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野獣の街



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【この小説が収録されている参考書籍】
野獣の街 (創元推理文庫 (241‐1))

野獣の街の評価: 10.00/10点 レビュー 1件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点10.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(10pt)

野獣どもの狂宴

本書は個人的レナードの最高傑作である。読み終えたとき、これこそ私が求めていたクライム・ノヴェルだと思った。そしてここにレナードの真骨頂を見た。

金持ちのアルバニア人の財産を狙うため、尾行していたクレメント・マンセルは、それを邪魔した車に腹が立ち、運転していた黒人を射殺する。しかしそれはその街の悪徳裁判官だったのだ。通りがかりの犯行で証拠らしき物は残していないと確信するクレメントだったが、1人の刑事がその事件を追っていた。

基本的にレナード作品のプロットは複雑ではない。ほとんどワンアイデアといったところだろう。
例えば、『キャット・チェイサー』ならば、元特殊部隊員がトラウマを克服するためにかつての戦地に訪れたらそこにかつての恋人がいて、既に人妻になっているのに、恋が復活した、怒った夫は復讐するといった物だし、『マイアミ欲望海岸』も莫大な財産を継承した美人の未亡人には制約があって、それに男達が絡む。また『ザ・スイッチ』は冷え切った夫婦の片割れが誘拐されるというもの。
レナードの創作作法とはとにかくキャラクターを思いのままに動かすことで、物語を進めるというもの。つまりプロットとはそれらキャラクターを動かすお膳立て、もっと平たく云えば単なるきっかけに過ぎない。キャラクターを集めて、さてあなた達の境遇とはこれこれこういうものですよ、さあ、あなた達ならばどうしますか?ハイ、動きなさい!といった感じだろう。
レナードは彼の頭の中で動き出すキャラクターをそのまま文章にしているといった感じなのだ。だからストーリーが読めないし、現実の事件、問題が終始丸く収まるのが珍しいのと同様に結末もすっきりしないものも多い。

しかし本書は殺したのが裁判官という人物だとレナードの相変わらずオリジナリティ溢れる導入はもとより、悪役のクレメントが心臓に毛が生えた、根っからの悪党であり、また敵役の刑事レイモンド・クルースも凄腕で肝の据わった男であり、この2人の対決に向けて全てが収束していく。特に11章の警察署内でのやり取りは歴史に残る名シーンと云えるだろう。
血沸き肉躍るとは正にこのことを云う。
「野獣」たちが集い、戦う物語。脇役、端役に至るまで全てが生きている。これ以外の題名はありえないと云っても過言ではない。
特に本書ではラストにある捻りも加わっており、それでレナードが単純に思いつきで書いているわけではないというのがはっきり解る。
いや、レナードは既にある物語を“発見”し、それを紙に書き写したのかもしれない。とにかくそれくらいこれはよく出来た作品だ。本書の存在が私をレナードファンにしてしまった。
カタルシス溢れるクライマックスといい、いやあ、堪能したわ。

Tetchy
WHOKS60S

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