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虐殺器官
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虐殺器官の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.03pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全273件 241~260 13/14ページ
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ネビル・シュートの『渚にて』は前世紀の核の恐怖に怯えた人類に読まれるべき小説であったのなら、『虐殺器官』は今世紀最初に起こったテロの恐怖を身近に感じた人類に読まれるべきそれだと思う。 しかしこれは何も反戦を謳っているわけではない。我々が「今、ここに」生きていくための小説なのだ。 近い将来この小説は必ずや全世界に向けて発信されるだろうと確信している。作者が夭折なされたことが本当に悔しい。 | ||||
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アメリカ情報軍特殊検軍i分遺隊、空飛ぶ海苔(フライング・ウィード)、侵入鞘(イントルードポッド)、などの近未来兵器、ドーピングによって身体的、精神的痛みをコントロールされた少数精鋭のコマンドが主役になっている近未来の戦争の姿は、ゲーム、アニメの世界ではそう珍しいアイテムではないのかもしれません。ですので、バリバリのゲームマニアがそれを目的に読むだけであるならばそう衝撃はないでしょう。 作中の背景として登場するゲーム理論、進化論などもけしてアクセサリーとしてでなく本題の中に組み込まれている筆力は現在の邦書では群を抜いています。翻訳化を前提に書かれているのかと思ってしまうほど国際標準に準拠した形(なんのこっちゃ)で書かれていました。とても短期間で書き上げられた作品とは思えません。しかし、本書の核はそのようなガジェットではなく、人間の遺伝子に予めプログラミングされている残虐性を知っていながら、それに罪の痛みを感じる主観的な罪悪感(良心)との矛盾に苦しむ登場人物の描写にあるではないでしょうか。 戦争の姿は兵士である人間をたんぱく質でできている唯物的な存在として活用している現実がこれでもかと描写されています。一方、登場人物たちは、言語化されない思考の範囲が暗黙知として存在し、脳(こころ)に痛みを感じ罪の意識にさいなまれた人間はどう行動するのか?伊藤劃画氏の才能に圧倒される1冊です。 | ||||
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小松左京賞落選作(笑)。 ここまでの作品が落ちた理由について考えてみたいと思います。 まず、左京賞に応募した段階より相当書き込んだと言われている現在のバージョンにさえ、 「ここまで文章の上手い人が、なぜこんな不用意な書き方をするのだろう?」 と疑問を抱くような、明確に推敲不足と思われる記載が数カ所あります。 これが応募段階では、ずっと多かったのでしょう。 そういった記載が発生した理由は、巻末の大森望による解説で判明しました。ものすごい速書きの人だったらしいです。また、病気の治療の関係で体力がなく、じっくりひつっこく推敲することもできなかったのでしょう。 それから。 SFの賞に応募されたことから推測できるように、本作には魅力的なSFガジェットがいくつか登場しますが、それが社会状況として極めて今のテーマを描きたいという要求とぶつかりあって、相互に矛盾した時間になっています。つまり、テーマから言ってごく最近の話を書きたいが、SFとして魅力的であるためにはかなり未来的な技術を必要とした。そのアンバランスが気になるのです。 また、それらのガジェットは魅力的ではありますが、画期的に目新しくはありません。 一部のSF愛好家は、SFの価値を、目新しさ(だけ)に置いていますから、この作品がその面では評価されなかったのもうなずけます。 作者の発明と思われるガジェットはただ一つ、「虐殺言語」ですから、選評でその虐殺言語だけにこだわったコメントが出されたことにもうなずけます。 しかしここで描かれているのは、SF的なアイデアではありません。 全員を救えない時、あなたはエゴをむき出しに身内を救うのか? それとも、身内を犠牲にしてわがままを押しつけるべきではない他人の方をこそ救うのか? という、極めて倫理学的、哲学的問いなのです。 その問いが、現代の政治状況を背景に、今ここにいる自分の問題として、ぎりぎりと突きつけられる、そのすさまじさをこそ鑑賞するべき作品なのです。 本作は、旧来型のSFの価値基準にとらわれた審査員が、文学的価値を見落としたという、典型的な失敗例として語り継がれるべきであり、なぜ今SFがダメになったのかの答えとして長く提示される証拠物件となるでしょう。 | ||||
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10年後には早くも伝説になるであろう、30代半ばで夭折した天才的作家の数少ない長編の中の1作です。 主な舞台は内戦状態にあるいくつかの途上国。そこで暗躍する謎のアメリカ人ジョン・ポールを抹殺する使命を帯びた合衆国特殊部隊の指揮官シェパード大尉を主人公に据えて、これまでの日本のSF作品では描かれたことのないような世界を展開してくれます。 後半の読者の興味は「ジョン・ポールの真の目的は何か」の一点に向かいます。その一方で、彼が発見(?)した「虐殺の文法」の具体的内容は説明されません。その辺が小松左京賞に選考されなかった理由とも説明されています。 随所で繊細な主人公の脳裏を借りて、さまざまな倫理学的・哲学的思索を展開し、作品に深みを与えていますが、若干先走りすぎて、「後は読者が考えて」というような余地を遺してほしいと思う私などは、やや違和感を覚えます。 とはいえ、この作者が世の読書人たちに与えた影響は計り知れません。そして、人間というものは、限られた短い日々の中で、ここまで大きな仕事ができるのかという感慨に震えました。 | ||||
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私も普段SFはあまり読まないのだが,日経の書評で褒めちぎっていたので読んだクチだ。 確かにディテイルはすごく,軍事やテクノロジーに関する知識の豊富さ・正確さと細かい描写には感心した。 けれども,何というのか,大きなストーリーを感ずる上では,やはりちょっと尻すぼみな印象を受けた。 様々な技術や医療的処置によって,心の細部に至るまである意味「管理」を受け,多数の人間を殺しながらも自分が行為主体であったとは受け入れられず,従って罪の意識を持つこともできない主人公。その人間疎外の状況を描き出した筆者の筆力はまさに素晴らしく,我々も今後時代が進むにつれてこういう世界で生きてゆくことになるのか,と我々自身の問題として迫ってくる。 それだから,この後の大きなストーリーはこの人間疎外状況がテーマになり,主人公が思い人のルツィアと会って自分の罪と罰を定めてもらうのが大きな山場になるのだろうと想像しながら読み進める。あるいはジョン・ポールとの対決でもこの問題が一番のテーマになるのではと想像する。 しかし,この二人との再会はかなりあっけないものだ。詳述はしないが,主人公の罪と罰を定めてくれるはずのルツィアはあっさりと死んでしまう。メインテーマは主人公の(従って現代人全員の)心の問題から,発展途上国での虐殺によって先進国でのテロが防がれている,というマクロな問題へと変わってきてしまう。 まあ,これはこれで良いのかも知れないが,私としては主人公の繊細微妙な罪の,あるいは疎外状況の問題が,かなりおおざっぱな国家レベルの利害のような問題にすげ替えられてしまったようで残念である。 作者が50歳くらいになり,円熟の味が出てくると一層良い作品が生み出されるのではと期待したい所だが,それも叶わぬ夢になってしまった。 | ||||
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9・11事件以降、世界の先進諸国は個人情報認証による厳格な管理体制を整え、 後進諸国にはテロの更なる泥沼化を引き起こし、巨大な溝を生み出した。 米国情報軍、特殊検索群i分遣隊に所属するクラヴィス・シェパード大尉は 他国の戦争を介しながら「虐殺を引き起こす文法」という禁断の技術を目の辺りにする。 2001年9月11日に事実として起こった米国同時多発テロ事件後の、国家の在り様とテロとの戦い。 それに伴う国軍の変質と傭兵派遣会社のPMFの台頭、経済成長。 未だ続く宗教対立による内戦の裏に絡む先進国の利他行為。 近未来の世界をリアルに描いた作品です。 SFでありながらミステリ要素と、人間が放つ言葉に脳が齎す「感情」という物への探求が書かれている。 政治や戦争、脳医学や精神学等、広い視野と知識が無ければ書けない一冊。 伊藤 計劃氏の筆力に敬意を抱くと共に、氏の早世を惜しまずにはいられない。 | ||||
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まず著者が、すでに故人であることは非常に残念です。これからもっと成熟した、完全度の高い作品が世に出る筈だったのは間違いないでしょう。 作品の感想は、知識の浅い自分にはちょっと難しい箇所がいくつもあった。本当の事か想像か、判断つかない知識が随所に見られた。 裏を返せば、それほどのリアリティーがあるんです。アクションにしてもテンポ良く、最近観た映画「グリーン・ゾーン」よりもリアルな戦場を感じるほど、緊張感とリアリティーがあった。 しかし、随所にあるトリビア的な知識が、良いテンポを止めちゃってるのは残念でした。それでも難しい小説が苦手なバカな自分に、最後まで飽きさせず読ませる文章力は魅力的です。 著者の作品は少ないですが、他の作品も手にしたくなりました。解説で少し著者について知りましたが、本当に無念だったでしょうね。ご冥福をお祈りします。 | ||||
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たまたま見つけた本書。 なんとなくその装丁とタイトルに惹かれて購入。 予想外に読み始めたら、まったくもって止まらない。 あっという間に読んでしまいました。 こんなに面白い近未来を、ありありと無理のない範囲で表現し、 また今に生きる私の生き方を顧みるきっかけも与えてくれました。 また、読みながら、生体材料のイメージが完全にMGSだったので、 著者の作品にMGS4があって驚きました。 さらに、著者のプロフィールを見たら、すでに亡くなっていることを知り愕然。 本当に残念。でも、そのときにそうだったからこれが書けたんや。 と思うことにして、残された作品を味わうことにします。 ぜひ、ご一読を。 | ||||
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(おそらく)22世紀、民族紛争、戦争が絶えない地球。 サラエボに原子爆弾が投下され、「唯一の」被爆国、日本は過去の出来事となった。 主人公はアメリカの暗殺専門戦闘員。言語による無意識下での洗脳で、各地で内紛を頻発させている研究員の暗殺を命じられる。 近未来の情景、科学技術、情報管理社会などがかなり具体的に描かれており、著者の知識の豊富さがうかがえる。 これはSF作品であるが、同時に著者の思索、哲学が投影された作品であり、近未来の人類に対する痛烈なアイロニーでもある。 かなりの話題作となったようだが、ストーリー構成の秀逸さ、完成度の高い作品であることは、間違いない。 | ||||
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残念ながら若くして既に故人とのことですが、こんな才能が埋もれていたことにまず驚きと その先を見たかったという点での無念さをまずは述べたいと思う。 ひょんなことで知ったこの小説なのですがミステリというよりはSF小説に くくられるのだろうが遠くない近未来を舞台にした軍事諜報モノ。 正直過剰なまでの引用やメタファーと恐ろしいほど詳細まで設定され た世界観が最初はページの進みを遅くしていたのだが読み進めると あっという間に引き込まれてしまった。 大友克洋の"AKIRA"、押井守"ゴーストインザシェル"やエヴァなどの系譜に あたるだがプロットの完成度と最後の伏線の回収と結末など前述の作品郡にもおとらない。 アフターヌーンで連載していた"EDEN"を恐ろしくブラシュアップしたというか。 哲学性と膨大な知識量に裏打ちされたインテリジェンス。 9.11以降の世界がテーマであるのは確かだろうが、広義の意味で 人類史の罪と罰を問うような大きなテーマに挑み破綻することなく 物語が着地しているのが素晴らしい。 Amazonのレビューでも総合で★5というのがその質の高さを証明しているのではないでしょうか。 | ||||
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褒める部分は、他の方が充分過ぎる程、書いていらっしゃるので、僕は少しネガティブな事を書きます。約400ページのボリュームの割りに正直、読了後にストーリーの要の部分が少々、希薄な感じがしました。世界観の肉付けに比重が偏っていた印象がありましたね。でも、ラスト(お母さんの項)は良い意味で肩透かしを喰らった感じでしたし、最後の1ページは、最高でした。(かと言ってラスト1ページだけを立ち読みしても解らないですよ。(笑)) | ||||
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痛恨の一言です。失われた才能に対して、彼自身の苦悩に対して、置いていかれた我々自身に対して。 | ||||
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まずは、「良心的知識人」であるチョムスキーの学問的業績(=変形生成文法)をパロって見せた作家としての悪意に、痛快なまでの志の高さを感じました。 それに、一行一行の背後に込められた知識の蓄積と、こうした一行一行を結び付ける思考の強度が、生半可じゃありません。はっきり言って、凄すぎる!(そこは、佐藤亜紀氏の作品にも通底してますね) 小説を書き始めた地点からして、そんじょそこらの小説とはモノが違うのは、! 「虐殺の言語」そのものに関しては輪郭を描き出すことに徹して、適用例についてはあの有名な「ゴキブリを…」くらいに控えたあたりに、 この語り口にふさわしい小説を構築していこうという、伊藤氏の作家としての巧さがうかがえます。 仮に、伊藤氏が「虐殺の言語」の具体例に満ち満ちた作品を描くとしたら、あまりにも喜劇的であるがゆえにますます悲劇の度合いが深まるというような小説になったのでは? などと想像せずにいられませんが、遅れてきた読者としてはこうした感傷にふけるのは控えるべきなのでしょう。 | ||||
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文庫になってから読むと言うセコイ習慣を変えなければならないなぁ、と切実に感じたのは、伊藤計劃という作家と同時代に接触する機会を得られなかった悔いが大きかったから。書店に平積みされた『虐殺器官』を手にとるまで、伊藤計劃を知らなかった。 決してハリウッドでは映画化できない内容だろうけど、ハリウッド映画になったら凄いだろうなぁ、と思えるストーリー展開。かつて日本SFに無かったようなスケール感とディテールのリアリティ。『虐殺器官』は、とてつもなく重たいテーマを内在しているのにも拘らず、軽快なエンタテインメント作品に仕上がってる。 この作品を書き上げて2年ほどで作者がこの世を去ったことは、漸く文庫のあとがきで知った。 彼はネット上に様々な痕跡を残していた。同時代に彼を知っていたら、きっとボクはコンタクトしただろうし、彼からのリアクションも期待できたかも知れない。ブログやmixiで新作のスクリプトをこそっと教えてもらえたかも知れない。 ミッションを成し遂げた主人公が、亡くなった母親のライフグラフ(ネット上に残された本人の痕跡)にアクセスしたときの気持ちに、この小説の読後感は類似している。虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) | ||||
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「私たちの楽しい生活の為に、妙な事考える貧乏人は死んでくれないかなあ」という先進国的エゴが身も蓋もなく暴かれた作品と読んだ。"私"がへらへら笑い薄っぺらい人生とやらを餓えも暴力にも怯えず生きる為に、力弱く言葉無い弱い存在(この作品では人工筋肉の素材にする為に養殖されるイルカにクジラ、安い労働力として働かされる子供、銃を持たされ否応もなく戦わされる子供達etc)から利益だけを徹底的に搾取し、暴力と虐殺を押し付ける世界の仕組み。そんな事を漠然と感じた。 そして人は国の為、主義主張の為、仕事だから、愛する人を守る為等々なんのかんのと理由を付けて、虐殺を行う引き起こす事が出来るのだ。虐殺を誘発する文脈。確かルワンダでの虐殺は初めラジオの放送で誘発されたものではなかったろうか?旧ユーゴ内紛の時の戦意高揚のビデオも見た事がある。そんな風にして少しずつ、都合の悪い存在は死んでもいいという空気が作られていくのだろう。 今、瞬間に幼い子供達が戦力と性を搾取され、何もわからぬまま死んでいるのだろう。その屍骸の上に私の生活は確実にある訳だが、昨日とかわらずへらへらと生きていくしかないだろう。 | ||||
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高野秀行氏が絶賛していたので買ってみた。 帯には「伊坂幸太郎,宮部みゆき,小島秀夫」が絶賛していたりする。 SF?普段あまり積極的に読むことは無いジャンルだけれど,そこまで書かれると・・・ 知のカタマリのような本だ。近未来の先進国によるテロ対策の現場を描いているのだけれど,その内容がすごい。そのリアルさ,本当らしさというのか,まるで今まさにこの現場に放り込まれたら,信じてしまいそうな架空の世界である。 架空を描く。その方法は様々あるだろうけれど,「まるで見てきたかのように描かれる」と,読者はその読む手を止められない。繊細さと鋭さを持ったお話が,著者の計算されたゆったりとした語り口で描かれる。身震いしそうなほどの冷たさを持った本書は,その引き込み方には熱さを持っている。 「伊藤計劃」 プロジェクト伊藤と名づけられた著者は,もうこの世には居ないのだけれど,膨大な知識を,その緻密な計算のもとに詰め込んだ傑作。 「ゼロ年代最高のフィクション」とか,ややもすれば敬遠してしまいそうな宣伝文句だけれど,この10年での掘り出し物であることは間違いない。 「若者は絶対的で純粋な自由というものがあると思い込んでいる場合が多い。若者はそうた偽りの自由を通過し,謳歌する必要があるんです。大人になって様々な決断を迫られる状況になったとき,みずから選ぶ自由がより高度な自由だと,リアルに感じてもらうためにはね」 台詞の,言葉のひとつひとつが読んでいくたびに情景になる。物語でも言葉が重要視されるけれど,そのためにもこれほどまでの緻密さが必要だったのかもしれない。 文庫で読んだ。ハヤカワの独特なつくりなのか,この本だけなのか,ページの端がやたらと狭い。また,第1部を読み終えるまでは,少し戸惑いを覚えるかもしれない。でも,そんなことを忘れさせてくれる至極の一冊。是非。 | ||||
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圧倒的です。 9・11以降のテロのとの戦い後、後進諸国で急激に増加する内戦、 そして大量虐殺。暗殺という手段で介入する某国。 そして、大量虐殺の陰に浮かび上がるひとりの男。 冒頭、地獄を思わせる世界から、物語が始まります。 私は社会人になってからは、すこし小説から離れていました。 特にSFは、学生時代を通しても、ほとんど読んだことがありません。 今回、この文庫を偶然書店で目にし、はじめて著者を知りました。 黒い装丁、伊坂幸太郎氏・小島秀夫氏・宮部みゆき氏の推薦帯が 目を引き、その場ではあらすじをながめたものの、買うことはなく 書店をあとにしました。 仕事も忙しいし、ちょっと分量が多いかな、とか考えていました。 でも、少し気になったのでアマゾンでレビューをチェックしたものの、 著者が亡くなられたとのことで、多少評価が上乗せされているのかなと、 失礼ながら勘繰っていました。 最終的には気になって買ったのですが、5つ星評価が妥当な傑作でした。 著者が亡くなられているのが本当に惜しまれる。 そして、闘病中にこれらの作品を残されていることは、本当にすごい。 私はこのあと、他の著書も間違いなく買います。 文庫化は待ちません。待てません。 | ||||
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テロをしめだすために世界を覆った個人認証システムをかかいくぐり続けながら 国を渡り歩いて虐殺を引き起こす謎の男。母の死に負い目をおう主人公がそれを追います。 物語はアフリカ、東欧を経てやがて神話的な混沌へと突き進みます。 作中では虐殺の現場がヨーロッパにまで広がり、日本以外でも核が使用されているのですが ブラックウォーターに雇われている、かつての虐殺者たちのギャラがボクたちの 税金で払われているという現実を考えると、この未来にはボクたちとは無関係ではない ある種の説得力があるように感じました。突きつけられる終幕を重く受け止めました。 かたわらに横たわっているのに目に見えない「何か」、それに名前を付けて あぶりだして見せる。それがSFの醍醐味だとボクは思います。 この作品は見事に現代のIFを打ち抜いて見せました。 これがデビュー作だとは!!! 重いストーリーにユーモアでアクセントをまぶし 思索的な会話の中で宗教や哲学を行き来しながらテーマをあぶりだす。 手際のよさに舌を巻きました。厚みのある登場人物たちも、すごくよかった。 否応なしに次回作への期待が膨らむのに、この作家がもう鬼籍の人だなんて 涙が止まらない。 もったいなさすぎる!!! できるだけたくさんの人が、この小説を読んで この作家の名前を心に刻んでくれますように。 | ||||
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本書は、2009年に早逝した著者による、 近未来を舞台にしたSF小説です。 舞台はインド・パキスタン国境で核爆発が起き、テロや紛争が頻発する近未来 東欧、アフリカ、そしてかつてインド・パキスタンがあった土地 アメリカ諜報機関の一員として世界各地を転戦しながら、 テロや暴動を影で扇動する首謀者を追う主人公でしたが、 極限を超えた任務での精神的緊張と 彼自身の内的葛藤が相俟って、やがて世界を大きく変えることになります。 虐殺を意図的に発生させることができる「虐殺の文法」 月光の流れる中、自問するかつての独裁者―など 各話、各場面ともに、著者の鋭い問題意識と美意識に溢れており、 とても印象的なのですが 脳に特殊な施術を受け、痛みを感じることなく肉片になるまで戦う兵士の姿には おぞましさとともに、形容しがたい美しさを感じました 早熟の鬼才が幻視した破滅への預言 SFや政治小説ファンに限らずオススメしたい著作です。 | ||||
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日本のSF、しかも若手作家の作品が妙に読みたくなって本屋に行くと 真っ黒で物騒なタイトル、読めない作者名、帯に連なる名前。 かなり異彩を放ってたので手に取りましたが、正直、あらすじ読んだ感じでは そんなに興味がわかなかったんですが、作者の経歴を見て気が変わりました。 作者が亡くなった頃、僕も同じ病気で闘病生活を送っていました。 だからどうしても読みたくなりました。 リアリティーが凄い。戦場の現実を実際には知らないのだけど、 今まで目を背けてきた、見ようとしてこなかったリアルがここにはあると感じる。 また、未来なら何でもあり的なテクノロジーの未来ではなく、 単純に先の無い暗い未来でもなく、今この現実の延長線を思わせる近未来のリアリティー。 登場するSFツールの裏付け設定も細かい。 虐殺と暗殺を扱っているので、あらすじだけを聞くとそういう部分にだけ目がいきがち になりそうだけど、様々なテーマが描かれている。社会派の印象も強いです。 僕は特に「良心」に関するところに興味を持ちました。 かなり色々と考えさせてくれます。SFというジャンルだけで終わらせてしまうのはもったいないです。 あと、佐藤亜紀さんの評価も高いようです。『天使』『雲雀』が大好きなので 何かすごくうれしいです。 作者はこれ以降も闘病しながら執筆を続けてられています。本当に強い。頭が下がります。 他の作品も読みます。 しかし、あの豆腐屋が出てくるなんて。ユーモアも結構あるんです。 | ||||
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