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ナイト・マネジャー
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【この小説が収録されている参考書籍】
ナイト・マネジャーの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.33pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全15件 1~15 1/1ページ
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タイトルの通り | ||||
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タイトルに記載 | ||||
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東西冷戦後の混沌とした世界を描くなかで英米の諜報機関の混沌も交えながら、ル・カレならでのストリーを紡いでいく。 作家の楡周平氏が巻末の解説で本書のなかでル・カレが描く武器商人の密輸方法など時代遅れだと述べていました。 楡周平氏が解説で「結局、武器商人が栄えるのは、彼らが国家主義と分かちがたく存在しているためだろう。」と述べていた。 本書が刊行されて30年過ぎた今、ロシアが始めた戦争で、ほくそ笑んでいるのは、アイゼンハワー大統領が退任演説で警告した「軍産複合体(Military-industrial complex)」なのです。 ル・カレが描く武器商人の脅威が今もなお巨大化しつつ存在していると思い暗澹たる気持ちで『ナイト・マネジャー』の下巻を読み終えたのです。 | ||||
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ジョン・ル・カレが1993年に発表した『ナイト・マネジャー』(The Night Manager)を読んでいなかったので入手して読むことにした。 主人公のジョナサン・パインは、スイスのチューリッヒ名門ホテルのナイト・マネージャーをしている。 彼の過去と現在を、ル・カレは、脈絡なく書き続けるから、読み手は苦労することになる。 登場人物が多く、その名前を憶えるのにも気を抜けない。 複雑なイギリスの諜報機関や官僚組織などの上下関係も把握しながら読むことを強いられる小説である。 英国高級官僚のレクス・グドヒューの下で情報部の長ジェフリー・ダーカーが存在し、その下の新組織を任されているのがレックス・バーである。 このレックス・バーに、主人公のジョナサン・パインがリクルートされて巨大な悪のコングロマリット、リチャード・オンズロウ・パーカーへ挑むのが物語の大筋である。 レクス・グドヒューの上に政治家の組織があり、この連中が良からぬことを影でしていることが上巻の終わるころに読者に明らかにする。(この連中は、マスターとの敬称で呼ばれているようだ) ストーリーについては、レビューに書かないが、パーカーへの私怨を抱えているとはいえ、主人公のジョナサン・パインという男の性格に違和感を憶えたのですが、現実的に人物像を描くとこんなところに落ち着くのかもしれない。 普段冷静な彼が、予定外の衝動的行動から敵の本丸に幽閉の身になったところで上巻を終えていた。 翻訳のせいか、ル・カレのプロットのせいか、読み進むのに気の抜けない作品だと思いながら上巻を読み終えた。 蛇足ながらドラマ化された映像を、評者が観てないからこの小説を楽しく読むことが出来そうだ。 | ||||
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夜の引き明けなど、わざわざ使う必要が見当たらない語句が散見される。それだけでなく現在形の文章が読みにくい。読みたかった本なので上下買いましたが、上巻で止めようか、かなり迷いました。翻訳を編集者はきちんと読んだのでしょうか。 | ||||
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ル・カレの小説に登場する英国秘密情報部はM15やM16などの実際の機構ではなく、漠然とした「概念としての情報組織」として読者に提示され、何とも知れない暗闇の世界という印象を読者に与えます。そしてその中で官僚主義、縄張り意識、腐敗、裏切りが横行し、正義を信じる数少ない人々が孤独な闘いを繰り広げます。スマイリーが活躍した東西冷戦の時代には情報部はサーカスと呼ばれ、活発な情報活動をしていました。冷戦が終結して時代は変わり、相変わらず多数の職員を抱える情報部は今や書類を機密度に応じ分類し保管するだけの硬直した官僚主義組織となり、士気は低下し腐敗が一層はびこるようになりました。 情報部を管轄する外務・英連邦省の高級幹部であるレックス・グドヒューは部の現状に心を痛め、情報収集と保管だけでなく実際の活動を行う新しい組織の必要性を痛感し、大臣と相談のうえ新しい小組織(エージェンシー)を立ち上げ、その長に元情報部の職員レナード・バーを任命します。二人とも、この世界に正義というものが存在することを固く信じる人間で、特に武器密売人にして麻薬売買仲介人並びに詐欺師である英国人億万長者リチャード・オンズロウ・ローパーに対して極悪人として激しい憎しみを抱いています。新組織はテムズ川を挟んだ向かいの建物に根拠を構える情報部を「川向う」と呼び、お互いにライバル意識を持っています。 さて、カイロの高級ホテルにナイトマネージャーとして勤務する英国人ジョナサン・パインはある日、武器・麻薬密売人であるエジプト人ハミドの愛人でホテルのVIPシフィーから書類のコピーと保管を依頼されます。それがハミドとローパーとの間の武器売買契約書であることを知ったパインは秘かにコピーをもう一部とり、カイロの英国大使館に持ち込みます。それはロンドンの担当者に回されますが、その経路のどこかで情報が洩れシフィーはハミドに惨殺されます。パインは彼女を裏切ったという大きな後悔の念を抱き続けることになります。 シフィーの死後、パインは難をさけるためチューリッヒの高級ホテルに移りナイトマネージャーとなります。ある吹雪の夜ローパー一味がホテルに来泊し、パインは直接的ではなくともソフィーの死に深く関係する一見貴族的なローパーの姿を初めて見ることになります。ローパーは証拠を残さないためいかなる書類にもサインせず、腹心の元はみだし近衛兵コーコランに総ての書類へのサインを行わせます。 ハミドとローパーの契約書が送られてきた経緯を知ったバーはパインを情報員として雇う決心をします。そして、英国に呼んで適性テストをした後、ローパーのもとに送り込むべく訓練を行います。バーとグドヒューは米国CIAのストレルスキーと相談し、バーの同僚ロブとストレルスキーの部下パットとアマートウを加えた「リンペット」という名称のプロジェクトを作り、「リンペット」の全員は悪党ローパーを破滅させるべく結束します。 バーはローパーに信用させるためにパインに偽の犯罪経歴を付けさせます。すなわち、勤務先のチューリッヒのホテルの金を盗んで退散し、麻薬密輸に関係した仲間内のいざこざからパートナーを殺害した疑いを掛けられるように芝居をさせます。パインは今や国際手配の犯人としてテレビや新聞に顔がのるようになります。そしてカナダに逃げてパスポート偽造やその他の悪事を犯したように見せかけさせます。また、情報部内に麻薬関連のパインの囮ファイルまで作成させます。 やがてパインはカリブ海のハンター島のレストランでシェフとして働くことになります。そのハンター島にローパーの豪華ヨット、アイアン・パーシャ号が寄港し、盛大な食事会が催された夜、ローパーの一人息子が二人組の悪党に銃を突き付けられて連れ去られようとします(バー側の仕組んだ芝居)。それをパインが救い、彼自身は(芝居なのに)頭に大けがを負います。息子の危機を救ったパインをローパーは病院で治療させ、自分の根拠地であるカリブ海のクリスタル島で手厚く看護させます。体が回復するにつれて、パインはローパーに気に入られ一味の人間として認められ、ついにはコーコランの役目であった書類へのサインも仰せつかるようになっていきました。コーコランが面白く思わないのは当然です。 ローパーの一年来の愛人であるジェドは、鳥かごの中の小鳥のような生きかたに飽き飽きし、ローパーへの愛は徐々に憎しみに変わり、パインに秘かな好意を向けるようになります。あくまでもプラトニックな関係でしたが、パインも次第にジェドに惹かれてゆきます。ある日、パインは無防備にも自分の正体をジェドに明かしてしまいます。しかし、彼女はそのことを誰にも話さず、パインを裏切ることは決してありませんでした。 英国情報部とCIAの上層部はバーとストレルスキーに対して「リンペット」を彼らに引き渡すよう要求しますが、彼らはそれを拒否します。そこで、情報部は新しく「フラッグシップ」という機密機構を作り、そのメンバー(マリーナー)以外は機密書類にアクセスできないようにします。グドヒューもバーもそのメンバーではなく、彼らは部の機密情報を手に入れるのが出来なくなりました。上層部のそのような嫌がらせにもかかわらず、「リンペット」はローパー一味の電話及びファックス通信を総て傍受・録音し、パインの情報も加えてローパー一味を捕らえるべく万全の体制を整えていきました。 ローパーらがたまたま島を留守にしていたある日、パインは大胆にもローパーの私室に侵入し、機密書類を写真に撮ってパットを通じてバーに届け、またローパー一味がいつ誰に会ったかなどの詳しい情報をロンドンに送り続けます。抜群の記憶力を持つパインの情報は「リンペット」のメンバーにとってこれ以上ない有用なものでした。ところで、ギリシャ人でローパーの弁護士であるポール・アポーストルはCIAに正体を暴かれ、取引で彼らの情報提供者となっていました。そして、アポーストルはコーコランに代わってパインがサイン係になるように仕向ける役目を負っていたのです。このアポーストルのことが英国情報部の知るところとなり、部内の裏切り者によってローパーに漏洩され、彼はロンドンで惨殺されます。パインは、それまで親密だったローパーの彼に対する態度がよそよそしくなったことを感じ、サイン係もコーコランに戻されて彼自身はローパーのボディガード達の監視下に置かれるようになりました。 アポーストルの惨殺を知ったバーは彼自身がリクルートした情報員であるパインを一刻も早くローパーの元から脱出させるべく力を尽くしますが、パインはその時ローパーのプライベートジェット機に乗せられておりどうしようもありませんでした。やがて、パインはローパーの豪華ヨットの一室に鎖で繋がれ連日の拷問を受けるようになりました。彼らはパインのスパイとしての自白を要求しましたが、彼は亡くなったソフィーの面影により励まされ口を割ることはありませんでした。 パインを救うべく、バーは一世一代のブラフ(大嘘)を敢行します。まず、情報部部長のジェフリー・ダーカーの事務室や自宅など三本の電話回線をロブの回線にまとめ、ダーカーにかかってきた電話が総てロブのもとに届くようにしました。そのうえで、バーはロンドン在住でローパーの仲間の悪徳貿易商サー・アンソニー・ジョイストン・ブラッドショウの屋敷に押しかけ、情報部部長のダーカーが逮捕されたことを告げます(ブラフ)。そして、サー・アンソニーの悪行が総て暴露されており、十年以上の刑期をくらうことは確実だと脅します。彼はパニックにおちいりダーカーへ電話しまくりますが、いずれもロブが受け、警察官の役割をしてダーカーの逮捕を裏付けます。情報部長のダーカーがローパー一味に通じていたことの決定的な証拠がこれで得られました。 次に、バーはサー・アンソニーに取引を持ち掛けます。それは豪華ヨットのローパーに連絡し、ローパーがパインとジェドを解放するならば、今回に限って彼とローパーの悪事に目をつぶるということでした。サー・アンソニーの電話を受けたローパーは彼の最大の庇護者で情報源であったダーカーが逮捕されたと聞いてやむなく二人を解放します。そして、パインとジェドはかってパインが住んでいた英国の海岸沿いの家で暮らすことになります。 さて、この物語はハッピーエンドでしょうか?バーにとっても、ストレルスキーにとってもパインにとっても憎むべき極悪人のパーが逮捕されずに逃れられたのは無念の極みであり、ハッピーエンドとは程遠いものがあります。しかし、ダーカーはいずれにしてもローパーとの結びつきから裏切り者として逮捕されることは間違いないでしょうし、ローパーの悪事は電話盗聴だけでなくパインの得た証拠書類から明白です。また、サー・アンソニーは司法取引で検察側の有力な証人となるでしょう。パインの証言も強力な武器となります。ローパーの運命も時間の問題であり、従来通りの気ままな商売は出来ないでしょう。 ところで、本小説の主人公は誰でしょうか。素直に考えるならばパインと言えますが、彼はただの狂言回しであって本当の主人公はレナード・バーだと私は考えます。「ナイト・マネージャー」というタイトルはホテルの職掌名ではなく、闇の世界を監視して正義を貫くべく戦う者という意味だと私は解釈します。 もし、ル・カレが生きていたら現在のロシアのウクライナ侵攻をどう捉えてどのような小説にしたでしょうか。EUやNATOを通じて提供された数多くの武器は戦争の終結後、どこにどのようにして流れてゆくのか気になります。当然国際機関がモニターすべきでしょう。武器にしろ、麻薬にしろそれぞれの国の政治と切り離せません。富める国と貧しい国がある以上、これらを撲滅するのは無理と思いますが、せめて麻薬の流れを絶つには世界の国々が一致して「正義というものが存在するのだ」という意識を持たないといけないと思います。しかし、それはまさしく絵に描いた餅に過ぎないでしょう。 たとえ「リンペット」のメンバーやパインの努力と犠牲によりローパー一味が壊滅しても、第二第三のローパーが出てくるのは明らかですし、新しいジェフリー・ダーカーも出現するでしょう。まさしくいたちごっこです。しかし、少数ではあってもこの世の中に正義が存在するということを確信する者達、すなわちナイトマネージャーがいることは救いです。 本小説は東西冷戦時代の裏切りを描いた名作「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」の構成によく似ていると思います。いつの世も国家レベル、組織レベル、個人レベルの裏切りは絶えません。ル・カレの小説を読むたびに一種の「やりきれなさ」を感じるのは私だけでしょうか。 | ||||
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ジャン・ル・カレは好きな作家で壮年期の「寒い国から帰ってきたスパイ」等の連作を読んできました。重みがあり、数日掛けて読むというタイプの小説ではありませんでしたので、週末中に読むなど数十年前の記憶があります。最近、「ティンカーテーラー・ソルジャー・スパイ」の旧作品や「誰よりも狙われた男」「われらが背きし者」等近作の映画化があり、嬉しく観ています。このナイトマネージャーは、賞を取ったTVドラマを先に観てしまったこともあり、少しづつ気楽に読むことができました。ドラマ化自体も原作にはかなり忠実でしたので、読みやすかった理由でもあり、ジャン・ル・カレの作風も少し軽めになった様に思います。潜入捜査物ですが、流れはやはりスパイ物という印象です。一級の作品でした。 | ||||
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テレビが先でしたが面白い。 | ||||
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ル・カレの小説、その世界には入れる物と、入れない物がある。 そのような作家は珍しいのだが…(ハインラインもそうかな…) この小説も入れなく途中でやめました。 「寒い国…」「鏡の国…」「ロシア…」「ナイロビ…」等は楽しく読めたが、 「ティンカー…」等三部作、「ドイツの…」等はどうしてもその世界に入れなかった。 | ||||
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読み終えて涙が出た。この難解な長編を自分が全部読めたんだと。まさか走れると思っていなかったフルマラソンを完走出来た自分、みたいな心境です。 危うい感じ、それが上下刊に渡ってずっとあります。それは武器運輸には船しかない、その海が物語のすぐ近くにある事とも無縁ではない気がします。海に落ちたら終わり。実際に海に落ちる場面はないのですが、そういう陸よりずっと「1歩間違えば」の様な緊張感が読者を縛り続けている様に感じます。また海の上という誰も見ていない地帯で起きている事の危うさ。その海の怖さやそんな海に囲まれて暮らしている私たち。そういうじわっと迫る脅威と隣り合わせでも読めてしまいます。そんな類推からもハートも負けないで読む必要がある、完走感があります。 フレデリック・フォーサイスにしろ、このジョン・ル・カレにしろ、戦争/軍事ものを物語にする時、イギリス人ほど世界を手中にしてワイドに書ける作家はいないのではないでしょうか。Common Senseと呼ばれる大英帝国時代に築いた英国ファミリー50数ヵ国のネットワークは今尚、水面下で健在な事を感じます。世界史、近現代史を知るのにもこの2冊が語る事は大きいのではないでしょうか。 海風漂うコーンウォル、その地方をYouTubeなり検索で見知ってからこの小説を読むのもまた、味わいを深くするかも知れません、と付け加えておきたいです。素晴らしい話ではないけれど、素晴らしい小説だな。完敗笑。感服。 Ps.巻末の、作家楡周平さんが書いてくれる現行世界の武器の現状の解説ページも必見と思います。ベトナム戦争後に米国は南ベトナム政府軍に自動小銃だけでも100万丁を供与して撤退したり、現在でも港で積み出されるコンテナの検査は全体の0.1%にも満たない事でザルになっている検閲の現状なども詳しく述べられています。又、軽さでは武器の比ではない麻薬は、空路密輸も使い武器と並んで世界の大きな経済になっている危険も語られています。 | ||||
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読むのになかなか難解です、笑。大雑把な人にはまどろっこしいだけで要領を得ないかも知れません。その意味では、ある年齢以上の人向きかも知れないと想像します。日本語ではあっても、外国語を読解する時の様な慎重さが必要です。 今の事なのか、回想なのか、それが暫く読んでみないとはっきりしません。そんな「時制」が一行の空白後に入れ替わり立ち替わりする。夜になり、海になり、国が代わり、狙撃して、また会話に戻るという様な。 読む力が試されていますが、その山を越せるなら、この小説の世界に興味があるほど、行間には一瞬の隙も逃さないスリリングさが溢れています。日本語も少し古い。ある年齢以上と先に書いたのはもしかすると、冷戦時代の緊張感を肌で知る人という意味かも知れないと思い至ります。「その時代の感覚」を思い出してチリチリするのかも知れません。 歴史を知る意味で、冷戦後育ちの人には勉強になるかも知れないです笑。いえ、今でも基本、世界の小説でない実際のこの分野は、ずっと冷戦時代なのでしょう。要は世界のいわゆる「国家公務員」待遇の人ばかりが出てくる。その中で主人公パインに肩入れしてしまう自分は何なのでしょうね! | ||||
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ル・カレのスパイ小説、『ナイト・マネジャー』がBBCでドラマ化されるらしい。 巨匠ル・カレの作品の多くは最高のスタッフ、俳優で映画化されそれぞれ傑作と評判は高い。 寒い国から帰ったスパイ(1965年) ロシア・ハウス(1990年) テイラー・オブ・パナマ(2001年) ナイロビの蜂(2005年) 裏切りのサーカス(2011年) しかしそれでも、どの映画もル・カレ小説の濃密かつ気品のある文章世界が表現できているとはいえない。 ル・カレファンの高望みなのだろうが、とても映画2時間半という制限の中で実現できるはずがなかったのである。 さいわい今回、BBCのドラマ『ナイト・マネジャー』は6話構成、物語もル・カレ小説のなかではシンプル。 映画化された過去の作品以上にル・カレの世界が描かれるのではないかとおおいに期待している。 スイスの名門ホテルのナイト・マネジャーであるジョナサンは、吹雪の夜に訪れた武器商人のローパー一行を見て、忘れ難い過去を思い出した。ローパーこそ、彼が愛した女性を死に追いやる元凶となった男だったのだ。やがて、イギリスの情報部から独立した新エージェンシーがジョナサンの存在を知り、ローパーの武器取引の証拠を握るべく彼をリクルートした。ジョナサンは復讐に燃える! 巨匠が現代の巨悪を描破する傑作。 The Hollywood Reporterによると、『ナイト・マネジャー』ドラマ化を手掛けるのは、映画『誰よりも狙われた男』を製作したインク・ファクトリー。『ハンナ』のデヴィッド・ファーが脚本を担当する。リミテッド・シリーズとのことだが、実際に何話構成になるのか、詳細は不明。シリーズはBBCとの連携で製作され、イギリス側では同局での放送が決まっているとのことだが、アメリカ側の放送局は決まっていないという。 カレが1993年に発表した『ナイト・マネジャー』は、ホテルのナイト・マネジャーとなった元兵士ジョナサン・パイクが主人公。パイクと、彼の愛する女性を死に追いやった武器商人ローバーとの戦いを描く。Entertainment Weeklyでは、トムがパイク、ヒューがローバーを演じると伝えている。原作にはパイクの相手役となる女性ソフィーが登場するが、他のキャストや監督を誰が務めるかなどは不明だ。 イギリスの人気俳優2人がテレビドラマで火花を飛ばす。なんとも豪華な顔合わせだが、日本でのリリースも期待したいところだ。 カレの作品はこれまでも、日本では10月17日に公開予定の『誰よりも狙われた男』や『裏切りのサーカス』(小説のタイトルは『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』)、『ナイロビの蜂』など、多くの作品が映画化されている。 | ||||
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ル・カレは『ティンカー・テイラー…』を読み、自分の理解力が足りないせいだと思うのですがイマイチ面白さが分からなかったので 苦手意識があったのですが、訳あってこちらを中古で購入しました。 背景のロケーションの多様さと、主人公のジョナサン・パインを筆頭に人物が皆魅力的。特にパインは完全無欠の『イギリスの精華』という 設定にも関わらず、読み進むと突っ込みどころが多々あり、不器用な側面にすっかり嵌ってしまいました。『現在形で愛せなかった』女性を ストイックに思い続けるのは良しとして、似たような境遇の女性にまた惚れてどうするよ。しかも、また自分から彼女を巻き込んでるし…。 他にも細かい描写で色々と、妙に人間臭いというか、救い難いロマンチストというか、恐るべしジョナサン・パイン。私にとって、忘れ難いキャラとなりました。 パインの心を掴む世代違いの女性二人は、絶世の美女であり心は自立した女性でありながら、何故か悪党にひっついているという、 同性の私から見るとこれって男性の妄想の産物ですね。ある意味この作品はロマンチックな妄想を具現化したような小説です。 ル・カレの小説作品が全般的にそうなのか、この作品が特異なのかは分かりませんが。 思わず絶句するような甘美なセリフをあくまで文学的なトーンで楽しめるという非常に美味しい作品でした。 | ||||
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ルカレの作品は正直言ってそう読みやすいものではない。ちょっと気が緩むと登場人物や筋さえも追えなくなる。独白や心理描写も多くて、うっかりすると退屈してしまう。しかし、これほど読後感で読者を魅了する作者も少ない。味が分からない高級料理がやがてがつがつ食わざるを得ないような味で魅了し最後はその味をいつまでも忘れられないのとよく似ている。この「ナイト・マネジャー」も例外ではない。主人公のジョナサン・パインの過去も重厚な小説に出てくるような登場人物のそれであり、一種プラトニックな愛人とも言える殺されたソフイーのために英国諜報部のスパイとなって武器麻薬密輸商人ローパーのところに潜り込む。彼を送り込んだ諜報部も腐りきった上層部と実務部隊の争いがやがて激化し、裏切られていくジョナサン。それを救おうとする実務部隊の巧みな作戦。作者の筆力は全く衰えない。最後は決して100%ハッピーエンディングにならないところもいい。ジョナサンをローパーのところに送り込むべく作られる彼の過去。ここらへんはあの名作「リトルドラマー ガール」を思い出させる。上司を陥れ、大きな獲物であるローパーを逃がしてでもジョナサンを守ろうとする実務部隊のリーダー、レナード・バーもまたいい味を出してくれる。米国側の実務担当ジョゼフ・スゥトレルスキもプロとして仕事をまっとうしようとするところがまたいい。最後に悪役ではあるがローパーの存在感が圧倒的だ。彼が生き残ったことでやがて彼をもっと中心においた作品がまた出来そうな気がする。ルカレの作品を読んだ後いつも誰かと彼の作品に関して論じたくなる。最高の料理を食べた後、誰かに話しかけたくなるのと似ている。 | ||||
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この作品も10年ほど前に読んで今度が2度目になる。難解なまでの文学性濃厚な作品ということでは、他のルカレの作品と変わらない。ただ、今回読み返してやはりより惹かれたのは、ジョナサン・パインの崇高とまで呼べるソフイーへのプラトニックな愛情と、彼を支える英米の情報機関(の下請けとでも呼べばいいのだろうか)の純粋な正義感、そして、圧倒的な貫録で迫る「世界一のワル」オンズロー・ディッキー・ローパーの「魅力」であろう。既に10年以上たって作品の詳細はかなり忘れてしまっていたが、読み直してさらにこの作品が、娯楽作品としても評価を受けるにふさわしいということ以上に、その文学性の高さを非常に感じる。 ルカレの作品では、冷徹なまでの現実の詳細な描写と、官僚組織や国家に対する嫌悪感が常にベースにあるが、一方、多くの作品でルカレが必死に描くのは、ある意味こういった作品では、やや滑稽にすら見えるプラトニックな愛情である。「ナイロビの蜂」でも、「ロシアンハウス」でも、主人公を支えるのはこういったストイックな愛情である。この作品でもパインのプラトニックな愛情の対象は、冒頭に登場するエジプト女性ソフイーである。組織への裏切りで虐殺されるソフイー、その復讐のために彼は志願して、英国情報部のスパイとしてローパーの仲間に加わる。彼の正体がばれ、拷問を受けても彼は誰も裏切らない。その時彼を支えたのはなんと、想像の中で出てくるソフイーであり、彼女の励ましだ。パインに愛情を感じる、ローパーの愛人ジェドを裏切ることもない。彼女もどうもスパイのようだが、結局彼女の正体は最後まで明かされることはなかった。どうもローパーの腹心であるコーコランは何か彼女のそのような正体を感じて、彼女を逃がそうとする場面もある。どうも彼も彼女に愛情を感じていることをにおわせるくだりでもある。いつもながら、この作品の最後の50ページは、今までのゆっくりとしたリズムから大太鼓を打ち鳴らしながら終幕を告げる交響楽のように一気にクライマックスを迎える。パインを使った英国情報部のレナード・バーが孤立無援の中、英国情報部の上司たちにトリックをかけ、パインとジェドを救う。英国情報部にとって何の関係もない、ジェドまで救い出すこと(これをバーはローパーに対して条件として提示するのだ)にこの作品の背景となる女性へのやさしい愛情が感じられる。なぜ、この作品は映画化されないのだろうか。素晴らしい作品になると思う。 | ||||
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