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アルファベット・ハウス



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アルファベット・ハウスの評価: 4.45/5点 レビュー 11件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.45pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全11件 1~11 1/1ページ
No.11:
(5pt)

スッキリ読み終わらせない作者の意地悪

共に聡明で体力もあり女性から好かれる容姿を持つ幼馴染の二人が、人生の明暗を分ける話なのだけれど、ここまで舞台設定が重たいと「ジェイムズ楽観主義すぎるからー」で簡単に終わらせるわけにもいかず、読後どこに気持ちを持っていけばいいのかわからなくて、モヤモヤ。いっそジェイムズがなんの落ち度もない性格設定だったら悲しいなりに、もっとスッキリ読み終える事ができただろうに、気球のエピソードがあるばっかりに、例え飛行機が墜落せずに無事故郷に戻れる世界線であっても、いずれジェイムズとブライアンは「楽観主義か悲観主義か」という性格の違い故に、袂を分つことになったんじゃないか…いやいや悪いのは戦争やナチスでジェイムズは被害者だから…と読後の私をあれこれ悩ませる作者は結構意地が悪いと思う。(読後いろいろ考えさせられるという意味で褒めてます。念の為)
アルファベット・ハウスAmazon書評・レビュー:アルファベット・ハウスより
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No.10:
(5pt)

これは傑作

これはすごかった。前半はずっと軍人用の精神病院の室内の描写が続く。イギリス兵がドイツ人将校になりすましているので、言葉が理解できないが、コミュニケーション不能状態が詐病を隠すための前提となるという、絶妙の設定。これを思いついた時点で小説としては半分成功したようなものだが、普通は避けられてしまう大小便の排泄まで描写し、リアリティを高めている。
 病室の内も外も敵ばかりで、唯一の味方とは無関係の芝居を続けるため、会話も手助けもできない。長いけれども緊張感が緩むことなく、読み続けられる傑作だ。
 後半に都合のいい偶然の出会いがあるが、ドイツの小さな町なら許容範囲といえるかな。久しぶりにアンリミテッドで引いた大当たりだった。
アルファベット・ハウスAmazon書評・レビュー:アルファベット・ハウスより
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No.9:
(4pt)

苦境に陥ったとき、いかに行動できるか

第二次世界対戦のドイツの精神科病棟に、イギリス兵が患者を装い生き延びる話かと思いきや、幼馴染みの友人を救えなかった葛藤の物語。ヒーローが活躍、
というのでなく、その時々の個人の選択を考えさせられるような物語だと思う。
アルファベット・ハウス 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:アルファベット・ハウス 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
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No.8:
(5pt)

ユッシ・エーズラ・オールスン 処女作品。

著者のユッシ・エーズラ・オールスンの特捜部Qシリーズ1作目から6作目まで読み終え、他の作品をと思い、著者の処女作(本格的な小説)の『アルファベット・ハウス』を読むことにした。
 時は、「D-デイ」の半年前、1944年1月英国空軍のブライアンとジェイムスの二人がドイツ航空機工場を空爆する編隊(650機)に組み込まれた特殊任務(編隊から離れドイツが新しく建設を始めた施設)の写真撮影だった。
 先に読んだサン=テグジュペリ『戦う操縦士』を彷彿とさせるストーリーで始まる。
 サン=テグジュペリは、奇跡的に帰還したが、ブライアンとジェイムスの偵察機は、対空砲火により飛行不能となり、二人はパラシュート降下して逃亡を始める。
 ドイツ軍のパトロール隊に追われ遮二無二飛び乗ったのがドイツ軍傷病兵を運ぶ列車だった。
 その列車には、東部戦線で負傷したドイツ軍SS上級将校ばかりの車両もあり、その車両の中には精神に異常をきたしたものも含まれていた。 
 逃げ場のない二人は、その車両の中で息をしてない二人を(一人は虫の息だったが)、窓から放りだしてSS上級将校になりすましてしまった。
 二人が運ばれたのがスイス国境まで50キロというところにあるフライブルクの「アルファベット・ハウス」という精神障害者病棟だった。
 ここからが精神を病んだドイツ将校になりすました二人の苦闘が始まる。
 本書の第Ⅰ部は、動けなくなったジェイムスを、心ならずも残してブライアンが「アルファベット・ハウス」から逃亡し、アメリカ兵に救助されるまでの10ヶ月あまりのエピソードで費やされている。
 父親が精神病医であったオールスンは、「1950年代から60年代初めにかけて、デンマークでは、”きちがい病院”と呼ばれていた場所で育った」と、本書のあとがきで述べている。
 少年のころオールスンが体験したことがこの物語を構想する切っ掛けになったとも語っていたが、アルファベット・ハウスでの描写に生かされているのだろう。
 第二部は、1972年(28年後)、ブライアンが戦後手を尽くしてジェイムスの行方を探したが、見つけだすことが出来ないところから始まる。
 頑なにドイツに行くことを拒んできたブライアンだったが、ひょんなことからドイツへ行きジェイムスの行方を探すことになる。
 偶然に次ぐ偶然が重なるストーリー展開に、異を唱えることもできるが「事実は、小説よりも奇なり」の諺もあるが、「小説は、事実の奇も超える」と唱えながら読み進むから楽しむことが出来るのです(オールスンの筆力によって)。
 本書は、「特捜部Q」シリーズと異なり戦時下の物語であるが、著者オールスンが貫いている精神は、暴力にたいし徹頭徹尾嫌悪感を貫く人間を描くことにあるようだ。
 仲の良かった幼友達の友情も「時の経過」という残酷な現実を受け入れることしかできないという人間の真の姿を描いている。
 ネタバレになるが、ブライアンとジェイムスが、子供のころの思い出の地「ドーバー」でする会話は、ありきたりなハッピーエンドではなく、ほろ苦さを感じさせながら終えるところなどは、さすがオールスンならではと読ませてくれた。
 鈴木恵氏の秀逸な翻訳が、本書を読みやすくしてくれたことも附記しておきたい。
アルファベット・ハウスAmazon書評・レビュー:アルファベット・ハウスより
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No.7:
(2pt)

特捜部Qのノリで読んだらけっこう重たかった

上下巻を読んで。ネタバレあります。

上巻は精神疾患を偽装してのナチからの逃亡で、延々と息苦しい描写が続きます。
出口の見えないこの描写が本当に長く重たかった・・・

下巻は一転して捜索と復讐なのですが、元ナチの悪徳将校たちと戦うのに素人の
おばちゃん二人がのこのこ乗り込み、当然あっさり拉致されるなど、上巻の緊迫感
からは信じられない間抜けさが気になりました。

結末も今一つスッキリせず、「走れメロス・あまりに待たされセリヌンティウス
すねちゃった版」みたいな感じでした。

「特捜部Q/吊るされた少女」を早く文庫版で読みたいです。
新書版要りますかね?
アルファベット・ハウス 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:アルファベット・ハウス 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
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No.6:
(5pt)

特捜部とは違う怖さです。

オールスンの別の面を見た気がします。登場人物が非常に頭に入りやすく、読みやすかったです。
アルファベット・ハウスAmazon書評・レビュー:アルファベット・ハウスより
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No.5:
(5pt)

過酷な状況の中、友情はどうなるのか?

第二次世界大戦下、英国軍パイロットのブライアンとジェイムズがドイツ上空で襲撃され、辛うじて命をとりとめた二人が飛び乗った列車は、アルファベット・ハウスと呼ばれる精神病患者に人体実験を施すナチス軍配下の医療施設であった。名前を変え、精神病患者になりすまし想像を絶する恐怖と狂気の中、日々を過ごす二人であったが、やがてブライアンだけが命がけの脱走に成功する。
 その後、約30年を経て、ブライアンはジェイムズの消息を求めて再びドイツを訪れるが、そこには当時、精神病患者として同じ時を過ごした悪徳将校が偽名で暮らしており、ブライアンの目の前に現れる....。

 著者のあとがきにあるとおり、本書は確かに戦争小説ではない。戦争を背景にした友情と愛憎の物語である。戦争という過酷であるとともに異常な状況下においては、人間の友情や愛情、憎しみ、性(さが)、自我などが揺れ動き、振り子のように左右するのである。この長い長い物語は残忍な描写も含まれているため、好き嫌いが分かれる作品かもしれないが、私はブライアン、ジェイムズの感情を丁寧に描写する著者の姿勢に心を打たれ感情移入し、タイムスリップしたような感覚になった。
 二段組み約560ページの本書はテーマと同じく重く、読み応えも十分である。
アルファベット・ハウスAmazon書評・レビュー:アルファベット・ハウスより
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No.4:
(4pt)

濃密な時を過ごさせていただきました

ある雑誌に掲載された好意的な書評を読んで購入。作者はデンマークの人気作家ユッシ・エーズラ・オールスン。

物語は第二次大戦中の1944年1月、英国の飛行場から始まる。本作の主人公のブライアンとジェームズは、若き英国人パイロットである。彼らに対し特別任務が下令される。それは米国製の戦闘機P-51マスタングを複座に改造し、レーダーを搭載した偵察機に搭乗して、爆撃機連合に同行して南ドイツの敵秘密基地の写真撮影をすること。

彼らは忠実に任務を果たそうと努力するが、目的地上空で強力な対空砲火を浴びて撃墜される。辛くも落下傘で脱出した二人であるが、地上ではドイツ軍の捜索隊に追い回される。そこで彼らは偶然遭遇したドイツ軍の西行きの列車に飛び乗って難を逃れるが、その列車は負傷兵を輸送する列車であった。彼らは車内でベッドに横たわる瀕死の親衛隊将校をそれぞれ窓から投げ捨てて、ドイツ軍の負傷兵に成りすますことに成功する。その後車内で何度か検診を受けた結果、彼らは精神病患者と認定されて、南ドイツ、フライブルクの「アルファベット・ハウス」と呼ばれる精神病院に入院させられる、というのが前半。

その間投薬治療と電気治療を交互に受ける彼らの精神は、徐々に蝕まれていく。しかも病院は親衛隊の強力な監視下にあって、ブライアンとジェームズは会話すらできない。彼ら以外にも偽患者が何人かいるらしく、摘発されると中庭で即座に銃殺されるという過酷な環境でもある。さらにかつては親衛隊の将校だった、いわくありげな4人組の偽患者グループが常に2人を監視していて、密かに暴行を加えてくる。無力な2人と悪辣な4人組との密かなせめぎあいが、前半後段のハイライトとなる。そして10か月後、2人は何とか「アルファベット・ハウス」から脱出しようと試みるが、逃げられたのはブライアンだけ。

後半はその28年後に、ジェームズを置き去りにしたという、良心の呵責に耐えられなくなったブライアンが再びフライブルクに赴いてジェームズを捜索するというもの。あの4人組の偽患者たちもしっかり現れて、ブライアンを苦しめることでしょう(笑)。これ以上内容に触れると、ネタバレしてしまうので、ここまで。実に面白い物語でした。斬新かつ意表を突く「ナチスもの」の物語である。ポケットブックサイズ二段組み500ページあまり、あっという間に読み終わり。濃密な時を過ごさせていただきました。
アルファベット・ハウスAmazon書評・レビュー:アルファベット・ハウスより
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No.3:
(4pt)

WWIIを背景に、人間間の不可避の亀裂を描いたデビュー作

特捜部Qシリーズが好きで、この本を知り読み始めました。あらすじは略。
アルファベットハウスという題名は、軍務不適格者の病名をアルファベットの記号で呼んでいたことに由来するようです。
話のテーマはナチや精神科の話でなく、人間関係の亀裂だ、と作者、あとがきで書いております。
精神科という場所が、誰が正常で誰が異常なのか、異常と正常とはどこで分けるのか、それがさらに戦争という背景が加わり、小さいときから友達同士だった二人の、運命の明暗が分かれていく過程を、重たい題材ながら、テンポよくスリリングに読ませる腕は、デビュー作とは思えません(ちょっとネタバレ気味ですかね)
星4つにしたのは私の好みで、ラストがもう少しアルファベティカルな無機質さと、余韻があったらなあ、というだけで、星5つでもいい作品だと思います。
訳者あとがきで、直訳でなく、英語からの重訳で部分的にドイツ語訳を参考にした、とあるので、そのあたりも読後感に影響してるのかもしれません。
アルファベット・ハウスAmazon書評・レビュー:アルファベット・ハウスより
4150019002
No.2:
(5pt)

『特捜部Q』シリーズの著者が書いた骨太の小説。第二次大戦で捕虜になった英国空軍兵二人はどう生き抜いたか。アルファベット・ハウスとは?

本著者ユッシ・エーズラ・オールスンの『特捜部Q』シリーズも独特で、とても面白い。しかし本書はミステリとは異なるが、著者出色の出来である。第二次世界大戦でドイツ軍の捕虜となった二人のイギリス空軍兵が、戦争トラウマを病んだドイツ軍将校のふりをして生き抜こうとする。アルファベット・ハウスという精神病院に収容され、想像に絶する苦難の末に一人は脱出に成功するが、もう一人は戦争犯罪者に巻き込まれ、ドイツに取り残される。脱出した若者は苦労はしたが成功を収め、何度も試みたが失敗に終わった友人の最後の捜索に取り組む。そして、どうなったか。凄味のある結末が待っていたのだが、その経過もまたハラハラドキドキおもしろく、結末は深淵である。
本書から、著者に精神疾患に関する知識が豊富なことがわかり、それがQシリーズでも物語や登場人物の意外性を生み出しているようだ。ルメトールの『天国でまた会おう』と比較して読むとおもしろい。
アルファベット・ハウスAmazon書評・レビュー:アルファベット・ハウスより
4150019002
No.1:
(5pt)

「過去には敬意を払わなければならないにしても、人は今を生きなければならない」

デンマーク、コペンハーゲン警察署「特捜部Q」シリーズの作者ユッシ・エーズラ・オールスンの驚くべきサスペンスあふれるデビュー作である。

「著者あとがき」で<これは戦争小説ではない。>と言い、日常どこにでもある<人間関係の亀裂についての物語である。>と書くが本書の背景には重く、残虐な第二次世界大戦の非情な歴史の日々が描かれている。

「アルファベットハウス」とは通称でありナチスドイツの軍人専用精神病院をこう呼んだ。
ナチスは軍務につくすべての者を、身体的、精神的に軍務につけるか適応、不適応の分類を医療検査官により厳格に行い、アルファベットを用いてレッテルをはり管理していた。
不適合とみなされた記号をつけられた軍人たちが、負傷者も含めて収容されていた施設が「アルファベットハウス」なのだ。
その軍務適格、不適格の記号の詳細は本書巻末に付録として載っているが、恐るべき権力による人格の決めつけである。

さらに歴史を裏打ちするように約五十ものタイトルが「参考文献、出典」として列記されたこの物語は、二人のイギリス人兵士たちの波乱万丈な人生を描いた傑作小説である。

「第一部」 は第二次世界大戦末期。イギリス軍パイロット、ブライアン・ヤングとジェイ
ムズ・ティーズデイルはP51ムスタングで出撃するが、ドイツ領内で撃墜される。負傷しながらも生きていた彼らは極寒の中、投降するか場所も分からないドイツ領内で逃げ延びるかの選択をせまられる。

線路を見つけ飛び乗ったのは病院列車だった。傷病者の群れの中でも二人がイギリス人パイロットだとばれれば殺られてしまう。
<みな罪を犯しすぎて、慈悲心など容れる余地がないのだ。この狂った戦争に参加している者はみな。>
二人は気のふれたドイツ軍将校になりすますことに成功するが、彼らの収容先は「アルファベットハウス」だったのだ。

精神病患者の中で過ごす地獄の日々。薬物投与と電気ショックの衝撃。特にブライアンはドイツ語が分からず患者からも暴行を受け続ける。ジェイムズはドイツ語が分かるだけに無感情、無表情を貫き通すあまり真正の精神異常におちいってしまう。
はたして彼らはこの地獄から脱出できるのか。強烈なサスペンスの連続で第一部は終わる。

「第二部」 はそれから二十八年後。地獄から脱出できたのは一人だけだった。
彼は友人を探ししだすために再度ドイツに戻る決心をする。
<月日は恐怖と抑圧の日々だった。組織的な不適切治療と孤独の世界。>確か<三人の男が病室全体を静かに威圧し支配していた。>
彼は当時の人間たちがいまだ生存しているかも分からないまま、絶対に生きていることを念じて一人ドイツで捜索を始める。

反応があれば感情がある。感情があれば思考がある。思考があればパズルは解ける。最後のピースがあればパズルは完成するのだ。

オールソンの作品にはこのデビュー作からすべての面白さが詰まっている。
アルファベット・ハウスAmazon書評・レビュー:アルファベット・ハウスより
4150019002

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