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葦と百合
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葦と百合の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.67pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全12件 1~12 1/1ページ
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柳田国男の『遠野物語』、中井英夫『虚無への供物』などの書名をちりばめつつ、一つの殺人事件を核として衒学的に展開する。衒学的に展開はするのだが、やがて物語は現実と幻想の境界を失い、いわば霧散してしまうのだ。それゆえ結末から遡って分類するならば、これは推理小説ではない。推理小説の語り形式で綴られる幻想小説であり、しかも優れた幻想小説ではない。幻想とはもちろん現実ではないことなのだが、本書ではその現実と幻想との境が不明確なままに終わる。現実ではないことで幻想の存在が際立つのであるならば、両者の境界が曖昧なのは読者としては腰の据わりが悪い。それこそが「メタフィクション」なのだ、と言うのだろうか? だとするとメタフィクションではない方が面白い、という結論になるのだが。 | ||||
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どうやら私は、この作者の文章と相性が良いらしい。冒頭を読んだだけで、文筆家にしか書けない美文だと感じ、読んでいて心地よいのだ。作者が影響を受けている、夏目漱石を読んでるみたいに感じた。 さて、処女長編らしいが、凝りに凝った構成で、随分と力が入っている。一応形としてはミステリーだけど、推理しようなどと無駄な試みはせず、美文を楽しみながら、ストーリーを追うことに専念。それで十分に面白く、作者らしい虚実織り交ぜた、幻想的ミステリーを堪能する事が出来たと思う。 ただ、終章は余計だったように思う。作者としては、全ての謎を解明する、ミステリーの解決編のつもりなのか知れないが、少なくとも、私には理解出来ない謎が沢山残った。開き直って、謎は謎のまま残せば良かったと思うのだが。 | ||||
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作家の若いころの作品らしいが、何が言いたいのか理解に苦しむ、ディレッタントな作品。また、モデルと特定できる登場人物の描写を読み、胸が悪くなった。若かった時代とはいえ、書いたものは残ってしまう。悪意さえ感じられる何人かの人物の描写は、作家の倫理感の低さ、傲慢さ、および恐ろしいほどの無知を感じさせる。柳美里ではないが、訴訟を起こされないのは、一重にモデルとなった当該人物がこの作品のことを知らないからに過ぎない。 | ||||
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作者の作品としては「「吾輩は猫である」殺人事件」の様なメタ・ミステリを幾つか読んでいるのだが、本作は一番の駄作、あるいは習作レベルと言って良いのではないか。「虚無への供物」を意識した上で、民俗学の香りを濃厚に漂わせた伝奇メタ・ミステリを目指した様だが、読了後、徒労感しか覚えなかった。現実と幻想(夢)との狭間を彷徨するといった作風は他の作品にも見られるが、本作はその技巧がまだ練れていない感がある。作者も書いていて、物語をどう収束させて良いか困惑したのではないか。全体構成が計算されているとは到底思えないのである。 題名の「葦と百合」が、現実主義と理想主義(ロマン)との対比の象徴である事が早くに分かってしまうのも興醒め。コミューンに夢を求める等、思想的幼さも感じる。作者のドイツロマン派への傾倒が出過ぎている。読んでいて、結末への興味がまるで湧かなかった。作中で起こる不可思議な事象の説明を全て幻想と時空とで済ませてしまう姿勢にも疑問が残る(他の作品にも見られる傾向だが、もっと巧く処理している)。事実は登場人物(あるいは読者)の数だけあるといった、バークリー流の多重解決を意識しているのかも知れないが...。 エンターテインメント性も無ければ(むしろ本筋とは無関係な幕間の方に、後の「クワコー」シリーズを思わせる可笑しさがある)、思想性にも見るべき点がないというお粗末な出来。上述した通り、習作と見做すのが相応しい作品ではないか。 | ||||
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途中まで面白かったけど後は最後までイライラ…。現実と妄想が交錯するところが魅力なのかもだけどやりすぎてややこしいだけ。なぜこんなに評価が高いのだろう | ||||
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20歳前に読んだ時、とても興奮したものだが、15年以上経って読みなおしてみると興ざめしてしまった。 この作品は失われたコミューンと失踪した青春の恋人という舞台装置が上手く効いていて、若い頃にはそのロマンチックさに惹きこまれたものだが、今読んでみるとコミューンはとても不自然でその舞台装置の陳腐さは読むに耐えない。 日本でそのようなコミューンがありうると思えるようなリアリティーが余りにも感じられないのだ。 ただし、文章と構成はこの作家はいつも抜群に上手いので、推理小説の亜種としては完成度が高い。 若い人が初読ならばおそらくかつての私のように惹きつけらられるだろう。 年をとって読みなおしてみると技巧だけが目立つ作品であり、通俗的とさえ感じてしまった。 この作家が別にリアリズムを追求しているわけではないことは承知しているが、推理小説マニアの大学院崩れ(最近では創作科に就職されたそうですが)ならではのペダントリーと技巧と雰囲気だけで作られた作り物の世界であることを確認させられた。 その技巧の確かさに免じて星は3つ付けておくが、決して評価しているわけではないことを肝に命じていただきたい。 | ||||
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「かつての奥泉作品」は、単なるミステリーではなくて、メタフィクションと幻想文学が渾然一体となって、輝いていた。 いまのミステリーファンも推すような作品も勿論よろしいのですが、『シューマンの指』にうなった人には特にに読んでもらいたい傑作がこちらの作品。 こんなスゴイ作品が品切れなんてもったいなさすぎると思って、義侠心(?)で、レビューしました。 ラスト前の異常な迫力とシーン(状況)はなんともいいようがないです。 中井英夫の『虚無への供物』が好きな人には、その「90年代版」としておすすめできます。民俗学や、ドイツ詩句、庄内の森、昭和のコミューン思想と資本主義、等々、純文学の作家が駆使する思想的な味つけにも大いにひかれます。 個人的には、おなじく九十年代の『ねじまき鳥クロニクル』などよりもずっと革新的な作品だと思うのですが、向こうがちゃんといちおう着地するのに比べて、こちらはラストにブンガクしちゃっているところが、一般ウケしないのかなとも思う。 | ||||
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あらすじは「商品の説明」にあるので割愛させていただき、感想のみの記載で失礼させていただく。 この物語では、虚構と非虚構を対立関係から解き放っている。日頃は相容れない要素として捉えられがちな虚構と非虚構(とされるもの)のあり方について、考えさせられた。 ありえない、とされる構造の提示。話の構造全体が、語るという行為の比喩になっている、ともいえそうだ。 あらゆる現実は語られる行為を通じて、単一の事実から幾通りもの可能性を剥落させていく。それは、たとえば認識のゲシュタルトの揺るぎない人々にとっては、乾癬からはがれ落ちていく皮膚のかけらのようなものにすぎないかもしれない。痛みはおろか痒みすらほとんど自覚されないほど微細なレベルでの、絶え間なく乾き続ける死の堆積。だがある種の並行世界において、それらは現実より遙かに生々しく人に迫るのではないか。 「物語が現実を乗り越える」という「現実」がありうる……少なくとも、個人にとってのある特定の世界においては、物語がそれまでの日常と立場を逆転させてゆくような事態が出来しうる。そういうフィクショナルな現象を、身をもって示したフィクション、という印象。 人が異界に呑みこまれて生きる時間、物語が現実を乗り越えるという現象を、物語る行為によって示す――そこにフィクションの醍醐味があるのではと、気づかされた。 また、すぐれたフィクションはジャンルを問わないジャンル小説に向かうのではないかと、実感させられた。 | ||||
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語れば語るほど現実が異なる形を見せてゆくという奥泉お得意の展開が、本作品においては成功している。本格推理的な完全に割り切れるお話が好きな人にはオススメできないが、そのペダンティズムといい、実に濃密な出来栄え。 | ||||
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語れば語るほど現実が変化してゆくという奥泉得意の展開が本作品においては、成功している。本格推理的な完全に割り切れるお話が好きな人にはオススメできないが、そのペダンティズムといい、実に濃密な出来栄え。 | ||||
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「グランド・ミステリー」でも思ったが、この人の文体はとにかく読みにくい。過度に修飾された表現は一向にイメージが湧かず、却って読み手にストレスを与えるだけだ。「グランド~」同様、ここでもそれは後半に読み進むと意図されたものだと分かるが。 | ||||
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昔の恋人が暮らす山奥のコミューンを訪れた主人公が、事件に遭遇する。現実と幻想が交錯しながら、推理小説っぽく話は展開していきます。しかし、後に芥川賞をとる著者の作品ですから、普通のミステリーではありません。「このミステリーがすごい」で上位に入った「グランド・ミステリー」より、私はこっちのほうが面白いと思う。 | ||||
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