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博士の愛した数式
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博士の愛した数式の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.32pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全704件 281~300 15/36ページ
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この著者の作品を読むのは初めてで朝日新聞のゼロ年代の50冊に入っていたことが読むきっかけだった。読みだすと一気に読んでしまった。面白かったのだ。登場人物の関係性に魅了された。80分しか記憶が持たない数学博士と、その博士の家政婦として関係を良い方に持続させようと努める寡婦、そしてその息子。また遠くからこの三人を見ている雇い主である博士の義姉。三人のお互いがお互いを思いやる行動がいくつかの事件を起こす。そしてそれぞれの関係性を象徴するように、精緻な数式が博士によって提示される。また、博士と息子のルートくんが阪神ファンであることが物語に華を添える。読み進めながら次の展開を期待してしまう自分がおり、これは純文学だったはずだが、ストーリー展開を期待させる面白さはエンターティメント小説のようでもあるが、読み終えると三人が一緒に過ごした空間がいとおしく思われて、読んだ後に切なさを感じた。最後の一ページを読み終えるのが寂しく思われた。この作品世界にもうしばし付き合っていたいという感じだった。孤独な者と孤独な者との結びつきのことを考えもした。この読後感を誰かに伝えたいと思うくらい良かった。 | ||||
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大学の教養時代に習った数学の楽しさ。 それまで受験のための数合わせだったのが 数学とはこんなに哲学的だったのかと感動したことを思い出しました。 博士が教えたように 自分の子供にも数学の楽しさをちょっとでも教えられたらと 考え直しました。 数学の無機質ではない暖かい面を感じられる1冊です。 | ||||
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この人の作品は何だか水彩画に似ている。 とても淡く、優しい色を持った文章だと思う。 語り手は家政婦派遣会社で働いている女性。この女性の目線で語られてゆく。 登場人物は、私(家政婦の女性)、博士、私の息子(博士からルートと名前をもらう)のほぼこの3人で苗字とかが出てこないので読みやすい。 ある日家政婦を次々と替える所謂ブラックリストに載る家へこの女性は派遣され、服に沢山のメモをクリップで留めている博士と出会う。 博士は事故のせいで記憶が80分しか持たない為、留められているメモを見て状況を理解する。『記憶が保てない』というテーマは暗くなり過ぎる要素だけど、苗字が出てこない、あだ名で登場人物が呼ばれるという点で和らげられていると思う。 特別な事件やファンタジーチックなものは一切無く、最初から最後まで淡々と日常が語られていくのが、薄く色で輪郭を成すような水彩画の印象を与えるのかもしれない。 勿論、博士の記憶や症状に触れないで話が進むわけではないので、切ない場面にも出会うけど。 愛情なのか家族愛なのか、薄っすらしたそんな感情が見え隠れするところも『記憶が保てない』物語に切なさと刹那さを感じさせてくれる。 | ||||
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小川洋子氏は「妊娠カレンダー」の頃から知っていたのだが、まったく未読のままだった。そして遅ればせながら、この著名な小説に手を出した。このオリジナリティ溢れる完成度には舌を巻いた。博士の数式の世界が二人の親子との見事な交流に具象化されており、特に、博士の記憶の途切れの瞬間を描く切なさに、胸が打たれた。〜著者の文体は虚飾を一切排した簡潔なものでありながらも不思議なやわらかさに満ち溢れ、多くの美しい場面があるが、特に野球場のシーンの素晴らしさなどは絶句するほどに巧い。作品全体はやわらかで静かなやさしさにあふれており、数学の苦手な僕でも三人の交流の中に流れる数の世界の素晴らしさが胸にしみる。読んで良かった。本当にそう思える小説だった。 | ||||
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先ず初めに、「著者は、"綺麗な"日本語を書かれるんだな。」という印象を持ちました。言葉1つ1つが"綺麗"だなと思った。 内容は、博士がいつも心に着ている服が、悲しみを覆い隠す為のものであるという事、そしてそれは、記憶が80分しか持たない事から生じる悲しみである事。つまりは、たぶん、愛する人と共に時を歩めず、"義姉"として傍に居るのに、自分の愛する同一人物として認識出来ず、裏切られでもしたかのような悲しみ、から来るものなのでしょう。記憶が消えるのを痛ましく思う博士を想像して、私も悲しくなりました。 数学という"真理"に果敢に挑む博士。"オイラーの定理"等、数学の事は余り良くは分かりませんでしたが、この本で学んだ中で最も重要なのは、「数字に関する"真理"がこの世を支えるのと同じ様に、心を支えるのも、自分なりの"真実"である。」という事。博士の場合は、"愛する人の存在"がアクシデントで"永遠"になって仕舞い、その想いと引き換えに、80分しか持たない記憶を背負う羽目になりました。何という皮肉でしょうか。 この物語は、"私"である家政婦の視点で描かれています。"私"が家政婦になる前は、数学に没頭するだけだった博士に、変化が起こります。そして80分で記憶を失くして仕舞う博士が愛情を失わない対象、それが"子供"、つまり"私"の子供である"ルート"でした。 そして、クライマックスである物語終盤、不幸な出来事が博士、"私"、そしてルートを襲います。"子供"と"素数"をこよなく愛した博士にとっては、何とも皮肉なアクシデント。私には、涙を止める事が出来ませんでした。 誰もが心に最良の瞬間を焼き写している、そう話が終わります。 私は泣きました。きっとあなたも泣きます。残酷、否、日本語同様、内容が"綺麗"だから泣けるのです。泣きたい人がこの本を読んで損するのは、流した涙の分だけでしょう。 | ||||
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私は優しい大人になりたい。(すでに大人だけれども 笑)そう思わせてくれる静かで優しい大人の小説です。80分しか記憶が保てない博士の優しさが好き。常に誠実であろうとする主人公の家政婦が好き。純粋な優しさを持った家政婦の子供が好き。女としての博士の義理の姉が好き。「前向きに生きる」ってスゴクたいへんそうで、肩が凝りそうな感じがしていましたが、この本を読むと優しい気持ちで前向きに生きたいと思います。そして、いい年をして算数から勉強しなおしたいなぁなんて思う私です。 | ||||
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映画があったのは知っていましたが見ておらず、妻が買っていた文庫だけが書棚に眠っていたのを手に取ったのは、昨日読み終えた「ブラフマンの埋葬」のあと。美しい文章を書く人だということは判っていましたが、特に思い入れも何も無く読み始めたのが昨日。今日の同じ時間に読み終えました。ほとんど電車ででしたが、楽しめました。数学を上手く道具として使いながらも、数学を非常に綺麗に表現されており、数式の意味や中身が判らなくともそうした世界があることは誰にも伝わるのではないでしょうか。まだこの方の作品は2作しか読んでいませんが、いずれも登場人物達の間の距離感がリアルなのがすばらしいと思います。踏み込みすぎず(現実だって人の意識には踏み込めません)、遠ざかりすぎず、実際の人同士の距離感が絶妙な表現で描写されています。そのあたりが、変に露骨な表現やイベントで読み手をハラハラさせるのではなく、自然な表現やちょっとした仕草を使って、下手をすると読み落としかねない具合で刺激として伝わってくる。非常に心地よい文章です。もう少しほかの作品も読んでみようと思います。あわせて、苦手だった数学もちょっと違う視点から再度トライしてみようかと…… | ||||
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80分しか持たない数学博士。彼の数字に対する愛と子供に対する愛。話の途中に出てきた彼が味わう毎朝の絶望を想像すると、胸が苦しくなります。正しい数式の何とも言えないパズルがはまったような一致感、そして正しくない場合の違和感は私にも理解ができました。80分の記憶しかないにもかかわらず、彼と彼女とルートくんの関係は少しずつ変わっていったはず。人にもおすすめしたい本です。 | ||||
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淡々とした雰囲気のお話でした。冒頭シーンで笑い、ラストのセリフで泣きました。博士の不器用かつ完全数と似た情愛。ルートの変わらない情愛。それらすべてを見てきた「私」を満たした情愛。今まで読まずにきたのがもっいたないと思うくらい、じんわりとした読後感でした。「私」の息子がルート記号の形を確かめるように自分の頭に手をやった場面。一〇年経た息子が数学の教師になった、という「私」のセリフ。好きなシーンです。キャラクタの名前はたったの1つ。ルート。数以上に目立つものが無い物語でしたね。 | ||||
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私は理系でしかも数学系だったため、数式のもつ美しさというものについては普通の人より理解しているつもりでした。この本の中に登場する完全数やオイラーの定理をはじめ黄金率やフィボナッチ数列といったものに、神秘性と美しさを感じて一人悦に入ったりしたものです。ですが数学と関係のない人からみれば、それはただの記号の羅列であり、なんら特別な意味をもたないものである事も事実です。よって自分のこの感動はきっと同じ数学系の人間にしか理解されないのだろうなぁと残念に思っていたものです。この本は私のそうした思いに対して一つの答えを示してくれた作品です。数式のもつ美しさと普遍性が、静かに他者へのいたわりを持って日常を生きることと見事に調和する事。そして完全数と江夏に象徴される「強く生きよ」という祈り。数学と文学という一見相容れない物の間に黄金率を見出した小川洋子さんの奇跡に脱帽です。 | ||||
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とても地味ですが、ほんのり温かさが掌に残りました。作者はこの『博士』という登場人物(モデルがいる?)をこよなく愛しているのでしょう。綴られた文章のそこここから『博士』への優しさ、気遣いが伝わってきます。数学が苦手な人でも読めるように数の不思議がうまく構成されていて、『博士の愛した・・・』という意味がなんとなくわかるような巧みさに敬服します。特に光り輝く宝石でもない。けれど・・・何気なく河原で拾った綺麗な石のように、本棚にそっと置いておきたい作品です。 | ||||
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久々に面白い小説を読んだという感じ。数式という小説にはあまりなじまないものを使って、それを道しるべのようにして話を展開するという手法と力量には感心したね。このお話は、おそらく100%近くフィクションなんだろうと思うけど、登場する人たちに血が通っていて、どことなく温かみがあって、リアリティがあるよね。芥川賞をとった『妊娠カレンダー』は、話がちょっと嘘っぽくて、あまりいいとは思わなかったけど、この小説はいいよ。おすすめです。 | ||||
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80分しか記憶がもたない「博士」と、シングルマザーな家政婦「私」と、その息子「ルート」のホンワカ幸せストーリー。根本には、博士の記憶が 80分しか持たないという悲劇が見え隠れしているのだが、ちょっぴりユニークな文章と、渡る世間に鬼はない世界観というオブラートに包まれており、その設定さえも単なる味付けに過ぎないような感覚さえ覚える。とにかく、この作品はあらゆる愛にあふれている。「博士」の「数学」に対する愛をはじめ、それぞれの人物に対するそれぞれの愛。こんなに愛にあふれた作品とはめったに出会えないだろう。また、似非理系の私にとっては、「なるほどねー、フムフム」とわかった振りしてうなずきたくなるような数学の知識の数々。数学的な意味と日常が重なり合う気持ちよさ。素数、友愛数、完全数、オイラーの公式、フェルマーの最終定理などなど、非日常が日常とつながる面白さ。最初から最後まで(記憶が確かなら)登場人物の固有名詞は一切出てこない。感情移入しやすく、誰でも主人公になれる。これもこの作品の魅力だろう。余談だが作者の阪神タイガースへの愛も見え隠れしている。この作品は純文学でありながら、十分にエンタテインメント性を持った快作である。気になったのは、博士の80分の記憶がどのように忘却されるかである。80分間隔で完全に記憶をなくした時点に戻るのか(リセットされるイメージ)?それとも、古い記憶から徐々に消されていくのか(古いものから削除されるイメージ)?前者では80分ごとに初めましてだが、後者では、80分後でも、79分前の出来事は覚えているわけであり、かろうじて記憶の連続性は保たれている(ただし、80分丸まる空白だと、はじめましてになる)。自分は、「夕方が一番好きな時間」とかの記述からおそらく後者だと思って読んでいたのだが、あってるよね。。?? | ||||
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本は読み終わったら売ります。でも、この本は売れないんです。大切なことを思い出させ、胸をジーンとさせるからです。そんなやりとりを重ねながら、私は博士と家政婦さんとルートのいる空間が大好きになりました。愛というのは、愛着であり、何度も同じ時間を過ごすうちに生まれるものだと思っていました。しかし、博士は時間を重ねられない。80分で何もかも忘れてしまう。そんな博士に、これほどの愛があることは奇跡です。 | ||||
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私は理系ではない。数学2Bまでしか勉強していない。しかし、この本は数学があまり分からない人が読んでも数学が美しく、とてつもなく奥が深いものだと感じるだろう。80分しか記憶がもたない数学者の老人、家政婦、家政婦の息子。この3人がおりなすゆったりとした暖かな雰囲気が非常にここちよかった。凝った伏線や大どんでん返しはないけれども、読み終えたあとは心が温まるようなそんな作品だった。数学もっと勉強しておけばよかったなあ。 | ||||
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数学好きな私にはとても面白い。最初に映画を観て惹かれて小説を読もうと思った。博士のルートへの接し方が凄く暖かかった。あったかい気持ちになる、そんな一冊ー。 | ||||
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登場人物は,すべて,善意の人びとである。 いつかどこかで悪意が入り込むのではないかと,読む者をハラハラさせるが、 最後まで悪意は入り込まない。それが小説家の計算である。 数学にしか興味のない,老数学者の博士、その記憶は80分しか持たない。 サヴァン的能力を持った人物である 筋は通すが、どこか頑なである。 子供の頃母をなくし、離婚後10歳の息子を未婚の母として育ててきた 家政婦。高校を中退しているが、本当は頭が良い。 その息子、阪神タイガースのファンで、大人よりも人の心が読める。 その三人が織りなす物語。私は映画の『レインマン』を思い出しました。 読後、いくつかの疑問が残る。 博士は、9回も家政婦を馘首にしたというが、博士の人物造形から言うと、 家政婦さんに去られることはあっても、馘首にすることはないのではないか。 馘首にしたのは義理の姉、と言う解釈も無理がある。 オイラーの定理 e^(iπ )+ 1 = 0の意味は、わからないのは私が馬鹿なだけなのか。 博士の歯医者の麻酔のエピソードの意味は。 誰か読解に長けた方、教えてください。 | ||||
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私が読んだ範囲では、本作は00年代に発表された日本の小説でベスト1だ。 数学の英知の結晶であるe、π、iという一見全く無関係な3つの数がオイラーの公式によって神秘的に結びつけられるように、私(家政婦)、博士、ルートの3人もまた結びつけられ、寄り添い、見事な調和のとれた人間模様を綾なす。数学と文学が「美」の感覚で通底し、共鳴することを示した奇蹟的な作品だ。 しかしながら、数学の美が不変であるのに対し、人間は変わっていく。主人公の上記3人だけでなく、江夏を始めとする阪神タイガースの選手たちも。その対比が切ない。一方で、ある時期、私、博士、ルートの3人が築いた関係の温もりの記憶は消えることがない―博士を除いては。その博士も阪神時代の江夏の記憶が残り続ける。本作は、人間にとって根源的な記憶について考えさせられる、記憶をめぐる冒険談でもある。 この小説は映画、漫画、ラジオ番組にも翻案され、そのどれもが傑作だ。このような本はちょっと他には思いつかない。何れもDVD、コミック本、CDで入手可能なので、お薦めしたい。映画のサントラ盤も。 | ||||
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数学者の博士は、昔の事故により「記憶が80分しかもたない」状態になりました。その博士の世話をするため、博士の義姉に雇われた家政婦とその息子(博士に「ルート」と呼ばれます)の物語です。これら3人の人間関係を、博士の得意な数学と、ルートの好きなタイガースを絡めて描いています。具体的には、博士のルートへの深い愛情と、ルートの博士への尊敬、そして両者に対する家政婦の奉仕といった感情・行動が数学のさまざまな定義・定理、タイガースとその投手江夏を背景に描かれ、物語が進んでいきます。家政婦の気遣いやルートの博士への敬愛といった感情もそうですが、特に博士の「子供は宝である」という頑固な信念が一貫して伝わってきます。今の日本、「少子高齢化社会」と言われますが、国の将来を担う子供の大切さが改めて分かり我が家の1歳にも満たない息子を大事に育てていこうと思いました。とても強く、そして美しい小説です。 | ||||
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音読して子供に聞かせていました。黙読で自分だけで読むとはっきり言えばどうでもよい内容ですが、子供に聞かせるつもりで読むと日本語の質感や会話のやりとりが実に間があって面白い。リズムもよく、さすが読者賞となった本だと思いました。声に出して読める本は結構貴重ですね。 | ||||
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