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弥勒世



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弥勒世の評価: 4.12/5点 レビュー 33件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.12pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全33件 21~33 2/2ページ
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No.13:
(5pt)

魅力ある登場人物達

軽いネタバレを含みます。 馳作品はだいたい読みましたが、私の中ではこの作品が一番です。上下巻あわせて1000頁を越える大作故に敬遠してしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、知人にオススメ本を聞かれたら毎回これを推しています。 虚無主義であり、沖縄を裏切りつつスパイ活動をすると見せかけ、実は二重スパイである主人公。アナーキストの政信。アメリカに対する憎悪を糧に反米活動をする仁美。ならず者かと思いきや、根っこの部分では主人公と志を同じくするマルコウ。情緒不安定で、登場人物達をひっかき回し、悲劇の引き金ともなった愛子。皆個性豊かです。 上巻あたりでは物語の方向性が定まらずにやきもきもしましたが、中盤で主人公の思想が転向したあたりから物語が加速します。 なんといってもラスト。これほど虚しい気分にさせられた小説は初めてでした。 馳作品はだいたい暴力と権力、性描写が色濃く絡んできますが、この物語はそれより深い部分が全面に押し出され、他の作品とは一線を画していると感じます。 ぜひ一読してみて下さい。
弥勒世 上 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:弥勒世 上 (角川文庫)より
4043442092
No.12:
(5pt)

毎度変わらぬやるせなさ

ちょうどオームの法則を読んだ後だったのでてっきり弥勒菩薩の本かと思ったら沖縄の話でしたね
いつもながら馳星周さんにはやられっぱなしで、体中が痛くなります。
弥勒世 下 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:弥勒世 下 (角川文庫)より
4043442106
No.11:
(5pt)

沖縄好きな人ほど読むべき

私も沖縄が好きだ。温暖な気候、澄んだ珊瑚礁、カラフルな魚、独特な調べを持つ島歌、陽気なカチャーシー、豊かな島料理、優しい島人… しかし本書はそんな沖縄の表面しか見ない人々を嘲笑うかのように歴史の現実を突き付ける。 「うちなーんちゅはおめでた過ぎる。おめでたいから戦前はやまとに蹂躙され戦後はアメリカーに家畜以下の扱いを受け、怒ることはあっても怒りを爆発させて歌って踊ればそれで忘れる」というような意味のことが主人公の独白や会話の中に何度も出てくる。 この考え方は衝撃的だった。琉球王国の解体や沖縄の地上戦 やアメリカの統治、復帰から今に至るまでの基地のことを知識として知ってはいてもそんなふうに考えたことがなかったからだ。 主人公とその仲間たちは何も変わらないことを知りながら、そんな世界に罅を入れたいと絶望的なテロルに乗り出す。 沖縄が今も基地の町であり続け、米兵による犯罪が絶えないことを思うと主人公たちの行動はより悲劇的だ。 徹頭徹尾他人を拒絶してきた主人公が唯一愛した女との恋愛とその結末が胸に刺さる。 私もその一人だが、巷に溢れる沖縄好きにこそ読んでほしい。
弥勒世 上 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:弥勒世 上 (角川文庫)より
4043442092
No.10:
(5pt)

やるせないラストシーン、沖縄アウトロー達が繰り広げる沖縄版「男達の挽歌」

馳星周の作品にハッピーエンドや爽快感を望んではいけない。
それは判っているのだが、それにしてもあまりにも絶望的な結末を向かえる。

殺人集団と化していく3人。
執拗に尾行を続ける刑事。
命を落とす者。
もはや無法地帯ともいえる米軍の不埒さ。
そして、うちなーの怒りと悲しみ。

上巻でたっぷりと舞台背景を語り、主人公たちのイデオロギーや存在に肉付けをした後の下巻。
物語は、用意された皮肉なエンディングに向かって、一直線に走り始め、
読み進むほどに助走はますます加速していく。

こういう終わり方は全く想像できなかった。
してやられた感にしばし虚脱。
弥勒世 下 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:弥勒世 下 (角川文庫)より
4043442106
No.9:
(5pt)

想像以上に良かった!

ネタバレになるといけないので詳しくは書けないのですが、
とにかく照屋仁美の真っすぐな生き方がとても美しくて心を奪われました。
彼女の存在のせいなのか、馳星周の他の作品に比べると「暗さ」をそんなに感じさせない感じでした。
夢中で上下巻ともに一気読みし、非常に満足な作品です。
弥勒世 上 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:弥勒世 上 (角川文庫)より
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No.8:
(5pt)

沖縄の闇を描く重厚作。後半にいくほどスリリングな展開。

今では沖縄が「日本であること」に疑問を持つ若い世代は皆無だろうが、
昔昔は、「日本ではなかった」時代がある。

本作は、日本に返還された当時の沖縄を舞台に描かれた人間劇。
主人公はやはり馳星周お得意の、「アウトローだが、どっぷりヤクザ者には成り切れない男」。

前半は主題がよく見えなかったのだが、
後半にいくと俄然スリリングになり、下巻への期待が膨らんでくる。

米軍、基地、混血、ヤクザ、差別、反戦、白人と黒人と黄色人種、本土と離島など、
ちょっと考えただけでもこれだけのキーワードが挙げられるほど
沖縄が抱える独自の事情は根深く、暗い闇に包まれており、
市井の人々の噴飯と無力感が伝わってくる。
舞台は70年代だが、沖縄の現在は今も変わっていないのではないか。

青い海と白いビーチのイメージの沖縄は、本書には、ない。
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4043442092
No.7:
(4pt)

日本ハードボイルドの金字塔

上下巻で1200ページという大作で、一部きわどい
叙述もあるハードボイルドです。約40年前の本土復帰
直前の沖縄の現実に向き合うつもりがないなら、読む
のはやめたほうがいいでしょう。
 5日間のストを構えた全軍労の幹部が、こう言ってい
ます。「このストは(中略)やっても無駄だが、やらなけ
れば自らが救われない」と。これに似たセリフ、楡周平
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京』で安田講堂に
立て籠もった学生も言っていましたっけ。

 閑話休題。昨秋、小阪修平氏を偲ぶ会に参加(その場
には『叛乱論』の著者や「矢吹駆シリーズ」の作者の姿
もありました。)した時、司会者がしきりに「私たちは還
暦を過ぎようとしているが、このまま朽ちていいのか。」
と問うていました。つまり、大多数が辛うじて残り火を
絶やさずに生きてきたということなのでしょう。だから、
大学での挫折の後、権力の中枢を狙うというお話しな
ど、いかにも作り過ぎで笑止という他ありません。『再生
巨流』、『ラスト ワン マイル』と快調に飛ばしてきて、ちょ
っと調子に乗りすぎましたね、楡さん。

 しかし、1969年の安田講堂攻防戦と1970年のコザ
暴動、同時期の話題をとりながら、本書の主人公の世
界をぶち壊すという思いに迷いはありません。主人公を
頼る少女の惨死や理想に生きる恋人の自殺、そして主
人公自身の殺人行為など下巻は凄惨で殺伐とするきら
いもありますが、人々の暴発と主人公と仲間の米軍基地
へのテロ行動がクロスするクライマックスまでストーリー
は疾走してやみません。ラストでは、『仁義なき戦い 広
島死闘篇』(深作欣二)での特攻くずれ(北大路欣也)の
最後を思い出し、その迫力に五臓を貫かれました。

<付記> 著者の最新作『淡雪記』を読みました。やっぱ
りハードボイルドの筆致には純愛は向かないかなと。横
道に入らず王道を進んでもらいたいと改めて思いました。
(2011/06)
弥勒世 上 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:弥勒世 上 (角川文庫)より
4043442092
No.6:
(5pt)

大排気量のオートバイで駆けるようなスピードと重量感で一気に読み進んだ

70年の返還前後の沖縄を舞台に、ベトナム帰還兵であふれかえる歓楽街での荒廃や人種対立、住民を踏みにじる強姦や轢き逃げといった米兵の犯罪、反基地闘争などの歴史事象を表に配置し、孤児として育てられ、アシバー(やくざ)の頭目として生きてきた裏社会の暗黒とニヒルなアンチヒーローたちの自己破滅的なテロへの共感を描いたハードボイルド小説。

CIAと反戦運動の二重スパイという背徳や、同じ孤児施設の幼なじみ同志の反発と嫉妬、疑心、ヒーローを慕う混血の美少女への恋情などが、漆黒の混沌を満たしていいた上巻から一転、下巻は、彼らを裏切ってきた世界への復讐の日に向かって突き進むように展開する。その過程で、混血の美少女高校生のむごたらしい死、その復讐、恋人の縊死、とヒーローたちを取り巻く世界への襲撃と彼ら自身の自壊が進行していく。同時にヒーローたちが見下していたうちなーんちゅ(沖縄人)たちが次第に覚醒し、高まっていく。そのすべてが爆発する終末は圧巻でしかも悲しく、そして再生への希望に満ちている。

大排気量のオートバイで駆けるようなスピードと重量感で一気に読み進んだ。
弥勒世 下 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:弥勒世 下 (角川文庫)より
4043442106
No.5:
(5pt)

沖縄返還のオモテを背徳と裏切りで殴り倒すウラ社会ハードボイルドエンターテーメント

裏社会の暗黒を舞台にニヒルなアンチヒーローを描くハードボイルド小説。新宿歌舞伎町を舞台にした「不夜城」を読んだときの衝撃とこの作家の取材力と筆力に対する驚嘆の思いが忘れられない。自分が70年代初頭の高校時代を過ごした新宿の昼と夜には親しみがあったし、やがてその新宿の歓楽街に韓国人や中国人が浸透していく変遷も見てきたからだ。

同じように裏社会の暗黒とニヒルなヒーローたちを描いたこの小説は、その舞台を70年の返還前後の沖縄現地に移している。確かにこの時代は公民権運動という人種対立とベトナム戦争の時代でもあって米兵もすさんでいた。大麻やヘロインなどの麻薬、売春、強姦、その結果としての母子家庭や混血孤児、アシバーと呼ばれるヤクザ、などの暗黒世界を、表で起こった反基地闘争などの歴史事象を対比させながら描ききっていて、ぎしぎしと音をたてるほどだ。ここ10年ほど沖縄をビジネスで往き来した程度の自分には、基地の存在や、差別と逆差別、かたくなな身内意識など屈折した感情は垣間見たものの、沖縄はどこまでも美しい自然が豊かで素朴な人情があふれる南国でしかない。そうした表しか知らない脳天気な現実感が、この圧倒的な筆力に吹き飛ばされそうだ。

ヒーローはCIAと反戦運動の二重スパイという背徳のなかで蠢き、孤児施設でともに育った幼なじみがヤクザと組んで米軍の銃砲火器を持ち出し秘匿している事実をつかむ。ふたりの幼なじみは、それぞれに抱く黒々とした秘密と野心が衝突し、嫉妬し、その謎を巡って疑心がきしめく。その偽悪的なかけひきの緊張と自己破滅的なテロルの臭いに思わずむせかえりなからも一気に読み進んでしまう。
弥勒世 上 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:弥勒世 上 (角川文庫)より
4043442092
No.4:
(5pt)

久々によかった!

ただ、ラストの描写になんともいえない気持ちになりました。
やりきれなさ、無力感、喪失感、歯痒さ。
沖縄の歴史は、正直、今まで気にしたこともありませんでした。
後でわかったのですが、この物語自体、沖縄の歴史に
忠実に基づいて描かれている部分が多々あることを。
世の中は、不条理だらけで、どうにもなりません。
そんな世界を描いている
馳星周の作品を読むと、なぜか救われます。
弥勒世 下 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:弥勒世 下 (角川文庫)より
4043442106
No.3:
(4pt)

600ページにも及ぶハードな前編だが、読み応えあり。

上下2巻に及ぶ長編小説を読む時、些か二の足を踏んでしまう。それは、ごく少数の幸福な出会いを除いて、やはり読了するまでの長い道行が頭をよぎるのと、仮につまらなかった際、既に後編を購入する為費やしてしまった金銭、あるいは、購入せずとも物語の結末を知る事なく小説に関わってしまった労力の無為について考えてしまうからだ。で、今作はどうか。馳星周の作品は、「不夜城」を始め、かって面白く読んだが最近の作品には今一歩乗れず。600ページを超える長編と言う事もあり、取りあえず、前編のみを購入してみた。
奄美大島から一旗揚げようと琉球の地に渡った男、大和(日本)からも沖縄からも差別され、望みはアメリカの市民権のみと言い放ち、どんな汚い仕事でもする。やまとーんちゅ、アメリカー、うちなーんちゅに対する憎悪を持ち、搾取される側からする側に立つとの確信的な思いを持つ主人公。ベトナム戦争、米軍基地、反戦運動、本土復帰、利権と革命、リベラルな本国左翼勢力の権威主義、コンプレックス、憤怒、鬱屈感、様々な思惑が絡み合い、騒乱を誘発する様なねっとりとした熱波、暴力的で猥雑なムードが充満する濃厚でピカレスクな1冊。
60年代末の「沖縄」を照射した社会的な意味合いも感じるが、革新勢力の欺瞞を哂い、決して情動に流されない主人公の心の奥底にあるニヒリズムに煽られる。
筆者の「沖縄」への思いと、露悪的な主人公の生きザマを確認すべく、後編の購入を決めた。
弥勒世 上 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:弥勒世 上 (角川文庫)より
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No.2:
(5pt)

強い作品と思います

まず何よりも「強さ」を強く感じさせられる作品です。
理由は、主要な登場人物ばかりではなく、脇役の脇役とも思われる登場人物までもが、客観的に見れば、過剰な意志を、主体的に見れば、己を乗り越え、己に先んずる意志を持っている為です。従って本作品は、ほとんど実存主義的小説ともいえます。
そしてこのような「強さ」は、登場人物のみならず作家の姿勢にも強く感じられます。というのは、物語の展開上何ケ所かとても情緒的に美しい場面があります。いってみればここぞ泣かせどころという場面です。しかし筆致はあくまでも過剰なほど抑制的です。むしろ泣かせない、という強い意志を感じる程です。作家の矜持です。
このような世界には当然のことながら調和はありません。一瞬漆黒の雲の彼方に一条の光が輝こうとしますが、たちまち過剰な意志の衝突によるハレーションがこれにとって代わります。そして酷使された肉体は滅びます。
しかし、勇気というようなものが後に残されているようにも思えます。
本作品を読了し、重い感動を得ることができました。
弥勒世 上 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:弥勒世 上 (角川文庫)より
4043442092
No.1:
(5pt)

沖縄好き必読の書!!

沖縄がまだ琉球だった、アメリカ統治時代の最後の最後を、現実に即して描かれたフィクションだけどノンフィクションに近い歴史小説でもあります。当時の沖縄の様子がはっきりと脳裏に浮かんできて、あっという間に引き込まれてしまう、馳ワールドの神髄と言ってもいい小説です。この本を買ってすぐ、沖縄の友人のおばあちゃんにこの時代の事を聞いたら、まさにこの小説そのままでした。クライマックスシーンは、多少脚色されていますが、「コザ騒動」として実際にあった話です。カバーの金網模様もかっこいいですね。まさに、アメリカ軍基地の金網で分断された現代の沖縄を象徴しています。
弥勒世 上 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:弥勒世 上 (角川文庫)より
4043442092

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