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追撃の森



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【この小説が収録されている参考書籍】
追撃の森 (文春文庫)

追撃の森の評価: 6.80/10点 レビュー 5件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.80pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

最後の微妙な描写の意味は何?

ディーヴァーのノンシリーズ作品。2年前くらいから訳出されると云われていた作品がようやく日の目を見た。

物語は唐突に始まる。
いきなり弁護士夫妻の別荘を二人組の強盗が襲撃し、あっという間に二人は殺されてしまう。そこに居合わせた弁護士をしている夫人の事務所で秘書として働いている本業女優のミシェルと、通報を受けて非番の身でありながら現場に一番近い所にいたことで駆り出された女性保安官補ブリン。特にブリンは頬を弾丸に打ち抜かれるという重傷を負う。
かつてこれほどまでに深手を負ったヒロインがいただろうか?しかも女性の命ともいえる顔にいきなり重傷を負うのである。しかしこれでブリンという女性保安官補のタフさが読者の脳裏に焼き付くのだから、やはりディーヴァーの創作作法はすごい。

追う者と追われる者の物語。しかしディーヴァーならではのサスペンス豊かな状況でありながら何とも奇妙な味わいを見せる。

それは追う側も追われる側もお互いのパートナーに奇妙な友情が芽生えてくるのだ。

逃げる側のブリンとミシェル。前者はタフで生きる術、そして相手を出し抜く術を知った女性だ。後者のミシェルは都会暮らしで女優の端くれでスタイル抜群で身に着けている服も高級品ばかり。およそ山歩きとは無縁の女性だが、いわゆる吊り橋効果が作用して同族意識が生まれてくる。

また追う側のハートとルイス。片や職人と仇名されるプロの殺し屋で片や軽薄な人殺しをゲームの一環だと思っている男。最初ハートはルイスの考えの甘さを見下していたが次第にルイスのサバイバル知識の豊富さに感心し、対等のパートナーとして意識するようになる。
特に二人の交流シーンは男の友情が次第に芽生えてくる読み応えがあり、とても殺し屋二人とは思えない。むしろ狩りを楽しむ男二人のようだ。何とも奇妙な味わいをディーヴァーは演出したものだ。

そして逃げる側のブリンは立ち止まることを自らに禁ずる。その心情を表すエピソードにかつてブリンが高速で捕まえた容疑者の台詞にこんなのがあった。

「そりゃ動いているかぎり、おれは自由の身なんでね」

追われる者の拠り所になる台詞なのだが、これに似た台詞をディーヴァーの作品で私は読んでいる。それはリンカーン・ライムシリーズ第1作の『ボーン・コレクター』だ。アメリア・サックス初登場の場面でアメリアは次のように独りごちる。

走ってさえいれば振り切れる。

とにかく前へ。これがアメリアの信条。この台詞が前述の台詞に重なる。ブリンはアメリアに似た性格の持ち主なのだ。

そして敵役のハートの造形もまた魅力的だ。その筋の界隈の者たちから“職人”の異名で呼ばれる凄腕の殺し屋ハートは自分の痕跡を一切残さずに任務を遂行する。しかしそれはライムシリーズに出てくるような病的なまでに神経質な性格ではなく、プロ意識から生まれる注意深さと、あくまで沈着冷静で相手の心理を読み、二手三手先を読みながら追い詰める、ゲームの達人ともいうべき凄みがある。そしてハートは次第にブリンのサバイバル術に感心し、恋心にも似た関心を抱くようになる。
(以下ネタバレへ)



▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.2:4人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

追撃の森の感想

Jディーバーは初めて読んだのですが、やはり多作の人気作家だけあって人物の描写はうまいです。
ぼんやり読んでいてもどのセリフが誰の言葉かすぐ分かるくらい上手にかき分けています。だから読むのに苦痛は無く、スラスラすすんでいきます。
ストーリーは大まかに言って、2人の女が森の中を逃げ回って2人の凶悪犯人が追いかけるというもので、全体の7~8割が題名どおりの森の中の追撃です。
逃げる方も追う方も相手を目くらましするためにトリックを掛けて欺きます。この知恵比べも面白いのですが、さらに面白いのは人物の描写です。
逃げる二人も追う二人もそれぞれが異なるタイプの凸凹コンビで、追跡劇だけでなくコンビの中の対立も起こって、単調になりそうな話を2転3転させて全く飽きさせません。
どの人物も魅力たっぷり、読者は逃げる方も追う方も知らず知らずに応援していることでしょう。おしまいにはドンデン返しもあるのですが、それより面白いのは連続して起こる小さなどんでん返しの方です。劇場で見せるような大掛かりなマジックではなくて、器用な手品師がテーブルで見せる鮮やかな連続技みたいな逸品です。

逃げる主人公ブリンは、頭が良く強い女なのに生き方が不器用で、私生活はへたくそと言っていいでしょう。もどかしくて応援したくなってしまいます。
追いかける極悪人ハートのセリフも大好きです。測るのは2回。切るのは1回。
完璧主義者が一人いると、話が引き締まりますね。


ところで、人物がせっかくリアルで魅力的だったのに、ストーリーが強引に人物を引っ張りまわしたため、全体でリアリティが壊れてしまっています。
どんでん返しの後には、それなら解るというところも出てくる半面、逆に余計に不自然なところもちらほらと。


▼以下、ネタバレ感想

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absinthe
BZLMTCHK
No.1:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

さすが、どんでん返しの達人!

どんでん返しの天才・ジェフリー・ディーヴァーのノンシリーズの新作は、ノンストップ追跡劇だ。
読み終った後では多少の疑問点が無きにしもあらずだが、最初から最後まで予断を許さず、読者の予想を裏切り続ける、女性保安官補と殺し屋の緊迫感に満ちた追跡劇がたっぷり楽しめる。
いい意味で「裏切られ」続けることの快感に酔いしれてもらいたい。それ以上の感想は、あえて要らない。

iisan
927253Y1

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