていない点が残念。

「鏡が浦の殺人」
金田一耕助が策を弄して、事件を解決する話だが、金田一耕助の推理自体は必然性に乏しい。
大学教授とその孫の読唇術が、物語の進行にうまく活かされている。
扉の影の女 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:扉の影の女 (角川文庫)より
4041120683

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