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魂萌え!
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魂萌え!の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.06pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全84件 61~80 4/5ページ
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伴侶を持つ身であれば、「結婚」が生み出す「こんなばすではなかった」という展開はある意味刺激的にも思えます。 本の厚みとは裏腹に、ノンストップで読んでしまいます。 夫の死後に知った裏切り。妻は墓地を遠方に購入し、ささやかな復讐をする。 死後は子供たちと相続でもめる、老後の面倒のことで考えが衝突する。 どこの家庭でも起きることばかりです。 そんな中で今までの人生とは違った生き方をする・大胆になる・意識改革をする主人公。 夫と死別した妻は長生きする、女性って逞しい。 全く普通の家庭での話、つまり誰でも経験することと言えるでしょう。 今までの作品とは違った世界でした。ここまで書き分ける桐野女史って、 一体どんな人生を送っていらした人なのでしょうね。とても興味が湧きます。 | ||||
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桐野夏生氏の作品ゆえにナニかしてくれる!!って あらぬ期待をもってしまった私が悪いのか。 ちょっと期待外れかな。 でも、桐野氏の大ファンなので作品を読めただけで私は感動です!! 物語の主人公になりえない平凡などこにでもいる 中年女性を主人公にしているのが作者らしいですね。 センセーショナルなストーリーを期待して読むと なーんだってことになる (特にOUTみたいなのを頭に描いていてはダメね) 中年女性の心の奥底にとぐろを巻くように 渦巻いている、様々な思いの一片を知ることが出来 読んだ価値はあった。 こちらが親のためにいいと思ってしていること どう感じているのかもなんとなく分かったし。 これからも中年女性の心理に触れて欲しいです タイトルに「萌え」を使ったのは 今でも理解できないけど | ||||
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普段の桐野小説とはまったく意趣の異なった小説です。新聞小説だったので、より読み物らしく仕上がっています。59歳で突然夫を亡くした妻、平凡な夫婦だと思っていたその夫に10年来の愛人がいたことが発覚。少ない遺産も子供たちと争う羽目になり…何も知らない専業主婦だった主人公が、これから先の長い人生を一人で生きていく覚悟を決めるまでのお話です。久しぶりに一気に読みました 主人公の敏子には、高校時代の仲のよい4人組があり、そのうち敏子を含む2人がすでに未亡人。二人が現役の主婦&母親業といったところ、ふむふむ、59歳というと50%は寡婦なのね?とそこのところ、食いつきました これらの時代=団塊の世代以降は、人生は、少年・青春期=子育て期・家族期=老年期の間にもうひとつ、「魂萌え!」期という「孤独と戦いながら生きる」時代が生まれたと考えればいいのでしょうか? 孫に囲まれて幸せに暮らすというのが、理想の老後だとしても、その前に、ちょっとまった!私の中にはまだくずぶっている何かがあるのよー!というのが、現代の「魂萌え!世代」でしょう。それにしても、伴侶がなくなってから、急場しのぎに子供世帯と同居するというのは、息苦しそうです。できるだけ、一人で気楽に過ごしたいなー&。(まず、生き残る必要がありますが…) | ||||
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この小説の影の主役は心臓麻痺でポックリと亡くなった夫、隆之である。この男が死んだことによって、アメリカに行ったきりだった長男は帰ってくるし、愛人の存在は明らかになるし、その復讐心から妻は生涯初の浮気をする。 死んだら、その人の存在が無くなるわけではなく、死ぬことによってはじめて存在感が生まれることもあるのだ。人は他者の中にこそ生きている存在なのである。 もちろん、本来の主役は、いきなり定年過ぎの夫に死なれ、ひとり残された妻、敏子である。最初は敏子に同情的に読み進むが、徐々に敏子の世間知らずぶり、お人好し加減、主体性のなさに、苛立ちを覚える。敏子は「日本」という国にも似ている。「アメリカ」という夫の支えを無くした時の「日本」をまるで擬人化したような思考回路、行動を敏子は取る。この小説にある種の救いが持てるのは、60歳目前に初めて世間に放り出された敏子が、キレたり、凹んだり、試行錯誤を繰り返ししながらも、独りだからこそ得ることの出来る自由を、自らの手でしっかり掴み取っていく点だ。相続問題、愛人問題など次々に押し寄せてくる困難の数々、その合間の貴重なインターミッションとなっているのが、気の置けない友達との会話である。さまざまな環境、思考を持つ友と話すことで、客観的に物事を捉えなおしたり、勇気付けられたりする。独り生きていくためにこそ、友達、仲間の存在が貴重であることを、この小説は教えてくれる。 | ||||
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人生のパートナーがいない・・・子供はいるものの、それでもやり切れない孤独感が常に私を襲う。そして憂鬱になり家事にも手が付かない。 部屋は散らかりまた鬱になる悪循環。そんな自分を救ってくれるのは 誰なのか?しかも体調も思わしくなく、仕事は突然の解雇・・・ 暗い絶望の淵でこの一冊の本に出会いました。 仕事のための自己啓発本とどちらを買おうか迷いましたが、 ピンク地に鮮やかな花が描かれているこの本「魂萌え」を手に取っていました。仕事の能力の向上よりも、自分の魂を燃え立たせてくれる何かと出会う必要があるのだと私の内なる魂がささやいたのだと思います。 それにしても隣の奥さんは子供を怒りすぎだ・・・ 今日は子供をクローゼットに閉じ込めていた。 「出してー」「出してー!」と何度も言っていた。壁越しに聞こえる のだからこちら側から「出してあげなさ~い!」と叫んでみようか・・ | ||||
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数時間で読み終えてしまいました。読んでいる間は思わず感極まってしまう場面や台詞が詰まっていて、その度に考えさせられ、まだモヤモヤするような感じが残っています。 それは私自身が敏子(主人公)と同じ道のりをたどるのではないかと単純に想像してしまう子持ちの専業主婦であり、同時に美保(主人公の娘)の立場も感じることができる年代だからかもしれません。敏子と同年代でひたすら真面目に家族のためだけにがんばってきた母世代を思うと切ない気持ちになります。むしろ30代40代の私たちが読んで「専業主婦」「家族」「人生」という平凡な言葉の括りを自分ならどう歩んでいくか、あらためて考えるきっかけにしたらいいのではないでしょうか? 世の中は敏子のようなタイプがほとんどを占めており、それによって日常は穏やかに過ぎていくのでしょう。でもその裏には殻を破りたい、でも破り方がわからない、周りの影響は?という理性が働く。ちょっとしたきっかけで誰にでもいつでもその「破りどき」がやってくるかもしれないこと、その時どう対応するのか、その対応が正しかったのか間違っていたのか思い悩む・・そんな憂鬱病(ストーリー内に書かれていて印象に残った言葉です)と戦いながら生きるのが人生なのかな、と読み終わって間もない今は思っています。 まとまりのない文書になってしまいましたが、日ごろ子供との時間に追われ、家事で一日があっという間に終わってしまうとお嘆きの主婦の方!ぜひお読みになって一度「憂鬱病」を実感され、ご自分の生活に静かな刺激を与えてみてはいかがですか? | ||||
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夫に頼りきっていた主婦が夫の急死で突然一人になる。 知識も権力もない彼女達にとって、 これほどの恐怖と不安はないかもしれない。 ここに描かれていることは決して大げさな話ではなく、今の日本の老後の現実だと思います。子供達の勝手な振る舞いに傷ついた敏子さんの心が、 親切にしてくれた見ず知らずの人たちに寄りかかってしまいそうになる姿が切ない。 彼女は寂しく厳しい現実を見ることによって成長していく。 まさにこれは孤独な主婦のサバイバルですね。本当の危機に直面したときに誰を信じて・頼って生きていけばいいのだろう・・・ それは子供でも友人でもなく 結局は自分自身でしかない。 悲しいけれどこれが現実なのでしょうか。私達にいつふりかかるかわからない、日本のリアルな恐怖を描かせたら 桐野夏生さんの右に出るものはいませんね。 | ||||
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私にとっての最大の見所は不倫相手との修羅場。主婦敏子と相手の女。 敏子はずっと専業主婦で、相手は現役の女だ。 とうてい勝ち目はないはずなのに、あの戦いっぷりはどうだろう。 夫と別れてからは一応現役(なんちゃって現役)の私とて相手にあれほどの言葉を浴びせることはできない。 妻としてののプライド・・・それがあのおとなしい性質の敏子にあれほどまでの激しさを与えたのだと思う。 私は妻の座も人生にほんの少し、孤独な女という人生も現在進行中だが、年を取るのは怖い事・・・に違いない。 孤独ももちろん怖い事。でも人の幸せを壊してまで孤独から抜け出そうとは今の所は思っていません。 すごく臆病です。 不幸の絵図が予想できるからでしょうね。 でも主婦敏子は何故か激しく強い人なのです。 それだからこの小説は魅力に溢れているのです。 ああっ・・・それにしてもお隣の奥さんは子供を怒り過ぎだ。 アパートの壁伝いに今日もおたけびが聞こえる。 今度、一言いってやりましょか・・・? | ||||
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来るべき将来、それは“4人に1人がじじばば”の高齢化社会。 すでにシルバー世代向けの雑誌も何誌か刊行されている。 その多くは健康や趣味や介護や旅行といった内容ばかりで、しかもセレブ向け。 果たしてそれらはシルバー世代にとって、本当に必要な情報なのであろうか。 どこかで老人はこういうものだと決めつけてはいないだろうか。 小生は男だから余計そう思うのかもしれないが、本当は恋愛とかSEXライフについて堂々と語る記事を欲しているのではなかろうか。この作品には50,60代の恋愛や情交が等身大で描かれている。 たとえ59歳になっても恋愛に心ときめくし、好きな異性のためにお洒落もしてみる。 死んだ亭主の不倫相手は同世代。 年齢の表記がなければ青春恋愛小説とも読める。「偕老同穴」などと美化することなかれ。 夫婦といえども死ぬまで互いに男と女。 伴侶に先立たれたならば、残された人生は自分のために生きよ。 著者はこの作品にそんなメッセージを込めているのではなかろうか。老いを実感するのは人それぞれ。 50代で感じる人もいれば、70代になっても「魂萌え!」ている人もいる。 ましてや20代の若者が自分の老後について思い遣るなど、むしろ不健全。 いくつになっても「今をどう生きるべきか」、そんなことを考えさせられる小説だ。だからこそ若い人に是非読んでいただきたい。 中高年のオジンやオバンは決してキモくはないんですよ。 | ||||
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夫婦ふたりで平穏な生活を送っていた主婦敏子が夫の死後、直面する不倫、親子、友人との関係に翻弄されながらも、着実に強くなって行く敏子の姿に思わずがんばれと声を掛けたくなりました。 今までの桐野さんの作品には無い等身大の60歳が描かれています。歳をとれば何事も無く、落ち着いた老後が待っていると漠然と考えていましたが、この先も同じような事が待っているのかと、考えさせられてしまいました。 続編があってもいいかな | ||||
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桐野作品は初めてですが、美しい本の表紙と激しさを感じさせずにいられない題名「魂萌え!」に惹かれて購入しました。 主人公敏子がどんな人生を選択するのか先が読めず“桐野ワールド”に引き込まれっぱなしでした。 最後の最後でようやく自分の経験と重なり涙しました。 しかし“桐野ワールド”はそれだけでは終わらせませんでした。 読み終わった後も登場人物たちが私の心を掴んで離してはくれないのです。 まるで自分の身近に本当にいるような味わい深い個性を持った友たち。 学生時代の旧友の女友達、亡き夫の男友達、憎き恋敵、新しい友。 寂しくはない。鬱になんかならない。だって良き友との出会いのチャンスは星の数ほどあるんだ・・・ 「魂萌え!」とは情熱を持って強く強く生きること。 | ||||
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いつもの、読者を地獄の底まで道連れにするような桐野ワールドとは、趣が違い、淡々とはしているが、50~60代の人ならば誰でもが持つ幻想を、ことごとく、打ち砕いてくれる話の流れは、トーンが低いだけに、恐い。待っている現実は夢も希望もない世界だが、その中で、愚かではありつつも、一筋の光を求めて生きる姿は、男女ともに健気で可愛い。人の生きる価値はその一点にあるとでもいいたいような…。ところで「魂萌え!」というネーミングがちょっと不可解。!はいらないと思うのですが如何? | ||||
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どうしたらこんなにリアルな小説が書けるのだろう・・・桐野夏生という人の書く力の凄さを改めて知った気がする。突然夫を失った主人公に次々と起こる環境の変化、子ども達の身勝手さ、古い友人たちのそれぞれのキャラクターが事細かに描かれていて、感心するばかり。特に「フロ婆さん」のあまりの強烈さに本当にこの人、いたんじゃないの、と思ってしまった・・・いつか来る老後、それを考えずにはいられない、そんな一冊でした。 | ||||
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これまでの桐野作品とはがらりと作風が違います。 個人的には一昔前、宮本輝が好きだったけど最近の作家は殺人が多くて・・ とこぼしてそうな層に最適と思ったんですが、これは漠然とした感想です。 作品としては、昨今のやたら大冒険をする主人公ではなく 専業主婦の59才の女性が夫を急遽亡くし、生活・女友達・男友達・恋人・携帯・子供・・ 少し冒険しては立ち止まり、1つ冒険しては2歩下がったりしながら自分探しをしてゆく内容です。 ちなみに私の母62才に手渡してみた所、一晩で読破して魂を奮わせてました この本の最大の魅力は、50代以降の価値観に見事に会う等身大の内容だと思います もちろん50代以下でも十分楽しめたし、印象に残る台詞もありました 男に対し信頼出来ないと女が思うのを、不満という言葉でかたずける男 男女の恋愛、加齢する親子関係、女友達との距離、そして夫婦 477ページたっぷり楽しみました | ||||
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桐野夏生といえば、「OUT」、「グロテスク」、「柔らかな頬」など、犯罪性がある物語というイメージでしたが、今回の作品は誰にでも起こりそうな現実的な物語でした。 還暦を前に夫を亡くし、世間知らずの専業主婦がいろいろな問題に立ち向かっていく姿が描かれています。 まず、夫の愛人問題。生前は全く夫に愛人がいるなどとは思わず、夫を信じてきたのに死後に発覚して、気持ちの整理がつかない。私にもあなたにもこのような問題が出てくる事が全くない、と誰が言えるのでしょうか?怖いですね。 次に子供達が自分の生活のために遺産を法定相続したい、と母親に言い出します。子供達も独立していけば、家族ではなくなるような思いです。うちの子に限ってそんなことを言い出す訳がない、と誰がいえるのでしょうか?これも怖いですね。せめて、自分の親が死んだときはもめないようにしなくては。 そして、友達との関係。高校時代からの友人もお互い年をとってきて、アルツハイマー?気味になってわがままな行動をおこして主人公を悩ませます。年をとることも怖いですね。 せめてもの救いは、主人公にまだ恋をする元気が残っていたことかしら? 今までの作品と違い、身近な問題だけに切実に怖い小説だったと思います。 | ||||
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評者は新聞連載時に毎日楽しみに本作を読みました、他のレビュー内で小説は20世紀で終ったのではないか、と書いたのですが、確かに純文学は終ったように考えるが、本作のような力強い作品を読めば、まだまだ娯楽小説のパワーは侮れないとも感じます、評者が著者に注目するきっかけが、かつて渡辺淳一失楽園に登場する人物の服装描写をおかしいといったとき、そういうだけあって著者の細やかな描写力から受ける映像的な喚起力は見事なものです、すでに娯楽小説作家としては超一流なのでしょう、夫の保護下に生涯を送ることに何の疑問も感じなかった主人公に突如ふりかかる夫の死、愛人出現、息子の帰国、相続問題、友人関係、など読者によってはその一部は些細とも感じられるトラブルの連続が娯楽小説のフォーマット内で中高年女性の為の一種の教養小説に高められた逸品、著者にはぜひ続編を期待した、 | ||||
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夫が突然亡くなってしまった。 何より驚いたのは、夫には、秘密があったこと。 もし、まだずっと夫が生きていれば、いつかわかったかもしれない。 そうすれば、妻としては、それぞれ対処の仕方が違っても、割とよくある話になったかも知れない。けれども 夫は一言もそのことについて触れずに往ってしまった。 もう、何をどう考え、どう思っていたか聞きたくても聞けない。あなたなら、どうしますかと、聞かれても、 きっとそのときにならないとわからない。子供たちは、それぞれ自分の人生が一番大事だから、 未亡人になった母親を優先して考えるなんて、できない。 まだまだ未来があると信じているから、 ひとりになった母の未来もまだあるのだとは、気づかない。 気がついても、知らないふりをする。あなたならどうしますか?専業主婦で大過なく過ごせてきてしまったから、 社会の底辺で生きる人々の底力に驚き、翻弄され、世間と自分の間に、夫という防波堤があったことを知るが、その夫がいなくなり、剥き身で世間に放り出されたとき、はじめて改めて、夫と話したいことがあるとわかったのに、もう、話し合えない。あなたならどうしますか。世界はいつも、思いがけない方向に進んでいく、 あなたにも私にもふりかかるかもしれない出来事。 世間ではありふれたことと思っても、いざそれが自分の人生になったとき、惑い戸惑い苦しみながら、力強く生きはじめる主人公に、 一筋の 光を見い出す思いができます。 | ||||
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帯のコピーどおり、「若い人にはまだ想像できない世界」が存分に描かれています。 確かに最近の路線から比べるとおとなしい作風ですが、リアリズム的にいうと圧倒的にこちらの世界は生々しい、日本人たちが描かれおり、考えようによっては、こういった作品のほうがはるかに読後に来る重さが違います。 長年連れ添った主人の死。そこに残されたあることによって、残された妻敏子の人生が大きく動き始めるといった内容。 登場人物、出来事など、自分たちの身の回りのどこにでもありそうな話なのだが、それがかえって面白い。 私にはまだ先の話で想像は少しくらい出来る年にはなりましたが、20代たちの人には考えられない世界でしょう。でも先んじてその世界を少しは感じてみる事をおすすめします。そのときがくれば逆に考えたくない世界に変わっていると思いますので(笑。って笑い事では無いのですが・・)。 | ||||
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私は「OUT」から入った桐野氏ファンで、今までの作品も手に汗握りながら読んできた一人です。 本作は、確かに従来の作品とは傾向が違い、いわゆる殺人や流血はありません。しかし、冒頭などのスピーディーな文体は桐野氏だなと思わせるものがあります。 そして、特に桐野氏に近い世代の私にとっては、この作品はフィクションであって、まさに現実にほかならず、身につまされる思いで読みました。身内の急死、相続にからむ骨肉の争い、いろいろ口を出してくる人々の間での板ばさみ、不倫、そんな中で揺れ動く感情…。「事実は小説より奇なり」という言葉がありますが、それは経験から言っても本当のことです。それをこの作品は見事に描き出してくれています。 日常こそ、実は一番スリルとサスペンスに富んだものだということを私たちは忘れて生きています。一瞬先には何が起きるかわからない。自分が思い描く人生が現実になるとは限らない。 そうであっても、自分はそのときに自分がそうしたいと思ったことを実行するのだ、という気概を持って生きていきたいと、この作品はあらためて思わせてくれました。 これからいろいろな経験をしていく若い方々にも、実際に同じような経験をしている世代の方々にも読んでいただきたい作品だと思います。 | ||||
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小国の王子だったブッダ。東西南北4つの城門から外へ出るたびに、衰えた老人、苦しむ病人、死者を嘆き悲しむ人々に出会う。最後に北の門で托鉢僧に出会い出家を決意する。この生・老・病・死にまつわる逸話は「四門出遊」と呼ばれる。手塚治の漫画『ブッダ』で知った。桐野夏生の小説『魂萌え!』を読んで思い出した。還暦を前に寡婦となった一人の平凡な主婦が「世の中」に直面し、強く賢くなっていく。亡き夫の不倫が発覚し、身の上話を聞かせて金を取る老婆に立川のカプセルホテルで出会い、オペラ歌手おっかけ命の友人はアルツハイマー病の片鱗を見せ、息子・娘は相続を巡って勝手なことを言う。静かな暮らしが見事なまでにぐちゃぐちゃになっていく。それでも一人、ときには人の力も借りて、強くなっていく。本当の意味で「第2の青春」を深く描き切った快作と思う。 | ||||
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