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【鈴木光司】
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らせんの評価:
5.60/10点 レビュー 5件。 C ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです
平均点5.60pt
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
『リング』ブームを自嘲した作品?
大ヒットホラー『リング』の続編である。これも映画化されたので云わずもがなではあるが。『リング』で想像された山村貞子という忌まわしき存在。『リング』では超能力者の怨念に現代ツールであるビデオテープを組合し、全く新しいホラー小説を生み出した。これこそ日本におけるモダンホラーの幕開けだとその時の感想に書いた。そしてその続編である本書では、山村貞子というウィルスの存在を遺伝子工学を中心に、あらゆる見地から解き明かし、更なる深化を目指している。だからといって山村貞子が増殖するというメカニズムを詳らかにし、それを糸口として山村貞子の殲滅が成就する、といった構成になっていないところが面白い。むしろそのメカニズムが解ってからこそ、真の恐怖が生まれる趣向になっている。特に興味深いのが、科学の最先端分野である遺伝子工学が、いまだ五里霧中の最中で手探り状態であることが本書を読むと解ってくる。特に生命の根源を突き詰めていけば、禅問答のように無限のクエスションが生まれていき、ロジックの深淵へと入り込んでいくのがよく解る。例えば「見る」という行為に対して、このメカニズムを突き詰めていくと 「人間は見る」→「なぜ?」→「目があるから」→「なぜ目があると見えるのか」→「目には角膜と瞳孔があり、それで物体を投射できるから」→「なぜ投射できると見えるのか」→「それを像として脳に認識させる視神経があるから」→「なぜ視神経と脳は繋がっているのか?なぜ角膜と瞳孔という物があるのか」→「・・・」といった具合である。つまり目のない生物と目のある生物との境、そして目を構成する複雑な組織がどういう進化の過程で、細胞から変異したのかについてはまだ解っていない。そして(本書が出版された1995年当時の)現在では、それは“心”が作用している、つまりそれを望む「意志」の力が影響していると述べられている。その例としてストレスで胃に穴が空くという話が出てくるが、なるほどと思った。この辺の話は非常に興味深く読んだが、あまり長く書くと感想を大きく逸脱するのでここいらで止めよう。あと本作では暗号が都合2回出てくる。これが実に凝った暗号で、最初の暗号はさしたる頭脳労働はなかったものの、2回目の暗号はかなり本格的。読んでいる途中で投げ出してしまった。幸いにもどうにか理解は出来たが、遺伝子情報を暗号に見立てるそのアイデアからして、やはりこの鈴木光司という作家は単なる物書きに終始していないことがよく解る。そしてこの作家の最も大胆なところは、本作が実は世に興った『リング』ブームのパロディであることだ。自身が生み出した『リング』という作品が各メディアにて映画、ドラマ、CDブック、コミックへと色んなメディアへ文字通り“増殖”していく過程をそのまま山村貞子が人類社会へ増殖していく現象へと擬えているのが非常に面白い。ある箱根の保養施設で偶然写りこんだ奇妙な名も無いビデオテープから、それを観た者が1週間、自分の命を救うために奔走した体験記へ、そしてそれが死後、遺族の手を借りて『リング』という名の小説となり、人類へと蔓延る、正に作者独自の大いなる皮肉である。なんとも大胆不敵だ。しかし今回はいささか大風呂敷を広げすぎた感は否めない。次作『ループ』がどのような話になるのか、非常に不安である。最後に本書が出版された95年という年に注目したい。実はこの年、日本ホラー小説大賞が初の受賞作を生み出している。それは『パラサイト・イヴ』。ご存知のようにこれも遺伝子を扱ったモダンホラーである。そしてこの作品も日本に“理系ホラー”を生み出すきっかけとなった。この年がそういう転換期であったと今になって思える。そういえばこの前に読んだ本、篠田節子氏の『絹の変容』も遺伝子操作を扱ったパニック・ホラーだった。これは91年の作品だった。そして本書の前作『リング』はなんと91年出版である。当方としてみれば単純に本棚の積読本の山から順番どおりに未読本を抜き取っているに過ぎない。単なる偶然だろうが、読書を続けると、なぜかこういう云い様の無い大きな流れというのを感じてしまう。確かにこの世にはこういう説明のつかない事がまだあり、それがあるからこそ、こういうホラーも成り立つのだろう。 ▼以下、ネタバレ感想
らせんの感想
15年ぶりの再読。「このビデオを見た者は1週間後に死ぬ」正直アイデアの勝利でこれに食いついた人は多い。おまけに山村貞子を全国区に仕立てあげた映画のあのホラー演出。山村貞子=リング であり リング=山村貞子 となるのもやむを得まい。しかし小説の「リング」は消化不良な終わり方をしており正直単独では評価できない。個人的には「らせん」あっての「リング」だと思っています。得体のしれない恐怖が、浅川、高山、たった二人だけの世界で展開された前作から、前作の主要人物であったその二人は姿を消し、徐々に真相が明らかになってゆき広がっていく。その広がってゆく、最早止められないという恐怖。小説では読んでいてドキドキするのは圧倒的に「らせん」なのだ。それに、小説リングではTVから貞子は出てきませんが、小説らせんではFAXから出てきます(笑)ほら、こっちの方が怖い(笑)「呪い」だったものが「ウイルス」へ。非現実的である「呪い」を主人公の医師が解き明かしてゆく。前作の「呪いのビデオ」というオカルトを根底から否定して論理的に解き明かそうとするところが面白い。その時点でこの作品はホラーではなくなっている。そもそもビデオを見る事で人が死ぬというという事象に現実的な理由を付けることなど不可能な訳で、突拍子もない展開を見せるわけだが、決してトンデモ作品になってはいない。医学に明るい人には「はぁ!?」なのかも知れないが、少なくとも私にはジャンルを突き抜けたスケールを感じる事ができた。想像を遥かに上回る結末に舌を巻いた。シリーズに相当な奥行きを与えたと思う。
リング、らせん、ループをまとめて衝動買いしました。評判につられたのですが、後悔しました。自分には合わなかったです。リングにはあった、時間に追われるプレッシャーも本書からは感じられず。買ってしまった以上はループも読むかもしれませんが・・・読まないかも。たんたんと話が進んでしまい、明らかにされた新しいネタがまた怖くない。評判になったのは、映像の方なのですかね?映像は観てないので何とも言えないのですが。
劇場版を先に観ていたので、映像を思い出しながら読んでいました。ただ、小説のほうが手に汗握りながら、時に恐怖感も感じて面白かった。私は、「リング」よりこちらのほうが好きです。これから、「ループ」も読んでみます。
▼以下、ネタバレ感想
大ヒットホラー『リング』の続編である。これも映画化されたので云わずもがなではあるが。
『リング』で想像された山村貞子という忌まわしき存在。『リング』では超能力者の怨念に現代ツールであるビデオテープを組合し、全く新しいホラー小説を生み出した。これこそ日本におけるモダンホラーの幕開けだとその時の感想に書いた。
そしてその続編である本書では、山村貞子というウィルスの存在を遺伝子工学を中心に、あらゆる見地から解き明かし、更なる深化を目指している。
だからといって山村貞子が増殖するというメカニズムを詳らかにし、それを糸口として山村貞子の殲滅が成就する、といった構成になっていないところが面白い。むしろそのメカニズムが解ってからこそ、真の恐怖が生まれる趣向になっている。
特に興味深いのが、科学の最先端分野である遺伝子工学が、いまだ五里霧中の最中で手探り状態であることが本書を読むと解ってくる。特に生命の根源を突き詰めていけば、禅問答のように無限のクエスションが生まれていき、ロジックの深淵へと入り込んでいくのがよく解る。例えば「見る」という行為に対して、このメカニズムを突き詰めていくと
「人間は見る」→「なぜ?」→「目があるから」→「なぜ目があると見えるのか」→「目には角膜と瞳孔があり、それで物体を投射できるから」→「なぜ投射できると見えるのか」→「それを像として脳に認識させる視神経があるから」→「なぜ視神経と脳は繋がっているのか?なぜ角膜と瞳孔という物があるのか」→「・・・」
といった具合である。
つまり目のない生物と目のある生物との境、そして目を構成する複雑な組織がどういう進化の過程で、細胞から変異したのかについてはまだ解っていない。そして(本書が出版された1995年当時の)現在では、それは“心”が作用している、つまりそれを望む「意志」の力が影響していると述べられている。その例としてストレスで胃に穴が空くという話が出てくるが、なるほどと思った。この辺の話は非常に興味深く読んだが、あまり長く書くと感想を大きく逸脱するのでここいらで止めよう。
あと本作では暗号が都合2回出てくる。これが実に凝った暗号で、最初の暗号はさしたる頭脳労働はなかったものの、2回目の暗号はかなり本格的。読んでいる途中で投げ出してしまった。幸いにもどうにか理解は出来たが、遺伝子情報を暗号に見立てるそのアイデアからして、やはりこの鈴木光司という作家は単なる物書きに終始していないことがよく解る。
そしてこの作家の最も大胆なところは、本作が実は世に興った『リング』ブームのパロディであることだ。自身が生み出した『リング』という作品が各メディアにて映画、ドラマ、CDブック、コミックへと色んなメディアへ文字通り“増殖”していく過程をそのまま山村貞子が人類社会へ増殖していく現象へと擬えているのが非常に面白い。
ある箱根の保養施設で偶然写りこんだ奇妙な名も無いビデオテープから、それを観た者が1週間、自分の命を救うために奔走した体験記へ、そしてそれが死後、遺族の手を借りて『リング』という名の小説となり、人類へと蔓延る、正に作者独自の大いなる皮肉である。なんとも大胆不敵だ。
しかし今回はいささか大風呂敷を広げすぎた感は否めない。次作『ループ』がどのような話になるのか、非常に不安である。
最後に本書が出版された95年という年に注目したい。実はこの年、日本ホラー小説大賞が初の受賞作を生み出している。それは『パラサイト・イヴ』。ご存知のようにこれも遺伝子を扱ったモダンホラーである。そしてこの作品も日本に“理系ホラー”を生み出すきっかけとなった。この年がそういう転換期であったと今になって思える。
そういえばこの前に読んだ本、篠田節子氏の『絹の変容』も遺伝子操作を扱ったパニック・ホラーだった。これは91年の作品だった。そして本書の前作『リング』はなんと91年出版である。
当方としてみれば単純に本棚の積読本の山から順番どおりに未読本を抜き取っているに過ぎない。単なる偶然だろうが、読書を続けると、なぜかこういう云い様の無い大きな流れというのを感じてしまう。確かにこの世にはこういう説明のつかない事がまだあり、それがあるからこそ、こういうホラーも成り立つのだろう。
▼以下、ネタバレ感想