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アトランティスのこころ



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アトランティスのこころの評価: 8.00/10点 レビュー 2件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全2件 1~2 1/1ページ
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

オールディーズが似合う物語

これはなんと評したらいいのだろう。読書中、常にそのことが頭を過ぎった。
上下巻併せて1,120ページ強の本書はこれまでの作品と異なり、上下巻それぞれで主人公が異なり、また物語のテイストそのものも異なる構成となっている。

上巻は1960年のコネチカット州のハーウィッチを舞台にした母子家庭であるボビーとリズのガーフィールド親子のアパートにテッド・ブローティガンという老人が引っ越してきて息子とこの老人との交流と別れの物語が描かれる。実はこの老人はある特殊な能力を持った人物で追手から逃れてハーウィッチにやってきたのだが、その追手に見つかって連れ去られ、その後のボビーの成長とその後老人が追手の許から再び脱出したことが判るまでが語られる。
それまでが上巻で下巻はそのボビーを主人公に据えた物語が始まるかと思えば、一転して1966年のメイン州立大学を舞台に語り手もそこの学生ピート・ライリーへバトンタッチして別の物語が始まるのだ。

更に物語は1983年のコネチカット州に移る。そこではビル・シーアマンという謎めいた男の物語が始まる。
この男は実は上巻に登場するのだが、それはまた後で触れよう。

読み終えて思うのはこれはキャロル・ガーバーという実に魅力的な女性の半生記をだったということだ。
それについては後に述べるとしてこの移ろいゆく物語についてそれぞれ述べよう。

まず上巻のボビー・ガーフィールドとテッド・ブローティガンのパートはボビーの親友キャロル・ガーバーとサリージョンことジョン・サリヴァン、そしてボビーの母親リズがメインの登場人物だが、これは不当な暴力の物語と云えるだろう。とにかくクセの強い人物たちが登場し、肉体的にも精神的にも痛々しいシーンが描かれる。

このパートで一番クセが強いのはリズ・ガーフィールド。主人公ボビー・ガーフィールドの母親だ。
彼女は最初は夫の突然死で遺された一人息子の世話と借金の返済のために夫が勤めていた不動産会社に事務員として、ある時は苦汁を飲む決断をしながら必死に生きているシングルマザー像のように見えるが、物語が進むうちに家を支配する高圧的な守銭奴であることが判ってくる。

彼女の口癖「人生は不公平なものよ」はいわば息子にあらゆる希望を、要望を最終的に諦めさせる呪詛のような言葉として響いてくる。

上巻は何とも痛ましい物語なのだ。

下巻は打って変わってメイン州立大学の学生寮を舞台に学生のピート・ライリーが語り手とした学生生活を描いた物語が始まる。これはまさに学園物とも云うべき物語だが、メインとなるのはハーツというトランプゲームに興じ、次第にそれにのめり込んで学業が疎かになっていく大学生の物語だ。
語り手のピート・ライリーもまたその虜になった1人でしかも寄宿舎内でもトップクラスの腕を誇るのだから、なかなかその沼から抜け出せない。なんと物語が始まって280ページを費やしてようやくハーツの魔力から逃れる始末だ。

この魔術的な魅力を持ったハーツとの別れまでに語られるのは寄宿舎に同居する同級生の面々とのエピソードと激化するベトナム戦争への抗議運動の芽吹き、そしてキャロル・ガーバーとの恋愛である。

キングの描く登場人物像は実に個性的で一読忘れがたいのが特徴だが、このメイン州立大学のピート・ライリーの同僚たちもまた同様だ。

つまりはこの章もいわばそれぞれがそれぞれの事情や理由で人生を変えた物語だ。

この章では青年期の終わりを描き、そして社会という荒波に立ち向かう予感と断片的にではあるが、荒波を生き抜いた末路が描かれて閉じられる。

そして次に始まるのは1993年のニューヨークに住むビル・シーアマンという謎のサラリーマンの一日を綴った話だ。そう彼はビリー・ガーフィールドの章に出てきたセント・ゲイブリエル校の生徒でキャロルに暴行を加えた3人のうちの1人でその後ボビーの愛用のサイン入りのアルヴィン・ダーク・モデルのグローブを盗んだウィリー・シーアマンだ。

これはウィリー・シーアマンの贖罪の物語である。

そしてまた時は流れ1999年のコネチカット州。語り手はジョン・サリヴァン。ビリーとキャロルの親友の1人。
そしてこの章はジョン・サリヴァンの回顧録のような話である。

これらそれぞれの時代と場所、そして各章のメインの登場人物に共通する存在がヒロインのキャロル・ガーバー。

前半の主人公ボビー・ガーフィールドに惚れ、自分からガールフレンドになることを申し出て、小学生の非常にピュアな付き合いが始まる。

これは在りし日の喪失と再生の物語だ。かつて思いのまま生き、何でも話せる仲間がおり、お互いが打算や駆け引きなどせずに時間を共有していた純粋無垢な黄金時代が誰しもあったことだろう。
本書はそんな眩しい日々が人生が長じるにつれて失われていく哀しみを、心の痛みをそれぞれの立場と人生の道程で語った物語だ。そしてその輝かしい日々を失ったそれぞれの人生が転落しているのが何とも痛ましい。

従って本書は年を重ねれば重なるだけ、胸に痛切に迫るものを感じるだろう。読者もまた同じように人生を重ね、本書に書かれたボビー・ガーフィールドやピート・ライリー、ウィリー・シーアマン、そしてジョン・サリヴァンの思い出に自らのそれを重ねて甘くて苦い思いを抱くに違いない。少なくとも私はそうだった。

『アトランティスのこころ』という一風変わった不思議な題名の本書ではしかし、アトランティスが登場するわけではない。
しかし私はアトランティスはいわば象徴なのだと捉えた。それは“失われた大陸”もしくは“失われた楽園”を意味する。原題が示すように、アトランティスに置いていった心、すなわちもう戻れないあの頃の思い出を指す。

本書を読みながら自分も色んな思い出が蘇った。
私は惚れやすく、クラス替えがあるたびに好きな女の子が変わっていった。しかし当時恥ずかしがり屋で奥手の私はその誰にも告白はできなかった。唯一友人に騙され、好きな女の子の名前を云った時に、自分が風邪で休んだ時にクラス中にそのことがバラされたことがあり、その子が凄い剣幕で迷惑だと云わんばかりに私に詰め寄ったことがあった。

社会人になって女性の飲み友達が出来て、その娘が会社の後輩を好きになったから付き合えるよう手伝ってほしいと頼まれたので、そうしていたらいつの間にか自分の方が彼女を好きになっていたこともあった。

そんな色んなほろ苦い思い出が次々と蘇った読書だった。みんな私のキャロル・ガーバーだった。
しかしキャロルと違い、その中の1人とてメディアに出るようなことは、今に至ってもない。だから近況は全然判らない。

もし私のキャロルの1人に遭えたのなら、どんな顔をして私は対面するだろうか。どんな感じに話をするだろうか。

ボビーやキャロルのようにお互い年を取ったよね、とそんな風に自然に話せたら、もうそれは恋の、そして思い出の終わりだろう。

そんな日が来ることは叶わないだろうけど、どうかみんな元気でいてほしいと切に思う。

何ともセンチメンタルな物語だな、これは。まいったよ、全く。

しかし何とも美しい物語ではないか。この物語にはオールディーズが似合う。
私の頭の中に最後に流れるあのメロディ、それはポール・アンカの“Diana”だった。これぞボビーの最後の想い。

“Oh, please stand by me, Diana”

▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

長い!長すぎる!

ホラーだと思って読んでいたら・・・・これ、ホラーじゃないんですね!
(途中、チラっとそんな展開がありますが)

欲をいえば、前半だけで構成して、1人の少年の物語で書いてほしかったな~。
後半にも関連はありますが、途中長すぎて飽きちゃいそうでした。

前半だけなら、8点!
ドノヴァンの「アトランティス」が合うんだな~。

ももか
3UKDKR1P

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