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四季 冬



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【この小説が収録されている参考書籍】
四季・冬 (講談社ノベルス)
四季 冬 (講談社文庫)

四季 冬の評価: 6.75/10点 レビュー 4件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.75pt

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(3pt)

森全作品の到達点か

四季シリーズ最終作。遥かな未来に向けての物語か。
本書はVシリーズとS&Mシリーズへの橋渡しとなった『秋』を経て、そこから未来の世界を描いた百年シリーズへと繋がっていくのが本書。

つまり百年シリーズの主人公サエバ・ミチルがいかにして生まれたか、そして彼(彼女?)が生まれることになった真野強矢による殺人事件の捜査の協力を真賀田四季が依頼されていたことが書かれている。

しかしとはいえ、私が粗筋を書いていないように、本書のストーリーはよく解らない。時代もいつの頃を描いているのかもよく解らない。
物語の構成はそれぞれのエピソードが断片的に語られ、シリーズ1作目の『春』同様、四季と其志雄の対話、四季の思弁的な述懐が続く。

そして真賀田四季の傍にはパトリシアというウォーカロンが既に存在しており、彼女の世話をしている。そのパトリシアも試作品ではなく、人と見分けがつかないアンドロイドとなっている。

また真賀田四季を狙う謎の組織も現れ、彼らの名前はイニシャルで書かれるのみ。

彼女にとって生きることとは病気であり、死こそが安らぎであるからだ。
彼女は云う。
「死を恐れている人はいません。死に至る生を畏れているのよ」と。
そして眠ることは心地よく、起こされることは不愉快、生まれてくる赤ちゃんは不快だから泣くのよ、と。彼女は彼らに安らぎを与えたに過ぎないのだ。

ウィキペディアによれば本書からこの後に書かれるGシリーズ、Xシリーズ、Wシリーズへと繋がっていくとのことだ。

つまり本書は一旦『秋』でそれまでのシリーズとの結び付きを語ったことでリセットされ、これからの物語のための序章というべき作品として位置づけられるようだ。

従って今まで本書までに刊行されてきた森作品を読んだ私でさえ、本書に描かれている内容は曖昧模糊としか理解できていない。
本書が刊行されて15年経った今だからこそ上に書いたシリーズへと繋がっていくことが解るのだが、刊行当初は読者は全く何を書いているのか戸惑いを覚えたことだろう、今の私のように。

真賀田四季が望んだ犀川創平との再会。

100歳を超える天才科学者久慈昌山。

これらが今後のシリーズのファクターとなり、徐々にまたその詳細が明らかになってくるのだろう。

冬は眠りの季節。
ほとんどの動物が冬眠に入り、春の訪れを待つ。本書もまた新たなシリーズの幕開けを待つ前の休憩といったことか。英題「Black Winter」は眠るための消灯を意味しているように私は思えた。
そして真賀田四季。『四季 春』で生を受けたこの天才はしかし以前のような無機質な天才ではなくなっている。いっぱいやらなくてはならないことがあるために人への関与・興味をほとんど持たなかった天才少女は娘を生み、外の世界に飛び出して自分で生活をしたことで感受性、母性が備わり、慈愛に満ちた表情を見せるようになっている。

頭の中の演算処理が上手く行っている時にしか笑わなかった彼女が人の死に可哀想と思い、花を見て綺麗と感じ、空を見て色が美しいと思うようになっている。

そして真賀田四季研究所で娘が死んだ時に腕を切断した際のことを語る四季は突然涙を流す。彼女にとって死んだ人はもはや物でしかないはずなのに、やはり心の奥底では娘の死を悼んでいたのだ。

犀川は四季に問う。「人間がお好きですか」と。
そして四季は「ええ……」と答える。綺麗な矛盾を備えているからと。
論理的であることを常に好む彼女が行き着いたのは愛すべき矛盾の存在。それこそが人だったのだ。

真賀田四季はまだその生命を、いや存在を残してまだまだ色々とやることがあるようだ。
但しその彼女は今までの彼女ではなく、人への興味を持ち、そして自らにその人格を取り込んで生きている。もはや時間を、空間をも超越し、終わりなき思弁を重ねる1人の類稀なる天才が神へとなるプロセスを描いたのがこのシリーズなのだ。
そしてそれはまだ途上に過ぎない。

但し解るのはそこまでだ。それは仕様がない。なぜなら私のような凡人には天才の考えることは解らないのだから。

今後のシリーズで本書で生れた数々の疑問が解かれていくのだろう。その時またこの作品に戻り、意味を理解する。
ある意味本書が全ての森作品が行き着く先なのかもしれない。

▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S

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