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アルファベット・ハウス



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アルファベット・ハウスの評価: 7.00/10点 レビュー 1件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

多面的過ぎてまとまりが悪いが、読ませる

「特捜部Q」シリーズの10年前に発表された、著者のデビュー作。デビュー作だけに、あれもこれもと盛り過ぎた感があるが、オールスンの優れた筆力が随所に表われた力強い作品である。
ドイツ上空で撃墜された英国人パイロットのブライアンとジェームズは、病院列車で運ばれていたナチス親衛隊の将校になりすますことで追跡を逃れようとするが、その列車の行き先は親衛隊専用の精神病院だった。二人はそこで過酷な電撃療法と薬によって心身ともに蝕まれ、さらに仮病で入院している悪徳将校のグループに虐待され命の危険にさらされる。その後、連合軍の空襲にまぎれてブライアンは脱出に成功するが、幼なじみで親友のジェイムズを残してきたことに深い罪悪感を抱くことになる。
それから28年が過ぎた1972年、医者として、事業家として成功していたブライアンは、オリンピックでの仕事でミュンヘンに赴くと、自らジェームズを探すためかつての病院があった街を訪ねた。そこでは、あの悪徳将校グループが町の名士として偽名で暮らしていた。ブライアンは、彼らの周辺を探ることでジャームズを発見しようと、ひとり奮闘する・・・。
前半は戦時の精神病院からの脱出を描く壮絶なサバイバル小説であり、後半は悪徳将校の仮面を暴くナチ・ハンター的なサスペンスである。さらに、幼なじみの友情物語、実らぬ恋物語、極限状態における理性の強靭さを問う物語などが重なってきて、ストーリー展開だけで十分な読み応えがある。
「著者あとがき」の最初に「これは戦争小説ではない」と明記されている通り、第二次世界大戦のドイツを舞台にしたアクション小説の体裁をとりながら、人間の友情と罪悪感の機微を描いたヒューマンドラマである。

iisan
927253Y1

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