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赤い館の秘密



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赤い館の秘密の評価: 5.75/10点 レビュー 4件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点5.75pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

赤い館の秘密の感想


▼以下、ネタバレ感想

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氣學師
S90TRJAH
No.2:
(6pt)

古典の名作とされていますが

ごく普通のミステリーでした。

わたろう
0BCEGGR4
No.1:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

実は金田一耕助のモデルなんです。

ディズニーキャラクターは今なお根強い人気を誇っているが、その中の1人(1匹?)、くまのプーさんはこのミルンが原作者である。
ミステリ黄金期には他ジャンルの作家もミステリを書いていると既に述べたが、なんとミルンのような童話作家でさえ、ミステリを書いているのだから、当時のミステリに対する文壇の注目度、興味の高さが計り知れよう。しかも館物である。今でいうならば、『アンパンマン』の作者やなせたかしが綾辻氏ばりに「~館の殺人」なるミステリを書くようなものか(ちょっと誇張しすぎ)。

旧友べヴリーを訪ねにふらりと彼の宿泊する「赤い館」に立ち寄った放蕩児アンソニー・ギリンガム。田園風景広がる田舎に立つその館ではなんと客の1人が何者かに殺害されるという事件が起きていた。その客は館の主の兄で嫌われ者のロバートだった。さらに当の館主は行方をくらましていた。
アンソニーはべヴリーと共に素人探偵よろしく事件の捜査に挑む。

くまのプーさんの作者によるミステリという先入観を抜きにして、本書はおよそ殺人事件を扱ったミステリとは思えないほど牧歌的にストーリーは進む。周囲に広がるのが田園風景というのもそれを助長しているが、さらに加えて素人探偵アンソニー・ギリンガムと友人ベヴリーのやり取りが面白半分に探偵ごっこをしているような感じで、緊張感の無い会話と共に捜査を進めるのがさらにその雰囲気に拍車を掛けている。
しかし本書で探偵役を務めるこのアンソニー・ギリンガムが横溝正史が生んだ名探偵金田一耕助のモデルであるというのはミステリ識者にはつとに有名である。確かにふらりと現れた放浪者がおよそ知性とはかけ離れた雰囲気を持ちながら事件を解決するというのは確かに金田一と共通するところがある。
またこのように殺人事件という忌まわしい出来事が起きていながらものどかに物語が進むというのは天藤真の作風をも想起させる。直接的・間接的にこのミルンの作風というのは今の一部のミステリ作家に何らかの影響を与えているようだ。

そして本書で明かされる真相及び犯人はけっこう驚愕するだろう。特にミステリを読み慣れた人ならばなおさらこの仕掛けは有効に働くに違いない。ミステリプロパー以外の作家だからこそこのような思いついたアクロバティックなプロットだと云える。
ただ本書は作者としては非常に不本意な形で有名である。それはハードボイルド作家かつアメリカ文学の文豪の1人と称されるレイモンド・チャンドラーが自身のエッセイ「むだのない殺しの美学」で本書を取り上げて散々にこき下ろしているからだ。曰く、リアリティに全く欠けると痛罵とさえ云える苛烈な批判である。
が、しかしながら現代の目を持って本書を読むとそれもむべなるかなと思う。

既に述べたように、ごっこのように探偵趣味に興じる二人の態度もそうながら、一番痛いのは肝心のトリックを成立させることが実に非現実だということだ。ネタバレになるので詳しくは書かないが、今のミステリ作家ならば決して犯さないであろう大きなミスを本書では犯している。それゆえこのトリック自体が成立すること自体不可能ということになっているのだ。
つまり本書はミステリプロパーが精通していない警察の捜査というものを頭の中で描き、しかも当時、そして今でも見られる道化役としての警察を物語に導入して、とりあえずこんな形のミステリを書いてみたといった感じの作品となっているのだ。

ただ上に書いたようにその作風もさることながら、日本を代表する名探偵のモデルが本書にあるだけでも少なくとも日本のミステリシーンに影響を与えているのは間違いなく、また偉大なる文豪に批判ではあるが作品を取り上げられたことでも歴史に残る1作といえよう。
ただ、この訳文の読みにくさはどうにかならないものだろうか?幾度と版を重ねている本書の歴史的意義を讃えているならば、版元はそれなりの改善をすべきだと思うのだが。


Tetchy
WHOKS60S

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