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春にして君を離れ



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春にして君を離れの評価: 4.48/5点 レビュー 221件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.48pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全195件 161~180 9/10ページ
No.35:
(5pt)

読むことを怖れていた小説

あるTV番組で、この小説が紹介されていて、内容に興味があったが、自分自身と向き合うようで、ある意味怖れていた。
結婚25周年をまもなく迎えようとしている、主婦ジョーン。彼女が娘の家での滞在後の帰り、砂漠の町で足止めをくらい、自分の人生を振り返る一人の時間をもつ。
ジョーンの回想から、今まで、妻として母として、完璧で幸せであったという自己満足が、崩れていく。「自分がいたから、夫も子供達も幸せで上手くやってきた」と思っていたジョーン。だが、徐々に想いを巡らせていくその様子が、実にリアルであり、残酷で哀しい。使用人にも、文句は言うが、褒めたことがなかった女。
彼女は、自分以外の人間の気持ちを慮ったことなどなかった。
孤独を知った人間は絶望の淵に落とされる。
「家庭内の主婦は、ある意味、専制君主だ」という言葉を思い出した。真実を突いた言葉であり、その専制君主は、自分にとって不都合なことには、目をつぶり、気付かふりをする。夫や子供が異論を唱えれば、「こんなに自分はあなたの事を思っているのに」と、切り返す。
ラストも実にリアリティがあった。気付かぬふり、馬鹿なふり、可愛そうなふりをする・・これこそが自分自身を守る手段であることを知っている。これこそ、「女」なのだ。また、夫のロドニーも「男」のずるさ、優しさの中の残酷さがある。
夫も妻も、「人生をやり直す」ことも「真実をあぶりだす」ことさえ、気力もないのだ。
別れやいさかいは、非常にエネルギーを必要とするもの。そんな時代や年代はとっくに過ぎた中年夫婦の姿が現実。情熱的なドラマを求めたりするのは、若いうちの特権かもしれない。
A・クリスティが「女」と「男」が陥りやすい本質を、残酷な切り口で見事に描いた傑作だと思った。

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.34:
(5pt)

捉え方はいろいろ

僕はこの物語を読むのにすごく時間がかかった。
出てくる登場人物が繊細に描写されているからそれぞれの気持ちが理解できて逆に苦しいということもあるし、主人公ジョーンの言動一つ一つに「こいつはなんて利己的な考え方をするやつなんだ」という嫌悪感が生まれたからだ。

また僕はこの本を読んだ後、ジョーンの夫であるロドニーに対する同情心が最も強く残った。自分の置かれている状況が望んでいるものではないと気付きながらも『優しさ』という仮面を捨てきれず、しがらみから脱することの出来ないもどかしさ(本人はそれを認めようとはしていないが)に少なからず共感する部分があったからだ。

しかし、終りにある解説で栗本薫はロドニーを「いやなやつ」という捉え方をしている。この事からもわかるようにこの本を読み終わった後に残る感情は人によって様々だろう。もしかしたら何も感じない人もいるのかもしれない。

この本は読んだ後に他人と感じたことを共有したくなる本だと思う。
僕はロドニーみたいな人生を過ごしたくはない。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.33:
(5pt)

アガサクリスティのアガサクリスティによるアガサクリスティの本

メアリ・ウェストマコット名で書かれた小説は、どれも面白い。

メアリ・ウェストマコット名で書かれた小説は、どれにもアガサクリスティの性格を持った人が登場する。
本書では、主人公は、アガサクリスティその人のようだ。
イギリスの女性で、表向きには個人的なことを話さない。
ある理想的な幸せは、危険が少ない、確実な生き方。
夫や子供は、こうあるべきという建前で生きている。
きっと、主人公は、ある年代までのアガサクリスティそのものなのだろう。

アガサクリスティは、主人公のような生き方は、最終的にはしなかったようだ。

外国旅行で、ひとりぼっちになり、自分の生き方に疑問を持ったというのは同じかもしれない。
家に帰ったら、夫に謝ろうとしていた主人公。

しかし、本書を読み進むうちに、最後にイギリスに帰ったら、きっと主人公は、また元に戻るだろうという予感がしていた。

アガサクリスティは、脱皮したが、本書の主人公は脱皮しなかった。
本書の主人公は、自分の家に戻ったら、また、元の誤らない妻に戻ってしまった。

アガサクリスティと主人公では結末が違う。
それが、アガサクリスティの言いたかったことなのではないだろうか。

アガサクリスティの本で、はじめて、文学と言える作品に出会ったと思った。
メアリ・ウェストマコット名で書かれた小説は、本当の意味での文学だと思った。

ps.
本文を読み終えて、栗本薫の解説を読んで、また驚いた。
栗本薫も、アガサクリスティに同感するところがあったらしい。

栗本薫の本の本文はほとんど読んだことがないが、栗本薫の本の、著者のあとがきはかなり読んで、あとがきのファンになっている。

こんなに分かりやすい文章を書く人をほかに知らない。
アガサクリスティもきっとそんな分かりやすい人なのかもしれないと思った。

イギリスと日本の文学者の間に、極東と極西の島国に、さんぜんと輝く文学者の姿。
解説を読み終え、ひさびさに読んでよかった本に出合えた気がしました。

誰がなんといっても、アガサクリスティのBest1です。


春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.32:
(5pt)

足止めされる恐怖

たとえ些末事でも忙しなくうちこんでいられる時にはけっして気づかないもの。だが本書のヒロインのように急なトラブルのために文明の利便さ
とかけ離れた沙漠の真ん中にとりのこされれば否が応でも自分の現状に疑問符が浮かぶのではないだろうか?
ただ事実として、本書を読んだ感想に恐いや哀しいなどのセリフが上がるが、本当にそうか?そう思っていいのか?結局の所、これは単なる事実
だよな。あまりに平凡で非個性な事実。
ただ、その事実にぶち当たっときに人がとる行動は良くも悪くも三種類しかなく、嘯いて認めないか、ただなるようにしかならんと開き直るか、
認めたうえで事実を紛れもない真実に変えようとするか...だ。。
この一冊の教訓が最後の項目にあるのは明らかで、《変える》ではなく《変えよう》とするかだよな。それは《認める》じゃなく《認めよう》
と努力できるかにかかってる。ひどくとりとめないが、それだけ訴えかける内容が抽象的だ。単純だからこそ抽象的。


個人的な解釈ですが、フレキシブルすぎて主体性がないようにみられる人は共有できる価値があって没頭できるのではと。そんな方にお奨め。

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.31:
(5pt)

足下にぽっかりと空く穴

それ程多くアガサ・クリスティを読んでいる訳ではないが、それでも、この話は彼女の著作の中では最も恐ろしい話ではないかと思う。
血は流れない。猟奇的ではない。
けれど、即物的な痛みよりも、もっと恐ろしい痛みがこの中には描かれている。
タイトルは美しいながらも、とても悲しく恐ろしい物語だ。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.30:
(4pt)

考えることがお好きな方へ

タイトル「春にして君を離れ」に惹かれ、
いくつかのレビューを参考に開いた本。
まぁ、ムズカシイネ。
読む人によって、読むときによって
いろいろと考えるだろうなぁ、って感想。
あっちへヨロ、こっちへヨロヨロ。
倒れそうで、倒れなくて。
座り込んでも、起き上がり。
また歩き出す。
何か酔っ払いのようですが、一瞬一瞬は正気で。
そんな私でも面白く読めました。

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.29:
(5pt)

ロマンチックではないけれど

過去のある部分をふと思い返しては何かに気づき、ふと現実に戻り、また別の時を振りかえっては新しい何かに気づく。その真実に近づいていく過程が巧いです。

主人公は自己中心的で身勝手、前向きすぎな人物。
けれども反省するシーンがあるからか、それほど嫌な人とは思わなかったです。
人を憐れんでいる所はさすがに嫌味ですが……
問題は、いろいろな場面で人間関係が上手くいってないことを示すサインが出ているのに、見て見ぬ振りをしているところ。

けれども、砂漠で一人考え、今まで自分が得ている情報だけで「周りから見た自分」と「自分と周りの関係」、さらには「夫の秘密」にまで思い到ることができたのだから、本当は鈍くもなく、やろうと思えば客観的に物事が見れる人なんですね。
結局非日常の場所で考えた為に、日常の場所に戻った時には……

夫は何か嫌な人間です。唯々諾々といいなりになるばかりで、一番身近な人物なのにきちんと向き合わないまま二十数年。しかも心のなかでは主人公を疎んで憐れんでいるのがどうも……
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.28:
(5pt)

夫婦や親子でも擦れ違いが生ずる人間の不思議さ、危うさを痛感させられる

この作品(『春にして君を離れ』)は、作者アガサ・クリスティーの実体験に基づいた告白小説なのではないか?三十代半ばを過ぎて離婚を経験した作者が、ミステリー作家として成功しながら、五十歳を過ぎて夫婦や家族に纏わる問題に悩んだ半生を顧みて心理ミステリーに手を染めたとしても不思議はない。

お馴染みの名探偵(ポアロやミス・マープル)が登場せず、謎めいた殺人事件も起こらない内省的な人間関係ミステリーにも関わらず、読者の混乱を慮ってわざわざ違う筆名(メアリー・ウェストマコット名義)で発表するという周到さも手伝って、却ってミステリー仕立ての恋愛小説として第一級の心理サスペンスの面白さで読者を圧倒する。

砂漠の駅で足止めを喰らった中年女性スカダモア夫人が奇しくも向き合うことになったのは、「こうあって欲しいと思うようなことを信じて、真実に直面する苦しみを避ける方が、ずっと楽だった」自分自身であった。

予期せず再会した女学校時代の友人の落魄ぶりに優越感混じりの憐憫しか感じなかった己の浅墓さ。遠い異国の地で末娘が病気に罹ったのも母親である自分の愛情の欠如が原因だった。話し相手のいない孤独な静寂さの中で、スカダモア夫人ジョーンは見栄っ張りな自分の愚かさを噛み締め、家族に対する無理解、現実逃避の生き方を思い知らされる。

誰もが主人公ジョーンのように、自分に都合よく解釈しながら人生を生きているのかも知れない。だから、本作はそん所そこらのミステリー小説よりも恐ろしく怖い。推理小説の殺人犯ならば特別な利益や怨恨、愛憎の動機を持った人物に絞り込まれるだろうが、本作では万人に代替が利く人間存在そのものを根源的に問うているため、哀しみと恐怖の反芻が生半可では済まない。

成瀬巳喜男の「浮雲」で描かれた腐れ縁の男女の機微が判るようになり、小津安二郎の「東京物語」や黒澤明の「生きる」に身を詰まされる年齢になって本作のような凄い小説を読むと、夫婦や親子であっても擦れ違いが生ずる人間の不思議さ、危うさを痛感させられる。

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.27:
(5pt)

今までのアガサクリステイの最高傑作

アガサの推理小説はポアロも、ミス・マープルもそれ以外も読んできた私だが、この作品は「怖い」殺人事件があるわけでない。しかし、子育ての終わった3人の子の母が5日間、砂漠のど真ん中の駅の宿舎で足止めを受けた偶然のために、明らかになっていく「恐るべき家族の虚像」愛とは何か?恐るべき勘違いではないか?平穏無事と思っていた人生がリアルタイムで「全然平穏無事」でなかったことが明らかになる。気が付いた夫人はイギリスに帰って、どうするか?長女に会い、夫に会う。砂漠で気づいた自分か?元の自分か?どっちを選んだのか?その結果、妻はどうなり、夫はどうなるのか?家族は?
最後の最後までハラハラで読みました。
砂漠での半ば自殺未遂のような放浪までした妻の取った最後の態度とは?

世の古今東西を問わず、普遍的な問題だったと思う。

臨場感があって「怖い」、そして極めて現代的な問題を扱っている。読んだものすべてが、何らかの感想を「持たざるを得ない作品」であるところがすごい。
アガサをただの推理小説作家を思っていた私が浅はかだった。

この作品に引き込まれていくのは「そして誰もいなくなった」以上だ。
読めばわかると思う。表紙の絵もなかなかいいと思う。
アガサの最高傑作だと思う。「アクロイド殺し」よりすごい作品だ。出あえてよかった。

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.26:
(5pt)

ミステリーではない怖さ

ポアロやマープルのシリーズをある程度読んだ後に手にした作品でした。
ミステリーじゃないので迷ったのですが、思わせぶりなタイトルに惹かれ。
最初は波がなく退屈そのもので「失敗したなぁ」と思ったのですが、
半分を過ぎるあたりからは一気読みでした。
身近な筈の家族が、実は深く恐ろしい葛藤と欺瞞を生む温床になるとは…。
人間なので熱しも冷めもしますが、
その残酷さを実に美しく完璧な形で読まされた、という感じです。
“彼”の最後の言葉――凍りつきます。



春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.25:
(5pt)

他人に重ねて読んだが、実は私のことなのかも知れない

毒親の話。毒親が自分を見つける話。ときいて 
「それはさぞや胸がスカッとするだろう」
と読み始めました。

しかし、いやぁ、深い。

「親の価値観」を「あなたのため」だからと押し付けてくる親。
「ああ、いるよねー」「うちの親もこれあるある」と読んでいましたが

…これは、自分のことなのかもしれない。
今はそうではないかもしれないけれども将来そうなるかもしれないのでは
ないか?夫に、友人に、実はこんな迷惑をかけたりしてるのでは
ないか? 深く自省することを「うつっぽい」と表現し、そういった
自分にとっては気持ちよくないテーマから逃げていたことを反省した。

今はこの小説をまだ受け止めることができた。
でも10年後、20年後、いつか「この主人公がどうしてみんなに憐れまれているのか
わからないわ」と思うときが来るかもしれない。
その時、私は主人公と同じ状態になっているのだ。

自分の状態を判断するために、この本は本棚に入れておこう。
同じ本は2回読まないが、この本は何度も読みたい。いや、読みたくなくても
読まなくてはいけない、と思った。

子供はまだ小さいわ、とか 子供どころか独身ですけど?という
あなたももしかして「友達から」クスっと笑われてることがあるのかも
しれないですよ。怖い怖い話でした。

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4150400385
No.24:
(4pt)

小説としてのひとつの完成形

本書の話を女性特有のものとして扱って欲しくはない。
男だって、来し方を振り返るときは多い。
でも、こういう振り返り方って、ちょっと欝っぽい。
もし自分がこういう風になったら病院いくかも。


怖い本だと、私は思う。
小説としてのひとつの完成形を見たような気がする。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.23:
(4pt)

押し付けの愛?

人を愛するということは その人の人生をも左右すること?

幸せの価値は人それぞれ。
あの人 気の毒だなーと思っても その人にとっては幸せだったりする。
相手に良かれと起こした行動も 疎まれきらわれたりする。

いつの時代も 難しい問題です。
考えさせられる 作品です。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.22:
(5pt)

希望でも絶望でもない

愛する人のために何かをしてあげて、
そして実際に喜んでもらえた、という経験は、
誇らしい記憶として何度も呼び起こされるものです。
でも、愛する人は、うわべで笑っていただけだったのかもしれない。

あの人のようにだけは、なりたくない。
そういう哀れみの目で見下していた人間よりも、
自分のほうが嫌われ者だったりするのかもしれない。
でも、これまでの生き方を変えるほどの、転機ってあるだろうか。

どの登場人物も人格は不完全で、人間臭く、
それぞれの中の正しさを貫き、そしてお互いがすれ違います。
もやもやと決着のつかない雰囲気が、現実味を帯びて迫ってきます。
内面の叫びを描いた作品なのに、視覚の描写がとても具体的。

退廃的な絶望があっけなく克服されると同時に、
虚構めいた希望は見事に砕け散ってしまう。
人は、自分の心の範囲でしか世界を解釈できないという事実が、
そよ風に乗って吹き付けてくるような、そんな感じがしました。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.21:
(5pt)

私の心の書

25才から15年にわたって、たびたび取り出しては読んでいる本です。
過干渉でコントロール型の母親に育てられ一時期拒食症にまでなった私は、この本を母に渡し読んでくれるよう言いました。
母は、「退屈な本」という感じでピンとはこなかったようでした。

必要とされることを必要とする人、この女主人公はそんな人です。相手のためを思ってやっていると思いこんでいるのがたちが悪い。結局は、自己中心的なんだと思います。

結婚して、妻になり母になり、いつも原点に立ちもどるなにかを教えてくれる、そんな本です。これだけ心理学的にも今に通じる深い内容・・アガサクリスティーは、すごい作家です。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.20:
(5pt)

私の心の書

25才から15年にわたって、たびたび取り出しては読んでいる本です。
過干渉でコントロール型の母親に育てられ一時期拒食症にまでなった私は、この本を母に渡し読んでくれるよう言いました。
母は、「退屈な本」という感じでピンとはこなかったようでした。

必要とされることを必要とする人、この女主人公はそんな人です。相手のためを思ってやっていると思いこんでいるのがたちが悪い。結局は、自己中心的なんだと思います。

結婚して、妻になり母になり、いつも原点に立ちもどるなにかを教えてくれる、そんな本です。これだけ心理学的にも今に通じる深い内容・・アガサクリスティーは、すごい作家です。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)より
4151300813
No.19:
(5pt)

実はクリスティの最高傑作

1944年作品。当初はメアリ・ウェストマコット名義で出され、四半世紀以上自身が著者であることを漏らさないようにしたことで有名な作品だ。ミステリィでないことを知った読者ががっかりしないように、と理由づけられているが本心はそうではないだろうと読んでいて思った。

プロット建てたミステリィもいいけど、心理機微をつくこういう作品もすばらしい。もう一歩進んでいってしまうと、あのすばらしいミステリィたちよりもより素晴らしいと思えてしまう。それほどの作品だ。(変なたとえだけど柴門ふみと共通したものを感じる。)

隔離された別世界で自身のことを考えること。それは実は何にもまして恐ろしいのかもしれない。あえてこの作品をクリスティの最高傑作にあげたい。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.18:
(5pt)

  もしも あなたが

もしもあなたが、この本に殺人事件を期待しているなら、読まないほうがいいです。
これは、殺人事件の話でも、強盗事件の話でも、ありません。
なんの暴力も、流血も、ありません。
それでも。
やや、だらけた感のある始まりから、読み進めるにつれ、息のつまるような恐ろしさが、やってくる。
なによりも恐ろしいのは、恐怖は、自分の中からやってくる、ということ。

どうぞ、読んでみてください。

そして、人生を、見つめなおしてください。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.17:
(4pt)

推理物ではないが恐い話だった

アガサ・クリスティーの小説だが推理物ではない。第二次世界大戦前、娘の病気見舞いに行ってバクダットからイギリスに帰る途中、テル・アブ・ハミドで主人公の夫人は独り足止めをくらう。閑散としたその地で数日間彼女は今まで固く信じてきた(信じようとしてきた)理想の家庭、夫の愛情、子供達の愛情等に徐々に疑問を抱き始める。一見すると、彼女がとても見栄っ張りでプライドが高く自己中心的で、それに家族が振り回されているようにも見えるが、テル・アブ・ハミドで彼女自身が自分でそれに気づき自己嫌悪に陥りながらも反省し始めたところは凄いと思った。そして、日常の環境に戻った途端、それが一瞬にして吹っ飛んでしまったのも凄く現実的だと思う。彼女が特別な人間なのではなく、誰でも心のどこかで自分を可愛いと思っている。そして自分は(曖昧な感じで)良い人間だと思っている。だから、生きていられる。でも、家族や親しい友人、職場の仲間たちは必ずしも若しくは絶対その人のことをそうは見ていない。普通、そのギャップはなかなか判らない。だから皆それなりに仲良く上手くやっていける。そんな人間の生き方について考えさせられる話だった。一番最後の夫の言葉は私には物凄く恐ろしく感じた。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.16:
(5pt)

ミステリだけでは勿体無い

読むごとに違う視点で感想がわく、不思議な本です。
毎回違う人物の気持ちに気づかされ、別の本のようです。衝撃的な、しかし一見何事もない、そのラストの展開には、息が詰まると同時に深く人生を感じざるを得ないのです。いつも感想は、自分のなかにかえってきて、自分を揺さぶります。「娘は娘」「愛の重さ」などは各論的で若干神秘趣味な点もあり、"愛の3部作"では本作が一番お勧めです。アガサ・クリスティのミステリだけでは、勿体無いと思います。実は毎回泣いてしまいます。10年以上読んでまだ飽きない名作です。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385

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