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アメリカン・デス・トリップ



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アメリカン・デス・トリップの評価: 4.71/5点 レビュー 21件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.71pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全21件 1~20 1/2ページ
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No.21:
(5pt)

The Cold Six Thousand

腐敗した汚濁の瘴気が青白い炎を揺らめかせる。

去年/潜入/衝突/反射/プール/娼婦/嘘/遡及/交渉/FBI/軽蔑/落下/罠/ヒモ/裏金/散弾/新聞/頭痛/憎しみ/写真/ダラス/片目/切断/二級傷害罪/ベガス/酩酊/親指/KKK/裏切り/ベンゼドリン/盗聴/買収/記録/タクシー/紙吹雪/視線/赤信号/偽名/アカ/電話/雑音/心臓/CIA/嘲笑/警官/傍受/キューバ/輸血/追跡/燃焼/報酬/タレコミ/怒り/侵入/噂/大義/嘔吐/海岸線/ヘロイン/混乱/囮/挑発/脅迫/崖/尾行/小冊子/崇拝/爆発/ベトナム/猫/限界/骨/永久/永遠/

"尼僧が通りがかった。ピートを見る。ぎょっとする。十字を切る"
"セ・タン・フー――あれは狂人にちがいない"
"セ・タン・ディアーブル――あれは悪魔にちがいない"
"セ・タン・プロテスタン――あれはプロテスタントの怪物にちがいない"

シビレル。
アメリカン・デス・トリップ(上)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ(上)より
4163203001
No.20:
(5pt)

エルロイ氏の創作意欲がピークに達した感のある大作

ケネディ大統領が暗殺されてから、暫くして他の謀略が進行し・・・というお話。

前作でケネディの暗殺を独自の視点から書き直した著者ですが、本作ではやはり歴史的事実であるキング牧師暗殺とロバート・ケネディ暗殺を素材に独自の視点でアメリカ史を書き直している様です。そこに公民権運動の弾圧や泥沼化していたヴェトナム戦争を背景に置くことで、60年代のアメリカの希望の喪失を描いた大作に思えました。

解説でも指摘されている様に、文章がかなり特異で、「ドアを開けた。ドアを閉めた」という感じの切り詰めた文章が延々と続いて、人によっては呪詛や怨念に満ちた文章に思える書き方がなされ、それが小説全体のパラノイアックな謀略を際立たせる事に成功している様の思えました。読む人のよってはこの文体が読みづらいと思う方もいると思いますが、私は楽しめ(と書くと語弊がありますが)ました。

多分著者のエルロイという人が個人的史観で、アメリカが暴力と死で成り立っている国と定義している様で、全編で血と暴力が渦巻く凄まじい作品になっております。似た様な作風のコーマック・マッカーシー氏や映画監督だったロバート・アルドリッチみたいに、もしかしたらアメリカを愛しながらもアメリカが嫌いなのではないかと思わずにはいられない様なネガティヴなパワーを感じさせる圧倒的な小説でした。

というお話なので人によっては読んで凄く疲れたり、嫌悪感を抱いたりする方もいるとは思いますが、読んでみる価値はあると思います。

エルロイ氏の創作活動がピークに達した感のある大作。是非ご一読を。

蛇足ですが、これの前のLA4部作は「ホワイト・ジャズ」だけ復刊されましたが、全部復刊して頂きたいです。それとドス・パソスの「USA]も。
アメリカン・デス・トリップ(上)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ(上)より
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No.19:
(5pt)

エルロイの最高傑作だろう

文庫にして上下合わせて1200ページに亘る長編。エルロイは、「アンダーワールド三部作」の1作目では、JFKの暗殺に至るまでのアメリカの裏社会の
異常性を描き、この「アメリカン・デス・トリップ」では、マーティン・ルーサー・キングとロバート・ケネディの暗殺までが作品の大きな流れとなる。反吐が出そうに
なるくらいの暴力描写、生々しい性的表現、そして、凄まじいまでの人種差別。エルロイは「ワルの白人ども」の犯罪を第三者的な視点で、
包み隠すところなくさらけ出す。この作品をエルロイの最高傑作と評す識者も多い。私もそう思う。彼は、特に主人公の3人、前作でも出ていた
ピート、ウォード、そして新たに加わったウエイン・ジュニアの心の機微や、疲労、虚無感などが実に巧みに表現されているのだ。無駄を一切省いた
文章、韻を踏み、音楽的でもある表現は、数多くの画像をフラッシュするドキュメンタリー映像を観ているような感覚をもたらす。影の実力者である
父親との確執を常に抱えるウエインの心の揺れ、父親の後妻ジャニスとの恋愛、ショーダンサーでピートの愛人でもあるバーブへの片思いなど、武骨な
表現だが、実にうまく描かれていく。前作で、エルロイは「米国に清らかな歴史などあったことはない」と言い切った。そして、この2作目では
それはもっとエスカレートしていく。彼をミステリー作家と位置付け、このミスなどでも上位に選考されることが多いが、彼は純文学的な作家だと
思う。詳細で分かりにくい場面も出てくるが、ちゃんとどこかで分かるような仕組みを入れている。彼の鬼才としての才能に脱帽する。
アメリカン・デス・トリップ(上)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ(上)より
4163203001
No.18:
(5pt)

上巻と同じ感想です。とてもよかったです。

アメリカの正義とはどこにあるのかがこの作品を読むと良く判りますね。
アメリカン・デス・トリップ 下 (文春文庫 エ 4-14)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ 下 (文春文庫 エ 4-14)より
4167705532
No.17:
(5pt)

JFKの時代の特殊性。

ジェイムス・エルロイの解釈が正しいかどうかは別としてあの時代の不可解な世界でよく描かれています。オリヴァー・ストーンと共通しますね。アメリカの政治や制度の古めかしさが良く判ります。
アメリカン・デス・トリップ(上)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ(上)より
4163203001
No.16:
(3pt)

癖はある。

フィクションを史実に織り交ぜ、あたかもドキュメンタリーのごとく読ませるのはすごい。
が、エルロイの文体は独特、私は好きではないなあ、と改めて思った。
ここは好み
アメリカン・デス・トリップ 下 (文春文庫 エ 4-14)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ 下 (文春文庫 エ 4-14)より
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No.15:
(5pt)

面白い

話は難しくてちょっと分からない所があったが、登場人物達はそれぞれ魅力的で、まったく飽きませでした。 エルロイが好きなら、間違いなく、この本も楽しめると思います。
アメリカン・デス・トリップ 上 (文春文庫 エ 4-13)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ 上 (文春文庫 エ 4-13)より
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No.14:
(5pt)

エルロイ・ノワールの傑作

アメリカ現代史の中で、60年代の政治と社会は地下水脈で結ばれアンダーグラウンドの世界で生きる人間どもがオモテ社会に出現するとき、人はそれを「事件」として知る。
エルロイの<アンダーグラウンドUSA>の第2部にあたる本作はケネディーの死の直後から物語は始まる。権力者側であるべき元警官ピーター・ポンデュラント、元FBIウオード・リテル、第一部「アメリカン・タブロイド」の流れをくむフーバーFBI長官。ウラ社会5大マフィアのボスたち。彼らの利権と富豪ハワード・ヒューズを含む権力側の悪意が結びつく先は、マフィア撲滅を訴えるボビー・ケネディであり、公民権という名で黒人の権利を煽り立てるキング牧師であった。
地下水脈が動き出し結びついたすべての悪意は二つの標的に向かって恐怖のドラマをつむぎだす。そしてラスト一行の見事な一撃。
エルロイ・ノワールの最高傑作。

そしてこのトリロジーは第3部「アンダーグラウンドUSA」で結末をむかえる。
アメリカン・デス・トリップ(上)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ(上)より
4163203001
No.13:
(5pt)

破滅に向かって疾走

このシリーズは全てが五つ星と思っている

上巻に比べ、テンポが速い
リテルがますます良い
歴史でキング牧師やロバートケネディが暗殺されたことを知っているのならば
どこで、どういう風に、って思いながら読まざるを得ないのですが
実に鮮やかな

内容について書かない方がお楽しみですので
文庫版の写真の焼身自殺の僧は、強烈ですが
読後感は、実にやばいですよ
アメリカン・デス・トリップ 下 (文春文庫 エ 4-14)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ 下 (文春文庫 エ 4-14)より
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No.12:
(5pt)

「白鯨」に比肩するといっても過言ではない

事件があって犯人を見つけるという類のミステリではありません。念のため。
代わりにアメリカの裏面史を「圧倒的」という月並みな形容詞しか思い浮かばないほどの重厚な筆力で描いていきます。
残念ながら決して読みやすい小説ではありません。ブツブツと切れる文意を取りにくい文章。やたらと多い登場人物。差別用語の氾濫など、読むのを妨げる要素に事欠きません。
しかし、それに我慢して丹念に読み解いていくと、物語の重厚さに圧倒されること請け合いです。
ほめ過ぎかもしれませんが、「白鯨」に匹敵する重厚な物語が圧倒的な存在感を持って迫ってくる、そんな稀有な読書体験を味合うことが出来ました。
アメリカン・デス・トリップ(上)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ(上)より
4163203001
No.11:
(5pt)

一言で表すと「混乱」

主要三人物の明暗が別れる後編。混乱としか言いようがない。この時代の。この世界の。人々たち。混乱が英雄や暴徒、正義や狂気を生み、そして現在もまだその混乱は続いている気がします。
 その後の公民権運動や反戦運動の失速(自滅?)ぶりを思うと、ウエイン・シニアの「利口に憎め」というセリフがとても印象的でした。
アメリカン・デス・トリップ 下 (文春文庫 エ 4-14)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ 下 (文春文庫 エ 4-14)より
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No.10:
(5pt)

一緒に歴史を振り返ってみる

今回は大きな出来事が続く。JFKの暗殺から始まり、ヴェトナム戦争、公民権運動、キング牧師の暗殺、ロバート・ケネディの暗殺。これはただの時代背景ではない。エルロイワールドの舞台装置でもある。短いイノセンスはステップを踏むかのよう、エルロイの妄想はアメリカという国の妄想へと展開する。
 じっくり腰を据えて読みたい作品です。
アメリカン・デス・トリップ 上 (文春文庫 エ 4-13)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ 上 (文春文庫 エ 4-13)より
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No.9:
(5pt)

女性にこそ読んでほしい

主要3人の男を支える3人の女がめちゃくちゃカッコイイ。エルロイは男性作家にしては珍しく、ステレオタイプな男の視点に立たずに女性を大事に描いてくれる。いい気分にさせてもらえる。先入観にとらわれず、まずは手にとり、前半を乗り切って、是非最後まで。泣けます。
アメリカン・デス・トリップ 下 (文春文庫 エ 4-14)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ 下 (文春文庫 エ 4-14)より
4167705532
No.8:
(5pt)

女性にこそ読んでほしい

主要3人の男を支える3人の女がめちゃくちゃカッコイイ。エルロイは男性作家にしては珍しく、ステレオタイプな男の視点に立たずに女性を大事に描いてくれる。いい気分にさせてもらえる。先入観にとらわれず、まずは手にとり、前半を乗り切って、是非最後まで。泣けます。
アメリカン・デス・トリップ 下 (文春文庫 エ 4-14)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ 下 (文春文庫 エ 4-14)より
4167705532
No.7:
(5pt)

圧倒的な筆力でとことん打ちのめされる!

エルロイ史上最長の本作は、アンダーワールド三部作の第2編である。まずその本の分厚さにも驚くが、登場人物の数もものすごい。前作から重要な役割を担っているウォード・リテルとピート・ボンデュラント、そして殺されたケンパー・ボイドをイメージさせるウェイン・テッドロー・Jrが交互に登場すパターンは踏襲され、やはり「善人」は一人も登場しない。エルロイの登場人睦たちの魅力は、何かに取り憑かれたような行動、狂気じみた熱情にあるが、破滅へと突き進む彼らから目を離せない。
 63年のケネディ暗殺後から、ボビーとMLKが暗殺される68年までが描かれているのだが、前作をしのぐスケール感と複雑さ緻密さを持って物語は進行する。最初、これは途中で読むのをあきらめてしまう読者もいるのではないかと危惧されるが、エルロイの圧倒的な筆力でクライマックスまでぐいぐいと引っ張られていく。本作は間違いなく、質・量ともにエルロイの最高傑作であろう。
アメリカン・デス・トリップ(上)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ(上)より
4163203001
No.6:
(5pt)

圧倒的な筆力でとことん打ちのめされる!

エルロイ史上最長の本作は、アンダーワールド三部作の第2編である。まずその本の分厚さにも驚くが、登場人物の数もものすごい。前作から重要な役割を担っているウォード・リテルとピート・ボンデュラント、そして殺されたケンパー・ボイドをイメージさせるウェイン・テッドロー・Jrが交互に登場すパターンは踏襲され、やはり「善人」は一人も登場しない。エルロイの登場人睦たちの魅力は、何かに取り憑かれたような行動、狂気じみた熱情にあるが、破滅へと突き進む彼らから目を離せない。
 63年のケネディ暗殺後から、ボビーとMLKが暗殺される68年までが描かれているのだが、前作をしのぐスケール感と複雑さ緻密さを持って物語は進行する。最初、これは途中で読むのをあきらめてしまう読者もいるのではないかと危惧されるが、エルロイの圧倒的な筆力でクライマックスまでぐいぐいと引っ張られていく。本作は間違いなく、質・量ともにエルロイの最高傑作であろう。
アメリカン・デス・トリップ 上 (文春文庫 エ 4-13)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ 上 (文春文庫 エ 4-13)より
4167705524
No.5:
(5pt)

秋の夜長に…エルロイに取り憑かれて

LA四部作以来、アンダーワールド三部作にも登場する歴史上、創作上の人物たちが、そろって大河ドラマの終焉へと進んでいく感じがする。追い詰められた犬たちが、背徳の世界を突っ走る。決して実現することのない安息を求めて。古来悪人たちが破滅する物語は数多くあるが、エルロイの主人公たちも無名ながら神話かシェイクスピアのような格式と必然を感じる。それもそのはず本作の主要な三人は、これまでエルロイの作品を彩ってきたあまたの主人公たちの集大成であり、その人物造形は過去の作品を彷彿させるのである。
 「ブラック・ダリア」の熱情、「ビッグ・ノー・ウェア」の悲劇、「LAコンフィデンシャル」のエンターテイメント、「ホワイト・ジャズ」の狂気。そのどれもを感じさせてくれるだろう。
 
 
アメリカン・デス・トリップ 下 (文春文庫 エ 4-14)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ 下 (文春文庫 エ 4-14)より
4167705532
No.4:
(4pt)

作家が挑んだ物語り作法の“桎梏”

“ケネディー大統領暗殺”。このフレーズを提示されたら……ほとんどの方が、その事件の詳細を含めほぼ同様のフレームを持った物語を、想像するのではないでしょうか。じつは、作者・エルロイの提示するこの物語もそのフレームの近似をハズしてはいません。むしろ“あの事件”に対する新しい切り口さえわざと提示してないように思われるほどです。この点の目新しさをこの本に求めると肩透かしをくった感じだけが残ります。
 しかし、この“肩透かし”こそが狙いだったのでは? とも思われるのです。得体の知れない“力”が加わったであろうあの“事件”を読者に提示するために、語り部・エルロイが狙っていたものだったとしたら……と読了後、思わせるものがこの本にはあります。例えば、支点・力点・䡊作用点と重り、そして主体。“ある力”を具象しようとすると、まずはこの5つの要素があれば足ります。“ケネディー大統領暗殺”とそれにまつわる合衆国に存在したであろう“力”。この“力”を表現するために―――エルロイは、仰々しい“新事実”・大げさな“切り口”を廃して、5つの要素を仔細に見つめひとつひとつ描き込み、組み合わせて行った。そう考えて、つまみつまみ再読すると、紙数が進めば進むほどあの“力”が再構築されてゆくのがわかります(もしかしてただたんに私の理解が遅いだけかもしれませんが:苦笑……)。
 パーレン内の感想が最後になるのは本意ではないので(苦笑)レビューに戻って、この小説を「作家が挑んだ物語り作法の“桎梏”」と捉えて“読了”することをオススメいたします。独特の“ブツブツ”文体ゆえのリズム感が気にならなくなるかもしれません。
アメリカン・デス・トリップ(上)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ(上)より
4163203001
No.3:
(4pt)

作家が挑んだ物語り作法の“桎梏”

“ケネディー大統領暗殺”。このフレーズを提示されたら……ほとんどの方が、その事件の詳細を含めほぼ同様のフレームを持った物語を、想像するのではないでしょうか。じつは、作者・エルロイの提示するこの物語もそのフレームの近似をハズしてはいません。むしろ“あの事件”に対する新しい切り口さえわざと提示してないように思われるほどです。この点の目新しさをこの本に求めると肩透かしをくった感じだけが残ります。 しかし、この“肩透かし”こそが狙いだったのでは? とも思われるのです。得体の知れない“力”が加わったであろうあの“事件”を読者に提示するために、語り部・エルロイが狙っていたものだったとしたら……と読了後、思わせるものがこの本にはあります。例えば、支点・力点・作用点と重り、そして主体。“ある力”を具象しようとすると、まずはこの5つの要素があれば足ります。“ケネディー大統領暗殺”とそれにまつわる合衆国に存在したであろう“力”。この“力”を表現するために―――エルロイは、仰々しい“新事実”・大げさな“切り口”を廃して、5つの要素を仔細に見つめひとつひとつ描き込み、組み合わせて行った。そう考えて、つまみつまみ再読すると、紙数が進めば進むほどあの“力”が再構築されてゆくのがわかります(もしかしてただたんに私の理解が遅いだけかもしれませんが:苦笑……)。
 パーレン内の感想が最後になるのは本意ではないので(苦笑)レビューに戻って、この小説を「作家が挑んだ物語り作法の“桎梏”」と捉えて“読了”することをオススメいたします。独特の“ブツブツ”文体ゆえのリズム感が気にならなくなるかもしれません。
アメリカン・デス・トリップ(下)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ(下)より
4163204407
No.2:
(4pt)

堕ちていく疾走感

ジョン・F・ケネディとキング牧師とキューバ危機…僕達の中の知識では60年代のアメリカでおきた、ひとつひとつの出来事に過ぎない。もちろんそれらを関連付けられる人も事実もあるんだろうけれど。ふつうのアメリカ人も、きっと僕と同じくらいの認識しか持っていないんじゃないだろうか。
エルロイはこれを見事にくっつけた。それも強引に、かつ緻密に、そして悪辣に。いままでの彼の作品は、毒気が中和されていたようだ。ところが前作の「アメリカン・タブロイド」からは、そのフィルターが取り払われ、文体も研ぎ澄まされ、男と男、男と女、父と子、そしてアメリカと自分、という愛憎劇がストレートに伝わってくる。
あっさりケネディを暗殺してしまうところから始まるこの作品は、オズワルド、フーバー、R・ケネディなど時代の表面に現れ、僕達も垣間見た人物や事実をその陰で紡いでいく。その役割を引き受ける男たちのなんという疾走感。僕はとつぜん大藪春彦の作品を思い出していた。一時夢中で読んだ大藪作品も、ディティールはいいのだが、ラストは主人公が激しい銃撃戦に飛び込んでいくーというような終わり方ばかりで、拍子抜けしていたのだが、この作品も最後は目的や憎む相手もわからなくなっていく主人公達がダブって見えてしかたなかった。
僕としてはノスタルジックな以前の作品の与太話みたいな雰囲気が好きだったのだが、作者の持つブラック・ホールは本書くらいのプレイグラウンドがなければ、もはや収まりがつかないのだろう。
アメリカン・デス・トリップ(上)Amazon書評・レビュー:アメリカン・デス・トリップ(上)より
4163203001

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