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罠にかけられた男



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【この小説が収録されている参考書籍】
罠にかけられた男 (新潮文庫)

罠にかけられた男の評価: 8.00/10点 レビュー 1件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(8pt)

チャーリー・マフィン縦横無尽!

チャーリー・マフィンシリーズ第4作目。いやあ、痛快、痛快。
『ディーケンの闘い』、『黄金をつくる男』など、ノン・シリーズにおけるフリーマントルもいいが、やはりこのシリーズでの筆致は一線を画すほどの躍動感がある。

チャーリー・マフィンの常に人を喰ったような策士ぶりは健在。いや、それどころか組織に属していない分、上司に縛られていないので、むしろ更に狡猾さが増した感がした。特にFBIのテリッリ捕縛作戦にロマノフ王朝切手コレクションがダシに使われることを摑んでからのFBIとのやり取りと、その作戦に一役噛んでいる上院議員コズグローブとのやり取りの面白い事、面白い事。
権力ある者に屈せず、むしろその権力を嵩に横暴を貪る者達を嘲笑するように振舞うチャーリーの姿には、上司-部下の上下関係に逆らえないサラリーマンの、こうでありたいという姿であり、溜飲が下がる気持ちがした。

そして今回、チャーリーの敵役のペンドルベリーも、いやはやなかなか面白い人物である。常によれよれのスーツを着、時には食べこぼしたケチャップの染みを付けて、上役の面前に登場したり、また必要以上に領収書を徴収して、必要経費を搾取する一見冴えないこの男は、FBI版チャーリー・マフィンであり、チャーリー自身も自分と同じ匂いを嗅ぎ取る。この男の水をも漏らさない計画に穴を開けるのが、このチャーリーというのがまた面白い。丁々発止の頭脳戦は似た者同士の騙し合い合戦そのものであり、これが今回の物語のメインディッシュとしてかなり美味しいものだった。

そして1,2作に登場し、大きな役割を果たしていたソ連のカレーニン将軍も大いにこの物語に寄与しているのも非常に楽しい。ソ連の旧王朝ロマノフ王朝の遺産であるから、ソ連が関与する事に違和感はなく、むしろこのKGBの上官が関係することで、クライマックスのテリッリ邸での銃撃戦へとなだれ込むのだから、フリーマントルのストーリーテリングの上手さには改めて感服した。
そして結局本作では活躍しなかった潜行工作員(スリーパー)のジョン・ウィリアムスン。ただのアメリカ人としか見えないこのKGB工作員のその後も大いに気になるところである。

ソ連のカレーニン、ベレンコフ、そしてかつての上司の息子であり友人であるルウパート・ウィロビーに加え、彼の妻クラリッサとこのウィリアムスン。どんどんシリーズの世界が広がっていく。今後のシリーズの行く末が非常に愉しみだ。


Tetchy
WHOKS60S

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